13話
「ガッガッ!俺か?」
「だってなんか3人でいるの楽しいんだもん。このまま異世界に行けたらいいなって思った」
臥龍岡 小袖が透き通った瞳で言う。
「ガッガッガッ!そりゃ嬉しいけど悪いな、俺はここから動けないんだよ」
「そうなの、残念。九十九もそう思わない?」
「ガッガッガッ!こいつはそう思うわけないだろ」
「確かに少し残念な気持ちは少しあるかもしれない」
しぶしぶといった様子で九十九 正義が言う。
「やっぱりそうだよね!なんか私達いいチームっていう感じがするの」
モニターに映るアヒルの画像は変わらない。けれどなんだか少しだけ戸惑いのような感情のにおいがした。
「うるさいけどな。けどなんとなく、いなくなると思ったら少し寂しいかもしれないなと思ったな、少しだけな。こんな変なところにいるから頭がおかしくなったのかもしれないな」
「ガッガッガッ!頭がおかしいのは元からだろ」
「なんてこと言うんだアヒル野郎。おかしいのは俺じゃなくてこの世の中なんだよ」
照れくささを消すためのようなやり取り。
「それじゃあキャラメイクやってみようよ」
小袖は優しく笑う。
「その前に小袖は本当にもう一度ちゃんと考えたほうがいい」
「どうして?」
「小袖は俺と違って元の世界でも十分生きていけるよ。危険があるとわかってる異世界になんて無理に行く必要は無いと思う」
「けどもしこのまま元の世界に戻ったら、またひとりになっちゃう」
悲しそうな瞳の深い青色が美しい。
「いまもしひとりだったとしても、そのうち友達が出来たりとかもあるぞ。好きな男だってできるだろうし」
「だって私は暴力団組長、臥龍岡 閔の娘だよ。みんなそういう目で見るに決まってるもん。だから何か下心があるんじゃないかって疑っちゃって信用なんかできない。薄っぺらな信用できない友達なんか面倒くさいだけ」
「その気持ちはわかるっちゃわかるけどな」
「だってもうなんか、こんなに本音で喋ったりできるなんて久しぶりなんだもん。これで私が異世界に行かないってなったらもうふたりとは会えない、そんな気がするんだもん。いいからほら、キャラメイクしよう。わたしはRPGとかやるときにはここが一番好きだったんだ」
「そうだな、とりあえずはやってみるか。ボーナスポイントとスキルを振り分けてみるか」
「うん!」
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九十九は頭を抱えて言う。
「ボーナスポイントが全然足りない」
「そう?結構十分ある気がするよ」
「そりゃあ小袖は沢山あるからだろ、俺と違って」
ふてくされたように言う。
「あげようか?」
「ほへ?」
「もしどうしてもって言うんだったら分けてあげてもいいよ。私は999ポイントもあるし」
「はぁああああああ!?」
「そうだよね。999なんて中途半端だよね。あと1ポイントくれれば1000になったのにってすっごい思う」
「そんなことはどうでもいいんだよ。それよりなんで999もあるんだよ、俺なんて87だぞ。十倍以上あるじゃねぇか!」
「ガッガッガッ!そりゃあ小袖の方はサキュバスを選択してるからだ」
「どういうことだよ」
「ほら思い出して!人間以外を選んだらボーナスポイントが3倍になるんだよ」
「そうだった。オークになんかなるつもりがなかったから忘れてた」
「でしょ?それで差が開いたんだよ」
「そういうことかよ。それにしたって小袖は人間のままだったとしても333ポイントもあるってことじゃないかよ。ほんっと公平じゃないよな」
九十九の眉が八の字になっている。
「そんなにむくれないでよ、せっかく楽しくキャラメイクしてるのにさ。だから分けてあげようかって言ってるじゃん?」
「本当にいいのか!?」
「うん。なんか九十九見てたら捨てられた犬みたいに見えてきてなんだかかわいそうに見えてきた。病気で雨に濡れてる捨てられた犬」
「お前俺のことを下に見すぎだろ!」
「それじゃあポイントなんていらないってこと?」
「ください!」
九十九は土下座した。あっさりとスムーズに土下座した。
「いいけど裏切りは無しだよ?」
土下座にはほとんど反応を示さず、小袖が少し不安そうに言った。




