Who is the 6th writer(s)? その6
文芸部の品評会。エントリー作品が6作品に増えている。
そんな中、主人公、雨乃の知り合いで、部員の相川が混入作品も含めて評価すべきではと先輩に提案されたことにより、混乱が収まり、評読が始まる。
前半3作品を読み終えた雨乃。いよいよ評読後半が始まったー。
品評会、後編第一作目は、『西方旅行記』。どんな物語が待っているんだろう。私は原稿を読み始める。
《西方旅行記》
『世界が割れて、五年。そこにあったはずの青い海と広がる水平線は、突如、漆黒の深淵へと姿を変えた。若き冒険家ロジャー・ウィークスは、いよいよ未知の境界の先を冒険するー』
あらすじはこうだ。五年前。世界を隔てていた大海が消え、突如として底知れぬ深淵が現れた。ひとり冒険家がその謎を探るべく、深淵の調査のために立ち上がった話だ。
若手冒険家として名を上げ始めたロジャー・ウィークス。出現以来、謎となっていた深淵世界を知るべく、学者や冒険家たちに話を聞き、情報を得るために調査に踏み込んだ。しかし、
「何を言っているのだね‥君は。深淵の大半がプレート変動によってできた、果てしなく巨大な裂け目だと言っているじゃないか」「プレート変動? では地震が起こるはずです! それに海はどこに消えたと言うんですか? どうしてあなた方は真っ向から向き合わない!」
ロジャーは意義を立てるも、学者達はおかしな学説を変えようとしなかった。しかし、学者達の表情には違和感があった。まるで、深淵への畏怖でもあるかのように。それもそう。数年前、深淵の先へと調査に向かった冒険家や学者の乗った、飛行船は一向に帰って来ていなかったからだ。
その恐怖を浮かべる学者達を見てもなお、ロジャーの果てなき欲求、挑戦心は、折れることはなかった。自分には、深淵を調べる責務がある、と。いよいよ、ロジャーは深淵へと下降を決意し、徐々に断崖を降りていく。
深淵には、思いもよらぬ光景が広がっていた。すでに深淵に住みつく人々や、断崖案内人なる職を持つ人物。すでに、世界が形成されつつあったのだ。現地の住民達に聞き込みをしつつ、深淵の謎を調べていくと、かつて学者達が話していた、プレートの切れ目のようなものは存在せず、ただ海があったことを示す痕跡しか存在しなかった。
対岸の大陸にたどり着き、住民達に話を聞こう。ロジャーは歩き出す。しかし、海の先にあるはずの大陸へ向かって歩くも、一向にたどり着けない。それどころか、ひたすらに深淵の底に向かうかのように、道は沈み込んでいく。
かつては深海の底だったであろう、深淵の果て。光すら届かず、黒が覆いつくす闇のなかで、深淵の覇者と呼ばれる人物にロジャーは出会うこととなる。
「お待ちしておりましたよ。"最後の希望"」
ロジャーは深淵のすべてを知る。
神は、未来の世界の大陸と、現在の世界の大陸を衝突させることで、人類文明、さらには地球という惑星のリセットを企んでいた。世界が衝突しようとする、まさにその時だった。調停者と呼ばれる未来人の出現により、現在と未来の衝突が止められた。大陸同士の接近を止めるためには莫大なエネルギー必要で、エネルギーの候補としてあげられたのが、まさに消えてしまった海水だった。未来人には、海水をエネルギーに変える技術があったのだ。それにより、膨大なエネルギーを用いて、調停者は衝突を止めることに成功した。
海水のなくなった地球。学者達の唱えていた、世界の海が崩れ落ち、地殻変動によって大陸間が決裂したために失われた、という説ではなく、大陸間衝突を受け止めるために、海はエネルギーとして蒸発し、失われた結果、この深淵が生まれたのだと深淵の覇者は言った。
「神と調停者の力は均衡していて、この深淵が保たれている。しかし、いつ世界が衝突するかわからない状況だ」
深淵の覇者は言う。
「それは、止められないのですか?」
「ただひとつ、あります。最後の方法です。こちらに来てください」
ロジャーは、深淵の覇者に案内され、深淵にわずかに光の元へと誘われた。古びた扉から、人工的には作り出せないほどの明るさが漏れ出ていた。扉をぬける。そこには、飛行船に乗っていた冒険者たちが神に捕縛されていた。
「ここが、神の世界、です」
やってきたロジャーに対して、神は言った。
「よく来た、"最後の冒険者"よ。お前が私を説得できれば、世界の衝突を止めてやろう」
そう。神が調停者により提示された賭けは、すなわち神の世界にやってきた冒険者が神を説得できれば世界が復元される、というものだった。捕らえられた冒険者達はみな、その賭けに失敗したため、捕らえられていたのだ。
神と調停者の取り決めにより、次に来る最後の冒険者が最後の賭けになっており、ロジャーがその最後の冒険者として選ばれることとなるのだった。
「わたしはー」
深淵を取り巻く世界をその目で見てきたロジャー。彼が説く、世界の意味とはー。
この話は、『インビジブル・シティー』とは対照的で、物語をこの短編で完結させようとしていた。先にロジャーの記した『旅行記』という形で結末を見せることで、物語の一部始終を短くまとめきっていた。先に全体像を俯瞰することで、世界観の大筋が理解ができる、というのは良かったけど、一方で、詳細な部分の描写が不足していたり、続々と定義される単語に、何度も読み返すこととなった。
単行本サイズの小説にすることができれば、本の目次の後などに、登場人物紹介や用語解説が載せられるが、新聞の連載サイズのようにぶつ切りにされることを考えると、文章をもう少し薄めるか、もう少し用語を減らすべきかもしれない。しかし、それは、この大きな世界観を縮小化させることとなっていしまい、せっかくのスケール感が無駄になってしまう。正直なところ、新聞向きの作品ではないだろう。
一方、いいなと思った点があった。タイトルが『冒険記』ではなく、『旅行記』だということだ。これは、実際に読んでみて共感した部分で、作品を読み終えた時、ストーリーを通じて冒険が多かったと感じたが、どちらかというと、とてつもない距離とさまざまな世界を移動し、様々な人々と出会って成長したことで、遠いところまで旅してきたなという印象が強かった。冒険でもあるが、その目でたくさんのものを見て学んだロジャーの言葉で、
「危険を冒し、未知の世界を明らかにすることだけが、冒険家の務めではない。そこから学び、何かを感じ取り、自らの糧とすることが冒険家なのだ。冒険は旅だ。歩いて、見て、聞いて。外から得るということだけではない。その地に思いを馳せられたり、その世界の良さや素晴らしさについて考えられる。そうできる人間の本質は今も昔も変わらない」
と説くロジャーの言葉がすごく印象的だった。
私は、総合的な評価を用紙に書き込んだ。
《ダンジョンの向こう側!》
『駆け出し魔法使いアミィは、立ち尽くす。回復役の自分だけがダンジョンに取り残されたこの状況。仲間のためにあたしがすべきことは一体…』
「危ない!」
見上げると、キマイラゴーレムの隕石のような巨大な拳が降りかかっていた。状況を確認する。パーティーメンバーは、あたしを背にして、拳を受け止める体制に入っていた。
衝撃。揺れる大地。砂塵が舞い、一瞬目を覆った。目を開く。そこには傷だらけのパーティーメンバーが今にも崩れ去りそうになりながら、拳を受け止めていた。
「アミィ! 下がれ! お前だけでも逃げるんだ!」
大剣士ゾルディスの纏う白金の鎧は徐々に亀裂が浮かび上がっている。
「そんな。イヤよ! みんなを見殺しなんてできるわけないじゃない!」
目の前に寄り添う死相。高ぶる叫びを放つゴレーム。絶望。
「いい‥から。行け! お願いだから、いってくれよ‥」
獣士ガムランダは涙を浮かべながら、懇願する。お前だけでも生きてくれ。涙はそう語っていた。
「イヤ、イヤダ、イヤダ‥」
目を覆いたい現実。あっけない命の終焉。見殺しの恐怖。その全てがキマイラゴーレムの拳以上の力であたしを押しつぶす。
「も、もう持たない‥」
瞬剣の使い手エルマの剣は歪み、大きな金属音を立て、真っ二つに砕ける。
もう、おしまいなのか。
残されている手段は、ないのか。
『本当に護りたいとき、この呪文を使うのよ。一度きりだから』
遠い昔の光景が頭をよぎった。子猫をいじめる子供達を止めるため、けんかをした帰りのこと。泣きじゃくるわたしを、おばあちゃん褒めてくれた。あなたは守れた。それって、誰でもできることじゃないのよ。言いながら、あたしを包んでくれた。人を馬鹿にしたり、いじめる人間は、人の悪いところばかりばかり見て、いいところや、その人全部を見ようとしないの。"世界を照らす魔女”と呼ばれ、最強の魔女だったおばあちゃんの言葉からは、強い思いが伝わった。
『”盲目"でないあなたにこそ、この術を教えておきたい』
意識を現実に引き戻したあたしは、周囲を慎重に見渡し、範囲を確認した。この術の範囲は、あたしの力では半径三メートルがやっとだろう。耐えるパーティーメンバーに近づき、それぞれに触れた。もう、この術にかけるしかない。
「なにをする気だ、アミィ」
「あたしが、みんなを護る!」
「よせ、無理だ!」
「みんな死んでしまう。行けぇ!」
みんなの大きな背中。いつも守られてばかりだった。
今度はあたしが護る番。
あたしは、杖を構え、呪文と同時に陣を展開した。瞬間、辺りは眩い閃光に包まれ、音を超えた空圧が耳を鋭く鳴らした。
目が慣れると、わたし以外の気配は消えていた。いなくなったメンバーたちを確認する。壊れた武具以外は消えており、どうやら成功したようだ。おばあちゃん、あたし、やったよ。
あたしはゆっくりと膝を落とし、座り込んだ。
術の名は『デュアル・エスケープ』。二つのものを同時に別々の場所に飛ばす禁術だ。禁術となっている理由はただ一つ。コントロールができない人間が使えば、術の範囲次第で、部分的しか飛ばせない場合があるからだ。それが、目の前に広がったソレが実例として告げている。
鮮血を吹き上げ、絶命するキマイラゴーレムの半身。残りの半身は、どこへ飛ばされたかはわからない。ただ必死に、麓の村を思い浮かべ、パーティーメンバーを安全に飛ばす、そのことだけを考えていた。
虚脱感が体を蝕んでゆく。まるで、全身が鉛に変わっていくかのように四肢が動かなくなっていった。自分の魔力を使い果たしたことに加え、最大限のイメージと術の精度に集中したことで、もう残っている力はない。しかし、問題はこれからだ。
この動けない状況から、どうやってダンジョンを脱出すればいいんだ。
仲間が来る頃には、ボスであるキマイラゴーレムが新しく復活してしまう。王座の宝箱を手にしたところで、持って帰るための気力と、敵を倒す力は持ち合わせていない。本当の意味での絶望はここからだ。
あたしが取るべき行動、生きてかえること。
ダンジョンものと言えば、ライトノベルなどでもよくある話。大抵それらの作品の主人公は武器を持ち、先陣切って戦いを挑む側が多い。対して、本作は後衛側である回復役が主人公、という珍しい設定の話だ(最近の作品はわからないけど、私が知っている限りでは知らない)。
仲間たちを救うため、渾身の力を使い果たした主人公アミィ。たったひとり取り残されたのはダンジョンの最深部。動くこともままならないアミィ。ダンジョンのボスの復活が近づく。アミィは持ち合わせのアイテムと、王座の宝箱、そして仲間の残した壊れかけの武具を手にし、ダンジョンから帰還を目指すというお話だ。枚数の都合上、帰還の途中までしか書かれていないが、様々な仕掛けが施されていて、どうやってこの局面を切り抜けていくんだとハラハラドキドキした。
作品を通して、登場人物も多くなく、造語も比較的少ない。また、簡素な文体、一文が短く書かれて、理解がしやすい点が、アクションを止めないような配慮になっており、良い点だと思った。今日読んだ中で、一番読みやすかったかもしれない。これなら、新聞のようにぶつ切りになっても、何とかできるかもしれない。
しかしながら、出だしのイベントのインパクトが極端に強いこと、帰還の途中までのために後半の盛り上がりが出だしに負けている点が、少し残念だった。私は評価用紙に評価を記入した。
いよいよ、問題の六番目の原稿だ。三番目の作品『少女は祈り、花は咲く』と花という点で似ているが、これは何かを意味しているのだろうかと考えてしまう。しかしながら、最後の作品が混入した作品とは限らないという相川君の話もあったので、なるべく先入観を持たぬよう、気をつけながら作品を読み始めた。
《ばなびらのように》
『美しく散りゆく桜の花びらは、今もなお、あの頃の僕の未熟さを思い起こさせる。
もう一度、戻れるなら。戻れたなら。あの頃を僕はどんなふうに踠いていくだろうかー』
世界が壊れたのは、一瞬だった。
小学生最後の帰り道のことだった。中学校への希望と期待を胸に、年の離れた兄、そして幼馴染ハルカとともに喜びを語り合っていた。
「ねぇ、ゆーくんは中学の部活、決めた?」
微笑むハルカ。希望に満ちた笑顔だった。
「バスケ、サッカー。野球もいいな。ハルカはやっぱりバレー?」
「うん。他のも考えたけど、やっぱりバレー! 中学校でも続けるの! 今度こそは全国大会行くんだ」
「そっか。ハルカちゃんは続けるのか。楽しみだな」
学校からの一本道が終わり、交通量の多い交差点に差し掛かる。交差点から伸びる道路にならんだ桜は、雨のように花びらを降らせていた。電柱近くの看板には、飛び出し注意や学童注意などの立て看板があちらこちらに設置されていた。数年前に一度、大きな事故があったりして、テレビニュースでも取り上げられたことを思い出した。
「二人とも。これからは自転車通学になるんだから、交差点は気をつけないといけないぞ」
「わかってるって」
「そういえば、ゆーくんは自転車持ってなかったけど、乗れるの?」
「乗れるよ。ちょ、ちょっとぐらいなら」
最後に乗ったのはいつだっただろうか。正直なところ、三輪車に乗った以降は自転車に乗った記憶がほとんどなく、不安だった。表情を読み取られ、兄は笑いながら言った。
「それなら練習しないとな。中学生にもなって、補助輪は恥ずかしいなんてもんじゃないぞ〜」
「教えてあげよっか? じゃないとみんなで一緒に通えないよ?」
歩行者用信号が青に変わる。悔しさで、足が止まる。はぁ、この先が思いやられる。先に歩き出した二人を追いかけ、走り出したその時だった。
蛇行運転をしながらトラックが轟音を立て、こちらに猛スピードで迫っていたのだった。
トラックが迫り、兄を救うか、幼馴染を救うかの二者択一をせまられる主人公。しかし、幼かったが故に選択を選びきれなかった。その結果として、両方を事故で失う結果となってしまった。
それから十年が経ち、あの日を境に堕落しきった主人公は、何かに誘われるように二人の眠る墓に赴くことになる。
「もう一度戻れるなら、僕は二人とも選ぶため死ねるよ。こんな命、持ってても無駄だって気づいたんだ」
墓標に語りかけた時、狂ってしまった歯車があの日へと巻き戻されたのだった。
あの日、あの事故現場直前に時間逆行した世界が、目の前に映し出された。交差点に林立する桜の時雨。信号を渡り始める二人がそこにはいた。嘘みたいに思えた。しかし、花びらを掬い上げようとした幼い自分の両手が瞳に映る。事実だと理解させた。
あと数秒足らずで事故は起こる。そして…。主人公は、即座に自分を犠牲に二人を救う道を見つけ出し、それを選んだ。体の崩壊していく音を聞き、苦しみ、痛いだきながらも、これで罪を償えたと死を喜んだ。
終わりへと導かれる、そう思っていた。はっと、意識を取り戻すと、また事故直前に戻っていた。なぜだ。二人を救ったはずだろう。どうして時間が遡るんだ。
自責の年にとらわれる主人公は見るに堪えなかった。ここまで、精神がえぐられるような映像を文字で伝えられているのは、すごい作品だと思った。やがて、無限に近い事故を繰り返す中、兄、幼馴染の言葉を脳内で同時に言えるほど覚えてしまっていた。
精神が崩壊してもおかしくない回数を繰り返した時、幼馴染の言葉がよぎった。
「みんなで、一緒に」
気づいた瞬間、視界が歪み、涙が抑えきれなくなっていた。主人公は、ようやく、誰かが死ねば、この事故の繰り返しが終わるわけではないことに気づいたのだった。そう、自分を含めた三人が生きて生還すること、これが二人が望んでいたことなのだった。
苦しみの中、もがくという本作品は、生々しさが群を抜いていた。主人公の心が壊れて様子。主人公の自責の念が、事故を重ねるごとに増えていくため、事故描写がだんだんと詳細になり、挙げ句の果て、慨視感で死への衝撃が薄れていく様子が見て取れた。もうやめてくれと自らトラックに特攻を繰り返し、精神の滅んだ主人公は『また、殺しちゃった』と歪笑を浮かべる様子は狂気すら感じた。
花を題材にした前半の『少女は祈り、花は咲く』とは名前だけ似ているだけで、明らかにベクトルの違う作品だったと思う。描写のレベルは互角と言っていいが、インパクトの強さは群を抜いていたと思う。
すべての作品を読み終え、思ったこと。物語の衝撃が強いほど、そこから伝わってくる思いも必然的に強いものになるということ。それがよくわかった気がした。ふたりから学んだことは本当だったんだなと、評価する立場に立って理解できた。
すべて読み終えたあと、相対的な評価の調整をし、私は伸びをした。
教室備え付けの時計を見ると、時刻は11時半を回っていた。チャイムが鳴る。先輩が立ち上がった。
「よし、そろそろ午前の部は終わりだな。では、午後一時位から結果発表を行うので、各自昼休みにして。一時解散!」
ぞろぞろと一年生達が出て行く中、私は教壇の先輩達のところに向かう。
「どうだった、品評は?」
宮原先輩が声をかけてくれた。
「そうですね。難しかったですけど、どの作品も個性があっておもしろかったです。さすが文芸部だなと思いました」
お世辞抜きで。どの作品にも引き込まれるものがあった。
「好きな作品はあった?」
関先輩が私に尋ねた。
「甲乙つけがたいですね」
「テクニックとか抜きで、物語の世界観だったら、僕は一番最後かもね」
へぇ。関先輩は冒険モノとかが好きそうなイメージなのに。なんだか意外だ。
「意外ね。結構怖い話だったと思うけど」
「そこじゃないよ。怖さを克服して、みんなを助けること、みんなで助け合うこと。そんな、マイナスからのスタートを無事にプラスに転じていけたところがよかったのさ」
「なるほどね。確かにそう考えれば、いい話だね」
「困難はみんなで乗り越えなきゃってのがグッときたよ」
「このあとは、どうされるんですか。お二人で審査、という形ですか?」
「そうだね。ま、とりあえず後は任せて。おつかれさま」
「わたしたちでやっておくから大丈夫よ。雨乃さん、ありがとうね」
「いえいえ、こちらこそ。楽しく読ませていただきました。ありがとうございます。では、また午後からよろしくお願いします」
先輩たちに感謝を述べ、この場を去る。
今日は寝坊して、昼ごはんを用意してないから、食堂でご飯を食べよう。そう思いつつ、教室を出たその時だった。廊下で相川君が待っていた。
「あれ、相川君。みんなと一緒に行ったんじゃなかったの?」
先ほど、一年生集団と一緒に出て行ったから、てっきりみんなで昼食を取りに行ったのかと思った。
「ああ。気が変わってね。雨乃さん、一緒にお昼、どうかな? 話し合いたいことがあるんだ」
先ほどからの流れを考えるとだいたい察しがつく。
「混入作品の話?」
「ああそうだ」
「私も相川君の意見も聞いてみたいしね。わかった。行きましょうか」
「ありがとう」
廊下を歩きつつ、相川君と私は食堂へ向かいながら、話を始めた。
次に続く。
※物語に出てくる作品は、カフカの話の部分を除き、すべて著者のフィクションです。




