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第六十八話 展開の逆行から真実へ

 ドノヴァンが獣人の中で国の歴史について詳しい人物。それは、王家しか知らない歴史もあるが弟であるエファラですら知らないものがあるみたいだ。


「わ、我が嘘を付いているとでも!」


 慌ただしい口調、完全に動揺しているようだ。


「いいんだぞ、別に俺たちに話さなくても。所詮歴史は過去だ。俺たちが知ったところで今日の目的はそんな歴史を振り返る時間は取りたくない」

「そ、そうだぞ! 今日は次期王を決める日だ! 今はそんなことはどうでもいいのだ!」

「まあ、話が逸れたからこうなったのも仕方ない。神獣、その神に選ばれし獣人は誰だ?」


 結局は予言から生贄の話に逸れたのが原因で空気が悪くなった。なら、目的さえ果たせればあとはご自由にだ。


「それは……後にしようか。中途半端はよくないな」


 全員が頭に疑問譜を浮かべた。この獣は何を言っているのだと。


「な、何をおっしゃるのですか神獣様! こちらこそ後でよろしいのではないでしょうか!」

「……いや、こっちの方が面白そうだ。続けろ、我も参加する」


 なんかもうめんどくさくなってきた。なら、その通りに進めた方が後でいろいろ楽に終われるかな。そう思った。今自分から打ち明けたらとあるが、そうすると慌て始めるやつが一人いるからそれを避けるため、タイミングを見つけることにした。


「では、神獣様は獣人の国の歴史についてどこまで知っていますか?」

「そうだな、少なくともすべてだ。なんなら質問を投げてみよ。すべて答えるぞ」


 神獣のオーラに慣れてきたのか、だんだんと動きやすくなりレイは神獣に質問した。神獣も、この状況をどうなるか楽しんでいる。楽しんでいるのもあるだろうけど、何かを考えての行動だと思った。


「なら、先ほど述べていた『奇跡の子』と『生贄』はどうなんですか?」

「ふむ、先ほども言ったが奇跡の子は大昔にいつか現れると言っただけで生贄にはならない。なんなら、奇跡の子が我が言った神の子だ」


 ここで一つ目の歴史修正を得た。


「なら生贄については?」

「それはそちらの勝手な解釈だろう。我は人を食わないし、毎度そうこっちに運ばれてくるのは迷惑」


 それはそうとみんなが頷く。でも、なんか神獣の態度がなんだか崩れ始めている気がする。多分なんかこいつもめんどくさくなってきてる。


 それはそうと、もう時間切れかドノヴァンが膝から崩れて何もしゃべらないのだが。その息子のヴァファー・エスルマが前に出て質問をした。


「えっと、その奇跡の子はどんな人? なんでしょうか? その、奇跡の子の見分け方とかってありますか?」


 ヴァファーはドノヴァンと違った正反対な性格だ。弱弱しい喋りかたで質問をするが、それでも彼は動いた。


「そうだな、奇跡の子の見分け方はお前たちが使うあのクリスタルでわかる」

「それは、教会にある能力を見るためのクリスタルですか?」


 神獣は頷く。


 獣人の国は教会には巨大なクリスタルに設置している。それに触れることで能力を閲覧することが可能である。


「つまり、そこに『奇跡の子』である証拠の能力があるんですね」

「いいや、逆だ」

「逆、ですか?」


 神獣が頷く。そこでレイとエファラが次に来る言葉を待っている。


 神獣の回答によって、言い逃れのできない証拠が生まれるからだ。しかし、ドノヴァンは止めようと立ち上がるがもう遅かった。声を上げようとしたとき、重なるように神獣が口にした。


「能力が表示されないことだ。それは神だからこそ能力を映し出すことが不可能だからだ」

「ですが、今までそんな子供なんていませんでしたよ?」

「兄さん、何か言うことがあるんじゃないですか?」


 エファラはドノヴァンの傍に行き、促すように言った。私はすべてを知っているんだぞ、っと。


「っく、ああ、一度だけそんな子供が現れた。しかし、事故が起きたんだ」

「事故?」

「ああ、12年前にその子供が誘拐されたんだ。だが、我も話を聞いただけで詳しくはわからない」


 ドノヴァンはここに来ても嘘を言いたいらしい。なんなら俺はここで仕掛けることにした。


「その子供って狐種か? その子なら俺が保護したことがある」

「――!! ああ、その少女が誘拐されたんだ。な、なるほどシン様が保護していただいていたのですね!」

「……急な敬語、やめて気持ち悪い。あと、俺は狐種と言っただけで性別は言ってない」


 ドノヴァンは顔が真っ青になっていく。もう言い逃れはできないな。レイが今にでも殴りかかりそうな拳を握っている。


「知っていて、わざと殺すよう仕向けたんだな。『奇跡の子』が『神の子』であり、王家の危惧を察ししたお前はその少女を生贄として殺すとした」

「だが、お前が保護したとなれば全部その少女から聞いているな」


 その口調からして、認めたと捉えてよさそうだ。その時、ドノヴァンの胸ぐらを掴む男が現れた。レイだった。よほどこらえていた気持ちが爆発してしまったらしい。


「お前が、姉さんを!」

「待てレイ。ドノヴァン、もう一つ聞きたいことがある。なぜ今回の目的は次期王を決めるためのもの。だが、白状したのならこれはもう意味がなくなんじゃないか?」

「ああ、神の子がその場にいないことによって次期王は当然我々一族だ。権力をさらに強めるには神獣様の言葉を受けることでより偉大な王家として民族に知らしめようとしたのだ」


 神獣は民衆の間では伝説とされているが、信るのものがいるかはあやふや。だからこそ、少人数の式で名誉ある人間に証言させることで、彼の狙いが完成する。


「まあ、お前がこれを吐いたことによって全部無駄になったがな」

「……ふふふ」

「何笑ってんだ、頭おかしくなったか?」


 ドノヴァンが笑みを浮かべた。計画が台無しになったことで何もかもがだめになったと感じたのだろうか。だが、そんなものじゃなかった。


「シンよ、お前のはその少女を保護したと言ったな」

「ああ」

「それはどこでだ?」

「……それは、獣人の国から出ると広い草原に出るだろ。そこでだ」

「たとえ場所がどこだろうとシンは姉さんを救っている。これだ証拠だ!」


 初めてレイに会った時に渡したカナリアのペンダントを見せた。だが、ドノヴァンは笑い続けている。


「嘘だな、なぜならその少女はこの森に続く道へと連れて行かせた。お前たちが来た道をだ。つまり、そんな草原へは出ないのだよ!」

「それの何が信じられる! このペンダントは姉さんしか持っていないものだ! だからシンが救ったもの当然だ!」

「なら、お前は今姉が何をしているか知っているか! お前は姉に会ったことがあるか!」


 ここでレイは止まってしまった。シンも会ってはペンタンとを受け取っただけでそれ以降の話はしていない。なら、本当に今姉は何をしているのか、姉はどこへ行くと言ったのか。


「……シン、教えてくれ。姉は、どこにいるんだ?」


 シンは黙った。自身が正体を明かしてもいい、ただそのタイミングを逃した。ドノヴァンが余計なことを喋らなければその時に明かそうとしたのだが、どうしたものか。


「シンよ! どうした? まさかわからないとは言わないだろうな! なぜならその少女を救ったのだから全部知っているのだろう?」

「……はぁ、手遅れか」

「……シン? 何を言っているんだ?」


 シンはため息をついて両手を上げた。ここですべてを吐くなら今がちょうどいい。それにこれ以上茶番に付き合っていられない。


「ああ、確かに全部知っている。だが、俺は嘘を付いている」

「ほら、言った通りだ! こいつは嘘を付いていた! なら言ってみろ! お前は何に嘘をついたのかを!」

「……俺が、カナリアだ」


 その場の全員がシンに視点を集めた。当然だ。何を言っているのかわからないと。だからと、シンは自身の武装を脱ぎお面を外す。フードで隠れていた長い黄色い髪がさらりと落ちて狐の耳が現れ、お尻からは尻尾が生えた。


「お、お前は!」

「私が、カナリア。あの日、あなたによって殺された少女だよ」

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