第16話:【崩壊】王宮の落日と魔王の進軍
本日も、物語の大きな転換点に立ち会っていただきありがとうございます!
第4章のクライマックス、王都陥落。
国王が必死に口にする「慈愛」という言葉の虚しさを、リアナが冷酷に断罪します。
圧倒的な破壊の描写を通じて、これまでの「溜まりに溜まった鬱憤」を全て吹き飛ばす勢いで書き上げました!
「報告ッ! 第一障壁が消滅! 北門が……北門が跡形もなく吹き飛びました! 敵は……敵は、騎士団ではなく……黒い霧、意思を持つ死の霧です!」
王都の指令室に、絶叫に近い悲鳴が響き渡る。
かつて聖女リアナがその祈りによって守護し、常に清らかな光と花の香りに満ちていた王都は、いまや魔王アスタロトが解き放った「絶望の霧」に完全に飲み込まれようとしていた。
王宮のバルコニーに立つ国王は、震える手で代々伝わる宝剣を握りしめていたが、その瞳には統治者の威厳など微塵も残っていない。ただ、眼下で黒い泥に呑み込まれていく街並みを、腰を抜かしたまま眺めることしかできなかった。
「リアナ……! リアナはどこだ! 我々が悪かった、謝罪しよう! 地位も名誉も、望むならエドワードの命だって差し出そう! だから、その怪物を止めろ! この国には、お前の『慈愛』が必要なのだ!」
空に向かって、惨めに喉を枯らして叫ぶ国王。その声に答えを返したのは、救いの光ではなく、天空から降り注ぐ冷酷な笑い声だった。
分厚い暗雲を切り裂き、巨大な漆黒の竜――魔界の王の乗り手が、その姿を現した。
竜の背に、漆黒の玉座が如く腰を下ろす魔王アスタロト。そしてその腕に抱かれ、傲然と見下ろすのは、かつてこの国が「慈悲深き聖女」として崇め、そして火刑に処した魔女・リアナであった。
「……慈愛? そんなものは、あの日、あなたたちが私と一緒に火刑台で焼き尽くしたはずよ」
リアナの声は、魔法によって増幅され、崩れゆく王都の隅々にまで響き渡った。
「私が捧げた十年を、あなたたちは嘲笑い、石を投げ、炎で報いた。……それなのに、今さら『守れ』だなんて。人間というのは、これほどまでに厚顔無恥な生き物だったかしら?」
彼女が静かに指をさすと、アスタロトが愉悦に満ちた声を漏らした。
「……始めようか、リアナ。お前を泣かせたこの無価値な玩具を、塵一つ残さず粉砕してやる」
魔王が掌を広げると、王都の地下から巨大な、どす黒い茨の触手が噴き出した。それは王宮の尖塔を飴細工のように容易くへし折り、大広間の美しいステンドグラスを粉々に砕き散らす。
かつてリアナを「魔女」と呼び、処刑を喝采で迎えた民衆は、皮肉にも今、本物の「魔女」の怒りに触れ、逃げ惑うことさえ許されず影の中に呑まれていく。
「見なさい、アスタロト。あれが、私が命を削って守ろうとした美しい国よ。……こうして壊れていく姿が、一番美しいわね」
リアナの瞳には、かつての清廉な光はない。代わりに宿っているのは、美しき国が灰へと変わる様を心から愉しむ、深淵の闇。
王都の象徴であった大時計塔が、地響きと共に真っ二つに裂けて崩落した。王族の旗は泥に塗れ、一国の歴史が、一人の少女の復讐という名のインクによって、真っ黒に塗り潰されていく。
その光景を眺めながら、リアナはアスタロトの逞しい胸に深く背を預けた。
「……これで、終わりかしら?」
「いいえ。王宮の最深部、この無様な王族が隠し続けてきた『最後の真実』を見届けるまではな」
アスタロトの不敵な笑みと共に、黒竜は崩落する王宮の心臓部、かつてリアナが幽閉されていた地下牢のさらに深くへと、猛烈な勢いで急降下した。
最後までお読みいただきありがとうございます。
ついに王都が物理的にも崩壊を始めました。
「お前が必要だ」という言葉を、最も必要だった時に言ってくれなかった人々への、最大級の報いです。
次回、第17話:【真実】隠蔽された予言と呪われた血脈。
なぜリアナがこれほどまでに強い力を持ち、なぜ売られたのか。
王宮の地下に隠された「呪われた血の秘密」がついに明かされます。
物語はついに真の核心へ。引き続きブックマークや評価、いいねで応援をお願いします!




