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死を賜った魔女、地獄から戻って全てを「呪い」に変える  作者: La Mistral
第5章:【永劫なる魔女の帝国】

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第36話:【解体】王冠の重みと魔女の玩弄

本日も、絶望の深淵へようこそ。

第36話では、天界に引きずり出された地上の権力者たちへの「特別なおもてなし」を描きます。彼らがこれまで自らを定義してきた「王冠」「法衣」「聖印」といった権威の象徴。リアナにとって、それらはすべて最上の苦痛を引き出すための「接木」の素材に過ぎません。

地位がある者ほど、その剥離は凄惨を極めます。

物理的な解体だけでなく、彼らが信じてきた「支配者としての自尊心」が、魔女の玩弄によって無残な「機能」へと作り替えられていく様。

どうぞ、逃げ場のない「特等席」で、その一部始終を見届けてください。

天界の神殿に引きずり出された地上の権力者たちは、いまや自分たちが「何者であったか」を証明する術を持たなかった。


 かつて数万の民をその一言で動かした王は、泥と失禁にまみれた豪華なガウンを無様に震わせ、神の声を独占的に代弁したはずの教皇は、その高貴な法衣を引き裂かれ、冷たい石畳に額をこすりつけている。


彼らが縋ってきた権威や血筋といった鎧は、この魔女の空間では、ただの「脆い殻」に過ぎない。


「……あら、そんなに震えて。せっかく用意した『特等席』なのに、少しもこちらを見てくれないのね。私が火刑台で、あなたたちの顔を一人ひとり、網膜に焼き付けていた時とは大違いだわ」


 リアナが玉座からゆっくりと立ち上がり、一歩、また一歩と彼らに近づく。


 硬い石床を叩くヒールの音。その規則的な振動が響くたび、王たちの呼吸は氷を飲み込んだように凍りつき、その心臓は肋骨を内側から叩き割らんばかりに激しく脈打った。


 彼女が静かに通り過ぎるだけで、床の継ぎ目からは漆黒の茨が異様な速度で芽吹き、王たちの剥き出しの皮膚を愛撫するように、けれど確実にその肉を深く裂きながら伸びていく。


「さあ、まずはその頭に載っている、重たそうな『王冠』から片付けましょうか。そんな不自由なものを被っていては、私の音楽も聴き取りにくいでしょう?」


 リアナが指先を優雅にひらつかせると、隣国の王が頭に戴いていた重厚な黄金の冠が、意志を持つかのように赤く熱し始めた。


「あ、熱い……っ! ああぁあああ! 頼む、取ってくれ! 誰かッ!」


という絶叫と共に、ドロドロに溶け出した純金が王の額を焼き、頭蓋骨に直接癒着していく。



 リアナが求めているのは、単なる拷問ではない。王の誇りの象徴であった「重み」を、二度と剥がせぬ物理的な「呪い」へと変えることだ。


「……あ、あは! お姉様、その帽子、とっても似合ってるよぉ……! ずっと脱げないように、私が『縫い付けて』あげるね……っ!」


 エルナの肉塊が這い寄り、震える王の首筋に、何十本もの粘着質な肉の触手を突き刺した。


 触手は筋肉を掻き分け、脊髄に複雑に絡みつくと、王の神経系を強制的に、神殿全体に張り巡らされた「絶望の合奏回路」へと接続する。


 王が苦悶に悶え、四肢を痙攣させればさせるほど、その神経の振動が魔糸を伝って神殿の柱に伝わり、楽器にされた英雄たちの悲鳴をさらに高く、鋭い和音へと引き摺り出す。


「見て、教皇。あなたが神と呼び、民を導いたその光は、私の前でこんなにも無様に鳴いている。あなたの祈りは、この汚れた不協和音の中に溶けて、一滴の雫さえ残さず消えてしまったわ」


 リアナは次に、神を裏切り魔女に屈した教皇の前に、鏡のように美しい姿勢で跪いた。


 彼女は教皇の胸元で鈍く光る聖印を、細い指先で乱暴に掴み取ると、圧倒的な魔力でそれを粉々に握りつぶした。そして、その尖った金の破片を、教皇のこじ開けられた口の中へと、強引に、喉の奥深くまで流し込んだ。


「神の言葉を語ったその汚らわしい口で、今度は私のための『歌詞』を紡ぎなさい。あなたのこれまでの人生、積み上げた教義、守りたかった羊たちへの未練……すべてを『絶望の言葉』に変換して、この終わらない音楽に捧げるのよ」


 教皇の瞳が白濁し、その喉から、聖歌とは程遠い、地獄の底を素手で掻きむしるような呻きが漏れ出した。


 地位も名誉も、王としての尊厳も、ここではただの「素材」に過ぎない。


 リアナが指揮棒を振るうたび、彼らの存在は細胞レベルで解体され、帝国の永劫なる旋律の一部として、その人格さえもが磨り潰されていく。


「アスタロト、この子たちは思った以上に良い『音』が出るわ。地位が高ければ高いほど、壊れる時の音が澄んでいるのね。……次は、どこの誰をこの特等席へ招待してあげましょうか?」


 魔女の愉悦は、もはや一つの世界では収まりきらないほどに膨れ上がり、天界の空を不気味な紫色に染め上げていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

第36話、地上の権力者たちが物理的・精神的に「解体」され、魔女の音楽の構成パーツへと変えられていく様を描きました。王冠を頭に焼き付け、聖印を飲み込ませる。彼らが拠り所にしていた「権威」こそが、リアナの手によって最大の苦痛へと変質させられます。

次回、第37話:【循環】絶望の収穫と魔女の静寂。

すべてを奪い尽くしたリアナが、完成された帝国で手にするのは「平穏」か、それともさらなる「渇き」か。帝国のシステムの完成と、魔女の次なる一歩にご期待ください。

引き続き、評価やブックマーク、いいねでこの物語の完成を見届けてください!

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