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神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
3章

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第63話 お見合い(物理)


 「えぇと、御取込み中ごめんね? 入っても大丈夫かな?」


 ヒョコッと、これまた新しい人物が顔を出して来た。

 今度は誰がご登場なされたのかと、ため息交じりに視線を向けてみれば。

 そこには王女と王子と同じく、熊の丸い耳を生やした男性が一人。

 何やら困った様子で笑みを浮かべて、此方を覗き込む形で体を半分くらい見せているのだが。

 顔と雰囲気からするに、ライルザッハ王子の更に上の兄という事では無さそうだ。

 となると、まさか。


 「父上、見てくれ! 俺の嫁が見つかった!」


 「お父様、影から覗き込んでいないで皆様に御挨拶なさって下さいませ。威厳がありませんわよ、王様の癖に」


 「あはは、参ったねこりゃ」


 二人からそんな言葉投げかけられ、頭をポリポリと掻きながら部屋に入って来る男性。

 見た目は普通というか、疲れた中年という感じでは有るのだが……どうやら予想が当たってしまったらしい。


 「大変失礼いたしました、御無礼をお許しください。陛下」


 慌てて膝を折って頭を下げてみれば、隣ではリリシアが同じように頭を垂れ、背後では慌てた様子でシャームが膝を折る音が聞えて来る。

 いくらなんでも登場が急すぎる上に、予想外な謁見に戸惑ってしまう。

 お堅い国なんかであれば、今さっきまでの俺達の行動でさえ不敬罪として咎められてしまいそうだ。

 なんて事を思いながら冷や汗を流していれば。


 「あぁ~そういうの良いですから、ホント。娘のお友達と、保護者の皆さんがいらっしゃったという事で。御国事情に関わる内容でない限り、緩くいきましょう」


 なははっと困った様に笑う王様が、どうもどうもなんて言いながら俺達に立ち上がる様に促して来た。

 これは……真に受けてしまって良いのだろうか?

 少々疑いながらも立ち上がってみれば、目の前にはやはり緩い笑みを浮かべている男性が。

 この人が、この国の王。

 歳は三十後半から四十と言った所か。

 アグニと比べてみれば貫禄があるが、些か緩い。


 「えぇと……名乗り遅れました、我々は……」


 「あぁ、少々お待ちを。立ったままでは何ですし、一度場所を移しませんか? ベッドのお嬢さんも驚いている御様子だ。これから治癒術師達は来ますが、大丈夫そうであれば子供は子供、大人は大人でお話しましょう。あまり堅苦しい雰囲気では、子供達は飽きてしまいますから」


 「はぁ、そうかもしれませんが……」


 なんとも、掴みづらい。

 そんな感想を浮かべながらチラッとスーへと視線を向けてみると……よく分かっていないのか、首を傾げながら手を振っている。

 まぁ確かにこの場で色々と小難しい話をしても、スーやイリーゼ王女には退屈かもしれないな。


 「そう言う事でしたら、お供いたします。しかし我々は他所の国の人間、此方の方々が警戒するのと同様、我々も急にこの様な場所に御招き頂いては落ち付きません。スーに……子供に一人、お守りを付けてもよろしいでしょうか?」


 そう言ってからシャームへと視線を向けてみれば、彼女は黙って頷いてくれた。


 「えぇ、もちろんです。問題なければこちらも子供達を部屋に残そうと思っていますし、友人同士安心できる状態で交流を深めて頂ければと。ライルザッハ、イリーゼ。良い子にするんだよ? あまり騒いで、皆さまにご迷惑をお掛けしない様にね?」


 「もちろんですお父様」


 「おうよ! こっちの狼のお姉さんが残るって事で良いんだよな!?」


 何やら既に騒がしくなり始めているが、とりあえずスーの護衛を残す事は許された。

 では、我々も仕事をしようか。


 「それでは、どうぞこちらへ。お酒でも飲みながらお話でも致しましょうか、何たって子持ちの親は苦労が多い……あ、そうだ。ガウム、タウラ。しっかりと皆をお守りする様に、何かあればすぐ知らせに来なさい」


 「「承知しました!」」


 子供達以外にはしっかり威厳を保っているのか、護衛二人はピシッと背筋を伸ばして敬礼して見せた。

 はてさて、どういったお話になるのやら。

 まずは世間話でもしながら、徐々に国の事を聞いてみるとしようか。

 なんて、王様に対して軽く考えている俺も……どうなんだろうな。


 ――――


 師匠とリリシアが、王様? と出て行ってしまった後。

 何とも気まずい空気に……なると予想していたのだが。


 「ねぇ本当に大丈夫!? あんなに大きな矢が刺さったのよ!? 見せて!」


 「んー? ――」


 イリーゼ王女とスーが、早くもくっ付いてお話を始め。


 「ちょっと姫様、ココには男も居るんですからね? 服を脱がすんじゃなくて、袖を捲るくらいにしてあげて下さい。スーちゃん、で良いんすよね? すんません、腕失礼しますねー」


 「こらタウラ。いくら女児とは言え、男の我々が気安く女性の肌に触れるべきではない。すみませんスー様、ウチの馬鹿な弟が……あっ、シャーム様もこちらへどうぞ。すぐにお茶の準備を致しますね」


 護衛二人は、既に打ち解けた様子で会話に混ざり和気あいあいとしている。

 そして、残るもう一人はと言えば。


 「その……シャームさん、で良いんですよね。よ、よかったらその、お茶でもしながら少しお話でも」


 「えぇと、構わないが……じゃなっか。喜んで、お供いたします」


 これで良いのだろうか?

 未だに固い会話に慣れず、思わず首を傾げながら言葉を紡いでしまった訳だが。

 あと、王子の口調が何か変だ。


 「あのっ、ほんといつも通り喋って貰えれば大丈夫なんで! どうぞどうぞ、座ってください!」


 先程の勢いが凄かった彼は何処へ行ったのか。

 結婚だ何だと騒いでいた筈のその人が、今では慌てた様にあちこち動き回り私とテーブルを囲もうとしていた。

 これは……本当にどうすれば良いのだろう?


 「あの、御趣味は?」


 対面に座った王子が、何か急に言い始めた。

 どう答えようかと一瞬悩んでしまったが、相手もいつも通りで良いと言ったのだ。

 なら、普通に答えれば良いか。


 「戦う事、強くなる事。最近では狩りだな、あと武器の手入れは好きだ」


 「だよなっ! 分かる!」


 急にガタッと立ち上がり、グッと握り拳を上げた王子。

 が、数秒停止した後いそいそと自分の椅子へと戻って行った。


 「あの、王子? 私はあまり良い育ちではないので、そちらも普段通りに接してもらった方が助かるのだが……余所余所しい態度を取られると、私も反応に困る」


 「ま、マジで? こういう態度は女の人から嫌われるって、ものすげぇ怒られるんだけど……」


 「いや、私としては先程の口調の方が喋りやすいし馴染みやすい」


 「だったらシャームって呼んで良いか!? 俺の事も王子とか呼ばなくて良いから、名前で呼んでくれよ! 仲良い奴はライルって呼ぶんだ!」


 「えぇと、はぁ。まぁ、であればそうしようか」


 何やら気を遣っていたらしい王子は、普段通り? の口調に戻った瞬間元気な様子を取り戻した。

 コレが王族かぁ、と思ったりしたが。

 私としては、此方の方が接しやすいのは確かだ。


 「それでそれで、シャームは恋仲の相手は居るのか?」


 「いない」


 「よしっ! 脈あり!」


 「それは無い」


 「駄目か! どんな男が好きなんだ!?」


 「特に考えた事は無いな。しかし師匠の様に強い男は素敵だと、純粋に思う。ただ強いだけでは無く、慈愛に満ちている。彼の背中を見て、私の人生を考えさせられる事も多い」


 「強くて優しい男だな!? よしっ、俺はこれから世界で一番強くて優しい男になるぜ!」


 「凄いな」


 「凄いだろう!」


 「あぁ、勢いが凄い」


 コレは、会話なのだろうか?

 完全に相手のペースに合わせて質疑応答を繰り返している様な気分なのだが。

 まぁ先程の居心地の悪い空気では無く、まるで元気な男の子を相手している様で気は楽だが。

 なんて事を考えていれば、護衛の一人。

 落ち着いた方の人が我々の前にお茶を準備し始めた。


 「お酒の方がよろしければ、お持ちしますが」


 「あぁいや、お茶で大丈夫だ。スーの護衛を任されている時に酔う訳にはいかない」


 微笑みを絶やさぬ護衛の人と、そんな言葉を交わした瞬間。

 目の前の王子は口を尖らせてブーブーと言い始める。

 思い切り声に出して、ブーブーと。


 「シャームもやっぱり、ガウムみたいな男の方が良いのか? キッチリしてて、女受け良さそうな顔で、気配り上手。男の俺からしても、確かに良い男だと賞賛しちまうくらい出来る護衛だがよぉ」


 まるで不貞腐れた少年かと言いたくなる様子の王子。

 しかしながら護衛の方も慣れているのか、クスクスと笑いながら。


 「こう見えて王子は結構お優しい方なんですよ? 有事の際には一番に飛びこんで行って民を守り、街中にフラッと遊びに行っては皆様のお手伝いをする。何度も言いますが、こう見えて良い子です。年齢に対して、少々思考と行動が幼い気がしますがね?」


 「うっせーなぁ……これでも十九だぞ?」


 「え、十九なのか? 体つきや顔立ちから、私と同じくらいか年上なのかと思っていた」


 驚いた、年下だったとは。

 確かに行動と言動はヤンチャな雰囲気が残るが、肉体は随分と鍛え上げられている。

 一見細身に見えるが、見えている範疇の肉体では無駄な贅肉が無い。

 そして何より部屋に入って来た時の動作や、スーに飛びつこうとするイリーゼ王女を受けとめた時など。

 随分と綺麗な動きをしていた様に感じたのだ。

 二十代になる前にこの身体能力を有しているのなら、かなりの努力の賜物と言って良いと思うのだが。


 「シャームはいくつなんだ? 俺とそんなに変わんなそうに見えるけど、落ち付いてるよな」


 「王子……女性に年齢を訪ねるのは……」


 「正確には分からないが、多分二十歳を越えて少しくらいだ。ギルドには今二十一と登録されている」


 「普通に答えちゃうんだぁ……」


 何か不味かっただろうか? 護衛の人が額を抑えながら天を仰いでいるが。

 しかし王子の方は嬉しかったらしく、目をキラキラさせながら顔を寄せて来るではないか。


 「歳近いじゃん、やったぜ! なぁなぁ、もっとシャームの事聞かせてくれよ! あ、そうだ模擬戦しねぇ!? 模擬戦! やっぱお互いを知るには戦うのが一番だろ!」


 物凄く脳筋な発言が飛び出して来た。

 だが、私としてはそれも分かりやすいと思ってしまう。

 此方の国の王子の実力が知れる、良い機会とも言えるだろう。

 が、ふと思い立った。


 「なぁ王子、その勝負受けても良い。しかし私が勝ったら、何でも質問に答えてくれるという条件を付けさせてくれないか?」


 「良いぞ!」


 「私は腹芸が得意では無いから素直に言っておこう。私達はアーラム王国の依頼で、此方の国を調べに来た。向こうの国に、此方の国から暗殺者が送られて来たからだ。此方で何が起きているのか、何を考えているのかが知りたい」


 「そんな奴が居たのか! 俺がぶっ飛ばしてやる! そんでもって、そう言うのは父上の領分だからな。ちゃんと聞いておいてやる!」


 なにやら、上手く行ったらしい。

 よし、これで私も役に立てる時が来た。

 なんてフンスッ! とやる気を漲らせていれば。


 「あのですねぇ……そういうのは国際問題になりますから、しっかりと手順を踏みましょうねぇ。あと試合は結構ですが、こちらのお嬢様方も連れて行かないと目を離す事になってしまいますから。やる気満々のお二人はしばらくお茶しててくださいね……」


 頭を抑えて左右に首を振る護衛の発言によって、私達は今の状況を思い出しスー達に視線を向けてみた訳だが。


 「お兄様達が勝負するんですって! 行きましょうスー、きっとド派手になりますわよ!」


 「んー? ん!」


 「ちょっとちょっと! これから治癒術師とか来ますから、まだあんまり動かないで下さいよお二人さん!」


 軽い方の護衛が慌てた口調で声を上げたが、チビっ子達はお構いなしの御様子で。

 スーはベッドから飛び降り、ビルを抱いてムムを頭に乗せ。

 イリーゼ王女は両手に小動物、グリフォンと兎を抱いてワクワクした様子で此方に駆けつけて来た。

 何というか、妹が二人になった気分だ。


 「「和む……」」


 「案外お二人は御似合いなのかもしれませんね、もう勝手にして下さい……」


 そんな訳で、私達はお茶をご馳走になってから早速勝負の場所へと向かった。

 相手はこの国の王子。

 昔から良い食事を摂り、戦い方を習って来た様な相手だ。

 コレで怠慢な態度を取っていたり、強欲な王族だったのなら話は別だが。

 彼の肉体を見る限り、それはあり得ない筈。

 だったら油断など出来るはずがない。

 此方も本気で挑む事を決意し、ゴキゴキと体を鳴らしていれば。


 「シャーム、本気で来てくれよ? 王族だからとか、年下だからとか無しな?」


 「もちろん、私は戦闘で手を抜く事は無い。怪我をしても問題にしてくれるなよ? あぁそれと、女だからといって手心を加えようとすればどうなるか分からないぞ?」


 「本当にシャームは最高の女だな! 絶対俺が勝つからな!」


 二人してそんな事を言い合いながら、護衛と幼子二人を連れて。

 我々は修練場へと足を運ぶのであった。

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