第四十話 迷宮攻略の前ぶれ
「はぁ眠いぃ」
「王様、許さん」
早朝、城の門の前でミアは寝足りなくあくびをしニアは王様に憎悪を抱いている。そんな彼女たちを見てシンはくすりと笑ってしまう。
そんな二人を見ていると急に険しい顔を変わった。シンが笑ったことが原因かと思ったがシンの後ろに隠れてしまい違いとわかった。その視線の先には二人の男がこちらに歩いてきたのだ。
「彼らが今回の迷宮攻略の共同者ってやつかな……ってちょっと引っ張りすぎじゃない?」
シンが挨拶でもしようと彼らの元へ行こうとしたら彼女たちに身動きが取れないほどに掴まれていたのだ。そんな状態で気づけば男二人がシンの前に来ていたのだった。
「あなたが一年もしないうちにランクAになった冒険者ですか?」
「ああ、そうだけど」
一人がシンを知っている口で話しかけてきた。それでシンは今回の迷宮攻略の共同者は彼らだとわかった。
「俺の名前はガイ、戦闘系で主に先陣で戦う」
「どうも初めまして、ディです。私はサポート系でバフ魔法で彼を支援しています。どうぞよろしく」
パーティー名『ウィッシュ』。二人で組んでいる冒険者で戦闘担当とサポート担当と人数がこれだけしかいないのにAランクまで来たということはそれなりの実力者だとわかりディから手を差し出し握手を求めてきた。
「俺はシン、今日はよろし――」
シンは名前を言ってディの握手を交わそうと手を伸ばした瞬間、ミアからその手を掴まれぎゅっと抱きしめられてしまった。
「私のご主人様に触れるな!!」
ミアは二人を威嚇するよう睨みシンの手を強く抱きしめた。まさかの行動にシンも驚いているがニアもびっくりしていた。
「おっと、それは失礼しました。お、王様がお見えだ」
ディはミアに威嚇され手を引っ込め握手を諦めた時、ちょうど王様が門から出て来たのでディとガイは挨拶をと王様の方へ歩いて行った。
「えっと、ミア? いつまで掴んでいるつもり? それに――」
「なんでもない! なんでもない!!」
シンが声を掛けさっき彼女の口から出てきた言葉について聞こうと思った瞬間、腕を振りかざし暴れ出した。
「私の――」
「わーーー!!!! わーーーー!!!! うるさい!!」
ニアが喋り出そうとしたらミアが彼女の口を押さえ顔を赤ながら大声を出した。そんな光景に少し癒されたシンは彼女たちを後にして王様に挨拶をしに行こうとしたら今度はニアにしがみつけられた。
「あの男、話す価値ない」
「……王様に挨拶しに行くだけだよ? はぁ、この先が心配だ」
たぶんガイとディのことを言っているのだろうか。そんなこんなで一応王様に挨拶だけはでき馬車の荷台に乗り込んだ。馬車の荷台は思ったより広く間隔があったためガイとディは奥の方へ行ってもらいシンと彼女たちは出口の端っこで確保されるように座ったのだった。
◇
「それじゃあ、それぞれ魔物を見つけ次第、片っ端から、狩っていって、最後に一番下の最下層で、落ち合おう」
「ああ、それで問題ない。それはそうと、大丈夫なのか? その……」
馬車で迷宮の場所までの移動中に迷宮での計画を話し合っておりシンが別行動で攻略し最後に最下層で合流する流れで実行すると決めたのだが彼らと話すだけでも嫌なのかミアとニアが口を押えるように手が飛んで来ており避けては塞がれ避けれは塞がれの繰り返しにディに心配されてしまったので彼女たちは単に嫉妬だと伝え迷宮の目の前までやってきたのだった。
「それじゃあまた後で」
「へ、お前らみたいなのはすぐ死ぬんじゃねえか? まあ、せいぜい頑張れよ」
そういって彼らは迷宮へと入っていった。
「俺たちも行きたいけど、どのくらい待てばいいの?」
彼らに続きシンも行こうと思っていたが案の定、彼女たちに足止めを食らっている。
「あの人間たちは警戒以上にまず接触することすりゃダメ」
「もう、取り返しのつかないところまできてた」
強い意地だった二人がこんなにも震えているほどだった。
「大丈夫、俺がお前らを守ってやる。約束だ」
手を振り払われるなと思いながら猫耳が垂れた頭を撫で落ち着かせようとしたら彼女たちはその手を受け入れ、彼女たちは顔を赤ながら撫でられていた。
「それじゃあ、俺たちもいこっか」
「迷宮攻略が終わったら……」
「また、撫でて」
そんなに撫でられることが気に入ったのかとそれほど心を開いてくれているのを感じたシンは彼女たちには気づかれない笑みを仮面の下でしてそのまま彼女たちと迷宮へと入って行った。




