第六十五話 協力者へと
「それじゃあ、なぜこんなことを話そうとするんですか?」
その質問に彼から信じられない答えが返ってきた。
「君が、あの日行方不明になってしまったカナリアという少女の弟だからだよ」
◇
「つまり、えっと……エファラはこのままあの男が実質実権を握ることを避けるため、王になるのか?」
「ええ、兄は権力を使って獣人のもう一つの姿を世間に知らしめて世界の王へなろうと計画を立てています」
「……なんか、ガキだな」
エファラは頷いた。
「それで、獣人のもう一つの姿とは?」
「獣の本能と、言うべきかな。そもそも獣人とは、人と獣が混ざった種族。伝書でもあまり詳しくは載っていないのだが、神が人を造る過程で獣の人を造ろうとなったらしい」
「なんか、適当感」
「まあね、それでも獣人はそれぞれ種によって能力も異なり、魔力だって持っている。神はいくつもの世界を管理していると言われている。だからこそ、この世界は人族と獣人、魔族だってそのうちの一つじゃないかな?」
魔族は、人族より魔力を多く所持している種族。正直、魔族の歴史を知っているシンは一緒にしないで欲しいと思っている。
「まあ、要に獣人は人に獣という要素を入れた存在。だからこそ獣の野生本能があるってことか」
獣人は魔力量は少ないが身体能力が高い。逆に人族は魔力量が普通であれば身体能力も普通というこの曖昧。ただ、人族をベースとして誕生した種族であればそうゆうことになる。今での会話で上げられなかった魔族は、もともとこの世界の人たちではないから黙る。
「ただ、この伝書はあくまでレイ君とかの王家ではない人間だけが知っているお話なんだ」
「つまり裏、もしくはその伝書とは別の話が存在するということか」
「ええ、それが兄が行おうとする計画の始まりです」
馬車が門を抜けて森の中へ入っていった。地面が整地されていないから揺れてしまう。
「森に入りましたね、警戒を強めます」
「いや、問題ない。俺が全部見ている。まあ、多少すぐ動けるよう伸びててくれ」
言葉にするのが難しというか、変にスキルを喋ると違和感を覚えさせる恐れがある。例えば、今発動してるスキル『気配察知』を使っていると言っても、それは気配を感じとるスキルで正確な情報を得るとすると他のスキルを同時発動。ただしシンは説明も何も存在してはいけない難しいスキルを持っているため喋りたくない。問題を起こしたくない。だからスキルを明かすよりそうゆう類のを使ってますでいい。
「それで、もう一つの姿とは?」
「……獣の本能、というものだ」
「うむ、まあ、どうでもいい」
本音が漏れた。当然、レイとエファラはガクっと崩れた。
「いや、え、し、シン。下手すると戦争になるんだよ?」
「いや、それはあいつが王になったらそうなるってだけだよな? なら選ばれなければいい」
「そ、そうなんだけどねシン君。兄は確実に選ばれることをわかっているんだ」
何を根拠にそう言えるのかわからない。
「つまり、兄はまだ王を続けるが予言を授かったと言っていた。それは12年前、神がちょうど今ぐらいに神の子が現れると」
「それが自身の息子だと?」
エファラは頷く。
まあ、うん、別に困ることもない。
「レイから聞いたんだが、次期王継承式でその王を決める人物が誰なのかを」
ギルドで再開した時、レイから受け取った紙に森奥で行われる理由が、その人物によって選ばれるという。
「俺は全部を知っている。隠すことはない。レイにこのことを話したのはエファラ、あなただろ?」
「ああ、わたしだ」
「この情報が正しいなら、こっちも動きやすい」
「わたしの命を懸けてもいい」
ならこっちの計画もそのまま実行で行く。
「まあ、これ以上は話すことはないだろうし。正直あまり話す気になれない、すまない」
「いや、こちらもいろいろ話を進めてしまった。ただ、確認だけしたかっただけなんだ」
確認? そう首を傾げると、エファラは頷き言った。
「君は、わたしたちの味方か?」
その言葉にシンは躊躇うことなく答えた。
「当然。なんなら状況次第ではお前を王にだってできる」
「……それは、どうゆう意味かな?」
「そのままだ。逆に、そう信じるかはあなた次第。目的地までもう少し先らしいし俺はしばらく黙って辺りを見ている」
そうして、無理やり話を終わらせた。シンは、期待と緊張があった。それは自身の運命である”獣神王”。この日、その縛りから抜け出せる絶好のチャンス。
シンは、今日。すべてを終わらせて、自由を手に入れる。今はそれだけを考えていた。




