EP.2 魔王の娘と少年 中編
「こちらはシン様が自由に使って構いません、では」
『魔王?』の娘、ミューとの結婚を断ったが、それでもという押しにめんどくさくなったシンは保留として逃げようとしたが帰さないと城への滞在、広い部屋まで用意させられメイドに案内された。
警備は厳重ではないためいつでも逃げることはできる。だが、そんなことをしたところで元の時代に帰れる保証はない。何度繰り返されるタイムトラベルより、『魔王?』の城に滞在できるとなれば情報がつかめるかもしれないと考えた。世界や時代に詳しくないシンはレイラたちにいろいろと話は聞かされている。その中で『魔王?』がいる城は古い書が数えきれないほど存在する大書庫があるという。つまり、もしかしたら今この現象が記載されている書あると思いとどまることにし早速大書庫へ移動するが迷子になってしまった。
「あれ、シン様?」
どこへ行っても同じ通路にミューと出会った。事情を話すと彼女はくすりと笑い案内してくれることになった。
◇
大書庫、ここには数えきれないほどの分厚い本が棚に並べれている。この中から特定の本を見つけるとなると時間がかかってしまうと肩を落とすがごちゃごちゃ言っていられないと早速一つずつ本を取っていった。
「シン様は何について調べているのですか?」
本を積んではまた新たに積んでいく、そんな作業のようなことをしていると目の前で本を読んでいたミューが気になって話しかけてきた。ここでシンはどう答えようかと考え込んだ。自身について彼女たちに伝えていることはこの世界に人間じゃないということだけだ。そして死ぬことで他の時代に飛ぶことができるなんて言ったらそれはそれでおかしい。そう悩んでいると彼女は転生について信じている人と言っていたことを思い出し次のことを喋った。
「あー、魔法以外で時間に干渉できる現象?についてだ」
間違ったことは言っていない。タイムトラベルの発動条件はとにかく魔法以外で時間干渉が発生している。つまりそれについて記されている書を見つければ何か手がかりになると考えた。
「時間に干渉、それも魔法ではなく現象。すいません、私はあまりそういったものは詳しくありません。ですが時間干渉についての書が整理されている棚はあります。こちらです」
ミューが案内した場所はまたずっしりと厚い本が並べられている棚だ。だが、一つずつ見ていくと確かに時間干渉について書かれていたがどれも魔法だ。この多くの本から一つの条件にある本を探すのは骨が折れる。だが、彼女のおかげで無駄な所を調べる必要はなくなったことに感謝したところ彼女は顔を赤らめお辞儀をして隠れてしまった。意外とかわいいところがあるんだなと思いながら本を漁った。
◇
あれから一週間が経ったがそれでも条件の合う本が見つからなかった。それに一日中大書庫で本を漁っているのも飽きたため気分転換に城を見て回ろうと思った。当然、ミューも一緒だ。ミューはいろいろとお勉強をしなければならないのだがシンを城の案内人としてお休みといい今に至る、つまりサボりだ。本当にかわいいところがあると内面ほっこりだ。そんなことを思いながら最初に着いた場所は訓練所だ。そこでは鎧を着た人たちが剣を打ち合っていた。「暑苦しいけど頑張っているね」とそんな言葉をかけながら次の場所へ移動した。朝昼晩と料理をする大きなキッチン、客室、王室、医務室、など沢山。そんな中、彼女はあまり行きたくないと言い案内した場所は研究所だという。彼女はシンの後ろに隠れながら部屋へ入っていくと資料は床にばらまかれ大きな水槽には大きな生物が入っておりとにかく汚い場所だった。そう思いながらさっさと出ようとしたらある男に止められた。
「おい、お前。ここは立ち入り禁止だぞ。おや、これはこれは、姫様ではございませんか?」
何か面白いものを見たように笑みを浮かべながらこちらへ寄ってくる人物。名前はトープ。上位を争うほどの研究者らしい。そして、何か思っているのかずっとニヤニヤしている奴だ。彼女がここに来たくないのも納得だ。
「姫様といえば、先日ご勝手に城から出ては大蛇に襲われたとか。お怪我はありませんか? もしあれば私のところへ……」
「行きません、来ません、帰ります」
ミューはササっと部屋から出ていった。それに続くようシンも部屋から出た。その時トープの顔が一瞬だけ嫌な気配を感じた。
◇
最後にお気に入りの場所と言っていた場所はお花畑の庭だった。中心に大きな木が生えていた。ミューはその木の傍に駆け寄りシンに手を振って招いた。手入れされているきれいな花たち、それはカレンデュラだった。風が吹けば花の匂いが飛び、混ざることなく落ち着く匂い。シンは彼女に向かって歩いた。土の音、草の音、風の音、それらを聞きながら彼女の傍へやってきた。
風のいたずらによって彼女の髪で顔が隠れた。彼女はおどおどしながら髪を直すがなかなか整えることが出来なかった。そんな彼女を目の前にシンは自身の手を使い髪をまとめ、ちょうど持っていた柄もなくシンプルなヘアゴムでポニーテールを作ってあげた。
「これで、顔が見えるね」
彼女の顔を覗き込み無意識に微笑む。その顔と距離にミューは赤面するが、今は、この時間を大事にしたいと彼女はシンと共に大きな木の下で座り眠った。




