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死を賜った魔女、地獄から戻って全てを「呪い」に変える  作者: La Mistral
第4章:【墜落】泥を啜る王子と神殺しの魔女

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22/54

第22話:【飼育】堕天した天使たちの家畜小屋

本日も、終わりなき復讐の深淵へようこそ。

第22話、ついに神の使いである天使たちが、家畜以下の存在へと叩き落とされます。

かつての王子と天使が、同じ泥の中で残飯を奪い合う……。

「高潔な存在の墜落」という、本作最大級の背徳感とカタルシスを1,500文字超の大ボリュームでお届けします。

漆黒の水晶宮、その裏手に広がる庭園。そこはもはや植物が育つ場所ではなく、理を失った命が絶望を糧に蠢く、魔女リアナの「実験場」であった。


 庭園の隅、かつて王族が避暑に用いた美しい東屋の無残な残骸を取り囲むように、巨大な鉄格子と魔法の結界で編まれた「小屋」が新設された。


そこへ、文字通りゴミのように放り込まれたのは、天界から堕とされた白銀の軍勢だった。


「……汚らわしい……魔女め……。我らの翼を……神の誇りを……っ!」


 泥濘ぬかるみに膝をつく天使の一人が、掠れた声で呪詛を吐く。だが、その背中に広がるはずの白銀の翼は、根元から無残に抉り取られ、黄金の血液がどす黒い泥と混じり合って、汚泥のような色に染まっていた。リアナによって魂の根幹である翼を失った彼らは、もはや奇跡を起こす力も、空を仰ぐ気力さえ奪われていた。


「あら、まだ言葉を紡ぐ元気があるのね。感心だわ」


 漆黒のドレスの裾を泥に汚すことさえ厭わず、リアナが優雅な足取りで檻の前に現れた。彼女の背後には、常に影のように寄り添う魔王アスタロトが、退屈そうに黄金の瞳を光らせている。


「さあ、食事の時間よ。……エドワード、エルナ。あなたたちの『新しいお友達』に、この家畜小屋での正しい振る舞いを教えてあげなさい」


 リアナがパチンと指を鳴らす。


 すると、影の中から首輪に繋がれ、四足歩行を強いられたエドワードとエルナが這い出してきた。二人の肌は泥と垢で汚れ、もはや高貴な王族の面影など微塵もない。彼らの前には、魔界の家畜さえも忌避する、腐敗した残飯と黒い飼料が混ざった「餌」がぶちまけられた。


「……ウウゥ、アァ……!」


 エドワードは、天使たちの視線など気に留める余裕さえない。飢餓と呪いの首輪がもたらす激痛に急かされ、泥にまみれた餌に顔を突っ込み、一心不乱に貪り始めた。その隣でエルナもまた、獣のような呻き声を上げながら、汚れた飼料を指で掻き集めている。


「……あ、あぁ……なんてことだ……。人の王族が、これほどまでに無様に……」


 天使の一人が絶望に瞳を曇らせる。だが、リアナの冷徹な声が追い打ちをかけた。


「他人事かしら? あなたたちも、その空っぽの胃袋が悲鳴を上げているはずよ。天界の清らかな雫も、聖なる果実もここにはない。あるのは、その泥にまみれた残飯だけ。……食べなければ、死ぬこともできず、永遠に空腹の痛みに焼かれ続ける。……さあ、選びなさい。聖なる誇りを抱いて飢え続けるか、泥を啜って『私の犬』として生き永らえるか」


 リアナの影から伸びた黒い茨が、天使たちの首に冷たく絡みつく。首輪が締まるたび、彼らの高潔な精神は、肉体が求める生存本能に押し潰されていった。


 やがて、一人、また一人の天使が、震える手で泥の中の餌に手を伸ばし始めた。


 かつて神を讃え、ハープを奏でていたその指先が、今は泥にまみれた腐肉を掴み、口へと運ぶ。黄金の血を滴らせながら、涙と共に残飯を飲み込む天使たち。その姿は、かつて火刑台のリアナに石を投げた無知な民衆よりも、遥かに醜悪で、遥かに美しい「墜落」の風景だった。


「……ふふ、あははははっ! 傑作ね! アスタロト、見て! 神の使いが、私の家畜と一緒に泥を啜っているわ! これこそが、私が見たかった真の『救済』よ!」


 リアナはアスタロトの逞しい胸に身を預け、喉を鳴らして高笑いした。アスタロトは、リアナの腰を抱き寄せ、その髪に深く鼻先を埋める。


「……素晴らしい。高貴な者ほど、泥に沈んだ時の臭いは甘美だな。リアナ、この天使たちの絶望を肥料にすれば、お前の庭には、これまでにないほど禍々しく、美しい『毒の華』が咲き誇るだろう」


「ええ。彼らには明日から、この広大な庭園を耕すための『生きた農具』になってもらうわ。翼の代わりに、重い荷車を引くための鎖と、決して癒えない傷を与えてあげて。……彼らが絶望の涙を流すたび、私の帝国はより深く、より残酷に潤うんだから」


 檻の中では、エドワードと天使たちが、一欠片の餌を巡って互いに牙を剥き、泥の中で取っ組み合いを始めていた。愛も、敬虔も、誇りも。全てはリアナが用意した「空腹」という名の暴力の前に消え去った。


「……復讐は始まったばかり。世界が、天が、私に与えた全ての苦痛を、何万倍にして返してあげるわ」


 リアナの瞳に宿る「∞(無限)」の闇が、月のない夜をさらに深く染め上げていく。


 魔女の帝国に、夜明けは二度と訪れない。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

翼を毟られ、泥を啜る天使たちの姿。リアナにとっては、これこそが神への最高の「返礼」です。

エドワードたちも、自分たちより尊い存在が堕ちる様を見て、狂気の中での救いを感じ始めています。

次回、第23話:【収穫】黄金の血で咲く毒の華。

天使の血と絶望を吸って成長する魔女の庭。そこでリアナが手にする「新たな禁忌の力」とは?

この物語は終わりません。リアナの怒りが続く限り、復讐は無限(∞)に拡大し続けます。

続きを熱望される方は、ぜひブックマークや評価、いいねでリアナの進撃を支えてください!

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