第五十九話 久しぶりのお出かけ
太陽が昇り、街では止まることをしらないにぎやかな声がよく聞こえる。
久しぶりの街でのお出かけ。
前回の女子会と同じカナリアの姿で、ミアとニアに連れ回されている。
三日後に王都を出て、獣人の国「ティア」に向かうことになったが、本当に買うものがわからない。服だって、シンの姿であればあの漆黒の姿一式だけ。ミアとニアに関しては女の子だから多少の物は必要だと思っているが、二人がそんな気にする……いや、二人が楽しんでいるならそれでいい。
そんなこんなでお昼まで洋服や装飾品といった今回の遠出とはもう関係ないものを見漁っていた。完全にお出かけだ。
昼食はあの日食べた鉄板焼きサンドイッチにしようと屋台近くにあるベンチに座って、カナリアが買いに行った。
「お、あの時の嬢ちゃん。久しぶりだな」
「はい、お久しぶりです。また鉄板焼きサンドイッチを……今回は少し多く買っておきたいので6つほどお願いできますか?」
「おいよ、少し待ってな!」
数分後、注文通り鉄板焼きサンドイッチを受け取り、あの二人が座っているベンチの方へと向かった。だが、遠目でもわかる、見覚えのある姿が二つあった。
黒髪と黄髪の少女が、ミアとニアと楽しくおしゃべりをしている。うん、なんであの二人がいるのか不思議でたまらないが、気にせず二人の元へ向かった。
「――ええ、なので今日はお忍びで……あ、かなりあ……シン様! いえ、今はカナリア様ですかね?」
「えっと、カナリア様。こんにちは」
ルナとイムだった。二人はドレスではなく、貴族とはかけ離れた簡単な服装だった。ルナが”お忍び”と言っていたから多分勝手に出てきたのだろう。
「こんにちは、イムにルナ。それはそうと、なんで二人はここに?」
「単純に観光だよ。王都のお姫様じゃなくて、一般人としてのね」
まあ、この二人が王都の街をふらつくってのは危ないというか、いろいろまずい。だからと言って護衛なしで歩いているのは危険だろう。
「大丈夫だよ。前からこうしているけど一度も危ないことはなかったよ」
ルナは常習犯であった。なら、イムも彼女と同じで……
「あ、私はあまり王都を観光したことがなくて……ルナにそのことをこぼしたら現在に至ります」
ルナは、まあ、うん、納得してしまう自分がいる。
そんなこんなで予想外な合流を果たしたが、このメンバーで女子会をすることになった。
◇
その後は、洋服店や前回ミアとニアとの観光で行かなかった場所へ行ったりして楽しんだ。そこで、シンたちはある場所の前を通った。そこは、シンが前に一人で観光で訪れたカフェ屋だ。
「アムネシア……そういえば、あれから行ってないな」
彼女たちに説明をして、カフェの中へ入っていった。
◇
「いらっしゃい……あら、シンくん。久しぶりね。今回は連れがいるのね。お好きなお席へどうぞ」
「お久しぶりです、アルさん。じゃあお前ら、ここでいいよな?」
シンたちはカウンタ―席に座って、メニューを開いて食べるものを選んだ。シンは前回に食べた「カレンデュラ」を頼んだ。イムは、シンが頼んだものの名前に目を開いた。だって、その名前は……。
それぞれメニューを頼んで食事を楽しんだ。シンは久しぶりのアルと世間話をした。
「新聞を読んだけど、シンくんって本当はすごい人だったんだね。でも、私にとってあなたはこのお店の大切なお客さんだからね」
「ありがとうございます」
そうやって話していくと、イムがアルに話しかけた。先ほどから気になっていることがあるのかようやく口を開いたといった感じだった。
「あの、アル……さん? その、一つお伺いしたいことがあります。あそこに飾られている絵の花は……」
「ああ、あれは私が昔描いたものだよ。名前は……」
「――カレンデュラ、ですよね?」
イムの言葉にアルは一瞬止まる。その花を知る人はあまりにもいない。少なくとも、その花を知っている人をアルは知らなかった。
「え、ええ……でも、よくその名前を知っているのね。その花はみんなキンセンカって呼ぶんだけど……」
アルに、カレンデュラについて話そうか迷ったがまた今度にした。
それから最後にコーヒーを飲んでカフェ屋を出た。
出ていく時、シンはアルに呼ばれた。
「シンくん、今日はありがとう。お友達を連れてきてくれて」
「いえ、喜んでもらえてうれしいです」
「それで、今度来た時カレンデュラについて教えてね」
そんな約束をしてルナとイムをお城の前まで送った。
「今日はありがとうございました、シン様!」
「今度の依頼を終えたら、王都じゃなくて、外の世界を見たいです」
「ああ、全部終わったら全員で海でも行くか」
そんな約束をして、今日は終わった。




