お茶会のデザートは別腹です
お茶会本番。
と言う名のだらだらとした
お話。なんか大体がだらだら
している気もしますが
今回はお花見でまったりの
つもりで書いたら割とだらだら
してしまいました。
時間が経つのは意外と早くて、お二人が来る時間などあっという間だった。13時からお茶会なので少し早めの到着になったようだ。二台の馬車がタールベルク公爵邸の敷地へとゆっくり入って来ると、まず先に伯爵令嬢のオルテンシア様が乗っている馬車が玄関近くで停まり、メイドさんにエスコートされてゆっくりとオルテンシア様が降りられた後、玄関で待っていた私たちに挨拶をしてくれた。
「ごきげんよう、ミレーナ様、パトリシア様、ユスティーネ様、ウィツルリウス伯爵家次女、オルテンシアと申しますわ。お茶会に招待して頂き感謝の念にたえません。ミレーナ様の学友として今後ともよろしくお願い申し上げます。」
私たちに向かって綺麗なカーテシーで挨拶してくれた。私も二人を迎え入れた感謝と、しっかりとした挨拶をしなくては。オルテンシア様に続いて侯爵令嬢のカトリーナ様も馬車から降りてくる。カトリーナ様はトランシャニア侯爵家の長女だ。カトリーナ様の名字を聞いた時に、どこかの地名に似ていると思ったが、これはつっこんではいけない部分のような気がする。カトリーナ様も華麗にカーテシーによる挨拶を披露してくれた。そして私の出番だ。
「ようこそお待ち申し上げておりました。タールベルク公爵家次女、ミレーナと申します。急なお誘いにもかかわらずお越し頂いたお二人に精一杯お持て成し致します事を、ご容赦下さいますよう、お願い申し上げます。」
マナーの先生にお墨付きを頂いた成果をカーテシーと共に頭を下げて、直ぐに姿勢を整えてお二人と侍女の方を見ると何だか目をきらきらさせているようだが、どうしたのだろうか?
「まあ、ミレーナ様は私たちよりも優美なご挨拶ですのね。素敵ですわ。」
「ええ、とても良い先生に教わられたのですね、同じ挨拶でもミレーナ様の方が素敵でしたわ。」
お世辞かもしれないけど、初めて出来た友人にそう言われてしまうとめ物凄く照れてしまう。先生に誉められる時よりもこうして友人と話す事自体が楽しいのかもしれない。『さあ、こたちらです』と玄関とホールを抜けて、お二人と侍女たちを客室に案内する。とは言っても先導しているのはヘラルダなので私だけしている訳ではない。客室に到着すると、ゆったりと座れる来客用の椅子が人数分用意されているので、先にお客様であるお二人に座ってもらい、私たちも席についてから、雑談をしながらのちょっとしたティータイムだが、これはまだお茶会の前哨戦みたいなもの。雑談が終わって、庭にあるテラスに移動してから始まるのがお茶会本番だ。今日は快晴だしキルシュブリューテの花も綺麗に咲いている。それがよく見えるテラスにちょっとしたガーデンパーティーになる感じで食事場所などが準備されている。
「ご覧になって下さい。我が屋敷の庭に咲き誇るキルシュブリューテが美しく立派な姿を。このような素敵な場所でお茶会を楽しめる今日を最高の一日に致しましょう。」
お茶会開催の音頭は招いた側がするものなので、お母様でも良かったんだけれど、せっかくなので私がする事になった。初めてだから緊張したけど、開催宣言の後にカトリーナ様とオルテンシア様、お二人の侍女たちを含む全員が拍手してくれたので上手く出来たようだ。休みなので今日は珍しく昼間から屋敷にいるフェリクス兄様も涙目だが嬉し泣きかな?お父様に至っては『ミレーナが、こんなに立派に…。』と泣いていた。嬉しいけど、私が成人するまでにまた泣きそうな気がする、パトリシア姉様も含んで。今から泣いていたら後何回お父様は泣いてしまうのだろうか…。ちょっと先が思いやられるような気がする。
お茶会が始まると、次々と用意されている軽食をそれぞれが好きなものをお皿に取って食べ始めている。キッシュとガレット、クロワッサンのベリーとクリームのサンドが人気みたいだ。
「こちらのクリームサンド、甘いですけれどとっても美味しいですわね。レシピはミレーナ様のお屋敷独自のものですの?」
「はい、時々ではありますけれど、食卓にあがる品目になりますね。」
タールベルク家での食事は基本的に雇われている料理人が食材を仕入れているのだが、アムルーシュでは農業が盛んなので、野菜や果物を自分の領地から入手している。ウィシュトヴァラでも野菜や果物は入手出来るのだが、アムルーシュ産の野菜や果物の方が圧倒的に味が良いので必然的に料理が美味しいと言う訳でもある。今回のお茶会に使われているベリーなどもアムルーシュ産の果物だ。酪農も盛んで、ミルクやバターもアムルーシュ産で賄う事が出来ている。少し前にリーゼロッテ先生から教わった授業で聞いたのだが、アムルーシュ公国の土地は土が良いらしく、川や湖の水源も豊かで農業や酪農をするのに最適な場所なのだそうだ。ウィシュトヴァラ王国で洋菓子を購入しているが、アムルーシュから輸入した食材を使用しているものが少なくない数で売られていたりもする。ショコラーデとかはアムルーシュよりルツヘルムの方がカカオール(カカオ)が育ちやすいので自国で生産出来ているらしい。
暫く軽食を楽しんでいたが、いつの間にかだいぶお腹が膨れているみたいなので、紅茶などを飲みながら少し休憩がてら先ほど出された軽食のどれが美味しかった、とかキルシュブリューテの満開はもうすぐだろうか?とかの話題で盛り上がる。休憩を挟んでからルツヘルムの洋菓子店で購入した季節のデザートが二種類テーブルに並べられる。ヘラルダやファニタが時間などは懐中時計で確認してから食事を提供しているので割と正確だったりする。懐中時計はもちろん、魔道具の一種で小さな魔法石を内蔵してあるので魔力があれば人を選ばない点もあり、少し値は張るが人気の魔道具だ。タールベルク公爵家のベテランメイド何人かが所持していて、お父様やフェリクス兄様なんかは普段からよく使用している。まあ、仕事が忙しいから持ってないと困るって言うのもあるかもしれない。お母様は屋敷にある壁掛け時計か置き型の時計で時間を確認しているので使っていない。パトリシア姉様も持っていないが、いつかは欲しい、みたいな話を先日の夕食時に呟いていたので、もう少し大人になったら誕生日プレゼントなどでねだるつもりみたいだ。自腹で購入するには値段がやっぱり高いのかな?私はまだ今年8歳になるのでほぼ無関係なんだけれどね。まあ、便利そうではあるからいつかは私も使いたい魔道具ではある。ちなみに、ルツヘルムから届けられたデザートだが、冷蔵魔道具ボックスと言うのがあるらしく、冷やしておかないと腐ったりしてしまう食材を輸送するのに主に使われているから結構普及率は高い。大きめの冷蔵魔道具ボックスなんかはそのまま地球での冷蔵庫と同じ役割をはたしている。タールベルクの厨房にもあるらしいけど、まだ厨房に足を踏み入れた事がないので実物は知らないがいつかは見てみたい。季節のデザートは人数分購入したのだが、家族を含めてお客様でもあるカトリーナ様とオルテンシア様二人ともしっかり完食していた。どちらもかなり好評みたいで、お二人がルツヘルムのどのお店で購入したのかを聞かれたのでちゃんとモンブール洋菓子店を紹介しておいた。店長のドミニクさん、喜んでくれるかな?まあ、お二人とも侯爵家と伯爵家だし購入する事に問題はないだろう。貴族向けのお店なんだろうな、と思うのでこれをきっかけにもう少し窓口が広がると思いたい。そしてショコラーデももっと広まって欲しいが、まだ値段が高めであるので庶民の口にはなかなか入らないのかもしれない。カカオールから甘いショコラーデになるまでの工程が難しいイメージだから、そこが楽になれば広まるのも可能になるのかな?今度調べてみよう。デザートについての賑やかな話題が落ち着いて来ると、次は明日の学校でどんな授業をするのかの話題に移行した。そうだった、明日からは通学だからそれも考えないといけない。他の生徒はどうか判らないけど、学園前の転移門でお二人と待ち合わせてから学校に向かうと言う話でまとまった。そう言えば、入学式の時に学校の正門前に大きめの時計と(時計台ではない)何台かの馬車を見かけたから校舎まではやっぱり馬車で移動するみたいだ。うん、入学式の時に学園内の指定場所まで行くのも馬車で15分くらいかかったから、そうなんじゃないかとは思ってた。敷地がめっちゃ広いから迷いそうなので明日までにパトリシア姉様にちゃんと忘れずに聞いておこう。学生証も忘れないように持って行かないと転移門使えないから、通学鞄のポケット辺りにしまっておかないといけない。あれ、パスケースみたいなのってないのかな?これもパトリシア姉様に聞かないと…聞くこと多すぎないかな?気のせいだろうか。明日は色々と忙しくなりそうだ。
簡単な用語解説
カカオール
ティシュヴァンフォーレにおける
カカオにあたる食材。
カカオからショコラーデに
するまでの工程が難しく
生産量、生産力が足りてないので
まだ値段が高い。そのうち
生産力を上げるために主人公が
頑張ったり頑張らなかったりする予定。




