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ひ弱な辺境伯令嬢は龍騎士になりたい  ~だから精霊巫女にはなりません~  作者: のもも
第2章 ちょっと丈夫になった辺境伯令嬢のやりたい事とやるべき事

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89、冬のメニュは前倒しで用意しよう

 シャル兄様が倒れた原因を聞いたのは、翌日の夕方だった。

 病気や怪我ではなく、龍に魔力を取られすぎたからだって・・・。

 シャル兄様を受け入れたのは元王族の龍で、魔力の少ない人には見向きもしなかったらしいの・・・その龍は身体も大きいらしい。

 もう150年以上も生きているから、そろそろ引退予定だと言われていた龍だって。

 シャル兄様がどうやって頑張ったのか、ちょっと気になったよ。

 お爺さん龍みたいだけど、魔力をたくさん必要とする龍ならまだまだ元気だよね?


 シャル兄様は魔力量が凄く増えている。

 このまま増え続けたら、成人前にはお父様の魔力量を超え、成人後は王族よりも魔力量が多くなるかもしれないと聞いていた。

 陛下も魔力量は多いけど、今王族で一番魔力が多いのはテオドール第三王子。次に多いのはロベール第一王子らしいの。

 ランメルト第二王子については、お父様が何もおっしゃらなかったから、魔力量がどの程度かは不明だ。


 龍が魔力を多く必要とするなら、アンももっと魔力を増やしておいた方がいいかもしれない。

 だってどんな龍に出会うかわからないもの。

 どれだけ取られても大丈夫なように、ガンガン増やさないとね。

 今度精霊樹に行ったら、果物などの実が木をたくさん育てようかな?

 野菜も育てようと思っていたけど、木を育てる方がたくさん魔力を使うから、木を種か幼木から育てた方がいいかも。

 鉱山道や山にも木があるから、そこも実がなる木だけ育てたいよね。

 地龍や小動物たちのご飯にもなって、一石二鳥だよ。

 これはお父様に相談してみよう。


 

 どら焼きを試食した翌日から、西側の畑で小豆を育てて収穫するという作業を何度も繰り返して、ノール本店と王都分を収穫した。

 屋敷の護衛たちにも、マロングラッセとどら焼きを渡すこともできたよ。


「黒い粒々を見た時は、驚きましたけど、品のいい甘さで美味しかったです」

「マロングラッセも今まで食べたことのない味でしたが、シャテニエの味に深みが増して美味しかったです」

「家族にも食べさせたいです」


 屋敷の護衛たちにも高評価だったよ。

 あんこを初めて見る人は驚くけど、食べたら美味しいとわかったみたい…理解してもらえて良かったよ。

 家族に関してはお店に行って食べてね。


 夏の3の月が終わるころ、カジミールとニコラが王都から戻って来た。

 その翌日には、どら焼きに押すローズの焼きごても届いた。



 今日からお店では秋のメニュが始まるけど、だんだんと風も冷たくなり、少しずつ寒くなっていく。

 北の領地では冬の1の月に入ると雪が降り始めるから、冬のメニュに使う果物などは、早めに用意した方がいいかもしれない。

 冬の新しいメニュを決めたら、食材の準備を始めよう。


「アン様、シャルル様から預かりました」


 考え事をしていたら、ユーゴが手紙を持って来た。

 早速封を開けて読んでみる。


「アンジェルへ


 明後日のジルベール君とコレット嬢との魔力訓練は、今回も休みとした。

 二人には連絡済みだ。


 急で済まない。明後日は時間が取れなかった


                     シャルル」


 元気で丈夫なシャル兄様が珍しく体調不良かと思ったら、忙しくて時間が取れないだけだった。

 それにしても、なんと簡素な手紙だろう。


「明後日の訓練を休むって書いてある・・・シャル兄様は忙しいらしいの。倒れてからそれほど日も経っていないけど、大丈夫かな?」


「シャルル様は丈夫ですから。倒れても翌々日には龍舎に行って、魔力と果物を渡したそうです」


「魔力も?魔力が枯渇しかけたって聞いたけど?」


 そんなに頑張れるほど、火龍が気にったのだろうか?・・・どんな龍かやはり見てみたい・・・龍舎にこっそり覗きに行ってもいいかな?


「私もそう聞いておりましたが・・・もの凄く早く回復したようです。倒れたシャルル様に一晩中付き添った侍従と護衛のアムールの方が疲れて見えまし、た・・・?」


 ユーゴが目を細めてアンを見ている・・・シャル兄様の事を案じているのだろうか?それとも同じ護衛としてアムールの心配をしているのかな?


「ユーゴも心配しているの?」


「心配?・・・どなたの心配をしていると?」


「同じ護衛のアムールとか・・・」


「アムールも大丈夫です・・・アン様は無茶をしないでくださいね」


「無茶?」


「龍舎にこっそり覗きに行こうとか、考えてはいないですよね」


 思わず目をそらしてしまった・・・なぜわかったのだろう?


「アンも二人に手紙を書かないと・・・」


「そうですか・・・では私はこれで」


「う、うん」


 よかった・・・部屋の外に行ったユーゴの視線からは逃れたけど・・・龍舎には当面いけないようだ。


 魔力訓練の時に、シャル兄様からジルベールさんへお礼の手紙と小豆のお菓子やパンを渡してもらうつもりだったけど、予定が狂ってしまった。


 ジルベールさんにお礼の手紙を書いたら、屋敷のものに届けてもらうしかないようだ。


「ソフィ、お願いがあるの」


「は、はい。何でしょうか?」


「これからジルベールさんに手紙を書くから、学院の寮に届けるように手配してほしいの。お豆を頂いたお礼をしたいから、どら焼きとアズキパンとお惣菜パンをすぐ作るように厨房に伝えて。夕方までに寮へ届けば夕食に間に合うと思うの。コレットさんにはどら焼きを2つ届けてあげて。ジルベールさんのところは4人分ね」


「わかりました。ジルベール様は4人分のパンとどら焼きで、コレット様はどら焼きだけ2つですね」


「うん。お惣菜パンは焼きそばパンと塩唐揚げパン、それにソーセージパンね。寮でも食事が出るから、2つずつで十分だと思うの」


「わかりました。では厨房に行ってきます」


 待っている間に二人へ手紙を書いた。


「ジルベールさんへ


 こんにちは。


 前回に引き続き、今回も魔法訓練が中止になったと聞いたよ。

 残念だけど、また次回、頑張ってね。


 先日はヒヨコ豆と小豆をありがとう。

 小豆は新しいメニュのきっかけになったの。

 感謝の気持ちを込めて、アズキパンと言うお菓子パンと焼きそばパンと塩唐揚げパン、ソーセージパンと言うお惣菜パンを届けます。夕食に食べてもらえたら嬉しいです。

 どら焼きと言う小豆を使ったお菓子も作りましたから、侍従や護衛と一緒に食べてね。


 どら焼きは、冬のメニュになる予定だよ。

 お惣菜パンとお菓子パンもこれから販売予定だから、こっそり食べてね。


    アンジェルより」



「コレットさんへ


 こんにちは。


 前回に引き続き、今回も魔法訓練が中止になったけど、また次回、頑張ってね。


 ジルベールさんにいただいた小豆で、どら焼きと言うお菓子を作ったの。

 少しだけど食べてね。

 冬のメニュになる予定だから、冬まで秘密だよ。


  アンジェルより」



 これでいいかな?コレットさんにはお裾分けだから、どら焼きだけだよ。

 出来上がったら、すぐに届けてもらおう。


 これで学院の試験の日まで、予定はなくなった。

 もしかしたら学院に行く前に、グー様にチョコを届けに行くかもしれないけど、お父様からまだ予定を伺っていない。

 ゆっくりと、冬のメニュについて考える時間が出来たよ。


 冬は身体を温めるものや風邪予防に、ビタミンCと言う栄養を取った方がいいらしい。

 茉白のおばあちゃんはこたつと言う足元が暖かい食卓で、生姜湯を飲んだり、みかんと言うオランジュに似た果物を食べたりしていた。

 茉白もホットレモンやハニージンジャーレモンを飲んでいたよね。

 冬の飲み物は身体の温まるものがいいから、これは採用したい。

 お店のメニュに載せる名前をどうしようかな・・・ハチミツジャンジャンブルスィトロン・・・長すぎるし、言いづらい・・・。

 ハニージンジャーレモン・・・茉白の世界の言葉をそのまま使った方がいいかも。

 あとはちょっと高いけど、チョコを溶かしてミルクを入れたホットチョコレートもいいよね。

 フレーバーティーはシナモンティー、スィトロンティー、オランジュティーにしよう。

 シフォンケーキやクレープもチョコレートやオランジュ、スィトロンを使ったものにしたらいいかも。


 明日の朝食後に東側の畑に行ってオランジュとスィトロンを育てよう。

 シフォンケーキやバターケーキを焼いてもらえば、その翌日には試食会もできるね。

 トマートのファシルとガレット・デ・ロアも、お父様の許可が出たら冬の新しいメニュになるよ。


「ソフィ、お願いがあるの」


「厨房に行けばよいですか?」


 おっ!今日は驚かないのかな?


「ソフィ、どうしてわかったの?すごいね!明日の午後から厨房に行こうと思っていたの」


「・・・お声が出ておりましたから」


「えっ?アン一人で話していたの?」


「は、はい・・・その独り言だと思いますが・・・明日は東側の畑に行って、あたりから・・・」


 また口に出していたらしい・・・気を付けないと。


「そ、そう・・・じゃお願いね。それとパン生地も用意するように伝えて」


「わかりました・・・ユーゴさんたちにも明日は午前が収穫で、午後は厨房、明後日の午後は試食会だと伝えてきます」


「うん、試食会の事はエタンとフォセットにも伝えてね」


「わかりました。では行ってきます」




 昨日立てた計画通り、今日は朝食を済ませてからすぐに庭に行った。

 ネージュに東側の畑へ行くと伝えたら「ピッ」と返事をしていた・・・今日は行くらしい。


 庭に行くとキリーが奥の方から走ってきた。


「キリー」


 手を振るとさらに加速して走って来たよ。


「グー、グッワワァ」


「ピピー!」


 いつものように名前を呼びあって挨拶をしていたけど、キリーは先にアンの名前を呼んでいた・・・律儀だね。

 キリーはアンとネージュを見て、飛行服ではないと理解したらしい。

 キリーの帽子がなくても悲しそうな顔をしなかったよ。


「グワッグッ」


 なのに、すぐに背中を向けて乗ってと言った。


「今日は馬車でいくの。キリーとネージュは先に行っている?」


「グワァ」


「ピッ」


 いつものように、先に畑に行くらしい。


「東の畑で待っていてね。今日はオランジュとスィトロンの収穫をするよ」


 キリーが頷くと、すぐにネージュと一緒に飛んで行ってしまった。

 飛行服を着てくればよかったと、ちょっと後悔したよ。

 最近、キリーに乗って飛んでいないなぁ・・・と思ったら、夏に精霊樹に行った時はキリーに乗ったけど、帰りの記憶がなかったことを思い出した。

 なんだか1回分損をしたような気がする・・・。

 ・・・いつでも自由に飛べたらいいのにね。


「アン様、我々も行きましょう」


「あっ、うん」


 ちょっとぼんやりしてしまったよ。


 今日は少しだけ収穫して、秋の2の月の終わりに王都のお店で使う分を収穫しようと思う。

 ノール本店の分は、雪が降らなければ秋の3の月の初めでいいはず。

 いつものように途中まで馬車で行き、途中から歩いて畑に行った。

 姫ポムの木の奥にシャテニエの木があり、さらにその奥にオランジュとスィトロンの木がある。今はシャテニエの木の方が大きくなっていた。


 ネージュとキリーはオランジュの木の近くで待っていたよ。

 この木がオランジュの木だとわかったのは、キリーだろうか?それともネージュ?

 ・・・ネージュはミュスカの事を知っていたから、オランジュの事とも知っていたのかもしれない。

 もしかして、アンみたいに誰かの記憶があるのだろうか・・・?

 いつか聞いたら、教えてくれるかな?


「アン様、始めましょう」


 ユーゴにまた催促されてしまったよ・・・午後も予定を入れているからぼんやりしている暇はなかった。


「すぐ育てるね」


 オランジュとスィトロンの木は一直線に2本ずつ並んでいる。

 内側の1本ずつに魔法をかける。

 どちらも花が咲いていて、所々青い小さな実もなっていた。

 実は熟すまで成長させ、収穫をしてもらう。


 試食会で食べるには多すぎるから、地下に保管してもらう予定なの。

 北の領地では冬の野菜や果物は地下で保存しているらしいけど、サラダで食べる葉っぱ類は、野菜専用の温室で少しだけ育てていると聞いたことがある。


 オランジュとスィトロンの種は後で使うから、取っておかないとね。

 ノール本店の裏庭にも数本ずつ植えたら、ノール本店で使う冬の分は確保できるけど・・・大きい温室を作ってもらったらいいかも。

 温室にオランジュとスィトロンの木を植えれば、冬の間でも収穫できるよね。

 来春から王都の学院に行くから、アンが魔法で育てなくても、時期が来たら収穫できるようにしておいた方がいいよね。

 王都店にも温室を作ってもらおうかな?

 王都の庭師のアランに頼んだら、オランジュとスィトロンの木を植えてくれるはず。

 バナーヌとカカオも植えたいけど、輸入品はさすがに苗や種は入手できないよね。

 外交問題になるから、バナーヌとカカオはあきらめて、温室の件だけ、お父様に相談しておこう。


 収穫をしたオランジュとスィトロンは、午後から使う分だけ木箱に詰めて馬車に積んでもらった。

 残りは、荷馬車で運ぶように手配してあるらしい。


 ネージュとキリーにオランジュとスィトロンを見せたら、キリーは首を横に振り、ネージュはオランジュだけを見て、「ピピイ」と言った。

 スィトロンは酸っぱいから、そのままではおやつにならないよね。

 ソフィにオランジュの外側の皮だけ剝いてもらって、ネージュに渡したら食べていた。

 キリーは首を横に振って嘴を開けない・・・やはり食べないらしい。

 キリーにも好き嫌いがあるのだろうか・・・?


「キリー、食べられるものがなくて、ごめんね」


「グワワァグ」


 大丈夫と言って飛んで行ってしまったよ。

 ネージュを置いて行ってしまったけど、ネージュは気にした様子もなく、ソフィにオランジュの皮を剝いてもらっては、次々と食べていた。


 収穫を終えたら食べてもいいと伝えていたから、ユーゴ達と屋敷の護衛は交代でオランジュを食べたていた。

 瑞々しくて程よい酸味と甘みが、疲れた身体に染み渡る・・・はず。

 アンは疲れるほど身体を動かしていないけど、美味しいと感じたもの。

 でもさすがにスィトロンは食べる人はいなかった・・・。


 そろそろ屋敷に帰ろうと思っていたら、キリーが戻って来た。

 何かをくわえている・・・何を持って来たのだろう?


「ググゥー」


「食べる・・・?何が入っているの?」


「ググゥー」


「キリーだけ何も食べてないものね。ちょっと待ってね」


 くわえていたのは袋だった。

 その袋の中には青い実が入っている。

 ・・・もしかしてポム?


 普通のポムなら、魔法をかけたらもっと大きくなって、重くなるよね?

 ユーゴに袋から出したポムを持ってもらい熟すまで魔法をかけた・・・大きくなって真っ赤になったポムはユーゴの顔より大きかったよ。

 すぐにソフィに切ってもらって、キリーの嘴の中に入れたら、シャリシャリと音を立てたあと、満足そうに飲み込んでいた。

 ネージュがじっと見ている。


「ネージュにも一切れあげてもいい?」


「グワ」


「いいって。良かったね、ネージュ」


 一切れと言っても大きいポムなので、渡すと抱えてシャリシャリと食べ始めた。


「ピッピィ」


「ググワァー」


 お互いに美味しいと言いあっていた。キリーが優しくてよかったよ。

 ・・・もしかして屋敷の北側にあるポムの木から、取って来たのかな?

 ポムは大きくなって重くなるから袋をかけると、ノル兄様に聞いていた。

 キリーは袋の中がポムだと知っていたことに驚いたけど、熟すまで魔法で育てられることもいつの間にか覚えたようだ。

 聖獣は食べものに関して、知恵が回るらしい。

 それにしても、青い実を勝手に持ってくるなんて・・・ネージュは学ばなくていいからね。


 屋敷に戻り軽く昼食を済ませて、厨房に向かった。

 今日もカジミールを筆頭に料理人が4人、明日の試食会はエタンを入れて11人になる。


「アンジェル様、今日もお待ちしておりました」


「少し早いけど冬限定のシフォンケーキとバターケーキとパンを作ってもらいたいの。冬のメニュは明日の夜にお父様と話し合うの。決まったら一覧表を渡すね」


「わかりました・・・昼前に、オランジュとスィトロンが届いておりましたが、それを使うのですね」


「うん、バターケーキはスィトロン味とオランジュにチョコ入りの2種類だけだよ。スィトロンのバターケーキは前に焼いてもらったから、今回はオランジュとチョコの味だけでいいよ。スィトロンと同じように上にシロップ漬けのオランジュの輪切りをのせてね。シフォンケーキはチョコのマーブル模様にしてほしいの」


「わかりました」


「ジャムやピューレもオランジュとスィトロンで作ってね。パンはオランジュとチョコにくるみを砕いて入れたほしいの」


「クルミ・・・ノワィエですね」


「うん、カジミールも覚えてくれたの?」


「はい、ブーランジェリー・マシロのパンの名前ですから」


「覚えてくれて嬉しい。パンはオレンジとチョコのパンと呼ぶの」


「オランジュはオレンジと言うのですね。似ているので覚えやすいです」


 カジミールがにっこり笑って答えてくれけど、ブーランジェリー・マシロのパンにまだ慣れていないロイクは、紙に必死に書いていた。

 冬のメニュはあまり変わったものはないから大丈夫だと思うよ。


 茉白の世界では、オレンジなどの柑橘系のジャムの事をマーマレードと言っていた。

 皮ごと使っている果物をマーマレードと呼ぶのかな・・・?

 よくわからないからどれもジャムと呼ぶことにしたよ。


「それと飲みものだけど、スィトロンを使ったホットレモンとハニージンジャーレモンの2種類も、明日飲もうと思うの」


「・・・ハ、ハニー、ジンジャー?」


 ロイクが首を傾げながらも必死で紙に書いている。


「材料の名前なの。ハチミツジャンジャンブルスィトロンだと、名前が長くて言いづらいでしょう?」


「そ、そうですね・・・ハニーがハチミツ・・・そして」


 呟きながらもまた紙に書いていた。


「シナモンティーも用意したほうがいいかな?今日は甘いものばかりだから・・・ユーゴはカフェアロンジェがいい?」


「いいえ!試食会では、全てしっかり飲食しますから、問題ないです」


 キリッ!と音が聞こえそうなくらいきっぱりと言い切っていた。

 全部飲食したいだけだと思うけど、絶対最後にカフェアロンジェを飲むと思うよ。


 今回は特に細かい説明はいらないから、後は料理人に任せればいいよね。

「新しい飲み物の作り方を確認したいです」と、言ったフォセットを厨房に残し、部屋に戻ってから、すぐに冬のメニュ一覧を書き上げた。

 お父様に確認しておくことも箇条書きにしたから、これで大丈夫かな?



 今日は午後から試食会だから、昼食は少なめにしてもらったの。

 厨房にはいかず、直接隣の部屋で待っているの。

 部屋の隣が厨房だから、柑橘系の香りが部屋まで漂っている・・・ツバが口のなかで溜まり、思わずゴクンと吞み込んでしまった。

 後ろでも、ゴクンと飲み込む音がした・・・護衛たちもつばを飲み込んだらしい。


「アンジェル様、こんにちは。試食会にまで呼んでいただき、ありがとうございます」


「こんにちは、エタン。味を知っていた方が、より美味しそうに描けると思うの。季節ごとの大切なメニュだから、今回もよろしくね」


「はい、期待に応えられるように、頑張ります」


 みんなが席に着くと、すぐにバターケーキとシフォンケーキがそれぞれ大皿に乗って運ばれてきた。

 ロイクが切りわけてくれている。アンの分は少し薄く切ってくれたようだ。

 今日の試食会はデザートだから、夕食が食べられるように気を遣ってくれたらしい。

 オランジュとチョコのバターケーキだけは普通の大きさで食べたかったけど・・・これも薄く切られてしまった・・・。

 またお父様たちと一緒に食べられるから、今日は我慢しよう。

 飲み物は、ホットレモンが先に来たよ。


 ホットレモンはスィトロンを2枚薄切りにして、いちょう切りという形に切って、残りは絞っているの。

 スィトロンの果肉とスィトロン汁それにハチミツとノールシュクレを入れて、お湯を注ぎ入れて完成だよ。


 みんなに行き渡ったのを確認して、いつもの号令をかける。


「試食会を始めるよ。オオォー」


「「「オオォー」」」


 今日はロイクとニコラとエタンの声が揃ったよ。


「いただきます」


「「「いただきます」」」


「「いただきます」」


 アンが食べる挨拶をすると、ロイクとニコラとエタンがまた声を揃えて言ってくれたよ。

 少し遅れてソフィとフォセットも言っていた。

 みんなの「いただきます」の声が嬉しくて、頬が緩みそうになりながらホットレモンを飲んだ。

 酸味と甘みが程よくて、飲みやすい。


 早速バターケーキを食べた。チョコレートの甘さとオレンジの微かな酸味がとても美味しい。

 これは凄く美味しい、満足してまたホットレモンを飲んだ。


「うっ、ス・・・スッパイ・・・」


 口を押えながら周りを見たら、ジュスタンとエタンとニコラがちょっと口をすぼめていた。

 ・・・酸っぱいよね。

 バターケーキにはシナモンティーの方がよかったかも。


「紅茶をお出ししますね」


 フォセットが立ち上がると、口元を手で押さえていたソフィも立ち上がり、紅茶を入れるのを手伝い始めた。

 ソフィも酸っぱかったのかな?

 どうやら組み合わせも大事だったようだ。


「アン様専用の、ミルクとノールシュクレがたっぷりと入った、シナモン控えめのシナモンティーです」


 ソフィが微笑みながらアンの前の置いてくれた白っぽいシナモンティーを飲んでみたら、甘くて美味しいけど、口の中のどこか遠くにシナモンがいるような感じだった。

 シナモンを控えすぎたのではないだろうか?・・・美味しいからいいけど。


 次はシフォンケーキを食べる。

 バターケーキほど、甘みが強くないから、ホットレモンでも大丈夫かもしれない。

 チョコのマーブル模様がおしゃれだよね。

 ハニージンジャーレモンをフォセットが用意してくれていた。


 ハニージンジャーレモンは、薄く切ったスィトロンと刻んだジャンジャンブルをハチミツに浸けておいて、お湯で割るだけなの。


「アンジェル様の分は、ジャンジャンブルは控えめにしたお湯割りです」


 これも控えめらしい。

 飲んでみると美味しい・・・美味しいけど、やはり口の中のどこか遠くでジャンジャンブルを感じたような気がした。

 ・・・早く大人と同じ飲み物が飲めるようになりたいと思ってしまったよ。


 ロイクが平たいパンを運んできた。

 オレンジとチョコとクルミのパンだね。

 アンのお皿には、半分に切ったパンが乗っているけど、みんなは1個ずつだった。

 食べてみると、パンの中に入っているオレンジの優しい酸味とチョコの甘さが口の中で広がる・・・美味しい。

 ノワィエの食感もいいね。

 ユーゴとマクサンスとジュスタンはパンを2つも追加している。

 チョコは結構甘いけど大丈夫かな?


 3人とも食べている途中で、カフェアロンジェを頼んでいた・・・パンなら大丈夫と思った思考こそが甘かったようだ。

 アンの予想通りだったね



 今日はお父様たちにも、昨日試食した冬のメニュを用意してもらった。

 お母様とシャル兄様は喜んでくれたけど、お父様は甘いからと言ってどれも一口しか食べなかったけど、それでも全部試食をしてくれた。


 無事にお父様とお母様の許可も出て、冬のメニュに決まったよ。

 飲み物は意外とシャル兄様が美味しいと言って何度も飲んでいたけど、スィトロンが好きなのだろうか?

 シャル兄様が何杯も飲んでくれたおかげなのか、今回試飲した飲み物も全て冬のメニュに決定した。


 ・・・あとは生ハムだよね。


「秋の3の月までに生ハムが届いたら、試食後、冬のメニュに入れたいと考えています」


「いいだろう」


「冬のメニュを一覧にしてきました。問題がなければコピーをして料理人とパトリック叔父様に渡します。ノル兄様には食材と一緒に送るつもりです」


「食材?」


「はい、オランジュとスィトロンです。王都分はこちらで育てて送ります、試食で使ったオランジュとスィトロンの種があるから、ノール本店分は種から育てて収穫する予定です」


「そ、そうか・・・」


「一度育てておけば、来年からは収穫するだけでいいと思いました。来春からアンは王都に行きますから、王都でも種を植えて育てたいと考えています。ノール本店と王都店に温室を作ってほしいのです」


「どちらも温室はあるが?もう一つ建てたいということか?」


「はい、冬に使うオランジュとスィトロンが温室で収穫できれば、常に新鮮なものが使えます」


「買い付けをせず、自領で・・・しかも冬に収穫すると・・・」


「その方が新鮮で、値段も安くなると思います」


「わかった、検討しておく」


「ありがとうございます・・・では、冬のメニュの一覧表を見ていただけますか?生ハムが届くことを前提として、タルティーヌに生ハム入りを加えました」


 タルティーヌに生ハム入りはパンにガーリックバターを塗ってラディッシュとチーズをのせるの。ラディッシュはラディロンといっていたけどね。


【冬のメニュ】


 冬の新メニュ

 冬から定番品

 ・タルティーヌ、生ハムとラディロンとチーズ


 ・トマートのファシルとパンセット(マシロパン、クルミパン、レーズンパンの3個付き)


 冬の限定品と変更になるメニュ及び販売終了のメニュ


 ・クレープ

 シャテニエとポワールからオランジュとチョコに変更


 ・バターケーキ

 マロングラッセ入りからスィトロン、オランジュとチョコの2種類に変更


 ・シフォンケーキ

 シャテニエから・・・チョコのマーブル模様に変更


 ・ミルクレープ

 ミュスカからオランジュに変更


 ・パンケーキ、デザート風

 小豆と生クリーム(冬限定)

 オランジュとチョコ(冬限定)


 シャテニエとシャテニエのクリーム、ミュスカとミュスカのピューレ 販売終了


 ・ガレット・デ・ロア(冬限定)


 ・どら焼き(冬限定)

 あんこのみと生クリーム入りの2種類


 ・スイートポテト、販売終了


 ・サンドウィッチ、フルーツと生クリームのサンドは冬の期間のみ販売中止


 ・アイスクリーム、限定品はなし

 ・パフェ、オランジュとチョコ


 ・ドリンク

 フレーバーティーはシャテニエとミュスカからシナモンティー、スィトロンティー、ジャンジャンブルティーの3種類に変更

 ホットレモン(冬限定)

 ハニージンジャーレモン(冬限定)

 ホットチョコレート(冬限定)


 秋摘み紅茶 販売終了


 ・果実水

 ミュスカからオランジュに変更(冬限定)


 お土産店


 ・ジャムはミュスカからオランジュ、スィトロンに変更(冬限定)

 ・ピューレはミュスカからオランジュ、スィトロンに変更(冬限定)

 ・フレーバーティーはシナモンティー、スィトロンティー、ジャンジャンブルティーの3種類(冬限定)


 ・マロングラッセ 販売終了


【ブーランジェリー・マシロ】


 お惣菜パン


 ・焼きそばパン

 ・ナポリタンパン

 ・グラタンコロッケパン

 ・ポテトコロッケパン

 ・塩唐揚げパン

 ・ソーセージパン

 ・茹で卵と燻製肉とチーズパン


 お菓子パン


 ・ジャムパン(姫ポム)冬から定番に

 ・アズキパン(冬限定)

 ・オレンジとチョコのパン、クルミ入り(冬限定)


 ・マロンクリームパン 販売終了

 ・ミュスカと生クリームのサンドウィッチ 販売終了


                       以上



「一覧の最後に書いていますが、お惣菜パンとお菓子パンをブーランジェリー・マシロ店で販売しようと思います。騎士団でも許可が出れば、そこでも販売したいと考えています」


「ブーランジェリー・マシロ店での販売は問題ない。ただ騎士団については販売する方向で話は進んでいるが、料理人の中でパンの担当を作るか、もしくは新たにパン職人を雇うか、まだ検討中だ。決まり次第知らせる」


「わかりました」


「アンは来週、学院の試験があるだろう?その前に精霊樹に行こうと思う」


「準備するのはチョコレートだけいいですか?」


「そうだな。後は・・・いろいろ植えたいと言っていたが、グノーム様の許可を貰ってからにするように」


「はい・・・あの鉱山道や山にある、実がなる木だけ育ててもいいでしょうか? 地龍や小動物たちの食料にもなると思うのです」


「折角の提案だが、鉱山道まで行く時間はない。種を植えたり収穫したりと時間がかかるだろう?」


「あっ・・・そうでした。残念ですがまた次回にします。あの・・・今回も龍騎士団から10人が護衛として来る予定ですか?」


「もちろんだ。何か気になることでもあったのか?」


「いいえ、お惣菜パンを食べてもらいたいと思ったのです」


「惣菜パンか・・・そうだな、宣伝を兼ねての食事提供と言う事にするか」


「はい、その後はしっかり買っていただけたらうれしいです」


「・・・アン。随分商売人のようになったな・・・」


「えっ?そ、そうですか・・・?」


 ・・・思わず目線をそらしてしまったよ。

 次回の更新は4月24日「90、赤い花をつけた精霊」の予定です。

どうぞよろしくお願いいたします。



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