第三十三話 姉を失ったあの日
「……」
「……い? レイ?」
一人の少年は家の屋根に登り空を見上げ誰かを待っているように眺めていたのだった。そこへ女性の声が聞こえた。
「レイ? そこにいるの?」
「……(こくり)」
それはレイのお母さんだった。レイのお母さんは外に出てきて息子を探していたようでそれに気づいたレイは顔を出し頷いた。
獣人の子供は活発的に話をしたり好奇心旺盛なのだが、レイはよく希にいる無口であまり感情をあらわにしない少年なのだ。
そんな少年は他の子どもたちとは遊ばないため屋根の上で青い空を眺めることが好きなのだ。ここは大好きな姉が教えてくれた二人だけの秘密の場所。今日は獣人族が10歳になった際に、獣人が住んでいる大きな国『ティア』では独自の儀式が行われるのだ。それはこの国に貢献できる人材を分けるためのいわば階級審査である。それを受けることになった姉の帰りを待っていたのだ。
屋根に登り何時間も空を眺めているのに姉は一向に帰ってくる気配がしないのだ。姉と同じ歳の子供たちは帰ってきているのに姉だけが今だ帰ってきていな。レイの嗅覚は他の獣人よりも優れているため姉が帰ってくるときの匂いがしないのだ。
不審に思ったレイは屋根から降りて姉を探すため屋台のある広場へと向かった。
◇
「……」
レイは姉のことだからここで道草をしていると思い屋台で盛り上がっている人並を避けながら姉の匂いを探ったが屋台の匂いもありうまく探すことができないのである。
「……(お姉ちゃん、どこ?)」
レイはだんだん不安に押しつぶされそうに心が締め付けられた。
そこに一台の馬車が通りすぎた。荷台には何かを運ぶため大きな布が被せられていた。そこで一瞬、ほんの一瞬だけ姉の匂いがあったのだ。
「……!」
馬車から流れた姉の匂い、それはあの馬車に姉が乗っているということ。レイは急いでその馬車を追いかけた。だが、馬車はどんどんと距離が離れていき小さくなっていったのだった。
「……はぁ、はぁ(お姉ちゃん、どこ行くの?)。 ――あ」
レイは手を伸ばしながら馬車を追いかけるがそれもかなわず、つまずきその場で躓き倒れてしまったのだ。
「……お、ねえ、ちゃん……」
レイはそれでも姉を追いかけるため立ち上がろうとしたが限界が来てしまい気絶してしまったのだ。
その日、突然の雨、それはレイを濡らすように降り注いだ。
その後、姉の帰りが遅いと感じ母が探しに来たところ地面に倒れているレイを発見、病院へと運ばれたのだ。それからは姉の捜索を獣人の国のギルドに捜索依頼を出すものの見つからず。レイは部屋で涙を流しながら姉を呼び続けていたのだった。




