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第三十二話 獣人の少年

「お久しぶりですね、シンさん! まずはAランク昇格おめでとうございます!」

「ありがとうございます、クルミさん」


 シンは帝国へ行くため馬車などの手配をするために冒険者ギルドへ訪れていたのだ。その際にもシンはいつもお世話になっているギルドの受付嬢でもあるクルミからシンがAランク昇格にお祝いの言葉をいただいた。そう、クルミと会うのは実は一ヶ月ぶりなのである。理由は単に依頼を受けずに他の人たちとやることでいっぱいで受付窓口までくることはなかったからであったのだ。


「それでシンさんは今日はどのようなご用件で?」

「実は帝国へ行きたいんだけど、ここで馬車の手配ができると聞いたんだけど」

「はい、帝国行の馬車ですね。そうなると明後日の早朝に出発するのがあります。ただ、帝国行の馬車は少ないので行くならその日にした方がいいですけど」


 帝国はここ王都から馬車へ移動すると約四日もかかるという遠い場所にあるため馬車の出る回数もすくないのである。


「ああ、問題ない。明後日の馬車をお願いできるか?」

「わかりました! では、今すぐに馬車への書類を用意しますね!」


 そういいクルミは嬉しそうに書類を取りに奥へ行ってしまったのだ。その書類は、サインをし明日に王都に到着する帝国行の馬車の運転手に渡すことによって予約と言ったシステムの役割を持っているのだ。


「お待たせしました、これが帝国行の馬車への手続き書類です! こちらにサインしていただきましたら私が明日に来る運転手さんに渡しておきますので!」

「ここにサインね、――はい、これでいいかな?」

「確かにお預かりいたしました! では、出発は明後日の早朝なので乗り遅れないように。では、よい旅を!」


 クルミはシンの名の書かれた手続き書類を受け取り笑顔で見送ってくれたのだ。


「あれ? シンじゃないか。ギルドになんか用事か?」

「お、レナード。まあね、実は明後日に帝国に行こうと思っていてね。そのための馬車の手続きをしに」


 ギルドを出たシンはある男に呼ばれ振り返ると声の主はレナードであったのだった。


「そんなお前は何でギルドに?」

「俺か? 俺は依頼の現状報告をしにな、――お、きたきた。久しぶりだな、レイ」


 レナードがギルドに訪れた理由を話していると奥から獣人の若い男の子が歩いてきたのだ。


「お久しぶりですレナードさん、今回はどうでしたか?」

「今回もお姉さんの情報はなかった、すまない」


 レナードが言ってた依頼の現状報告、それはレイという少年のお姉さんの捜索依頼なのだと察した。そんなことを推測しているとレイはあなたは誰だという目で睨みつけてきたのだ。


「レイ、この人はシンだ。彼は冒険者になってまだ一年もしないでAランク冒険者になった人だ。それでシン、彼はレイ。獣人の国からやってきた冒険者だ。レイはある日、偶然森で出会って話を聞いて彼のお姉さんの捜索依頼を受けて定期的に報告しているんだ」

「初めまして、レイといいます。年は十四です。狐種(きつねしゅ)という獣人です。よろ――!」

「ああ、俺はシンだ。よろしく――」


 レナードがそれぞれの自己紹介をしてレイは握手を交わそうと手を差し出しシンも握手をしようと手を出した瞬間、レイは急に腰についていた剣を抜きシンに切りつけてきたのだ。シンは避けることができたがレイのあまりの速度に思わず声が漏れてしまったのだ。


「な、何をしているんだレイ! きゅ、急に武器を構えるなんて――」

「貴様、なぜ姉さんの匂いがする! 姉さんをどこにやった!」


 レナードは突然のレイの行動に困惑してしまうがレイは怒りを感じられるほどの声でシンに剣を向けた。


「すまないが獣人の人は王都で沢山いる、君のお姉さんが誰なのかわからないが俺は獣人の人とは関わった記憶もない」


 シンは王都に来てから獣人族を見かけるがそれは目に入るだけで特にコミュニケーションを取ったりとはしていなのだ。それなのにこのように警戒されるとなるといつの間にかレイのお姉さんとすれ違ったかあるいはどこかで話しているということ、だがそれを覚えていない、そもそもその記憶がないシンにとってまずは誤解を解く必要がある。


「まずは話を――」

「お前にそんな話をする必要は――ない!」

 

 レイは冷静を忘れただシンを敵として認識しているため会話が断念するしかないと悟ったシンは、向かってくるレイにため息をつきながら拳を頬に食らわせレイは「ッグハ!」っと声を漏らし壁に叩きつけられたのだった。



「それで、シン。なんでレイを縛っているのかな?」

「また暴れられては話にならないから、これならは何かしらと吐いてくれるだろう」


 その後、騒ぎがでかくなる前にシンは誰もこなさそうな橋の下へと逃げレイを椅子に縄で拘束しているのだ。


「……うぅ」

「お、起きたな」


 ようやく目が覚めたレイは唸り声を出しながら目を開けそれに気がついたシンはレイの目の前へ立った。


「そんじゃあ、全部話してもらおっかな」

「その前にお前からなぜ姉さんの匂いがするのか答えろ!」


 結局は結果は同じく繰り返しなのだった。


「結局はそれか、それならレナードから聞いた方が早い。レナード、なんでこいつはそこまでしてお姉さんのことを探しているんだ?」

「それは……なあレイ、彼に話してもいいかい? 彼なら力になってくれると思うんだけど」


 レイのお姉さんの捜索を手伝っているレナードならば知っていると思いレナードに聞くことにしたがレナードはレイを説得することを選んだ。これは相当な件なのだとわかった。


「……わかった、だが条件がある。すべてを話したらお前から姉さんの匂いを探る」

「えぇ、なんかやだ。でも、このまま逃げても結局は追いかけてこられるのも困るし、わかった」


 レイの条件をしぶしぶ承諾しシンはもう一つ置いたあった椅子に腰を掛けて話を聞くことにした。それはレイがまだ四歳だった頃の最後の姉の話を。

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