第六十話 行ってきます『スイテム』、ただいま『ティア』
王様が用意した馬車に乗るシン、ミア、ニア。お城の入口で見送りをしてくれているルナとイム。王都が遠く小さく見えていった。
シンは、ミアとニアの真ん中に座り、向かうように王様が座っている。王様と別の馬車だと思っていたが、一応シンは王様の親戚になるため同席が許される。でも、なんか気まずい。隣にミアとニアが自分の肩に頭を預けているこの景色、泣いていい?
そうやって数日かけて、森が見え始めてきたころに奥に建物らしき影が見え始めた。
「……見えてきたな」
馬車に乗り、目的地へ向かっていたシンたち。王様の声にみんなが外を見る。
窓から見える、大きな木に覆われている森の中に、獣人族が住んでいる巨大な国『ティア』。
みんなが興奮している中、シンだけ、故郷を眺めている。
シンは実家帰りなんて思えない。神様が仕組んだ決定づけられた運命だとしても、結局自分を追い出した国なんてものに、ただいまなんて言えるわけない。けど、
(家族にただいまなんているのかな……)
シンの心は転生した男子高校生”日比谷真”。でも、カナリアという存在は真のもう一つの人生。”魂が途中で入った”ではなく、”もともと入っていて記憶が条件を満たすことで思い出す”、だからティアにいる両親は真にとって二人目の家族なのだ。
複雑な感情を抱きながら馬車に揺れて、国の中へと入っていった。




