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第五十五話 ただいま。

 目を開けると、知らない天井。白い天井だった。ベッドに寝ているのか床がフカフカだった。


 首を回し辺りを見ると見覚えのある構造。それは王都の城と同じだった。体を起こすと二人の猫耳を付けた少女がベッドに伏せて眠っていた。


「……帰って来たんだ」


 シンは二人の少女を起こさないようにベッドから降り、バルコニーに出て外の空気を吸った。


 体に流れる魔力、久しぶりの感覚に浸っていると城の外から嫌な気配を感じた。その方角に目線を向けるとそこは昏睡状態になる前にドラゴンを討伐した場所だった。


 シンは今になって衣服を着ていないことに気が付き魔法で簡単な装備をして、その場所へ向かった。



「シェリア、こっちもどんどん浸食が進んできている」

「そうか、まさか死んでもなお王都を落とそうとするのか……やっかいな毒だな」


 ギルド長のシェリアとBランク冒険者のホリデイがテントで状況確認をしていた。シンたちがレイド討伐を終わらせてから二週間。ドラゴンを討伐した付近地面が徐々に腐食していっていたのだ。これはドラゴンが纏っていた黒い魔力の霧が毒となり、深くの地下から徐々に巡り合って地上へ出てきたのだ。


「毒に効く魔法をすべて使いましたが効果なし。この毒はもう聖女様の聖魔法じゃないと無理だと思います」


 報告に来たのはレイド討伐に参加した一人、レイラだった。レイラは王都の中でも一番の魔法使いであるため呼ばれているのだ。


「だが、聖女様が来る前にこの浸食がどこまで行くか……」


 浸食が城までに行くまでの時間はもってあと三日。聖女は今は遠出に出ていて帰ってくるのにもう少し先になる。今の危機を脱する方法が他にないのだ。


「もう、これ以上は……って、誰ですか?」


 レイラが諦めそうとした瞬間、黒い服を着た狐の少女が腐食している地面に立っていた。


「ちょ、そこの人危ないです! そこから離れて下さ――え?」


 レイラが少女を注意しようと駆け寄ると少女が片手を差し出すと魔法陣が展開し、辺りが光に包まれた。誰もがその光に目を閉じる。そして、しばらくし落ち着いたのか目を開けると少女はいなく、腐食していた地面が完全にきれいになくなっていたのだ。


「これは……一体?」


 レイラは完全に浄化された地面を見て驚愕する。どんな解毒魔法を使用しても効果なかった毒が、見知らぬ少女の行動によってきれいになったのだ。


 後に正体がバレるのはそう近くないはずだ。



 レイド討伐によるドラゴンの死体から流れた腐食の地面を浄化したシンは、先ほどまで寝ていた部屋のバルコニーに戻ってきた。


 長い髪を整えようと頭を触ったらふわふわの耳に気づきお尻を触るとふわふわの尻尾が付いていた。


 何日眠っていたかわからないがどちらもケアがされていた。そして、ベッドに伏せていた少女たちに目を向けた。ミアとニアだ。と、思ったがいなかった。


 どこいったのか首を傾げる。少し頭がぼやける。長い間眠っていた証拠だ。


 急に動いて魔法を使ったせいでよろける。ベッドに戻り呼吸をする。そうしているとドタバタと二人の足音が大きくなってくる。そしてドンと扉が開いた。猫耳の少女二人がカナリアを見ると勢いよく抱き着いてきた。


「ご主人様! ご主人様!!」

「あるじ、あるじ!!」


 苦しい、久しぶりの目覚めでこんなのに抱きしめられては眠くなる。だが、今はただ、泣いている二人を抱きしめ返した。



 レイド討伐から二週間が経過していると言われた。その間にドラゴンの黒い魔力の霧が地面に吸われてそれが腐食、王都に浸食していたのだそうだ。それが昨日の夜まで続いていたそうだが謎の狐の少女が浸食を完全に浄化したそうだ。


「昨日はちょっと頭が回らなくて、気づいたらやってた」


 もちろんミアとニアには怒られた。確かに姿を曖昧にしたものの、あの場で現れたこともそうだが、黙っていなくなったことやあの討伐後の行動に激怒しているそうだ。なので今は二人にすりすり攻撃を迫られている。


 そうしていろんな人たちがお見舞いに来た。その時は医療の服でお面を着けていないシンとしての姿だが、狐の耳と尻尾は隠した。


 最初は『デリカウス』のメンバー四人が来た。当然怒られた。だが、喜びもあった。今度時間があれば討伐打ち上げでやろうと言って出ていった。それはそうとレイラにはすごく睨まれていた。理由は昨日の謎の狐の少女についてだそうだ。ミアとニアと事前に打ち合わせてあったため『昨日の夜はミアとニアに抱きしめられていて動けなかった』ということになっている。まあ、そんなこんなでひと段落した。


 次に予想はしていたが予想外の人も来た。


「かなりあ――シン様!」


 王都のお姫様、ルナが来た。そしてとうとうカナリアと名前を出してしまった。もう諦めている。その後ろには王都の王様、カリストが来たのだ。


「シンよ、よく巨大ドラゴン討伐を成し遂げてくれた。よって本来の場で伝えるつもりだったが事前にこれを伝えに来たのだ」


 そしてカリストはあるものを出した。それは一枚の紙だった。


===============================


この度、冒険者ランクSのシン。ここにSSランク、そして汝の功績を称賛しSSSランクに昇格する。


===============================


 なんかおかしなことが書かれている。あれ? 俺はSSランク昇格の依頼を受けていたはずなのに、なんかSSSになっている。


「なあ、SSランク昇格の試練『巨大ドラゴン討伐レイド』になるはずだった。なのになぜSSSになっているのだ?」

「わかっている、ルナから聞いている。昨日の件、感謝しているぞ」


 うん、バレてる。まあ、それでSSSになれたことは嬉しいが、複雑だ。表彰されるときにはドラゴン討伐の功績が高くSSSランクになるということにしてくれるらしい。


 こうして訪問者は終わりひと段落ついた。


「ふう、疲れた」


 ミアとニアは何か食べ物を買いに行くと言って外へ行き部屋に一人のんびりしていた。


 ふと思いついて『収納』の中を見てみたら、バラバラになったドラゴンの魔石、そして黄色い花『カレンデュラ』が入っていた。


 この二つを見て、シンは目をつぶり寝ていた出来事を忘れないよう思い返した。

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