第三十四話 それは真実であり嘘である
「それから俺は10歳になって獣人の国の儀式を受けた。そしたら『コントリブス』で国の力になれる者として選ばれたから俺は冒険者になることを選んで今でも姉を探しているんだ……」
『コントリブス』は宮廷で働くということを指しておりいわば力を持つものとして選ばれ、その中で主に 『魔法師』や『騎士』などの職につけることができるのだがその意味は力を持つ者としてもいわば簡単に略されたものである。そのため宮廷に働かなくれも冒険者は王族の騎士と言われているため冒険者もなれるのだ。
「それで外に出て姉の捜索、その際に偶然出会ったレナードたちの協力を得て捜索範囲を拡大と、まあ、なるほど、ね……」
「だから、シン。無理にとは言わないが、もしよければ彼のお姉さんを探すのを手伝ってくれないか?」
レイの話を聞き終え整理をしているとレナードから協力を頼んできたのだ。だが、シンはその時「あ」っと記憶が呼び起されたような声が漏れてしまった。そして、レイに決定的な質問を聞いた。
「……お姉さんの名前って、もしかして、カナリア、か?」
その時レイの目が大きくなったのが分かった。
「どうして姉さんの名前を? やはり姉さんに何かしたのか!」
つまりレイのお姉さんは誰なのか、それはシンであるカナリア、つまりレイのお姉さんは自分であるということ。
シンはここで決断をしなければならないと思った。それは今ここで自身の正体を明かすかどうか。ここにはレナードがいるが彼は信用できる人間であるため、彼ならば正体をばらしてもいいと思ったがそれでは自分の目的も話さなければならないと思った。ならばレイには申し訳ないが黙っているのが正解だと、だが匂いを嗅ぎ分けることのできる彼にどうやって騙すか。そこでレイが首に掛けているペンタンとに目が入った。
「……そのペンダント、もしかしたらこれにカナリアの匂いがついていたんだと思うぞ」
そこでシンは自身が首に掛けていたペンダントを取り出した。それはレイが掛けているペンダントと形は同じだが色が違うものだ。そのペンダントはこの世でたった二つしかないペンダント、それはカナリアが弟にプレゼントした自作ペンダントである。
「思い出したよ、カナリアって女の子を」
「姉さんに、会ったことがあるのか?」
レイは信じられない顔でシンを見る。それは姉が今でも生きているとわかり今どこにいるのかを暗示ているのだ。
「会ったことがある、11年前だが」
シンはレイに嘘の話をすることにした。
それはシンがカナリアを助けたという嘘の話を。11年前、旅をしていると一台の馬車が停まており道を聞こうと尋ねたところ馬車には大きな鉄格子で作られた箱に一人の少女がいたという。それがカナリアだったという。彼女はひどい熱だったから解放し面倒を見ていくうちに旅を共にしていた。本来であれば獣人の国へと送ってあげようとしたのだが儀式で失敗し追放といった形になったという。だから国へは戻らずそのまま強くなるために旅をすると言ってどこかへ行ってしまったと。その時にペンダントを受け取りもし弟に会ったら私は生きているから安心してと言って渡してほしいと言われたと。これは真実と嘘を混ぜた作り話だ。
「姉さん、生きていてくれたんだ。よかった、よかった……」
シンは椅子からレイを解放しペンダントを渡した。レイはその場で泣き崩れペンダントを握り占めた。
◇
「落ち着いたか?」
「姉を救ってくれて感謝する、そしてあの時あなたを切りかかろとしたこと、本当にすまなかった」
それからレイは落ち着きシンに感謝と謝罪を言ってきたのだ。
「……それはそうと、これからかどうするんだ?」
「一度実家に帰る。これを聞いて国は何かを隠していると感じた、いや、何かを隠している。だから俺は姉が生きていることだけでも両親に話て策を練ります。だから――」
レイは国の闇を暴くため一度国へ帰ると言った。その時、彼から手が差し掛かった。
「その時は、助けてくれますか?」
「……その時が来たら、な」
シンは曖昧な回答をし握手を交わした。
偶然の出会い、それは11年ぶりの弟との再会。あの頃の弟は姉を失い悲しみから今の彼がいるのだと感じてしまい、今でも抱きしめてあげたいがその気持ちを我慢し、いつか必ずその時がくるとレイと別れた際に、彼の背中を眺めながら心の中で思った。
「お客さん、もうそろそろ帝国につきますぜ!」
馬車に揺られている中、一人の男を起こす。
「ここまでありがとうございます」
「これが俺の仕事だぁ、お前さんも乗ってくれてありがとよ」
そんな会話をしながらシンは王都を出て数日、帝国の前へと来ていたのだ。目的は今後の仲間としての奴隷を買うこと。それはいかにどれだけ奴隷がシンに信頼を持てるのかが……
第三章:完




