第18話:【終焉】国王の最期と新たな世界の玉座
本日も、物語の真のクライマックスへようこそ。
第18話、ついに因縁の国王との最終決着です。
1,500文字という大ボリュームで、リアナが抱えてきたすべての「怒り」と、王国が積み上げてきた「罪」を真っ向からぶつけ合いました。
聖女から魔女へ、そして新たな世界の「女王」へ。
リアナの覚醒と、王国の無残な終焉をその目でお確かめください。
王宮の地下、崩落した予言の石版が上げる虚しい乾いた音。それが、数百年にわたり少女たちの犠牲の上に築かれたネーデル王国の、終わりの合図だった。
私は、砕け散った石の破片を泥靴で踏みしめながら、地上へと続く階段をゆっくりと昇っていく。一歩、歩むごとに私の中に眠る「歴代の生贄たち」の無念が、どす黒い魔力となって溢れ出し、私の背後に巨大な死神の如き影を形作っていった。
「……待っていたぞ、リアナ。いや、我が国の『至宝』よ」
玉座の間。
天井が崩落し、重苦しい灰色の空が剥き出しになったその場所で、父であった男――国王は、ボロボロになった王冠を必死に頭に載せ、虚ろな瞳で私を迎えた。
地下の石版を壊した影響は劇的だった。王家を擬似的に守護していた「偽りの加護」を失った彼の体は、瞬く間に見る影もなく老いさらばえ、皮膚は枯れ木のように乾燥し、その足元には失禁の跡さえあった。
「……至宝? よくそんな言葉が、その薄汚れた口から出てくるものね、お父様」
私は玉座の前で足を止め、冷笑を投げかけた。
私の背後では、アスタロトが玉座の肘掛けに優雅に腰を下ろし、退屈そうに指先で黒い炎を弄んでいる。この国の王がどれほど惨めに命乞いをし、魂を汚すのか、その「幕引き」を極上の喜劇として鑑賞しているのだ。
「分かっている、怒るのは当然だ! だがな、リアナ……これは必要なことだったのだ! お前一人が火刑台で死ぬだけで、この国は、数百万の民は救われてきたのだ! それが王族に生まれた者の、高貴なる義務ではないか!」
「高貴なる義務? 笑わせないで。それは、自分たちが贅を尽くし、支配者の椅子を守るために、実の娘の命を切り売りしてきた『人買いの論理』でしょう?」
私が右手をかざすと、足元の影から無数の黒い腕が伸び、国王の四肢を玉座に縫い付けるように拘束した。影の腕が食い込むたび、王の痩せ細った肉から生気が吸い取られていく。
「あ、あああああっ! 痛い、熱い! 止めろ、リアナ! 私を殺せば、この国を流れる『加護の川』は完全に枯れ果てるぞ! 守るべき民が死に絶えてもいいのか!」
「ええ、構わないわ。私を焼き殺すために薪を運び、火を放ち、その光景を娯楽のように眺めていたあの日、彼らもまた等しく共犯者になったのだから。……お父様、あなたが神聖だと信じてきたこの国の繁栄は、名もなき少女たちの骨の上に築かれた、血塗られた砂の城に過ぎないのよ」
私は国王の胸元に、冷たい指先を触れた。
そこから、地下室で見つけた歴代の生贄たちの「怨念」を、逆流させるようにして彼の体内へ注ぎ込む。
「……視えるかしら? あなたが保身のために捧げてきた、かつての娘たちの顔が。……聞こえるかしら? 炎の中で焼かれながら、あなたが助けてくれると信じて死んでいった、彼女たちの最後の絶叫が」
「ひ、ひいぃ……! くるな、あっちへ行け! 許せ、悪かった、愛しているんだリアナ! 許してくれぇっ!」
国王の瞳に、この世のものとは思えない恐怖が宿る。
彼の視界には、自分たちの繁栄のために虐殺してきた歴代の聖女たちが、腐り果てた姿で彼を取り囲み、その肉を剥ぎ取ろうと群がっているのが映っているはずだ。彼は狂ったように笑い、泣き、最後には己の爪で自分の顔を、肉が露出するまで掻きむしり始めた。
「……これで、呪われた血脈は途絶えた。残るは、あそこに転がっているゴミだけね」
私は視線を部屋の隅に向けた。
そこには、首輪に繋がれたまま、恐怖で失禁し失神しているエドワードとエルナが、震えながら蹲っていた。彼らには、この王国の最期を、そして私の「戴冠」を最前列で見届ける義務がある。
私は、狂い死にかけた国王を、埃のように玉座から蹴り落とした。
そして、主のいなくなった、かつて私を虐げた象徴である血塗られた椅子に、静かに腰を下ろす。
「……リアナ、いい座り心地か?」
アスタロトが私の隣に立ち、私の髪を愛おしそうに撫で、その首筋に顔を寄せた。
「ええ。でも、この椅子は少し古くて、血と嘘の臭いが鼻につくわ。……アスタロト、新しい国を作りましょう。人間が神に祈る場所ではなく、魔女が支配し、裏切り者が永遠に贖い続ける、私とあなたの帝国を」
私が宣言した瞬間、王都全体を覆っていた黒い霧が爆発的に広がり、ネーデル王国という名の歴史を、物理的にも精神的にも地図から完全に消し去った。
燃え上がる王宮の廃墟の中で、私は魔王の腕に抱かれ、真の『女王』として君臨した。
世界に夜が明けることはない。けれど、私の心は、あの日火刑台で感じた熱さよりも、遥かに晴れやかで、満たされていた。
最後までお読みいただき、本当に、本当にありがとうございます。
国王の最期は、単なる死ではありませんでした。
彼が使い捨てにしてきた命の重さに押し潰され、狂気の中で果てる――これこそが、リアナが用意した最大の「断罪」です。
そして今、リアナは魔王と共に新たな玉座に座りました。
これまでの復讐の旅路は、ここから始まる「永劫の支配」への序章に過ぎません。
次回、第19話:【新世】魔女の帝国と永遠に続く断罪の日々。
生き残ったエドワードとエルナに待ち受ける、さらなる地獄の「日常」とは。
物語は最終章へ突入します。ぜひブックマークや評価、いいねで、リアナの新たな門出を祝ってください!




