第11話 飯屋
取り敢えず、それなりの装備を買えるだけのお金を手に入れた俺たちは、なるべく戦闘を避けて町を目指した。
その理由は至極簡単。戦闘は(精神的に)疲れるからである。…突っ込みも楽じゃないんだぞ。
そんな訳で、モコモコが出てくる度に逃げ回り続け━━しつこい奴には魚肉ソーセージを投げつけてやった━━村についた頃には、陽は西に傾いていた。
「…やっと着いた」
「まずは宿で疲れをとりましょう。武器屋は明日でも構いませんか?」
「あぁ」
ずっと歩きっぱなしで、腹も減ってきた。…そう言えば、この世界に来てからまだ何も食ってないな。…なんて考えながら、なんと無く視線を横にずらすと…
「どうしました?」
セネカが魚肉ソーセージを食べていた。
「お前っ!さっきそれで腹壊したばっかりだろ!」
ちなみに、魚肉ソーセージを食べたモコモコは皆、泡を吹いて気絶していた。
……なんでそんなもん持ってたんだか…?
「どうやら、さっきのでこれに対する耐性が出来たようですね」
セネカは答えた。スマイルで。
「…そんなたった数時間で出来るわけねぇだろ」
「出来てしまうんです…僕の場合」
ほんの一瞬、セネカの顔からいつも止めどなく溢れている0円スマイルが消えたように見えたのは、きっと俺の目の錯覚だと思う。
「流石に捨てるのはもったいないですからね」
「…はぁ」
やっぱり、さっきのは気のせいに違いない。セネカが余っていた五本の魚肉ソーセージを平らげると、宿屋に向かって歩き出した。
「なるべく、安い部屋でお願いします」
「では一晩、35Gになります」
『G』とは、お金の単位らしい。何の略かは知らん。
ひとまず、宿を取れた俺達は、飯屋に出掛けた。腹が減っては戦は出来ないらしいからな。……というか、単に腹が減っているだけなんだが。
「困るよ、お嬢ちゃん。食べたんだから、ちゃんと代金は払ってくれないと…」
「………」
飯屋につくと、何やら店長らしき人が俺と同年代位の女の子と言い争っていた。…もとい、女の子の方は全力で目を逸らしているから言い争いではないな。なんと表現すべきだろうか…?
「おじさんもこんなこと言いたくないんだけどねぇ、やっぱり商売だから…食い逃げは━━」
「…まだ逃げてない」
「でも、お金が無いんじゃ…ねぇ」
ふと、その子と目があった。…なんだ?なんだかじっくり見られてるような…?
「…お兄さん!」
「なっ!」
頭の上に電球が浮かんだように見えたのは、なぜだろうか?
「何言ってんだ!」
「…そう。貴方はまだ幼い頃に生き別れたから覚えていないだけ。私はずっと探していた。…お兄さん。…お兄さん。貴方はお兄さん。」
「堂々と嘘つくな、指を差すな、お兄さんと連呼するな━━」
「なんだって!…若い身空で苦労してたんだな嬢ちゃん」
…店長?コイツは大嘘ついてますよ。騙されてはいけません。
「感動の再会を邪魔するなんて野暮だ!お代は要らねぇよ!」
店長の性格が変わってる。何なんだ…その時代劇の人みたいなセリフは?
鼻の下こするなよ、全然感動出来ねぇよ、あんた騙されてんだよ。
「お兄さんと……幸せにな…」
なんだ!その『良いこと言ったなぁ…』的な表情は!一度言ってみたかったの?なぁ!店長!?一度でいいから言ってみたかったの?
俺が全面的に否定しようと口を開きかけた時、耳元でセネカが語りかけてきた。
「この流れに便乗すれば、ただで食事を頂けるかもしれません。…ですから、口裏を合わせていただけませんか?」
「お前…意外と腹黒いな」
「勇者様程では…」
お前も時代劇かっ!世界観が破綻するからやめろよ…。
だが、セネカの言うことも一理ある。タダ飯食えれば、その分のお金を装備にまわせるしな。ここは便乗させてもらおう。
…そう思った矢先の事だった…
「…それでは申し訳ない。…だからお代はお兄さん達が代わりに払う。」
……え?今なんて?お兄さん聞いてなかったよ。
「なんて澄んだ心の持ち主なんだ!気に入ったよ、これはおじさんからのプレゼントだ!」
「…ありがとう。」
ソイツは何やら受け取ると、何事もなかったかのように去っていった。
「…いや!ちょっと待てっ!」
「待つのは君達だよ。さぁ、お代を貰おうか」
…なっ!店長っ!さっきと言ってることが違うじゃないですか!?
「こっちも商売だからね」
…さっき「お代は要らねぇ」って言ったのは、その口だった気がするんだが……
「ちなみに…おいくらですか?」
「占めて120Gだね。きっちり払ってもらうよ」
「なっ!どんだけ食ったんだよ…」
120G…一見(聞?)少ない気もするが、思い出して欲しい。この世界では35Gで一晩の宿が取れるのだ。
……その結果、財布の中身をすっかり搾り取られてしまった俺達は、飯にもありつけず宿屋に戻っていった。
「まさかのどんでん返しですね」
「笑い事じゃねぇよ…」
お腹と背中がくっつくぞ状態の俺は、キレる気力も失せベッドの上に横たわっている。…頭の良さって色々あるんだなぁ。
「しかし…俺達をだしにして、あまつさえ粗品まで受け取るとは…次会ったらタダじゃおかねぇ」
「あまり物騒なことは考えないでくださいよ…」
「分かってるよ。冗談だ」
……多分…な。
「つーか、お前は腹立たないのか?」
「まぁ、そんなにお腹空いてませんでしたから…」
そういえば……コイツは魚肉ソーセージ食いまくってたな……。
裏切り者め!もういい、ふて寝してやる。
なるべく、空腹であることを考えないようにして、俺は深い眠りについた。
…つづく
秋田犬ですm(__)m
更新遅くてすみませんm(__)m
土日を駆使してなんとか更新しようと思っているのですが……寝てしまいますorz
基本的にこの小説は布団の中でせっせと書いてます。…だから寝てしまうんですね(笑)
それではまた次回m(__)m