第四十四話 最下層の魔物、粛清、そして瞬殺
「それじゃあ、お前ら、お待たせ。いこっか?」
落ち着いたところでいよいよ彼らの粛清を実行する。顔は笑っているところは見えないが多分笑っているのに声が笑っていない。頭は三つあるため宙に浮かせ運ぶことにした。少し面白い光景になってしまったが別にここには俺たちしかいなく気にすることなく最下層の道へと進んだ。
「あなたが蘇るのはわからなくはない、だがこの奴隷たちが生き返るのはおかしい! 主を殺すとその奴隷も死ぬ、どうして!」
「チョーカー型アーティファクトは主に危害を加えると発動しそれに見合わせた苦しみが来る。そして俺が死ねば相手も死ぬ。だが、それは主である俺は解除することができる」
前から解除されそのままの状態だったのだ。いつからだろうね?
「あなたは何が目的だったの?」
ビービー喚く頭が暴れている中でミアが魔族の頭に彼の目的を聞き出そうと話しかけた。ミアやニアたちには簡単にグルとだけ伝えたのだがそれでも本当の狙い、それは彼女たちの嗅覚が感じる彼らの匂いを知りたかったのだ。
「ふ、そう簡単に教えるわけ――」
「答えるよな?」
白状しない魔族の頭を鷲掴み力を入れ鳴ってはいけない音が一本道に響き渡ってしまった。これでも一回潰してまた蘇らせることも可能だがあまりよくないとのことで力加減をしてこれだ。
「わか、わかったから! 私の目的はただ一つ、獣人を使い人工で呪いのアーティファクトの生成だ!」
魔族が住む魔界の中で上位を争う研究者だと。彼の研究内容は人工的に呪いをアーティファクトに付与。そもそも呪いは人工的に付与することは不可能。だが、あることをすることで可能になる。それは、呪いを扱う魔物だ。だがそれはその魔物しか使うことができず他人が利用することは無理だ。だからこの魔族は呪いを自分の手で使えるように研究をしていたのだ。そして人間と動物に近い獣人に目をつけた。獣人はプライドが高い生物でもあるためそのプライドを利用した拷問、この魔族にとても強い憎悪を向けさせてから殺し、その憎悪を呪いといった形で利用する。これがこの魔族の研究内容だった。
「だが、もうこいつの計画はここで終わる。いや、俺たちが終わらせる」
徐々に下へと続く階段を降りてついに奥からただならぬ魔力を感じる場所へ辿り着いた。気配を察知してここが最下層であり上の奴らとは桁ならない魔物がここにいることがわかった。
「ま、待て! 最後にチャンスをくれ! ここにいる魔物の情報をやる、それで見逃してくれないか!」
魔族は最後の最後に必死に命乞いをした。こいつはここに住み着いているそうで迷宮内の魔物は全て把握していると。だからディたちが魔物との交戦などの跡がなかったのはこの魔族が魔物に指示を出し安全に下の階層へと進んでいたのだ。彼らの契約内容はディたちを迷宮で安全に攻略することができる代わりに研究材料の獣人を提供することだそうだ。
「そんなことしてももう遅い」
「お前たちは、もう死んだも同然」
ミアとニアは魔族の提案を拒否した。当然だろう。獣人族が呪いの研究を材料にされてそしてこれ以上の犠牲を出さないためにもこいつは今ここで死んでもらうのだ。
「悪いけどミア、ニア、最下層にいる魔物は――」
「そうだろう、そうだろう! 情報が欲しいよな? ここにいる魔物は脅威だ、無知で挑む相手じゃな――っぐ!?」
最下層の魔物がいるエリアの前でやる気満々の二人には申し訳そうに言おうとした瞬間、魔族に会話を遮られ少し怒りを露わにして魔族の顔をまた掴んだ。
「別にそんなのいらない、ただ二人には悪いけどここの魔物は俺にやらせてくれないか?」
二人はもう回復したからやる気満々でいるがシンは最下層の魔物との戦闘は控えてもらおうとした。当然二人は疑問を抱く。ここまで来てただ見ているだけと言われ納得いかないのだ。昔の彼女たちならそんなことなど聞かず共に戦うというだろう。だが、シンと共にしてわかったことがある。それは彼が彼女たちに命令をしているのではなくお願いしているということを。
「わかった、その代わり後で愛でて」
「ちゃんと帰ってきて、聞きたいことが山ほどあるし」
彼女たちはシンのお願いを承諾した。その代わり彼女たちの要求が少し忙しくなりそうだと肩を落とした。ここでディは疑問が浮かんだ。このような体にしてここまで連れてきた理由がわからないと。
「シン、私たちをここに連れてきた理由がわからない。私たちをギルドに追放するのか?」
ディは冒険者ギルドに追放され冒険者の資格を失い投獄生活があるのだと思っているらしい。それならガイも同じようにしたのも納得がいき魔族は魔界について聞き出すことができる。そう勘違いされているらしい。シンの目的は一つ。彼らに粛清を与える、と。
「まあ、見てればそのうちわかる」
そう言って最下層の魔物がいるエリアへと入っていった。
◇
最下層のエリアには巨大なドラゴンが眠っていた。ドラゴンは蹲って寝ているのにそれでもという大きさであるためエリアも広い。ドラゴンの体には迷宮に住み着いている魔物特有の魔力のクリスタルがたくさん生えていた。
「こいつを狩るなんて、それもソロで。なんで私たちを連れてきたのだ? って、無言で歩くな!」
ディはこそこそとシンに語りかけるがシンは無視をしてドラゴンの元へ進んでいった。魔族はもう絶望の顔で喋る気力がなくガイはドラゴンを見て戦意喪失しているのだ。もう耳元で浮いている頭がうるさいのでもうドラゴンを起こすことにした。
「なら、これでお前がこそこそする必要はない、な!」
眠っているドラゴンに目掛けてそこらにあった石ころを見えない速度でドラゴンの硬い部分にぶつけた。痛みに起き上がったドラゴンは怒り狂った咆哮を放ちエリアが震えた。そんな脅威のある魔物相手に勝ち目はない。そう思ったディは震えた声でシンに退却するよう促すが彼は何か勘違いしているのだと。
「さっきからお前、生かしてもらう前提で話しが進んでいないか? まあ、今からお前らがどうなるか、こいつで見せてやるよ」
「は、ち、ちがうのか? お、おい! ガイを掴んで何をする気だ!!」
シンはガイの頭を掴みドラゴンの真上まで飛んだ。ドラゴンは飛び上がったシンを目でおい空中状態のシンを落ちてきたところを噛み砕こうと大きく口を開けた。これがシンの狙いであった。大きな口、この口目掛けて手に持っているものを投げ飛ばしても外れることはないちょうどいい的である。
「それじゃあ、お腹の中で罪を償え――よ」
彗星のごとくガイの頭は風を受けながらドラゴンの口の中へと放り込まれた。これを見ていたディと魔族はただ唖然とするしかなかった。こんな死に方があっていいのかと。わざわざ生き返らせこんな姿にさせといて結局は殺される。これはもう諦めるしかないと彼らは悟った。
「さて、次はどっちからがいい?」
力を入れすぎたせいかドラゴンが少し苦しんでいる。そりゃあ勢いある頭が口の中に入っていったのだからそりゃあ痛いわけですね。そんな余裕ができたので次に餌食になる相手を決め始めた。鬼じゃないのできちんと選択肢を与えた。だが結局は死ぬのだとわかっているので答えてはくれない。
「ま、わかりきってるみたいだから今度は同時にいこっか」
そんなことを聞いていても相手は待ってくれない。ドラゴンはよくもやってくれたなと口を再び大きいく開けるが奥から真っ赤な何かがあった。それはどんどん大きく、そして周辺が赤く照らし始めた。これはドラゴンの攻撃の一つであるブレスだろう。だが頭を突っ込ませるより好都合なことが起きた。ならすることは一つ。シンは二人の頭を掴みドラゴンのブレスが発射される直前までまった。
「お、おい! 馬鹿なことはやめろ!! そんなことしたら、あなたも巻き込まれぞ!!」
「やだ、やだ!! まだ、まだこんなところで死んでたまるか!! 私は、まだ私には魔王様に貢献しなければならないのだ! こんな、こんなことで死んでたまるか!!」
ブレスの前触れ、赤い球体がフレアを発生させながらどんどんと大きくそしてドラゴンも準備は整ったらしい。それならば時間はもうない。彼らの命乞いもここでおしまい。結局この魔族の名前も、ディたちが魔族と手を組んでまでやろうとしたこともどうでもいい。なので潔く消えてもらいましょう。
「では、長い長い地獄の道のりだと思いますがご達者で」
ドラゴンはブレスを放った。一瞬だけ時間が止まったような感覚に襲われその後猛烈なブレスがシン一直線に飛んできた。だがそんなブレスを避けるわけもなくディと魔族を勢いよくブレス目掛けて投げ飛ばした。二人は最期に叫んでいたがそんなのも一瞬で聞こえなくなった。そしてシンは右手を突き出しブレスを受け止めた。ブレスは数本の線へと分かれあちこちに飛び散った。
ブレスは次第に止み、高熱だったようで地面が赤く抉れていた。それほど威力だったのにかかわらずシンは無傷、熱さも感じずただすごかったなとしか思っていないのだ。ミアとニアは何が起きているのかわかなず茫然としているが彼女たちには耐熱やブレスが飛んいっても大丈夫なよういろいろ結界でまもっている。
「それじゃあ、さっさと終わらせる」
一言つぶやきシンはドラゴンの方へと走っていった。ドラゴンは向かってくるシンを排除しようと大きな尻尾を横へ振った。シンは横から押し寄せてきた尻尾をスライディングするように避けドラゴンの足元へとやってきた。
シンは双剣を瞬時に作り出し切りつけながら登るように素早い速度で螺旋状にして背後へと飛んだ。今回はドラゴンを狩っても何も問題ない。ならば宣言通りさっさと終わらせる。そうシンは双剣に力を入れクロスするよう刃を飛ばした。
一回転しシンは地面へと着地した。次の瞬間、ドラゴンはボロボロに崩れ落ちていった。ドラゴンは振り向くことできずシンは一撃ももらうことなく終わってしまった。




