12話
「小袖、やめておいた方がいい。異世界は危険だ」
九十九 正義は肩に手を置いて言う。
「危険って言っても九十九よりは大丈夫だと思う。ボーナスポイントもスキルも九十九よりも多いし、それに私は小さい頃は武術やってて天才って言われていたんだから」
「やっぱりなんかやってたのか」
九十九には確かに覚えがあった。小袖からくらったカーフキックもレバーブローも普通の少女がそんなことできるはずがないとは思っていた。しかも動きが的確過ぎた。見よう見まねでやったのではなく、しっかりと訓練している人間の動き方だった。
「けど格闘技なんか武器の前では役に立たないぞ。たぶん向こうでは剣とか槍とかそういうので突っ込んでくるんだ。カーフキックしている間に真っ二つに叩き切られて終わりだ」
「私がやってたのは格闘技じゃないよ、武術。ちゃんと武器の使い方とかも習ったよ。私が得意なのはナイフだけど。九十九は?」
挑発するような小袖の視線。
「おれは………サッカー部だった」
「サッカー部!?そんなの武器の前では役に立たないよ。たぶん向こうでは剣とか槍とかそういうので突っ込んでくるんだよ。マルセイユルーレットしている間に真っ二つに叩き切られて終わりだよ」
「おい!俺の言ったこと真似すんなよ」
小袖は笑った。
「ふたりで異世界に行ったら九十九よりも私の方が長く生き延びるんじゃない?ボーナスポイントもスキルも多いから。ナイフも使えるし」
「いくらナイフが使えるって言っても剣とか槍には勝てないんじゃないのか?長さが全然違うだろ」
「試合だったらね。正面からお互いに見合って見合って試合始め、だったら確かに得物が長いほうが有利だよね。剣道三倍段っていう言葉もあるし。けど実戦は違うでしょ?」
「そ、そうなのか………」
「ほら、ちょっと言われたらすぐに黙っちゃった。もうこれで武術素人だっていうのが分かっちゃうよ」
「けどそういう場面だってあるだろう。向こうが剣を持って襲い掛かってくる場合だって」
「そうだね」
「ほらやっぱりな」
「そういうときは拳銃を使うけどね。それなら絶対勝てるし」
「はぁ!?卑怯じゃね?」
「どっちも武器使うんだから同じでしょ。競技じゃないんだから戦いに卑怯なんてないよ。っていうか九十九だってそういう場面になったら絶対使うと思うよ。どうせ当たらないだろうけどね」
「小袖は拳銃を撃ったことあるのかよ?」
「あるよ。すごいストレス発散になっていいんだよね、軽いし剣術とかみたいに長い練習とかもないし。ちょっとうるさいけどそこは耳栓すれば大丈夫だし」
「練習って言ったってそんなもんすぐに警察が飛んでくるだろ」
「ちゃんと防音施設のしっかりした専門の室内だったら大丈夫だよ。世の中にはサイレンサー付きの銃っていうのがあるんだよ。素人の九十九にはわからないかな?」
「そんなんズルいだろ。お前ばっかり異世界に行く前から色々習得してんじゃねぇか。けどな異世界に拳銃なんかないだろ、そんなんいくらやってたって意味ないぞ」
「だからって言ってもサッカーだって意味ないでしょ。それに異世界には魔法があるんだよ、だから遠い距離は魔法で何とかするよ。さっき見たら水魔法のスキルがあったもんね。ウォータジェットって知ってる?水のを使ってダイヤモンドでも分厚い金属でも切っちゃうんだよ。九十九と違ってボーナスポイントもスキルもいっぱいあるから、それ目指そうかな」
「ずるい、ずる過ぎるぞお前」
余裕そうな小袖の隣で九十九が地団駄踏んで悔しがる。
「ガッガッガッ!向こうにも拳銃はあるぞ」
「はぁ!?」
「あ、あるんだ。ラッキー!」
「正確に言えば魔銃だけどな。魔力を使って撃つんだがまあ同じようなものだな」
「ほらどう?私の方が絶対有利だよ。むしろ九十九のほうが心配だよ、異世界にいてもすぐに死んじゃうよ、大丈夫?」
「いまものすごく自信無くなってるよ!」
「私は何か自信出てきたなー。だってアイテムを見つければ帰ってこれるんだもん。そのアイテムを見つけるためのアイテムだってくれるって言ってるし。よく考えたらけっこう簡単なんじゃない?わたしだったらだけどね、けど九十九はやめておいた方がいいんじゃないの?」
「ぐぬぬぬぬ………」
痩せた野良犬のような唸り声。
「ねぇ。隊長も一緒に行かない?」
小袖は変なことを言いだした。




