第35話:【共鳴】地上の王たちの震えと魔女の招聘
本日も、絶望の深淵へようこそ。
第35話では、天界で完成された「絶望の音楽」が、ついに地上へと降り注ぎます。
天から降るのは光でも雨でもなく、かつての英雄たちが奏でる「終わりのない悲鳴」。それを聴かされる地上の王たちにとって、それは死の宣告よりも残酷な、完全なる屈服の催促でした。
魔女リアナが次に望んだのは、かつて自分を虐げた世界そのものを「観客」として招待すること。逃げ場のない地上で、人々がどのように自らの正気を削り取っていくのか。
その圧倒的な恐怖の伝播と、魔女による「招聘」の儀式を、逃げ場のない密度で描き出します。
天界から地上へと降り注ぐのは、もはや神聖な慈悲の光でも、乾いた大地を潤す雨でもなかった。
空に穿たれた漆黒の巨大な穴――「魔女の瞳」と恐れられるその特異点から、世界全土に向けて鳴り響いたのは、かつての次元の代行者たちが奏でる、脳を沸騰させるような「絶望の重奏」であった。
その音色は、物理的な障壁や魔術的な結界さえも容易に透過し、地上のあらゆる生き物の鼓膜を無慈悲に突き破り、脳髄の奥底に「魔女の愉悦」を直接叩き込んでいく。
「……ああ、この音だわ。ようやく世界が、私の痛みを理解する準備が整ったのね」
地上の小国の王は、かつては金糸で刺繍された豪華な王座にへたり込み、耳がちぎれるほど強く塞ぎながら、幼児のようにガタガタと震えていた。
リアナが火刑に処されたあの日、政治的な保身のために一通の同意書を書き送った彼は、いまや空から降り注ぐ「かつての英雄」の、無残に音階へと加工された悲鳴を、昼夜を問わず聴かされ続けている。
一人が狂えば、その狂気が音の波となって伝播し、街の至る所で人々が自らの耳を潰し、あるいは耐え難い不協和音に合わせて狂喜の乱舞を踊り出す。
そんな地獄絵図が、国境を越えて瞬く間に広がっていた。
天界の神殿のテラスで、リアナは地上から立ち上る、熟成された「恐怖の香気」を肺の奥まで吸い込み、愉悦に瞳を細めながら、虚空に新たな招待状を綴った。
それは紙に書かれたものではなく、濃厚な魔力を帯びた漆黒の霧。
それが意志を持つ蛇のように地上の王宮、教会の聖域、そしてレジスタンスが隠れ住む湿った洞窟へと入り込んでいく。
「さあ、観客を呼びましょう。……この至高の音楽を、一番いい特等席で聴かせてあげなきゃ。私を『呪われた魔女』と呼んで、あの日、競い合うように薪を積み上げた人たちの、生き残りに」
リアナが指を優雅に翻すと、地上の各地から、空間ごと削り取られた「選ばれた者たち」が、凄まじい絶叫と共に天界の神殿へと転送されてきた。
彼らが再び目を開けたとき、そこにあったのは、かつて信仰の対象であった美しき神殿ではない。
柱には生きたまま楽器にされ、神経を晒した英雄たちが埋め込まれ、床にはもはや肉の塊にまで崩れたエドワードとエルナが、粘着質な音を立ててのたうっている。
そして玉座には、この世のどの女神よりも美しく、そして宇宙のどの悪魔よりも恐ろしい魔女が、冷たい微笑みを浮かべて鎮座していた。
「……あ、あぁ……。リ、リアナ様……どうか、慈悲を……お許しを……!」
かつて高潔を謳った教皇が、失禁し、権威の象徴であった法衣を泥で汚しながら石畳に額を擦りつける。
リアナはその無様な姿を、アスタロトの強靭な肩に寄り添いながら、鈴の鳴るような、それでいて芯まで凍りつく声で笑った。
「許す? そんな退屈で無価値なこと、私がすると思う? あなたたちには、この音楽の『歌詞』になってもらうわ。……あなたたちの人生、地位、名誉、そのすべてを費やして、私を称えるための、最も醜悪で最も美しい悲鳴を上げなさい」
リアナが短く合図を送ると、エドワードとエルナの肉塊が、新しい「観客」たちを歓迎するように、全身から肉の触手を伸ばして包み込み始めた。
天界に響く音楽は、新たな生贄たちの、魂を削り出すような声を加えてさらに厚みを増し、地獄の合唱は終わることのない無限(∞)の螺旋へと突入していく。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
第35話、リアナによる「観客の招待」が完了しました。
ただ遠くから痛めつけるのではなく、かつての権力者たちを文字通り「特等席(地獄のど真ん中)」に引きずり出す。彼らが信じていた正義や権威が、魔女の音楽の前ではただの「楽器の素材」に過ぎないという現実。エドワードたちの「歓迎」も、さらに積極的になっています。
次回、第36話:【解体】王冠の重みと魔女の玩弄。
引きずり出された王や教皇たちが、魔女の手でどのように「加工」されていくのか。
地位も名誉も、すべてが絶望の燃料へと変わる、魔女の贅沢な時間にご期待ください。
この終わらない断罪劇、引き続きブックマークや評価、いいねで共に歩んでください。




