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ひ弱な辺境伯令嬢は龍騎士になりたい  ~だから精霊巫女にはなりません~  作者: のもも
第2章 ちょっと丈夫になった辺境伯令嬢のやりたい事とやるべき事

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95、薬草とお薬

 ルージュが薬草を見たいと言って、薬草見学のつもりで一緒に行ったけど、薬草採取とお薬作りをさせられ、屋敷に戻ったらお昼を過ぎていた。


 持って帰って来たのは3種類の薬草とお薬入りの小瓶。

 ジルベールさんとコレットさんとアンの3人はルニエヴェルトとポリポーの小瓶を1本ずつもらったから、残りが各7本で合わせて14本。

 フレアロスはユーゴが受け取った1本を除いて9本。

 お薬入りの小瓶は合計23本。


 薬草のルニエヴェルトは、ルージュがアンたちのために3本抜いて渡してくれたはずなのに、なぜかルージュの手にもう1本あった。

 いつの間に抜いたのだろう・・・まったく全く気付かなかったよ。


 アンたちはそれぞれ5本ずつ抜いたから、ルージュの抜いた分を合わせて19本。

 1本使っているから、残りの18本を持ち帰って来たの。

 フロアレスは3人で1本ずつ切ったから3本ある。

 1本はルージュが葉を1枚ちぎって、アンが5枚切っただけだから、まだまだたくさん薬が作れそうだ。

 ポリポーもまるまる1個残っている。

 1個で小瓶10本分の上級薬が作れた。


 この残ったたくさんの薬草はどうすればいいのかな?

 全部お薬にしてくれれば問題なかったのに「今日はもう満足したわ」と言って、肝心のルージュは温室のカメリアの木に戻ってしまった。

 もしかして疲れたのだろうか?

 アンたちも凄く疲れているよ。

 ジルベールさんとコレットさんも、疲れたからと言って申し訳なさそうに帰って行った。

 お茶くらい飲んで行ってもよかったのにね。

 ルージュに気疲れしたせいもあると思うけど、魔力もかなり使っていたから無理に引き留めることはしなかった。

 ・・・アンも早く休みたい。



 ・・・気がついたらベッドの中だった。 


 薬草とお薬入りの小瓶をお父様に届けるように頼んで、報告もユーゴに丸投げした。

 それからふらふらしながら湯あみをして、着替え終わると倒れるようにソファーのところまで行った事は思い出いだせた。

 でもその後の記憶がないから、ソファーに腰かけたとたんに眠ったのだと思う。

 誰がベッドまで運んでくれたのだろう?

 窓越しに空を見れば、所々オランジュ色になっていた・・・もう夕方だったよ。

 疲れが完全に取れていないのか、まだぼんやりとしている・・・夕食は部屋で摂ろうかな?


 ソフィに部屋で食事を摂りたいと伝えたら「わかりました・・・食事を済ませたらアレクサンドル様の執務室に行くように言付かっています」と言われてしまった。

 そうだよね・・・お薬入りの小瓶の報告はユーゴに頼んだとはいえ、アンやジルベールさんとコレットさんも操作しているから、本人の口からも聞きたいよね。

 ・・・直接ルージュに聞いてくれればいいのに。

 今日はもうルージュがカメリアの木から出てこないとわかっているから、アンが呼ばれたのだと思う。

 食事を済ませてから、ため息を一つ吐いて執務室に向った。


 執務室に行くとお父様の机に、お薬入りの小瓶が3本とポリポーのキノコが並んでいた。

 机の横の木箱から、ルニエヴェルトが突き出していて、フレアロスの上部も見えていた。

 アンが切ったフロアロスなら、下の方に葉を取った跡があるはず。

 小瓶が3本並ぶと色の違いがよくわかる。

 ルニエヴェルトは黄色っぽい液体で、痛み止め。

 ほんのり黄緑色掛かった液体はフレアロスで熱を下げる

 透明の液体は、大怪我をした時に使う上級薬のポリポー。

 手足の指ぐらいなら生えるかもしれないとルージュが言っていた。

 薬草を見に行くと言って出かけたのに、お薬が出来上がっているのだから、お父様の眉間にしわが見えるのは致し方ないような気がする。

 よくよく思い出したら、ルージュは久しぶりにお薬を作りたいと言っていたような気がしないでもない。


「お待たせしました、お父様」


「体調はどうだ?」


「疲れて眠っていただけです。もう元気になりました」


「・・・そうか。なぜ呼ばれたかわかるな?」


「はい・・・お薬があるからです」


 お父様の眉間のしわが深くなったよ。


「・・・ルージュがみんなの前で作ったと聞いている」


「薬草を見て、抜いて、刻んで、クルクルして、フンヌッ!ダンッ!で、出来ていました」


「・・・あ、ああ・・・そ、そうだな。聞くと簡単にできたように感じるが、魔力もかなり使っていたと聞いているが?」


「ルージュが使った魔力量がどのくらいかは分かりませんが、すぐに出来ていました・・・でもフンヌッ!ダンッ!は誰にでも出来るとは思えないです」


 薬草作りに挑戦したら、いつか出来るようになるかな?

 ・・・フンヌッ!はやらないけど、ダンッはちょっとやってみたい。


「そ、そうか・・・フンヌとダ・・・いや、とにかく薬は、一旦鑑定に出さなければならない。ルージュが作った薬の効能に間違いはないと思うが、人が口にする薬は必ず確認がいる。ジルベール君とコレット嬢には薬を一旦戻してもらった。もちろんユーゴの分も。鑑定が終われば返すと伝えてある」


「アンの分も後で持ってきますね」


「バスチアンに渡しておいてくれ。エミール殿に鑑定の連絡をしたら、明日、屋敷に来ると返事が来た。薬草もこのまま渡す予定だ」


「あの、ポリポーは上級薬と言っていましたが、今までそのようなお薬はあったのですか?」


「上級薬と言われるものはあるが、指は生えたりはしない。昔はそういう薬もあったのかもしれないが・・・いずれにせよ鑑定すれば答えが出るだろう。それとポリポーの木はかなり前に消滅したと言われていた。北の領地で採れたと聞いて驚いたぞ」


「魔力が増えると生えてくるようです。ポリポーの木が育っていなければ、ジルベールさんに光魔法で育てさせるつもりだったと、ルージュが言っていました。ポリポーの木があると知っていたように感じました。眠っていた種が地に魔力が満たされたことで成長したのかもしれません」


「・・・魔力か」


「・・・種や苗がないと光魔法があっても育てることはできないです」


「そうだな・・・ルージュは上級精霊の中でも、特に古い精霊のようだから、我々には到底及ばない力があるのだと思う。良い薬草が屋敷裏の近くで採れるのなら、エミール殿の関係者が採取をしてもいいと考えている」


「・・・フンヌッとダンも出来ればいいのですね」


「圧縮はどの程度の魔力でできるのか確認をしたいところだ・・・先ずは明日の午後、エミール殿が来てからの話だな。アンも同席しなさい。詳しい説明があった方がいいだろう。ルージュがその場にいれば一番いいのだが・・・」


「そうですね」


 お父様はルージュの作ったお薬に戸惑っているようだった。

 品質の高いお薬が出来たことは良かったと思うけど、今度はエミール様が忙しくなるような気がする。


「今後は何を言い出し、何を作り始めるのか、ルージュの事はその都度詳しく報告するようしなさい」


「・・・はい」


 ルージュは思い付きで動いているのか、いずれ東の領地に行くから北の領地で出来ることを教えようとしているのかはわからない。

 言葉はちょっと命令的だけど、ジルベールさんとコレットさんが頑張ったら誉めていた。

 ちゃんとご褒美もくれる・・・しかもユーゴの分まで。

 ちょっとだけ気遣いのできる精霊かもしれない。

 そんなことを思いながら執務室を後にした。




 昨日の疲れが取れてないのか、朝起きるのが少し辛かった。

 腕もだるい。

 ルニエヴェルを引き抜こうと力を使ったからだよね・・・結局一人で抜くことはできなかったけど。

 フレアロスの茎をギザギザしたナイフでギコギコ切るのも握力と腕力が必要だったし、ポリポーを育てるための魔力と風魔法で切る作業も魔力を使った。

 薬草採取とお薬作りは肉体労働だよね。

 そう言えば、ルージュに液体を小瓶に入れる操作をしなさいと言われていたよ・・・。

 魔力訓練にはなると思うけど、難しそうだ。

 しばらくは操作の訓練に時間が取られそう・・・。


 今日は午後から屋敷にエミール様がやって来る。

 会うのはお店のプレオープン以来かもしれない。

 ガスパール様とエステル夫人は元気かな?

 プレオープンの後、ココル馬車を披露するために屋敷に来てくれたけど、エステル夫人はやりたいことがたくさんありそうだった。

 今は趣味や仕事にと忙しくいるような気がする。


 車いすや歩行器は救護院を始め貴族の間で使用が増え、特に庶民はリースで借りられるから金銭的負担が軽減されて、借りる頻度が上がっていると聞いていた。

 ココル馬車も貴族間で噂が広まり、各領地の車いすを利用している貴族が購入しているらしい。

 王都に支店を作って販売経路を広げる計画もあるようだ。


 いろいろと思い出していたら「エミール様がいらっしゃいました。サロンにご案内しております」と、バスチアンが知らせてくれた。

 ・・・サロンに?応接室ではなく?

 もしかして、ルージュに出てきてほしいと思っているのかな?


 サロンに行くと、エミール様とお父様は薬草のお話をしているようだった。

 机の上にはお薬入りの小瓶が3本の他に小瓶と容器が1個ずつ置いてあった。

 カメリアの種から作った、髪とお肌がつやつやになる高級液体と高級クリームだよね。

 ソファーの横の大きな木箱から、ルニエヴェルトが半分以上飛び出していて、フレアロスは上の部分がはみ出していた。ポリポーは見えなかったから、箱の中に納まっているのかもしれない。


「お話し中に失礼します・・・こんにちは、エミール様」


「アンジェル様、こんにちは。薬草の鑑定依頼と聞いて伺いましたが、貴重なものがいくつもあって驚きました」


「そ、そうですよね・・・あの、ガスパール様とエステル夫人はお元気ですか?」


「両親は元気過ぎて、外出ばかりしていますから、ゆっくりと話をする時間もないのです。私が仕事でしばらく留守にしていても気にならないようで、やっと屋敷に帰って来たというのに、今日も用事があると言って二人で出かけてしまうのです。私の存在はすっかり薄くなっているようです・・・ハハハ」


「そ、そうでしたか・・・お元気でなによりです」


 エミール様の乾いた笑いがちょっと気になったけど、お二人が元気に外出しているなら、心配はなさそうだね。


「隣に座りなさい」とお父様がおっしゃった。

 言われるままお父様の隣に座ると、お父様はルニエヴェルトの葉を持って、再びエミール様と話し始めた。


「先ほどの話だが、今は東の領地でしか薬草の買い付けが出来ないと言うことだったな」


「他の領地では品質の高い薬草が採れないのです・・・しかし、更に品質の高そうな薬草が北の領地で採れた事に驚きました」


 東の領地でしかいい薬草は採れなかったの?知らなかったよ。


「アンジェルたちが上級精霊のルージュの指示で、北側の山の麓で抜いてきたものだ」


 ルニエヴェルトはアン以外のみんなが抜いたのだけどね。


「・・・拝見したところ、ルニエヴェルトとフレアロスは実に品質が良いです。ポリポーのキノコは、現在採取することができない幻の薬草なのです。それが北の領地で採れたと聞いて・・・これは大発見です。しかもポリポーの木があれば光魔法でキノコが育つとは・・・前代未聞です。古書にも記載されていなかったはずです」


 エミール様の目がキラキラして、ちょっと前のめりになっているよ。

 それほど貴重なものだったの?

 ルージュ、エミール様が、大発見で前代未聞と言っているよ。

 早く出てこないかな?


「上級精霊のルージュが土地の魔力が増えているからだと言っていました」


 ルージュだけが知っていた事なのだろうか?


「魔力が満ちると育つ薬草・・・もしかしたら、北の領地には様々な薬草があるのかもしれません。先ずは薬師のもとで、この小瓶と薬草の鑑定をさせていただきます」


「よろしく頼む。ただ、ルニエヴェルトとポリポーの小瓶3本とフレアロス1本は鑑定後に戻してほしい。ルージュが子ども達と護衛に直接渡してしまったものだから、後で返すと伝えてある」


「鑑定の結果が出ましたらお返しいたします。大変恐縮ですが、この薬草で薬を作って見たいのですが、薬草を買い取らせていただくことは可能でしょうか?」


「子どもたちが勉強がてら抜いてきたものだから問題はないが、ポリポーの価格がわからぬ。今後の薬作りに役立つのだから、無償で提供する。いずれ騎士団や北の民に何かあった時に、より良い薬を提供してくれればいい。それと残りの小瓶の薬も問題なければ、王族に最低でも1本、ポリポーの薬を献上することになるだろう。残りは救護院で役立ててくれて構わない」


「ありがとうございます。なんとお礼を申し上げていいか分かりません。これからはより良質の薬草が手に入り、薬作りがうまくいけば薬の品質が数段上がります。薬師に作らせる予定ですが、上級精霊様はどのようにして薬を作ったのか、参考までに教えていただく事は可能でしょうか?」


「アンジェル、説明できるか?」


「はい。ルニエヴェルトは根と茎と葉を丸ごと1本刻んで・・・あっ、丸まった葉は入れないと言っていました。ネバネバして苦いそうです。後は水魔法でお水を入れて風魔法でクルクルしてフンヌッ!ダンッ!を2回。すぐに魔法で液体だけ抜き取っていました。フレアロスは、葉を5枚取って小さく切ります。水魔法でお水を入れてクルクルしてフンヌッ!ダンッ!を2回、ポリポーは刻んでお水を入れた後、クルクルですが、ルニエヴェルトより回すのが多かったです。そしてフンヌッ!ダンッ!も4回でした」


「えーと・・・フンヌッとダンッとは?なんでしょうか?」


「ルージュの掛け声と圧縮魔法です」


「そ、そうですか・・・掛け声と圧縮?・・・圧縮をしたのですか?」


「圧縮です。薬は圧縮をしないのですか?」


「圧縮ではなく、絞っています。それにえぐみや臭みが若干あるせいか、この小瓶に入っているような透明度はなく、濁っています・・・恐らく薬草の品質と、液体の取り出し方の違いかもしれません」


「昔の製法だと思います。ルージュは初代王フェリクスに頼まれて作ったと言っていましたから」


「初代王?そんな昔の製法で・・・?」


 エミール様は敬語も忘れて、腰を浮かせてアンの方は見たよ。

 ・・・ちょっと驚いてのけぞりそうになった。


「誰もが多くの魔力を持っていた時代だ。魔力で作ることが可能だったのではないか?」


 エミール様はお父様の声でハッとして、慌ててソファーに腰かけていた。


「し、失礼いたしました・・・昔の製法で作られているのでしたら凄いことです。アレクサンドル様、申し訳ございませんが、直ぐに薬師のもとに行きたいと思います。鑑定結果が出ましたら、改めて伺わせていただきます・・・今回は上級精霊様にお会いできなかったのは残念ですが・・・失礼させていただきます」


「そうか・・・結果を待つとしよう」


 普段冷静なエミール様が、少し上気した顔で薬草の入った木箱を抱えて、急ぎ足で帰って行った。

 もう少し待っていたら、ルージュにも会えたのかもしれないのに・・・いいのかな?




 秋の1の月に入りエタンが描く冬のメニュはかなり進んでいるようだった。

 順調に行けば、今月の半ばころには絵が完成すると言っていた。

 まだ生ハムが出来ていないから、生ハムのタルティーヌだけは書くことが出来ない。

 秋の3の月の初めまでに出来なければ冬のメニュには入れないことにした。


 エタンの絵を見ていてふと思ったの。

 折角屋敷にルージュがいるのだから、ルージュの絵も描いて屋敷で飾ったらどうだろう?

 ローズ・ルージュティーを入れているところとか・・・フンヌッ!ダンッ!をしているところも面白いと思う。

 本当は羽をピコピコ動かしているところを描いてほしいと思ったけど、それだと背中だけになっちゃうから、ルージュに嫌がられそうだ。

 お父様に相談してみようかな?


 明後日は久しぶりに、ジルベールさんとコレットさんと3人でお勉強会をする予定だ。

 今回からルージュがやっていた、操作を訓練するのはどうだろうか?

 圧縮や薬草から液体を抜き取ったり、小瓶に入れたりするのは難しいけど、どこかで役に立つかもしれない。

 フンヌッ!とダンッ!はカメリアの種でも使うからやっぱり必要だよね。

 薬草はエミール様に全部持たせてしまったから、当日山の麓に行ってルニエヴェルトとフレアロスを採取しようと思う。

 ポリポーはやめておこう。

 上ばかり見ていたから、どんな木だったか思い出せない。もし見つかったとしても光魔法でどこまで育てていいのかもわからない。

 初心者はルニエヴェルトとフレアロスからだよね。

 お父様の許可をもらったら、ジルベールさんとコレットさんに手紙で知らせよう。


 バスチアンを通して確認してもらったら「薬草採取は許可を出せない」と、お父様がおっしゃったらしい。

 貴重な薬草を素人が採って荒らしてしまう可能性がある事と、お薬作りは素人が作ると鑑定や届け出などが面倒だからだって。

 ルージュがいればまだよかったのかもしれないけど、薬草の知識がない護衛と子どもだけで行くのは駄目だと言うことだよね。

 結局、エミール様からの鑑定結果が出るまでは動けないようだ。


 ジルベールさんとコレットさんにその旨を手紙で知らせたら、ジルベールさんからは「個人的に薬草の勉強をしたいから、今回のお勉強会はお休みさせてください」と返事が来た。

 コレットさんも「薬草について調べたいから、試験の日にまた会いましょう」と同じような返事だったよ。

 ジルベールさんとコレットさんは薬草に興味を持ったらしい

 二人とも圧縮や液体移動の操作も頑張ると言っていた。

 操作するためには、薬草がいる。

 薬草を採るためには、薬草の知識がいる・・・だから、調べて勉強すると言うことだよね。

 アンも少しは学んだ方がいいのかな?・・・でも今はパン作りの方が大事だと思ってしまう。

 ジルベールさんとコレットさんへの薬草の指導は、ルージュに任せよう。


 勉強会と言っても、学院の学科はジルベールさんとコレットさんも満点だから実技しかすることがない。

 魔力量を増やすか、制御を高めるか・・・もしくはコレットさんのように風刃牧草ロールか風刃ポリポー切りをするとか?

 ルージュが使っていたフンヌッ!とダンッ!や液体移動なら評価は上がるかもしれない。

 そのためにはやはり薬草がいるよね。

 あっ、薬草ではなくカメリアの種でもいいかも。

 カメリアの種をたくさん作って、種をダンッ!すればいいよね。

 カメリアの木から種を取ってもいいかな?

 これはルージュの許可がいるかも・・・ルージュの頭の花を、また種にしたら凄く叱られそうだよ。



 エミール様に鑑定依頼をしてから明日で2週間になるけど、まだ連絡はない。

 カジミールたちからも、安価なパンの事は何も言ってこない。

 どちらの答えもないまま学院の試験日になってしまった。


 いつもと同じ時間に教室へ行ったのに、ジルベールさんとコレットさんは既に教室に来ていた。


「ジルベールさん、コレットさん、おはよう」


「おはようございます」


「おはよう、今日は私たちの方が早かったわね」


「早く来てお勉強?」


「学院の試験勉強じゃなくて、薬草のお勉強よ」


「僕も同じです」


「二人とも薬草に興味をもったの?」


「僕は光魔法で育つ薬草があると知りましたから、同じように他の薬草も育てられるか調べていました。もしそんな薬草が他にもあるなら、光魔法が役に立つと思ったのです」


「私は風魔法を極めたいの。薬草の圧縮に液体移動。もし出来るようになったら凄いと思うの・・・憧れるわ。その憧れの操作が出来るようになりたいの。目標を見つけたのよ。もうルージュ様には感謝だわ」


「僕もルージュ様に感謝しました。光魔法の使う方法が広がったのですから。治癒魔法を扱える人材はとても貴重です。怪我をした患者は治癒魔法を受けるために、救護院や教会に出向かなければなりません。そして治療する人より治療を受ける人の方が多いと聞いていますし、1日に治療できる人数は決まっているらしいです。もし薬がたくさんあったら、治癒魔法だけに頼らなくてもより多くの人が、治療できると考えました」


「そこにすぐ気が付いた、ジルベールさんとコレットさんは凄いよ」


 二人ともやりたいことを見つけたみたい。

 アンは光魔法が人のためになるとわかっていても、まだそこまで興味を持っていなかったよ。

 今は目の前の事で精一杯だもの。

 治癒魔法やお薬で、人のために何かをする余裕がない・・・ちょっと罪悪感を覚えたけど、もう少し時間が欲しい。

 なんとなく後ろめたい気持ちでいたら始業の鐘がなり、メルセンヌ先生が試験の用紙の束を抱えて入って来た。

 またお昼休みに考えよう・・・。



 学科の試験を早々に終えてメルセンヌ先生のところに持っていくと、100点と書かれていた前回の答案用紙を渡された。


「今回も学科実技とも満点ですから、もう不動の1位ですね」


「次も満点が取れるように、頑張ります」


 メルセンヌ先生がさり気なく圧をかけてきた。

 毎回ドキドキしながら受け取る採点結果に、ホッとしながら教室を出た。


 図書室で二人を待つ間、パンの事を考えていた。

 薬草も大切だけど、今はアンの優先順位はパンだよ。

 学院のパンをどうやったら安くできるだろう。

 カジミールたちも悩んでいると思う。

 パン屋さんと被らない安いパンと言っても、マシロパンやお惣菜パンを安く販売すれば、街のパン屋さんの売り上げが減る。

 今ブーランジェリー・マシロ店で販売している値段だと、買えない学生の方が多い・・・つまり売れないと言うことだよね。

 パンでは駄目なのだろうか?でもお店で販売されていないパスタを使うことはできない。


 ・・・あきらめるしかないのだろうか?


 お父様は「街のパン屋の妨げにならず、もっと価格も下げられるような工夫が出来ないかカジミールに相談してみるのはどうだ?」と言っていた。

 あっ、そっか・・・。

 お父様は「街のパン屋の妨げにならずに」とおっしゃったけど、安いパンを売れとは一言も言葉にしていない。

 パンにこだわらす、違うものを売ってもいいと言うこと?

 同じ小麦を使うならドーナツはどうだろう?

 材料が少ないから値段は下げられると思う・・・でも、食事と言うよりはおやつになってしまう。

 ピザは?

 上に乗せる具材とソースなどを考えると安くは出来ない。


「うーん」


「アンジェルさん・・・今度はどんな悩みですか?」


 思わず唸っていたら、ジルベールさんに聞かれてしまった・・・来ていたことに気が付かなかったよ。

 そう言えば前も、食堂で何を食べるか悩んでいたら心配していたよね。


「今度は学院の食堂で食べるパンの事で悩んでいたの」


「以前は当たり前に食べていたのですが・・・最近は僕の口が肥えたようです」


 ジルベールさんはブーランジェリー・マシロ店のパンを知ってからは、食堂のパンが硬くて食べにくいと言いたかったのだと思う。


「マシロパンに変わる安いパンが出来たらいいかなと思ったの。でも、お父様にパン屋さんの妨げにならないものなら、検討してくれるとおっしゃったけど・・・いい案が浮かばなくて」


「パンの妨げにならないパンですか?」


「うん・・・単に値段を下げるだけでは駄目だと思うの」


「難しいですね。違うものを食堂に導入しても、パン屋さんの売り上げは下がると思いますが・・・」


「そうだよね。お父様は料理人に相談しなさいとおっしゃったけど、無理だと最初から分かっていたのかも・・・またあとで考えてみる。心配してくれてありがとう」


「いえ、あまり役に立てず申し訳ないです」


「ううん、聞いてくれただけでも嬉しかった・・・ジルベールさんは薬草の勉強は進んでいる?」


「色々な種類の薬草を調べる事は出来きたのですが、光魔法で育つ薬草の記述が全くなくて・・・王都の図書館に行けばもっと詳しい本があるかもしれませんが、もしかしたら専門の機関でしか、調べられないのかもしれません」


「個人で薬草を採ってお薬を作ると、鑑定や届け出など手間がかかると聞いたから、詳しくは乗っていないのかも。それに薬草を扱っている人が、ポリポーのキノコが光魔法で育つと聞いたことがなく、古書にも記載がないって言っていたの」


「そうなのですか?・・・ルージュ様だけが知っていた事なのでしょうか?・・・そうなると薬草に関する勉強や薬の作り方は、ルージュ様から教わるしかないのですね」


「薬を作る練習を兼ねて薬草採取をしたかったけど、お父様から薬草採取をする許可が出なかったから、今は何も出来ないよね。ルージュの作ったお薬は鑑定に出されているのは知っているでしょう?」


「はい。鑑定が終わったら、頂いた薬は戻ると聞いています・・・でも手元にあっても簡単には使えない高級薬ですね」


「ポリポーは大怪我に使う薬だから、使う機会は少ないかも」


「僕たちより鉱山で働く人や馬車で峠を越えてくる商人のほうが、手元におきたい薬だと思います」


「山や峠では救護院を呼ぶことが難しいから、持っているだけでも安心薬になりそうだよね」


「お待たせしました・・・って、二人で難しい顔をしてどうしたの?」


「お疲れ様です、コレットさん。薬草の話をしていました」


「コレットさんも薬草のことを調べていたよね」


「そうなの。ジルベールさんはもうわかっていると思うけど、学院の図書室には薬草の種類の本はあったけど、育て方や扱い方の本はなかったの」


「学院では薬草の授業がないからでしょうか?・・・王都の学院は光魔法の授業もあると聞きましたから、図書室に本があるかもしれないと期待しているのですが」


「あるといいわね。そう言えば、王都に大神殿があるわ。そこには薬草関係の本がないのかしら?治癒も出来るのでしょう?薬の知識もありそうじゃない?」


「大神殿ではそう言った本を、誰でも閲覧させてくれるでしょうか?」


「うーん、わからないわ・・・早く王都に行って確かめたいわね」


「コレットさんは王都の学院に行く目標に、図書館や大神殿で調べものをすると言う目標が増えたね」


「あら、増えたわ・・・ジルベールさんも同じよね?」


「はい、凄く増えました。僕は王都の学院を卒業したら、龍騎士になってそれから東の大領地で薬草の勉強もしたいです。その後は各領地の精霊樹も回りたいです」


「ジルベールさんなら、簡単にこなしていきそうだわ」


「僕はいつも必死ですよ」


「そうなの?いつも落ち着ているから、余裕なのだと思っていたわ。私だけが必死なのだと思っていたの」


「王都の学院を目指す人はみんな必死だと思います」


「そうよね・・・でもアンジェルさんは別よね?」


「えっ?・・・私もいつも必死だよ」


「アンジェルさんが必死なのは学院の勉強以外だと思いますが?」


「・・・ジルベールさん。そんなことはないよ。毎回満点を取ることの重圧もあるし・・・」


「そうですよね・・・僕も重圧になりました」


「もしかして、遂に満点を勝ち取ったの。おめでとう」


「アンジェルさん、ありがとうございます。前回の試験でようやく実技も満点になりました。でも学年2位だそうです。月の試験結果が同点の場合は今までの累計で順位が決まるそうです」


「それでも満点だわ。ついにやったわね。おめでとう!」


「ありがとうございます。コレットさんもきっと取れるはずです。頑張りましょう」


「そうね。私も伸びたの。実技は198点よ。あと2点・・・頑張るわ」


「コレットさんも上がったね。みんなで重圧を押しのけよう」


「後から追いかけていくわよ、待っていてね」


「僕たち3人でこのまま上位を占めて王都の学院に行きましょう」


「うん、行こう。頑張るぞー、エイエイオー」


「エイエイオーって何でしょうか?」

「エ、エイエイ・・・オ?」


 拳も突き上げたらジルベールさんとコレットさんが不思議そうに首を傾げていた。

 司書さんに「コホン」と咳払いもされてしまったよ。

 茉白の国で、大昔に戦と言う戦争があって、士気を上げるための声だという記憶があったから、思わず言ってしまった。

 気を許したお友だちには、いつか茉白の事を話しておいたほうがいいだろうか?

 次回の更新は6月5日「96、学院のパン」の予定です。

どうぞよろしくお願いいたします。

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