12.好きなものを好きなように
旦那様と並び立って、並ぶ振袖の数々を一つ一つ見ていく。色とりどりの布地に刺繍された、様々な種類の美しい花々。旦那様が花や柄の説明を説明してくれているにもかかわらず、上手く聞き取れないほどに。見ているだけで頭がクラクラしてしまって、さてどう選んだものか。自分のモノを自分で選ぶのが、こんなに難しいとは。お姉様はいつも、どうやってあれだけたくさんの買い物をしていたのやら。そんなことを思いながら部屋を見渡しているうちに、ふと水色地の振袖に手が伸びた。
「あ……これ……」
「ふむ、良音殿は淡い色が好みか?藤の薄紫もよく合っている。」
「いっ、いえ、その…………」
「どうした?それが気に入ったのでは?」
「えっ……とぉ」
確かに、描かれた藤棚に目を引かれて手に取ったのは事実だ。でも、こんな理由で選んで本当にいいのだろうか。
「その…………好きな、アニメキャラと同じモチーフ、で…………つい。申し訳ございません。ダメですよね、こんな…………」
「気にする必要は無い、良音殿の立派な『好み』だ。さっきも言った通り、畏まり過ぎなくとも良いのだ。そういう選び方で全く構わない。」
そうか、いいのか。旦那様の表情は柔らかく、本心で言っているのがわかる。好きなものを、好きなように選ぶこと。初めてのことだから戸惑っていたが、旦那様が優しく肯定してくれたことで素直に「では、これにします」と言えた。
メインとなる着物さえ決まれば、他の装飾選びはとんとん拍子に進む。
「お着物が淡い色ですので、帯は濃い色で締めるのもお似合いかと。」
店員さんがいくつかピックアップしてくれた中から、紺地に金糸で蝶の刺繍が施された帯に。簪も、蝶と藤があしらわれたピッタリのものを店員さんが見つけてくれた。
草履、半襟、帯締め、帯揚げ、帯留め……振袖と帯に合わせて絞って頂いたおかげで、小物選びはあっという間に終わってしまった。
「想定外のこともあって疲れただろう、今日は帰ってゆっくり休むべきだ。他の買い物は、明日改めて。」
「……はい、ありがとうございます。」
初めて訪れた百貨店や、お姉様との遭遇もあって疲れていたのは事実。私は素直に、旦那様の言葉に甘えさせてもらった。




