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最強のオートファイター  作者: 空延翼
一章 冒険者ギルド
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冒険者ギルド4

 ギルド長室から出たユウ・タチバナは、ギルド職員から冒険者用の制服と寮(りょう)部屋の鍵をもらった。転生後からずっと同じ服を着ていたので、さっそく着替えるために更衣室へと向かう。白を基調にした上着に紺(こん)色(いろ)のズボン。どこか、学生服を思い出させるような服装だった。

 脱いだ初期アバターの服装を、もらった紙袋に詰めて廊下に出る。


 「ふぅ~……なんとか誤魔化せたけど、これからどうしようかな」


 ひとまず冒険者になれたユウは次の目標を見失っていた。

 住居は銅級冒険者専用の空いている寮(りょう)部屋を借りられたことで、異世界にやってきて衣食住が満たされたからだ。

 

 「とりあえず、図書館にでも行ってみることにしよう。もしかしたら、レッドドラゴンについて何か分かるかもしれない」


 災害級モンスターとあのギルド長は言っていた。だが、それがどれほどのものなのかを知らないとスキルの強さを正しく把握できない。


 ユウは近くのギルド職員に図書館の場所を尋(たず)ねてみるとすぐに教えてくれた。

 図書館はギルド本部を出て少し歩いたところにあるそうだ。

 森林に囲まれており、外からじゃ見つけづらいが道なりに行けばいいと教えてもらった。


 冒険者採用試験の日ということで、周囲にはユウと同じように真新しい制服を着た冒険者が多く歩いている。そんな人たちとすれ違うたび、新品の制服の独特の匂いが鼻(び)腔(こう)を撫(な)でていく。

 道の端っこのほうから、先輩冒険者と思われる人たちからの視線を感じながらも絡まれないように目を合わせず、早足で通り過ぎることにした。


 人通りが少なくなってきたところで、ユウは深呼吸をして腕を伸ばす。


 「う~ん。なんか、すごい疲れたな。あのギルド長……外見はにこやかで友好的に見えたけど、無言のプレッシャーがビンビンで気が休まらなかった。本当、生きた心地がしなかったよ。うちの高校の教師たちと比べたら桁違いの迫力だったな」


 まるで生徒指導室から出てきたかのような錯覚を感じつつ、独り言を呟(つぶや)く。

 ああ、そういえば、どこかの団に入らないといけないのだっけ? とはいえ、この世界の常識も知らないし、ブラック企業ならぬ、ブラック団とかに当たったら嫌だしなぁ……。かといって、ソロで活動するとギルド長からの警戒が増(ま)しそうだし……。


 そんなことを考えながら歩いていると、目的地である図書館に到着した。

 ギルド本部と比べて静(せい)寂(じゃく)で、人の声よりも鳥の鳴き声のほうが多く聞こえる場所。


 「この世界でも図書館って静かな空間なんだな」


 ユウはどこか慣(な)れ親しんだ雰囲気にホッと心が落ち着いた気がした。


 木製の両扉に両手をかけて、音を出さないようにゆっくりと開く。すると、本の匂いで鼻(び)腔(こう)が満たされる。

 中に足を踏み入れると、そこは三階まで見通せるような吹き抜けになっており、有名なバーミンガム図書館を想起させた。左右上下には大きな本棚が置いてあり、真ん中には読書スペースとして開けた空間にテーブルと椅子が等間隔に置かれている。入口手前には横に長いカウンターが置いてあり、職員たちがリラックスして座っていた。


 「すげえ」


 思わず感(かん)嘆(たん)の声が漏(も)れる。

 普段は学校の小さな図書館しか行かないユウからしたら、初めて遊園地を訪れたような気分になった。


 「とっ、感動している場合じゃないな。モンスターについて書かれている本を見つけないと」


 奥の本棚に向かいながら、周囲の人たちを見渡す。

 穏やかに本に視線を下げている人たち。

 本を片手に真剣な表情で何かを書いている人たち。

 テーブルに突っ伏して寝息を立てている人たち。

 ユウが元いた世界と変わらない光景が広がっていた。


 「どこの世界も図書館の使い方は変わらないな。……ん?」


 ふと、奥の本棚の近くに座っている一人の少女に目がいく。

 銀髪の長髪を垂(た)らし、冒険者の制服である白の上着に紺(こん)色(いろ)のスカートを穿(は)いた少女が分厚い本を両手で広げて読んでいた。

 室内の落ち着いた照明を反射させるような白い肌、シュッとした顎(あご)に血色のいい唇(くちびる)。襟(えり)元(もと)から見える細い首筋。俯(うつむ)いた目元には銀色の睫(まつ)毛(げ)が揺(ゆ)れている。


 (どんな本を読んでいるんだろう)


 少女には似(に)ても似(に)つかない黒い装(そう)丁(てい)の難しそうな本を、興味津々に読んでいた。

 その様子にユウの好奇心が刺激され、こっそりと背後をとるように近づく。


 少女の肩越しに中身を覗き込むと、そこには文字がぎっしりと詰まった難しそうな本のページ……の間に可愛らしい絵柄が描かれた絵本が挟(はさ)まっていた。


 「……え、絵本?」


 あまりにも予想外な出来事に思わず声が出てしまう。

 すると、ぐるんとすごい勢いで少女がこちらを振り向いた。


 「……見ましたね。私の秘密」

 

 「あっ、いや……」


 鋭い視線を向けられてユウは返答に詰まった。

 てっきり魔法書か何かだと見当をつけていたので意表をつかれた、というのもあるが、その少女の人形のように整った顔に見(み)惚(と)れてしまったからだ。


 「見ましたね?」


 そんなユウの内(ない)心(しん)を知ってか知らずか、感情の籠(こも)っていない抑(よく)揚(よう)のない声で同じ質問を繰り返す少女。

 ユウは逃げるように視線を下げると、少女の胸辺りに見覚えのあるものを見つけて釘付けになった。そこには、先ほどギルド長から提(てい)示(じ)された、獅(し)子(し)が彫られた銀の記章が付けられている。

 つまり、ユウよりも小さいこの少女が銀級冒険者であることを示していた。

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