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GODS I:黒光の章 ― 神々に支配された世界で、選ばれし俺は黒き革命を起こす ―  作者: ZM_16
エピソード7: 天才(プロディジー)と呪われし者
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第7章・4: 降伏(サレンダー)という選択肢はない

――ドゴォォォォンッ!!


シュウが放った強烈な一撃が地面に直撃し、闘技場アリーナの分厚い床をいとも容易く粉砕した。


(……危なかった)エデンはバックステップで間合いを取りながら冷や汗を流す。

分厚い土煙が戦場を覆い尽くし、その隙間から無残に散乱した瓦礫の山が覗いていた。


「逃げるなよ、エデンッ!」

シュウが、抑えきれない狂気ユーフォリアに身を任せて叫ぶ。


(スピードだけじゃない、一撃の『重さ』も跳ね上がってる)エデンは目を凝らし、冷静に分析する。(今のあいつは、さっきまでとは比べ物にならないくらい危険だ)

(もしあいつの意識を刈り取る(ノックアウトする)つもりなら、俺は――)


だが、エデンの思考がまとまるよりも早く、シュウの拳が『死の宣告』のように彼の眼前に迫っていた。


「……もらったよ、エデン」

――ドガァァァァァッ!!


その一撃はあまりにも凶悪だった。エデンの骨が嫌な音を立てて軋み、筋肉が捻じ切れ、彼の『全華ゼンカ』の根幹すらも激しく揺さぶられた。

圧倒的な暴力によって数メートル後方へ吹き飛ばされたエデンは、闘技場の壁に勢いよく叩きつけられる。


「さあさあ、どうしたんだいエデン? まさか、これが君の全力だったなんて言わないよね?」

シュウは皮肉たっぷりに笑いながら、ゆっくりと這いつくばるライバルに近づいていく。


エデンはゆっくりと身を起こそうとしたが、直後、信じられない光景に目を大きく見開いた。全身は絶え間なく血を流す傷に覆われ、さらに――片方の腕が完全に折れ曲がり、折れた骨が皮膚を突き破って(開放骨折)いたのだ。


エデンが激痛に身をよじらせる中、シュウは氷のように冷たく、そして静かな足取りで彼に歩み寄る。……その姿は、あまりにも異常で、歪んでいた。


「ほら、立てよエデン。僕の顔面をぶん殴るって言ったのは君だろ? それとも、君は口先だけの腰抜けだったのかな?」

「これはまだ、僕の力のほんの『挨拶代わり』に過ぎないんだけど。本当に、君はこれで終わりなのかい?」

「観客は最高のショーを期待していたのに、君がやったことといえば、彼らを失望させたことだけだ……」


「さっさと立ち上がって、君の『全て』で僕に向かってこいッ!!」


シュウの咆哮が響く中、エデンは血だるまになりながらもゆっくりと立ち上がり始めた。その瞳の奥には、未だに決して消えることのない『意志の炎』が赤々と燃え盛っている。


「……そうだ! その調子だ、戦えッ!」シュウが歓喜する。


エデンが完全に立ち上がると同時、彼の周囲で『全華』が呪われた舞踏ダンスのように狂い荒れ始めた。

『炎』と『闇』。相反する二つの力が、彼自身の混沌カオスの中で奇妙なほど完璧な調和ハーモニーを生み出し、激しく衝突し合う。


(こんな痛みなもん……俺がここまで辿り着くために味わってきた地獄に比べれば、屁でもねえよ)

(ここで『降伏サレンダー』するわけにはいかねえんだ)エデンは脳内で強く断言する。(この勝利を待っててくれる奴らがいる。俺を信じてくれた奴らがいるんだ)


(……悪いな、テンザクの爺さん、シュン)

(でも、もしこの試合に勝ちたいなら、俺の『全て』を出し切るしかねえ。……他の連中がどう見ようが、俺をどう思おうが知ったこっちゃない。俺自身の信念ルールのために、そしてこの勝利を掴み取るために……俺は、こいつ(闇)を使う)


次の瞬間――エデンの全身から立ち昇る忌まわしき『闇の全華』を目の当たりにし、観客席の神々の顔が驚愕と、そして明確な『恐怖』に染まっていった。


「ゼウス様、この試合はすぐに止めるべきです!」

エデンの身に纏う『闇』を見て、アテナが明らかな焦燥を浮かべて叫んだ。


「いや……このまま続けさせろ」

「しかし……!」

「……ようやく面白くなってきたところだからな」ゼウスは歪んだ笑みを浮かべて言い放った。


「さあ、おいでよエデンッ!!」

狂気ユーフォリアに満ちたシュウの咆哮が響く。


――ズドォォォォンッ!!


一切の躊躇なく激突した二人の武器が、たった一度の衝突で闘技場全体を激しく揺るがした。


「やっと……心から楽しめるね」シュウが満面の笑みを浮かべる。

「後悔しないことだな」エデンが低く吐き捨てる。


直後、ブレーキの壊れたような凄まじい斬撃の応酬が始まった。

シュウはランスを振るい、圧倒的な美しさと精密さで死の舞踏ダンスを踊る。対するエデンは、剥き出しの野性の本能インスティンクトでそれに応戦した。


一撃放たれるごとに破壊力は増し、観客の肉体と精神の双方を激しく揺さぶっていく。

衝突の余波で無数の火花が散り、闘士たちが一歩踏み込む度に闘技場の床が粉砕されていった。


二人の『意志』の衝突があまりにも強大すぎるため、観客の中にはその覇気プレッシャーに当てられて、次々と意識を失い倒れる者が出始めていた。


秒を追うごとに、二人の戦士の攻防はさらに極限へと加速していく。


徹底して冷徹で調和の取れた(ハーモニックな)スタイルを貫くシュウ。

一方のエデンは、その場その場の直感でアクロバティックな動きや即興の体術を織り交ぜ、必死に喰らいつく。


だがそれでも、エデンはシュウの完璧な防御ガードを突破することができない。シュウはエデンの全ての行動を、まるで台本を読んでいるかのように事前に『先読み』していた。

逆にシュウの槍は、浅くではあるが確実にエデンの肉体を削り、その体力を真綿で首を絞めるように奪っていく。


攻撃を仕掛ける度、そして攻撃を防ぐ度に、限界を超えたエデンの視界は激しく揺れ、口からは絶え間なく血が吐き出された。


「どうしたの? どうしたの? もう限界かい?」シュウが皮肉たっぷりに尋ねる。

「……そいつはこっちのセリフだぜ、シュウ」

エデンは口元の血を乱暴に拭い去りながら、不敵に笑った。


シュウが何気なく自身の頬に触れると――そこから一筋の血が流れていることに気づき、微かに顔をしかめた。

(……いつの間に、僕の顔を斬った?)


「自分の心配でもしてろよ。……どうやら、その『眼』も限界リミットが近いみたいだからな」

エデンが挑発的に笑い声を上げる。


「安心していいよ、エデン」

シュウの瞳が、氷のように冷たく細められた。

「……そうなる前に、君は死ぬんだから」


シュウは槍の柄を強く握り締め、その切っ先に膨大な量の圧縮された『全華ゼンカ』を纏わせた。

「……小賢しい真似は、もう飽きたかい?」

エデンもまた黒き剣に『全華』を注ぎ込む。だが、その刀身に纏う闇は、まるでバッテリーが切れる寸前のように明滅し、不安定に揺らいでいた。


観客席から見下ろす参加者たちは、皆一様にこの死闘に息を呑んでいた。しかし、ユキだけは違った。彼女の心の中に、拭い去れない『強烈な違和感』が渦巻いていたのだ。


(まるで、シュウ自身が『自分自身』をテストしているみたいだ)ユキは鋭く分析する。(エデンに攻撃の主導権を握らせておいて、自分はそれに完璧に対応するだけ。神々に見せつけるための『博覧会エキシビション』でもやってるつもり?)

(……いや、絶対におかしい)

(今日一日のあいつの行動は、全てが不自然すぎる。まるで、あの『神の眼』を使っている時だけ……完全に『別人』と入れ替わっているみたいに)


「シュン……アンタ、一体あいつに何を仕込んだのよ……ッ」

ユキは拳を白くなるほど握りしめ、低く毒づいた。


「もしかすると『多重人格(解離性同一性障害)』……あるいは、もっとおぞましい『何か』かもしれないね」

背後から、ひどく耳障りで、猛毒を含んだような声がヌルリと鼓膜を撫でた。


ユキとナズが驚いて振り返ると、そこにはリュウザキが不気味に顔を歪めて笑っていた。

「やあ」

「……リュウザキ・ホシ」ユキが警戒心を露わにして睨みつける。


「君、頭の中で考えてることが顔に全部出ちゃうタイプだろ、ユキ・ツカ?」

「今まで何百回と言われてきたわ」

「ねえ、さっきの言葉、どういう意味?」ナズが姉の背中に隠れながら恐る恐る尋ねる。

「ただ、あのシュウって奴の『中身』が、ひどく歪で奇妙だって話さ」


「……何の話?」

「最初は、一人でブツブツと独り言を呟いてるイカれた奴だと思ってたんだ」リュウザキは楽しそうにクスクスと笑う。「でも、そのあとで最高に面白いことに気がついた」

「あいつの体内には……完全に独立した『3つの全華のエネルギー』が流れてる」


「は? あり得ないわ」ユキが即座に否定する。「いくら複数の属性エレメントを持っていようと、一人の人間の体内を流れる全華の脈絡ルートは一つに統合されるはずよ」

「俺もあの化物を見るまでは、そう信じて疑わなかったよ」リュウザキは軽く肩をすくめた。「俺が見たあの異常な現象バグに、論理的な説明なんて一切つかない。だが……あれは極上の『興味の対象』だ」


「へえ……」ユキが皮肉な笑みを浮かべる。「アンタみたいなどす黒い変態が、他人の心配なんてするのね。こいつは驚いたわ」

「勘違いするなよ。俺は『強い奴』にしか興味がない。……奴らの弱点ウィークポイントを暴き出し、この手で、徹底的に解体(ぶっ殺す)してやるためにな」


「……アンタ、吐き気がするほどクズね。自覚ある?」

「最高の褒め言葉だ、アフロディーテの娘(お嬢さん)」リュウザキが爬虫類のように舌舐めずりする。

「……マジで関わりたくないタイプだわ」ユキは引きつった笑いを浮かべた。


「だが、あの正体不明のガキ(シュウ)よりも、もっと面白い見世物ショーが始まったぜ」リュウザキが闘技場を指差す。「あの『呪われたガキ』の最期だ」

「えっ?」


――ドゴォォォンッ!!


ユキが慌てて戦場アリーナへと視線を戻した時、エデンは壁際に力なく座り込み、その顔は死人のように蒼白になっていた。

彼の体はすでに無数の穴だらけであり、シュウの握る槍の穂先からは、ポタポタと絶え間なく血の雫がこぼれ落ちている。


「さて……そろそろ降伏サレンダーする気になったかい、エデン?」

「……へ、へへっ。悪いな……俺の辞書に、そんな都合のいい言葉は載ってねえんだわ」


――ズグシャァッ!!


その瞬間、シュウの無慈悲な槍がエデンの脇腹を容赦なく貫き、鼓膜をつんざくような絶叫が闘技場に響き渡った。


「アァァァァァァァァァァッ!!」

その悲鳴はあまりにも痛ましく、風を切り裂き、観客たちの心を容赦なく抉り取った。

シュウが槍を数ミリ動かす度、エデンは絶叫を上げ、その体からおびただしい量の血が砂漠に吸い込まれていく。


「君のくだらないプライドが許さないのは分かっている。だが、今は大人しく負けを認めて、次に備えるのが賢明な判断だ」シュウが冷たく見下ろす。

「……できねえよ」

「どうしてだッ!?」


「俺には……果たさなきゃならねえ『約束』があるんだよ……。それができねえなら……いっそここで死んだ方がマシだ……ッ!」


「この、分からず屋がッ!!」

シュウは苛立ちに顔を歪めながら槍を引き抜くと、限界を超えた莫大な『全華』をその切っ先へと注ぎ込んだ。

そして、その死の槍を天高く掲げ、静かに、そして悲痛な声で宣告する。


「……来世でまた会おう。僕の『友達ともだち』」

「エデェェェェェンッ!!」


ユキの絶望的な叫び声が、闘技場の空に空しく響き渡った。


……




その瞬間――世界が完全に静止フリーズした。


鼓膜ではなく、脳の髄を直接引っ掻くようなおぞましい声が、どこからともなく響き渡る。


『……人間よ。力を、欲するか?』


暗闇の中から、異様に細長い漆黒の腕が這い出し、死の淵に立つエデンへと真っ直ぐに差し出される。

薄れゆく視界の中で、完全に世界が暗転しようとするその直前……エデンは、静かに、だが確かな意志を持って言葉を紡いだ。


「……ああ(Sí)」


――ズドガァァァァァァァァァァァンッ!!!


次元の壁をぶち破るような、絶望的で冒涜的なエネルギーが突如として爆発し、闘技場のみならずアテネの街全体を激しく揺さぶった。


シュウ、そしてその場にいた全ての者たちが、目の前で顕現した『ソレ』に顎を外さんばかりに驚愕した。それは、あまりにもグロテスクで、おぞましく、純粋な『恐怖』の塊のようなエネルギーだった。


観客一人一人の肉体が、本能的な恐怖に支配されて激しく震え上がる。そして、その圧倒的な重圧プレッシャーに耐えきれず、次々と血を吐き出して倒れ伏していった。


その『全華ゼンカ』はあまりにも巨大で禍々しく、遥か遠く離れたアテネの住人たちですら、空を黒く染め上げるその異変をはっきりと目視できた。

街中の人々が、底知れぬ『死』の足音が自分たちの街に迫り来ているのを肌で感じ取っていた。


……


アテネの街角にいたシュンもまた、その絶望的な光景ビジョンを目の当たりにし、完全に言葉を失っていた。


「……なんて美しいんだ」

ヨゲンは、上空に渦巻くその悪魔のような力を恍惚とした表情で見つめて呟く。


「……これが、お前が待ち望んでいたモノってわけか?」

シュンが凄絶な殺気を込めて問う。


「さあね……。だが、今は私にかまけている場合じゃないんじゃないかな? もっと優先して処理すべき『大きな問題』が起きたようだしね」

「この、クソ野郎が……ッ」


「また会える日を楽しみにしているよ、英雄ヒーロー殿」

ヨゲンが指をパチンと鳴らすと、空間が裂けて小さな転移門ポータルが開いた。


「待て……ッ!」


シュンの制止も虚しく、ヨゲンは瞬きする間にポータルの奥へと溶けるように消え去った。後には、おびただしい数の『謎』と、英雄の焦燥だけが残された。


だが、シュンには今、自分が何をすべきかが明確に分かっていた。

取り返しのつかない大罪を犯して後悔してしまう前に……何としても、あの『馬鹿な弟子エデン』を止めに行かなければならない。


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