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レインズ・ライフ  作者: Atsu
Who is the 6th writer(s)?
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Who is the 6th writer(s)? その4

 とうとう、文芸部での作品審査会の日がやってきた。目覚めた雨乃あまのはいつもとは違う、違和感を感じ取る…。

 学校に到着して会場へ向かうと、既に文芸部員が談笑をしていた。部長の蝶本

(ちょうもと)先輩の代理で、副部長であるせき先輩が、エントリー作品のタイトルを読み上げていくのだが…。

 いよいよ、謎が姿を現します。

 顔は暖かく、小鳥の囀りが聞こえる。朝が来た。何だろう、このいつもと違う感じは。目覚めた瞬間、私は違和感を感じずにはいられなかった。緊張と興奮で眠れなかったことに一因があるのだけど、それだけじゃない。

 正体に気づくには時間はかからなかった。上体を起こし、鳴り響かなかったソレを私は手に取った。目覚まし時計の短針は、設定時刻から一時間後を指していたのだった。

 幸いにも、学校への到着はギリギリではあるが、早起きの習慣のお陰で遅刻はしなさそうだ。いつもならゆったりと取るはずの朝食を牛乳をかけたコーンフレークに変え、いつもの学校指定の鞄から、小さなポーチに筆記用具を詰めた。時間短縮したものの、すぐに登校時間となっていた。

 睡眠不足のため、目の下に腫れぼったさを感じる。徹夜はしない主義なので、久々の感覚ではあるけれど、体もなんだか気だるい。改めて寝不足は駄目だなあと噛みしめつつ、早歩きで学校を目指す。

 生徒玄関に到着し、靴を履き替える。テストや補習で土曜日に学校に行くことはあっても、イベントのない土曜日に学校に行くことはまだ無かった。静まり返った中、ロッカーを開ける音を認識したことに新鮮さを感じる。普段、何気なく利用している物も、そこに存在し、学校を構成しているのだなと改めて感じた。

今日の会場とは、前回に訪問した文芸部の活動教室と同じだ。他の部の活動場所に荷物を持ち込むのは少し気が引けるので、荷物を置いていこうと新聞部の部室へと足を進めた。

 うちの部活ー新聞部は基本的に休日には部会がない。しかし、物好きな先輩がもいて、土曜に部室に来ていることが多い。誰か来ているだろうと、鍵を借りずに部室に向かうと見知った顔に遭遇した。

「黒川じゃん。おはよう。休日に学校に来るなんて珍しいわね」

部室のドアを開けると、いつものように窓際に体を預けて単行本を読もうとしている人物が目に写る。黒川だった。

「何だよ。まるで『俺は休日に学校に来ては行けない』みたいな言い草だな。ともかく、おはよ」

「どうしたの、今日は?」

「ああ、部長と打ち合わせでな」

黒川が窓枠に寄りかかっていた上体を起こす。

「なるほどね。だから学校に来てるんだ」

「ああ。雨乃は文芸部で審査会なんだってな。藤島さんから聞いたけど」

黒川は麻衣ちゃんとは昔からの友達なので、話の流れで聞いたのだろう。私は話をしながら、必要なものをポーチから取りだし、荷物を置いた。

「うん、そう。じゃあ、時間もないし、行くね」

「ああ、頑張ってくれ」

「はーい」

時間に余裕がないので、軽い挨拶だけで済ませ、私はすぐに文芸部の活動場所へと向かった。


 この前に一度訪れた文芸部の活動教室、生徒棟二階の第六選択教室に着く。ノックをしてドアを開けると、すでに文芸部員達が談笑していた。

「失礼します」

「あ! 待っていたよ、雨乃さん」

この前同様、学ラン、スカート姿をした文芸部部長、蝶本先輩が出迎えてくれた。

「ご無沙汰です。蝶本先輩」

矢継ぎ早に、他の先輩方からも声をかけられる。

「おはよう、君が雨乃さんだね。よく来てくれた。僕は副部長の関だ。よろしく。で、となりが同じく三年の宮原だ」

「よろしくね、雨乃さん!」

関先輩は、柔らかな雰囲気の男の先輩で、少し身長が高い。一方、宮原先輩は眼鏡をかけた、元気溢れる女の先輩で、私と同じくらいの身長だ。

「お世話になります」

関先輩が机の方へと向きを変える。

「おーい、一年! 今日、新聞部からゲストとして来た、同じ一年の雨乃さんだ。挨拶しとけー」

「こんちわー」

「こんにちは。皆さん。新聞部一年の雨乃です。よろしくです」

「よろしくー」

先入観もあるけど、文芸部のイメージとは違って、一年生からは元気な返事が返ってきた。ちょっと意外だ。

「まぁまぁ、座って座って!」

宮原先輩に案内され、席に着く。すぐに背後から肩をとんとんと叩かれた。

「雨乃さん、おはよう」

振り向くと、相川君だった。

「あ、相川君。おはよう。昨日はありがとね」

私は昨日の相談の謝意を改めて述べた。

「いやいや、礼には及ばないよ。それにしても、君にしては珍しく眠れなかったようだね」

「えっ、よくわかったね。実は昨日、興奮して眠れなくて。どうして分かったの?」

さも当たり前のように相川君は言った。

「どうしてもなにも、君が隈を作るなんて見たこと無いからね。想像できたよ。楽しみしてもらえてたなら何よりだけども」

なるほど、やっぱり私のクマはみんな気づくのか。朝よりは引いたとは思うけど、目を意識すると、まだ下まぶたに腫れぼったさを感じる。それはさておき。

「どんな作品が読めるか楽しみにしてるよ」

「うん。期待していいと思う。自信あるって言ってるのが多かったから」

「そうなんだ。ところで、審査会が始まるのはいつから? 私、集合時間しか聞いてなくて」

「メンバーが揃ったら始まると思う。あと数人だ」

「意外と人数いるんだね、文芸部って」

既に教室にいる人間は十人近い。

「まだ全員が揃ったのは見たことがないけど、この人数とは他に、五、六人いるらしい」


 部員が揃うまで手持ち無沙汰で待っていると、蝶本先輩に再び声をかけられた。

「では、雨乃さん。楽しんで行ってね。しばらく出てくるから」

「あれ、先輩は部長さんなのに参加しなくていいんですか?」

「今日は大事な会議があってね。午前中いっぱいで終わるから、午後の発表会には間に合うはずよ。だから、ここからは関君にバトンタッチだよ」

そう言って、関先輩の方に振り向く。

「ゴメン、関。後は頼んだ!」

「おっけい!」

蝶本先輩は原稿が入っているであろう封筒を関先輩に手渡し、教室を後にしようとした。その時だった。他の一年生らしき男子生徒が声をかける。

「部長、今日は二年生の先輩って来ないんですか?」

蝶本先輩が苦笑いを浮かべる。痛いところを突かれたのだろう。

「あぁ…。何でも予定があるそうよ」

「そうなんですかぁ〜」

少し残念そうに一年生が呟いた。

「まぁ、忙しいんでしょ。そんなことより、とりあえず品評会、楽しんで!」

「はい!」

 蝶本先輩が手を挙げて出て行くと、関先輩がパンパンと手を叩く。

「よーし、では、始めるぞ! 盛り上がってるかぁー!」

関先輩は教壇から上半身を飛び出させ部員を煽り立てた。

「いぇーい!」

皆が手をあげ叫ぶ。

「ありがとう、ありがとう。では、今年度初の作品審査会を開会する!」

教室は有り余る拍手に包まれた。私はぽかんと一人拍子抜けする。先ほどまでの柔和だった関先輩が、弾けた様子に私は一瞬戸惑う。それに気付いた相川君が声を掛けてくれた。

「うちの部は元気が良いんだ。まぁ、苦手だったら、軽く流してくればいい」

「ううん。こういう雰囲気は楽しいし、私も好きだよ」

説明のお陰で緊張がほぐれた。

 紆余曲折ある、わいわいとした説明だったが、要約するとこうだ。午前に審査を行い、午後に発表会兼表彰式が行われる。作品は五作品で、無記名式だが、全て一年生らしい。審査は、上級生と私が担当で、評価方法は五項目の五段階。専用用紙に記入し、無記名での投票らしい。最終的に、総合得点の高い作品が優勝となるそうだ。優勝作品は、新聞部の新聞にコラボ企画として連載される。実際の評価を行わないが、一年生達も互いの作品鑑賞会ということで、この後、各作品をコピーしてきて配布するとのことだ。

「そうだ。コピーに行く間暇になるだろうから、先に各タイトルぐらいは発表しておこうか!」

関先輩は蝶本先輩から預かり受けた封筒を開封する。

「まず、一作目のタイトルは〜。ジャカジャカジャカ。どどん! 『雨降りダンシ』!」

おお、と歓声が上がる。

「 男子はカタカナ、締めはビックリマーク! 対照的な雨降りというワード! う〜ん実に興味深いね! …続いて二作目。ダンジョンの向こう側! 待望のファンタジーか~!?」

間髪入れず、関先輩はタイトルを読み上げていく。

「続いて三作目。『少女は祈り、花は咲く』 うん、実に正統派タイトル! いいネーミングセンスだ! 続いて、四作目。『インビジブル・シティ』! SFチックなタイトルがそそるぞ~」

教室内のボルテージが最高潮を迎える。

「…では、ラスト! 『西方旅行記ウエスト・トリップ』! アドベンチャーモノか!? いいね!」

「うおおー!」

盛り上がりすぎた歓声は叫び声なってしまっている。休日とはいえ、騒ぎすぎかな。少し思った。

「ではでは、タイトルを公表したところで…あれ?」

関先輩が眉間にシワを寄せた。先輩の周りだけ空気が変わる。

「どうかしたのー! 関くん?」

宮原先輩が手でメガホンを作り、声をかけた。

「待ってくれ。今回、エントリーは一年生の五作品だよな?」

「うん。そうだよ!」

「そうですよ、先輩!」

他の一年生達もうんうんとうなづく。

「これをみてくれ」

関先輩は封筒にもう一度手を入れ、何かを掴み、徐々に右腕をゆっくりと上げる。先程までのハイテンションな様子から一転し、違和感を含んだ歪んだ表情になっている。

 私たちの前に姿を現すソレ。ホラーチックな演出もあって、先程までの盛り上がりが嘘のように教室内は静まり返った。他の部員もうわぁと、悲鳴ともとれる弱々しい声をあげる。

「えっ。どういう…こと?」

私の口からも自然に言葉が漏れた。

 あり得ないと言うような表情で、関先輩の右手に握られていたのは、もう一束の原稿だった。

次に続きます。

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