番外編 シンの王都観光
「王都にこんなカフェ屋があったとは」
ミアとニアとの楽しい楽しい女子会が終わって数日後、一人で行動しているシン。女子会で王都には知らない場所があることに少し興味が湧き、依頼がない時間を使い一人でうろついているとおいしそうな匂いが漂ってくるカフェの前へと止まった。
シンは今、王都を観光している。理由は以前の女子会で王都の観光地に興味が湧いてしまったからだ。ミアとニアには冒険者としての依頼を受けてもらうため別行動中、なので今は一人、依頼のない時間は特にすることはなく、レナードたちは依頼で王都にはおらずレイラの魔法研究の手伝いもなく暇なのだ。なので王都を見て回ろうと思ったのだ。
ルートは女子会で回った場所とは違う方角へ歩く、それだけだ。だからと言って何かがあるわけじゃない。歩けば人とすれ違い、露店を構えている人たちが客を捕まえよと宣伝をしている。そんな中を歩く。子供が目立つ大きな木の周りで木の棒を振り回し冒険者ごっこと言って戦いあってその光景を嬉しそうに見守る親たち。実はこの場所は冒険者ギルドが開催した[Aランク昇格トーナメント]で起こった魔族襲撃事件。魔族によって生成された肉片の柱によってそれぞれの場所が歩くことも難しい地面へと変わってしまった場所が、今はこうしていつもの日常を送れるぐらいに回復しているのだ。そんな光景を見るだけ、何か買うわけも、話しかけるわけもなく、見てそのまま歩く。そうして王都を歩いているといつもまにかお昼になっていた。そこでおいしそうな匂いが漂っているカフェの前へと足を止めた。
「王都にこんなカフェ屋があったとは」
匂いに誘われたようにシンはカフェ屋へと入っていった。扉を開けるとカランコロンと鈴が鳴り中は静かで暗すぎない、明るすぎない落ち着きのある場所だった。
「いらっしゃいませ、お好きなお席へどうぞ」
厨房にはきれいなお姉さんがコップを洗いながらやさしく案内してくれた。だからシンはカウンタ―席に座った。
メニューを見ていると面白い名前の料理に目が入った。
「注文はお決まりですか?」
ちょうどお姉さんが注文を聞きに来たので目に入ったこの「カレンデュラ」を頼んだ。
数分後、出されたのはサンドイッチだ。具はいたってシンプルのシャキシャキする野菜に少し硬いトマト、そこにふわふわ卵に甘いドレッシング。シンは一口、また一口食べているが手は止まることなく食べ続けている。
「そんなにおいしそうに食べてくれて嬉しいわ」
お姉さんの声でようやく自分が夢中で食べていたことに気が付いた。
「おいしいです、そういえば、この”カレンデュラ”って名前、なんですか?」
「それはね、実は私もわからないの。花の名前を取ったんだけど、この名前はどんな図鑑でも載っていないの。ほら、あそこに飾っている花の絵、あれがカレンデュラ」
そういってお姉さんは店内に飾れている黄色とオレンジの花がいくつも描かれている絵を指した。とてもきれいだった。
「みんなはあれを”キンセンカ”って言っているんだけど、この絵は物心がつく頃には自分で描いていたらしわ。そこにその名前が書かれていたの」
「それだけ花が好きだったんですね」
サンドイッチを食べ終わり、ドリンクで頼んだコーヒーを飲みながらお姉さんの話を聞きそれだけ花が好きだと感じそう答えたが彼女は少し困ったように答えた。
「いえ……確かに花は好きだけど、この花は何か特別なものを感じるの」
「……不思議ですね」
コーヒーをすすりそう答えるとお姉さんはくすりと笑い「そうね」と言ってくれた。そんなこんなでお昼を済ませてお店へ出ようとしたらお姉さんに呼び止められた。
「そういえば名前、聞いていなかったね。私の名前はアルよ」
「俺の名前はシンだ、また来るよ」
シンは名前と別れを告げ、アルが経営しているカフェ屋『アムネシア』を出た。ちなみにアルさんはこう見えてまだ20代だそうだ。まあ、どうでもいい情報だけどね。
番外編 シンの王都観光 完




