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EP.2 魔王の娘と少年 前編

(この匂いは森、のはずなのに変わった匂い。それはそうとまたどこかに飛んだな)


 風によって転落死してしまったシン。目覚めれば元の時代に戻れた、なんてことはなくまた森で横になっていた。だが、この森は今まで嗅いだことのない匂いだった。それは木と魔力の匂いが混ざっていた。


「ここは、本当にどこなんだ?」


 シンは起き上がり辺りを見渡すが森だ。そこで一つ分かったことがある。それは空が明るい青ではなく薄い紫色だった。つまりここは自分の世界ではないということだ。そうこうしていても何もならないためまずは森を抜けることを考え適当に歩き始めた。進んでいると爆発音が響き爆風で木たちが揺れた。シンは少し興味心で見に行った。


 爆発地の方へ走っていたら大きな白い蛇がいるのがいた。蛇の視点は何かをとらえていた。それは女の子だった。シンは走ったまま蛇に突っ込んで首めがけて飛び蹴りをした。そしたらシンは貫通しそのまま地面に不時着した。そんなこんなで一人の女の子を救った。


「大丈夫だった?」

「……え、あ、はい」


 戸惑いながらもシンが差し出す手を掴み立ち上がった。女の子はシンと同じ身長で頭には見覚えのある角が二つ付いていた。


「危ないところを助けていただきありがとうございます」


 女の子はスカートを上げ上品にお礼をした。彼女の服装はお嬢様のようなきれいなドレスを着ていた。つまりどこかの偉い人の娘さんだろうとわかった。


「それで、どうしてこんな危険な所に?」


 女の子は少し考え込み、シンに向かって頼み事をした。それはこの先にある花畑まで護衛をしてほしいということだった。報酬は欲しいものをいくらでも出すということでシンは護衛だけならと言うことでこの世界の情報と交渉成立させた。



「私の名前はミューです」


 花畑がある方角へ歩きながら互いに自己紹介をした。彼女の名前はミュー、見た通りの魔族みたいだ。花畑へ行こうとしている理由は母の命日で、母が好きだった花を贈ろうとここまで来たという。


 父には秘密で来ているらしく、花畑へ行くと言ったところ喧嘩になってしまってので黙って来たのだと。


 道中、彼女からこの世界のことを教えてもらった。まずはこの世界は魔界という名ではなく「アトロ」だという。そこで別の世界に来たのかと推測するがそこまで難しく考えなくてよいと判断し次の疑問を考えた。時代が昔なのはわかるのだがそれがどこまでなのかだ。


 ここが魔界と仮定して、人間界と同じ魔法を使う。魔族も人間界もほぼ同じ文明だということは聞いているが、唯一違うのが世界を干渉できるかどうかだ。ミューの話だと『人間界』という言葉は出てこなかったが別世界へ行く方法を知っている者はこの世界の王、つまり『魔王(仮定)』が『人間界(仮定)』への干渉を管理しているため『人間界(仮定)』を知っている人物は彼だという。


 このことから、シンがいた時代より昔で、そう遠くはない過去だということが推測できた。そして疑問が一つ浮かんだ。彼女に人種について聞いた時、彼女は『魔族』ではなく『亜人』と答えた。 


 ならばここは『魔界』ではなく別の世界に飛んだということになる。ならばその『魔族』の特徴である角はなんなのか。そんなこんなで考えているとミューが行きたがっていた黄色とオレンジ色の花が広がっている場所へ出た。


「父から聞いた話なのですが、母はこの『カレンデュラ』って花が好きだと。この花の花言葉はネガティブなものが多いのですが、母はこの花の「輪廻転生」って意味が好きだとか」


 ミューの母は、生命が死んだあとは新たに生まれ変わると信じていいるのだと。転生は確かに存在する、証拠として自分がそれを体験している。本当に信じる人もいるのだと思いながら彼女の花摘みを見ていると空から槍が何本か降ってきた。シンは槍を掴もうとすると槍は意思を持ったように飛び回り、彼を囲うように止まった。槍が飛んできた方を見ると大きな鳥に乗った男が一人いた。警戒していると。


「お父様! 待ってください、彼は私の命を救ってくれた人です!」


 ミューの父であった。見るからにものすごいオーラを感じる。そんなことを感じながらシンは大きな鳥に掴まれ、どこかへと連れていかれたのだった。



 どうも、シンだ。数時間前、ミューという『魔族?』の少女を助け彼女の依頼で花畑へ送った後、彼女の父親がやってきてぜひお礼がしたいと大きな鳥に掴まれミューの家へと来た。それは、大きなお城でシンは王室のような場所で、目の前には足を組み、片手で頬をつき威厳を見せている人物、それはミューの父、そして――


「まずは、礼を言おう。俺の名はメディクス・ファートム。この世界の王だ」


 見ればわかるオーラ、見るだけでわかるだろうという威厳。正直、適当に理由を言ってその場から去ろうと考えたが王からとんでも発言が飛んできた。


「シンよ、お前に頼みがある。ミューを救ってくれた恩人でもあるお前が、娘の婿にならないか?」


 まさかの夫婦になれという意味不明のセリフに戸惑うシン。命を救っただけでそんな提案を上げてくるこの人は何を考えているのか。彼には自分がこの世界の人でないと伝えたがそれでも前言撤回せず保留といった形でシンは城に滞在することになった。

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