第12話 来襲
おかしい。実におかしい。
俺は確か、空腹からの逃避行を図るために宿屋のベッドにダイヴィング(ここ、発音注意!)したハズだったんだが……目を開けるといつぞやのフワフワ空間にいた。
前回ここに来たときは声が指示を出してくれたから、どうにかなった。だが、今回は何も聞こえない。
じゃあどうすればいいんだ?
「お〜い」
叫んでみた。
「誰かいないのか〜?」
返事はない。少しばかり寂しくなってきた…。今回は自分で何とかしろ。という事だろうか?
過去の(…と言っても約一日前の事だが)記憶を呼び覚まし、ヒントを得ようと考えた俺だが……。
なぜだろう?豚の貯金箱の事ばかり浮かんでくる。くそっ!雑念を捨てろ、俺!余計なことを考えるな。
確か…あの時は鍵がどうのこうの……
前回同様、ポケットに手を突っ込む。が、そんなもの入れた覚えは……
「…あ」
入ってた。 Why?なぜ?
おもむろに取り出してみる。間違いない。あの時の鍵だ。……入れた覚えは無いんだが。
突如として、鍵が輝きだした。
それと同時に、漆黒に包まれていた辺りの景色が一変。真っ白な光に包まれているかのような幻想的な空間となった。……いきなり明るくなるなよ、目が痛かったぞ。まったく。
「よぉ。会うのは初めてだな」
「……ぬぉっ!?」
意表を突かれて、とても間の抜けた返事になってしまった。実に残念である。
後ろから聞こえてきたのはいつぞやのあの声…。振り向くとそこには、見知らぬ男が立っていた。
その容姿は、身長は俺よりやや高く、スラッとした体。俗に言うモデル体型だな。それに中々のイケメンだ。…忌々しい。
「……あんたが、あの声の主なのか?」
「まぁ、そうなるな」
男は答えた。あっさりと。
「じゃあ、あんたが俺をこの世界に…?」
「そうだ」
「なぜだ?理由は?」
「それは言えねぇな。でもまぁ、そのうち嫌でも分かる時が来るさ」
今知りたいんだが…。しかし、とても教えてくれそうに無い。
「なら、あんたは何者なんだ?」
「まぁ…積もる話もあるだろうが、今の俺には説明してる時間は無いんだ」
苦笑いを浮かべたそいつの顔は、どことなくセネカに似ている…ような気がする。
「とりあえず伝言がある。お前のその鍵…」
鍵…?それなら今はしっかりと右手が握り締めているぞ。欲しいのか?
「この鍵が…なんだ?」
「なくすなよ」
「……は?」
なんだ、そんなことか。そのくらいなら容易いぞ。
「…そろそろ時間だな。いいか、絶対に手放すなよ」
「あぁ。分かった」
…気づけば、俺はベッドの上にいた。そう、昨日ダイヴィングした宿屋のベッドだ。唯一昨日と違うのは例の鍵…俺の右手にしっかりと握りしめられている。
果たしてあれは夢だったのだろうか?
しかし夢で片付けてしまうと、この鍵の説明がつかなくなる…。
「…おや?目が覚めましたか」
俺が頭を悩ませていると、おそらく俺より先に起きていたであろうセネカが、話しかけてきた。無論、スマイルで。
「ミルクティーでもどうですか?頭が冴えますよ」
そういえば昨日から何も胃に入れてなかったな。
「いただくよ」
ミルクティーか……意外とこの世界は、俺が元いた世界とはたいして変わらないのかも知れない。
セネカから受け取ったミルクティーをすすりながら、ふと思った。俺はこの世界について、まだほとんど分かってない。この際だから聞いてしまおう。
「なぁ?少しばかり質問があるんだが…」
「なんですか?」
ズドーン!
俺が口を開きかけたまさにその時、激しい震動と共に外から悲鳴が聞こえた。
「逃げろっ!モンスターだ!」
「なんだとっ!」
急いで窓から身を乗り出した。外には武器を持ち、鎧を着込んだ…豚?がいた。
「勇者出てこい!この町にいるのはわかっているんだ!ブヒッ!」
あ、やっぱり豚か。
なんで豚が二足歩行なのか、なんで鎧で武装してるのか、なんで右手にモーニングスター(柄の先にトゲ付きの鉄球が付いてる武器)を携えてるのか。そんなことはどーでもいい。とりあえず聞きたいのは……
「…『勇者』ってのは俺の事なのか?」
「…え?自覚無いんですか?それはいけませんよ勇者様」
…地味にダメ出しを食らった。
「とにかく、モンスターの所へ。アレの狙いは我々ですから」
確かにアレを倒さねば、町の人に悪いな。
「ブヒー!ブヒー!」
ブヒブヒうるせぇし。近所迷惑だ。
俺は、2度の奇跡を起こした武器━━フライパン━━を手に取ると、急いで階段を駆け降りた。
…つづく
秋田犬ですm(__)m
今回はシリアスな感じにしようとしたのですが…作者には出来ませんでした orz
ちなみに、夢の中の人は当分出番ありません(笑)
正体も明かせません。今は。
伏線はこれからもそれなりに出す予定です。キチンと回収出来る程度に…
それではまた次回m(__)m




