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謎、深く重く(1)

ただ詰まっていただけじゃない、モン〇ンと積みゲーを消化していたので仕方無……すみません反省はしてます改善は来世でのアップデートをお待ちください


タイトルは作者の心境も含まれております。自業自得ここに極まれりという話ですが


しかもやや短めです

「っ、あー……目ぇ疲れた。頭と肩が痛い……何時だ? 今」


 ストレッチで体の節々が鳴る音を聞きながらリビングの掛け時計を見ると、間もなく二〇時という所だった。夕食を済ませてから改めて書類と格闘していたが、一時間弱で集中力が限界を迎えたらしい。


「これ以上続けても効率が悪いな。うん、今日はここまで。俺は頑張った」


 誰に向けたわけでもない言い訳を並べて、作業を切り上げる。ここから先、無理矢理内容を詰め込んでも寝て起きたら全て抜け落ちているに決まってる。また明日、気持ちを切り替えて臨めば良し。そうだ、そうに違いない。異論無し。


 体を解す為に外でも歩くか、と考えてリビングから出ると、丁度こちらに来ようとしていたアリスと鉢合わせた。


「あっ、リュウトさん。丁度良かった、レイジさんが話したい事があるって」


「レイジが?」


 アリスと一緒に玄関へ向かうと、確かにレイジが待っていた。ルイスの姿は見当たらないが、多分レイジの家で留守番でもしてるんだろう。


「どうした? わざわざ。何か分かった事でもあったのか?」


「まぁ、色々とな……時間はあるか?」


 珍しく言葉を濁すレイジの様子に、直感的に「アリスの耳には入れない方が良い情報」も含まれると推測した俺は、元々の予定を利用してあくまで自然な動作を装ってレイジを外に誘導する事にした。


「丁度気分転換に外の空気を吸おうとしてた所だからな。歩きながらでも構わねぇだろ?」


「そうか、ならそうしよう。アリス、少しだけリュウトを借りるぞ」


 一瞬レイジの周囲の空気が柔らかくなった気がしたので、どうやら俺の選択は正解だったらしい。話を振られたアリスも、何の違和感も感じずに「あ、はい」と返す。


「けど、ちゃんと返してくださいね?」


「安心しろ、こんなモノを引き取るような酔狂じゃない」


「はっはっは。さっさと表に出ろやこの野郎」


 レイジの襟首を掴んで外に引きずり、家から少し離れた所までそのまま歩く。この辺で良いだろうと判断して手を離し、改めてレイジと向き合う。


「……で、何が分かった?」


「歩きながら、だろう? もう少し人に聞かれない場所の方が良い──万が一、声が荒くなっても大丈夫なように、な」


           *


「──よし、話は分かった。つまり今から殴り込みだな?」


「落ち着いて聞けと前置きしたのは無駄だったらしいな」


 フィリンダの外まで赴き、適当な雑木林の中で事の顛末を聞き終えて。早速この辺に根城を持つ賊を片っ端から殴り飛ばす旅に出ようとする俺にレイジは用意していたような深い溜め息を吐いた。


「何言ってんだよ。話を聞いてる間はちゃんと落ち着いてただろうが」


「お前、屁理屈の内容がミッドに似てきてるぞ」


「……ふぅ。成る程、そんな事があったのか」


「今更取り繕っても遅いわけだが」


「つぅか、確かなのか?」


 俺の知能低下疑惑から話題を逸らし、本題──レイジが話した内容を改めて確認する。


「ペンダントを盗んだ賊と、今回の火蜥蜴(サラマンダー)……その両方に同じ人物が関わってる。そして、それは恐らく」


「巨大な(はさみ)を持った女、か。『匿名情報(ジョン・ドゥ)』の推測と合わせると、その女が『(さそり)』という可能性もあるが」


「……あくまで可能性、だな。思い込んでも仕方無い」


 確かに蠍本人の可能性もあるが、その女自体が中間点──この表現が正しいとは思わないが、言うなれば闇仲介所(やみギルド)だろうか。ヤバい依頼のやり取りをするバイパス役という可能性も充分にある。


「ところで、ルイスの村を潰した賊。レイジ個人として心当たりはあるか?」


「どうだろうな。職業柄、賊の情報は仕入れやすい方ではあるが……こうも動きの派手な連中がこの近辺に来ているなんて話は聞いていない。そもそも、心当たりがあるなら帰る前に潰している」


「まぁ、だよな。それで……ルイスは、大丈夫なのか?」


「……大丈夫、ではないだろうな」


 レイジは苦虫を噛み潰したように表情を歪めて、小さく溜め息を()いた。


「村が丸ごと家族のような付き合いだったらしい……それが帰ってみれば皆殺しだ。その状況を平気で飲み込めるような奴は居ない」


「あぁ、そうだな……? なぁ、レイジ」


 ふと、浮かんだ疑問。重要かどうか分からないが、その答えが気になったのでそのまま口に出してみる。


「……何か、さ。不自然じゃねぇか?」


「何? ──詳しく話してみろ」


「そもそも、ルイスがペンダントを盗まれたのが一昨日の夜から、深夜としてだ。昨日の内に別の賊が村を襲い、今日になって火蜥蜴が村を燃やそうとした……」


 順番に並べてみれば、恐らくこんな感じだろう。ペンダントを盗んだ賊と村人を殺した賊が同一組織なら、ルイスは村を出る前に惨状を多少は把握していた筈だし、ルイス自身にも危害が及ぶ筈。そもそも俺が撃退した賊は戦闘能力もほぼ皆無。とても同じ部類の賊とは思えないし、村人が殺されたのはルイスが留守にしていた昨日でほぼ間違い無い。だからこそ、どうしても腑に落ちない部分がある。


「どうして、村人を殺した賊と火蜥蜴(サラマンダー)を別行動にする必要があったんだ? 証拠を消すのが目的なら、殺してすぐに家を燃やしたって変わらないよな?」


「……確かにそうだな。二度手間というか、効率が悪い。どの道、家が燃やされて金品が奪われていれば襲撃の容疑者は火蜥蜴が第一候補になる。村人を殺した賊が、火蜥蜴に顔を見られる事を嫌ったか?」


 その線もあるかも知れない。火蜥蜴が捕まれば、そこから村人を殺した賊の素性も暴かれる。それを避けようとするのは自然にも思えるが……。


「それこそ、仕事を任せる人数を無駄に増やすとそういう面倒事も増える。勿論、費用もな。ペンダントを手に入れる為だけにそれだけの人数を費やすのは、いくら何でも無駄だよな?」


「あぁ。それに、冷静になって考えてみれば。村を一つ、躊躇(ちゅうちょ)無く潰すような危険性の高い賊を、騎士団が好き勝手に遊ばせているとは思えない。常に動向を監視している筈だが、村に来ていた騎士には心当たりが無さそうだった。そこも不自然だな」


「……村人の傷は複数の武器による物。魔物の群れや変異種が関わった可能性を省いても、それだけ派手な動きをする賊を騎士団が知らない筈は無い……か」


 だとしたら、他にどんな可能性が考えられる?騎士団に行動を把握されていない、集団の賊に匹敵する力を持ち、第三者に姿を見せるのを嫌うような……。


「いやいや、まさかな」


「いやいや、そのまさかかも知れませんが?」


「おのれ曲者(くせもの)かっ!?」


 俺が心の中に浮かんだ可能性の厄介さを否定するように呟いた言葉に、レイジとは全く異なる声でリアクションがあったので一瞬取り乱す。が、その声に馴染みがあったので深呼吸をしてから声の正体に呼び掛ける。


「……あのなぁ『匿名情報(ジョン・ドゥ)』。俺の寿命を縮ませる事に本気を出すんじゃねぇよ」


「申し訳ありません。ついつい興に乗ってしまいました」


 背後に立って低い声で笑う『匿名情報』に対して、俺は溜め息を()いてから改めて問う。


「それで? どう『そのまさか』なんだ?」


「さて……まずはリュウト殿の思う『まさか』が何なのかを説明していただかない事には」


「その丸腰でどうやったらあの出方が出来るんだよ。鉄の心臓でも入ってんのかお前」


 まぁ、俺が思った「まさか」を完全に理解していたらその方が怖いけど。もう人間かどうかを疑い始める段階だけど。


「まぁ、確認するなら『匿名情報』が適任とは思ってたしな。だったら聞くけど……一人で複数の武器を使う暗殺者は居るか?」


「ふむ。何故でしょう?」


「村人の死因は複数種類の凶器による出血死だった。簡単に考えるならそれだけの規模を持つ賊が犯人かも知れないけど、そんな賊を騎士団が把握してない筈が無い……だよな?」


「確かに、行動危険度の高い賊の動きには常にアンテナを張っている状態。私の耳にも、それ程に大きな賊の動きは入っておりませんな」


「それなら、これもまた騎士団のマークを受けない存在──暗殺者が関わっているとすれば、道理にはならなくても無理は通る。ただし、暗殺者が何人も集まって、ってのは考え辛い。だから、一人で複数の武器を扱う暗殺者は居るのか? と聞いたわけだ」


「成る程……でしたら、心当たりがございます」


「あるのかよ。いや、聞いたのは俺だけど」


 何なんだよ、暗殺者の人口密度が高過ぎるだろ。暗殺者だぞ? もっと散らばれよ、縄張り意識持とうぜ……という俺の心中を知ってか知らずか、『匿名情報(ジョン・ドゥ)』はその心当たりの内容に言及する。


「──『百足(むかで)』、でございます。と言っても、手足は二本ずつですのでご安心を」


「……とりあえず、死蝿群(ベルゼブブ)みたいなトラウマ量産フォルムじゃないって事か……人間か?」


「そちらをご安心を。そもそも、『(ふくろう)』という存在こそがイレギュラーですので」


 それもそうか。いくら暗殺者だからって変異種がゴロゴロ居座ってるわけじゃないよな……まぁ、人間だから安心、っていうのも違和感あるけど。暗殺者だし。


「……で、その『百足』さんは『(さそり)』よりは詳しい情報あるのか?」


「本当に『よりは』程度でも良ければ。剣や斧、槍に棍棒。刃物や鈍器のみならず飛び道具にも精通し、本来武器ではない物ですら己の道具として扱えてしまうようでございます。器用、という言葉で片付けてしまうには惜しい才覚の持ち主ですな」


「確かに、それなら村人に残っていた傷の種類が多岐に渡っていた理由も納得出来る。それに……村人の性別、年代に関係無く殺し方が的確だった。無駄な傷を付けず、確実に急所を捉えていたからな。賊の手際と言うよりは、暗殺者のそれと考える方が合点もいく」


 実際に村の状況を見てきたレイジがそう判断するなら、俺にそれを否定するだけの根拠は無い。そうなると、俺の仮定の半分が現実味を帯びてしまったわけだが……正直、残り半分を口にするのが嫌になってきた。

 が、嫌な予感は当たり外れを問わず解消しておいた方が良い。となれば、あと半分も確認しなきゃならないだろう。


「なら、もう一つ。暗殺者同士が手を組む可能性は?」




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