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最強のオートファイター  作者: 空延翼
三章 初任務
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初任務2

 竜(りゅう)禍(か)の森という物(ぶっ)騒(そう)な名前を聞いてユウは気を引き締めていたけれど、一(いっ)向(こう)にモンスターが現れる気配がないのと、木々が密集していないおかげでピクニックに来たような気分になっていた。

 土の地面を踏みしめ、警戒しながら歩いていたが少し拍子抜けな気分。


 「思ったより平和な森だな」


 思っていたことが素直に口から漏(も)れる。

 

 「まあ、私たちは銅級冒険者の集まりだから、そこまで危険な依頼はあまりこないんだ」


 一番前を歩いているアリスがユウに振り向いて苦笑する。

 右側面にいるエミリーもどこか退屈そうに、両足で交互に小石を蹴っていた。

 左側面を警戒しているはずのアレンに至(いた)っては頭の後ろで両手を組み呑(のん)気(き)に口笛を吹くほどだ。


 その三人の後方ではユウとサラが肩を並べて歩いていた。

 サラの緑髪が風に揺られるたび、いい匂いが香(かお)る。

 

 「そうなのか、でも、何もないに越(こ)したことはないよな」

 

 「そうそう~、森を歩くのは故郷のことを思い出して落ち着くから私は好きかな」


 うーん、と腕を伸ばしてストレッチするサラ。

 その拍子に胸当てに締め付けられている大きな胸がぽよんと揺れる。


 そういえば、サラはお見合いを嫌がり、エルフの里から家出同然に飛び出してきたんだっけか。

 てっきり思い出したくないほど憎(にく)んでいるのかと思ったけれど、別に故郷を嫌いになったわけではないようだ。


 「えと、ユウ? そんなに見つめられると恥ずかしいかも」


 「えっ、あっ、ごめん」

  

 顔を紅(こう)潮(ちょう)させ、胸を片手で押さえるサラに慌(あわ)ててユウは視線をそらした。

 わざとではないが、間近で胸を凝(ぎょう)視(し)するとか、図書館での反省がまるでできてないな。

 ユウは内心で反省しながら前に向き直ると、後ろを振り返っていたエミリーのジト目とぶつかる。

 ……無言の圧力を感じるのは気のせいだろうか。

 

 「ううん。嫌とかじゃなくて、ちょっと気になっただけだから……」


 「いや、俺も無遠慮だった。悪い」  


 二人並んで地面を向きながら足を動かす。


 「任務中にサラといちゃいちゃできて羨ましい。なぁ、ユウ、僕とポジション変更しないか!」


 「そんな鎧(よろい)を着たアレンが後方にいては、お前の能力が十分に発(はっ)揮(き)できないだろう。俊(しゅん)敏(びん)なユウがサラの護(ご)衛(えい)と遊(ゆう)撃(げき)を担当したほうがこのパーティーは安定する」


 「わ、分かってるけども……」


 アレンの調子にのった言葉にアリスはリーダーらしく真っ直ぐな瞳で真面目に返していた。

 その様子が面白くて思わずユウは声を出して笑ってしまう。


 「何がおかしい、ユウも集中しろ」


 こちらにも鋭い視線が向けられる。

 だが、他の団員が緩んでいても、集中力を切らさないアリスが頼もしく思えた。


 「いや、なんかアリスがリーダーで安心するなって」


 「ふんっ、褒められても報酬の上乗せなんてしないからな」


 そう言って前へと向き直るアリスの顔が少し赤くなっている気がした。

 そうして、また無言で歩き出す。

 鳥の鳴き声に、小枝を踏む音。

 時折響くアリスの激の声に、ほどよい緊張感をもって竜(りゅう)禍(か)の森を探索していた。

 

 ふと、ユウが帰り道を見失わないだろうかと不安におもったところで、アリスの足が止まる。


 「サラ、そろそろいつもの頼む」


 「了解だよ~」


 常連のお店で注文するような気楽さで言うアリスに、サラも間を置かずに答えた。

 そして、近くの木に向かい手の平を当てる。

 アレンとエミリーの様子からも何か決め事のようなものがあるらしい。


 「何をするんだ?」


 「目印をつけるんです。ほら、この森って平(へい)坦(たん)で木々もあまり密集してないから、太陽の光も届くし、安全なように見えるでしょ? でも、あっちを見てもこっちを見ても景色が変わらないの。だから、方向感覚が狂(くる)って帰れなくなるんだ」


 ユウの質問に嫌な顔一つせずに、碧(へき)色(しょく)のタレ目を細めて丁寧に説明してくれた。 

 サラの言う通り、辺りを見回してみると、どの方向を向いても同じ間(かん)隔(かく)で木々が立っており、気を抜くと一瞬で迷ってしまいそうに見える。


 「でも、目印ってどうするんだ? 木に傷でもつけるのか?」


 ふと、サラの腰にある短剣に目を向けるが首を振られた。


 「それだと雨が降ったり、獣が引っかいたりすると分かりづらいので、これを枝(えだ)に結ぶんです」


 そう言ってサラが取り出したのはピンク色の細長いリボンだった。

 それを木の枝に結ぶということらしい。

 だが、とユウはサラの触れている木を見上げる。

 手が届く範囲には枝はなく、結ぶとなると上に登らないといけない。


 ユウの疑問をよそに、サラはピンクのリボンを口にくわえて木の幹(みき)に手をかけた。


 「もしかして、木に登(のぼ)るのか?」

 

 「エルフの里では木登りは必(ひっ)須(す)ですから。任せてよ」


 もごもごとリボンをくわえたまま、そう口にして頭上を見上げるサラ。

 一呼吸置いて、ひょいっと足をかける。

 そして、木を蹴るように少し登り、わずかな出っ張りに足を引っかけてはまた登る。

 それを何度も繰り返していく。


 「相変わらず、すごいな」


 アリスの呟(つぶや)きに、アレンとエミリーも頷いて遠くから見守っている。


 だが、その三人と違い、サラの近くにいたユウは目のやり場に困っていた。

 なぜなら、サラの服装は皮の胸当てをした上着に、下はミニスカートなのだ。


 当然、木の下にいるユウが見上げると、本来は布の奥に隠れているはずの緑色のパンツが丸見えになっている。

 サラが木を登ろうと足に力を入れるたびに、むっちりとした太ももと形のいい臀(でん)部(ぶ)が隆(りゅう)起(き)する様子までつぶさに見えてしまっていた。


 (ま、まずい……。サラにばれる前に視線をそらさないと)


 結局、サラが登り終えるまで楽園の光景に見(み)惚(と)れていたユウは、はっと慌てて視線を動かした先でエミリーと目があった。

 冷たいジト目に睨(にら)まれて、冷や汗を流しながら思わず一歩後ずさってしまう。


 一方、そんな状況になっていることを露(つゆ)知らず、サラはピンクのリボンを木の枝に結び付けていた。

 ピンクのリボンを固定した途端、動きを止めて遠くを見るように顔を動かしている。

 

 「サラ、どうした、何が見える」


 異変を感じたアリスが険(けん)のある声を発した。

 いつも穏やかなサラの険しい横顔がユウにも危機感を募(つの)らせる。

 枝に寝そべるような姿勢のまま、サラは真剣な表情で周囲に視線を向けていた。


 「私たち、囲まれています」


 その静かな呟きに、四人は即座に陣形を整えて戦闘態勢に入る。

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