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熟練の操艦技術、ただし画面の九割は猫④

フロントモニターに、きらびやかなファンファーレとともに『予選第壱ブロック・完全勝利』の金色の文字が浮かび上がった。

数千、数万とひしめき合っていた光点がすべて消滅するか転送され、残されたのは不自然なほど静まり返った星空と、左右にそびえ立つ六基の巨大な鋼鉄の肉球だけだ。


「……終わった、な」

ガイウスは疲れ果てた様子で、深くシートに背を預けた。手動制御の緊張感と、直後の理不尽なパワーアップによる精神的疲労が、ずっしりとおっさんの肩にのしかかっている。

「お疲れ様でした、艦長。初戦突破です。同時接続者数は過去最高を記録し、現在、全銀河の動画ネットワークで『謎の肉球砲』の切り抜き動画が恐ろしい勢いで拡散されています。チャンネル登録者数はもはや目視での確認が追いつかない速度で増加中です」

ラムダの声は平時に戻っていたが、ホログラムの端々がまだ微かに興奮の残滓でチカチカと明滅していた。


そんな艦橋の喧騒をどこ吹く風と、重力制御ベッドから一匹の毛玉が起き上がった。

サビ猫のポチだ。トコトコと短い足でコンソールを歩いてくると、そのままガイウスの胸元へと器用に飛び乗ってきた。続いて、白黒ぶちのデブ猫モチが、タプタプと腹を揺らしながらガイウスの膝の上へと収まり、満足げに「ぐるるる……」と喉を鳴らし始める。

「おいおい、お前たちは本当に大物だな。あんな大爆発の後だってのに、少しも怖がらなかったのか」

ガイウスは苦笑しながら、ポチの賢そうな頭を優しく撫で、モチの分厚い背中を手のひらでトントンと叩いた。

手のひらから伝わってくる、ちいさくて、確かな温もり。


軍を退役し、ただ静かに生きるためだけに手に入れたこのオンボロ駆逐艦。それが今や、銀河中から注目される大配信の舞台になっている。どれほど周囲が狂騒に包まれようとも、俺がやるべきことは最初から何も変わっていない。この温かな命たちを、彼らの平穏な居場所を、何があっても守り抜くことだけだ。


「ふにゃあ」

モチがガイウスの指先に鼻を押し付け、ポチがその大きな手に体を預けるように丸くなる。

その瞬間、ガイウスの胸の奥に、言葉にできないほどの愛おしさが満ちていった。ただの保護猫とおっさんという関係を超えた、名実ともに離れがたい、唯一無二の家族としての絆が、静かに、しかし絶対的なものとして完成した瞬間だった。


「良い光景ですね、艦長。猫たちの満足度は最高潮です。……ですが、感動の余韻に浸る時間は、一秒たりとも残されていないようです」

ラムダの無慈悲な声とともに、フロントモニターの金色の文字が弾け飛んだ。

代わりに映し出されたのは、次戦――本戦トーナメントの組み合わせ表だ。その最上段に刻まれた巨大な名前を見た瞬間、ガイウスの身体がピキリと硬直した。


「おい、相棒。この名前、見間違いじゃないよな?」

「残念ながら、私の光学センサーは正常です、艦長。次戦の対戦相手が確定しました」

画面に大写しになったのは、銀河戦闘配信ランキングの頂点に君臨する、超大物ランカーのエンブレム。全銀河の戦闘配信者が恐怖し、そして熱狂する、文字通りの『最強の敵』の姿だった。


予選を力技で突破した《コタツ丸》を待つ、次なる究極の大騒動。

おっさんと艦載AI、そして五匹の猫たちの、本当の戦いが幕を開けようとしていた。

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