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第六十六話 獣人の国『ティア』の歴史

 獣人の国『ティア』から出て二時間。魔物も現れず無事目的地である森の奥へとたどり着いた。


「ここが、今回行われる次期王継承式の会場だ」


 半径数百メートルの地面が広がっている場所だ。ここで継承式を行ると言われてれも、今いる人間はドノヴァンとその息子ヴァファー、ドノヴァンの弟エファラに王都の王様であるカリスト。冒険者はシン、ミアとニア。レイと他二名。


「では、時間が来るまで少々挨拶をしましょうか」


 ドノヴァンはみんなの前に出てお辞儀をし、話始めた。


「この度、我が国の次期王継承式の招待に応じ感謝する。まず、この少人数で継承式を始めるわけについてだ。それは今から見るもの聞くものはすべて世間には漏れてはいけないものだ」

「なら、なぜ俺たちが招待されたんだ? 目的は?」


 シンはドノヴァに詰め寄るように質問を投げ付けた。


「確か名前は……シン、だったな。なに? 単純な話さ。この瞬間、我が国に新たな歴史が刻まれる。そこに王都の冒険者でSSSランクへと登った男がいるとなれば、ぜひとも立ち会ってもらうためだ。当然、王都とも交流を深めるためでもある」

「そ。それで、歴史的瞬間、次期王を決める人物は誰なんだ?」


 単刀直入に話を進める。


「それを今から説明するつもりだ。そのためにはまず我が国の歴史を知ってもらう必要がある」


 そうしてドノヴァンは獣人の国『ティア』のこれまでの歴史について語り出した。



 獣人は、この世界を創造した神によって造られた存在。正確には、この世界の始まりの種族”人族”からだ。神は人族だけでなく他の生命を世界に誕生させ、今の世界が存在している。いつか、神は世界に干渉することはできないが、見ることはできる。観察しているうちに、人と獣が共存している姿を見たのだ。


 神は、人と獣が共存することができるのに、言葉が通じない。意思疎通ができないことに悲しみを覚えた。そこで神は人族をベースに、獣の要素を取り入れた種族を生み出した。それが獣人族だ。


 そこから獣人と人族は互いを尊重し、今の関係が生まれているのだ。



 いたって普通の平和な歴史だった。だが、その裏には明かされていない歴史が存在するのをシンとレイ、エファラは知っている。


「で、それは獣人族が人族と共存する際の歴史だろ。これとは別の歴史があるんだろ?」

「……ああ、これはあくまで今の関係が築く過程を省いた歴史だ。だが、あくまで獣人族の誕生の歴史だ。なら、獣人の国の歴史について話そう。これが今回の継承式の歴史と深く関わっている」



 獣人の国『ティア』が生まれるまで、獣人はそれぞれの個体として誕生していた。そのため、獣と同じ序列争いが起こったのだ。力あるのもが上に立ち、弱いものが下にいる。


 神はこの事態にひどくショックを受けた。そこで神は自身のペットをこの世界に残した。


 神のペットは言語を話し、獣人族の中立的な立場で争いを抑え、国に発展するまでの助言をしたという。だからこの歴史を知っている者たちは『神獣様』と呼んでいる。


 そして神獣様は唯一の予言を我々獣人族に授けた。そうして神獣様は姿を消した。



「そして十二年前、その神獣様から予言を授かった。今日この日、次期王が獣人の国を先の未来へと導いてくれる存在が現れると」


 神獣の歴史を聞いた中で、簡潔にまとめた感じがするがそれでも王は一つだけ明かしていない歴史がある。あの日、一人の少女に対し彼が口にした『奇跡の子』について。

 

 ただしこれ以上は問いただしたところで時間の無駄だと悟り黙ることにした。


 その時、森の中から気配察知範囲外から流れてくるオーラを感じ取った。


 それは自分だけじゃなかった。その場にいた全員がその気配を感じ取っていた。


 怯える者もいれば、楽しんでいる者もいる。


 森からものスゴイ速度でこちらに向かってきている音が、葉や地面からよく伝わった。大型の生物。


「このオーラ。彼こそが、我々獣人の神――」


 先ほどまでの地面の音がなくなったと思った瞬間、空から風の音がこちらへと落ち、何かが着地し地面が揺れ、土埃が舞う。


 だんだん晴れていく視界の先には、大きなライオンの獣だった。


 自分はそれを知ってる。

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