第六十七話 神獣様
その場にいる全員が震える。目の前にいるのは、神同等の存在なのだと。魔力も凄まじく、みんなが息をのんだ。
「神獣様、この日を待ち望んでおられました。予言の通り、事を進めました」
ドノヴァンはそれほど神獣と接触したかったのかよくわかった。そんなに次期王になって獣人の世界を作りたいのだろう。なぜそこまでやりたいのかわからないが、役者は揃った。
腕を組んでその場を眺めるシン。まだ神獣から流れる魔力に慣れていないレイたち。そこでようやく神獣が言葉を発した。
「……ふぅ、確かに予言をそなたらに送ったのは確か。だが、お前に送り付けた予言はすべてを終わらせ始める儀式に過ぎない」
「ええ、わかっていますとも。だからこそ今ここで次期王を決め、我ら獣人の世界を実現させるのですよ」
神獣はドノヴァンの言葉にため息をついた。それも思いため息。
ドノヴァンはそのため息に戸惑う。何か間違えたことを言ってしまったのか。そもそも、その予言の内容である『次期王が獣人の国を先の未来へと導いてくれる存在が現れる』。それが本当のものなのか。だから、確かめることにした。
「神獣、ドノヴァンに送った予言の内容は?」
「――貴様なんだその態度は! 神獣様に対してなんて」
「この日、神に選ばれし獣人が現れる」
「次期王が獣人の国を先の未来へと導く存在が現れるではなく?」
「ああ、それは間違っている」
予言の意味はそれぞれ間違いではないが、ドノヴァンが勝手にそう解釈していると考えられる。
「神獣様、発言をお許しを」
「別にそんなものはいらん」
「では、神獣様は『奇跡の子』に会ったことはありますか?」
『奇跡の子』、そのワードにドンヴァンは険しい顔になった。そんなにバレるとまずいものだとわかった。
「奇跡の子、か……確か大昔にそんな子が現れると言ったぐらいでそんな優遇を受けるようなものじゃない」
「……生贄、とか」
その場が凍る。そんなことがあっては国の信頼を失う。だが、そんな歴史を知っている者は王家の者だけ。ドノヴァンは当然涼しい顔にはなれない。ミアとニアはシンから聞かされていたため何も感じないが、それ以外は困惑している。
エファラも王家の者だが、だからといってすべての歴史を知っているわけじゃないようだ。一部、欠陥している歴史書があるとか。
「つまり、何者だけが歴史について詳しい先生がいるみたいだな」
全員がある男に視点が向く。
「な、なんだお前ら」
「ドノヴァン、すべて話してもらおうか」
この場にいるのは冒険者だけじゃない。王都の王もいることを忘れてはいけない。




