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AAM★★★なごやかなる見栄の商人欲


――KIIIIIIIINN!!――



「ベイセン、メカっ娘ならもう行っちゃったけど?」


「へ? なっ・・・」



 レアラにアラフォド捕獲を命ずる為の説明を長々とする中、科学者としての勇姿をラムーに見られていると思えばこそに目を瞑って悦に入り……



 今に至る。



ーーDERADERADERADERAーー


 通信機が鳴り、気まずい顔を見せるラムー。

 それもその筈、あれからベイセンと共にレアラを連れアンコ星に来たものの、よくよく思い返せばコニーから戻るようにと言われていたのを・・・今、思い出した。


 (かい)CH(チャン)社長コニーへの言い訳を考えつつ、応答にタッチする。



『ラムー、今何処で何しとるんよ?』


「ええぇと・・・ベイセンのメカっ娘を確認して、ベビーを懲らしめて、ベイセンのメカっ娘に指示をして、先に、行ったのかな?」



『かな? おおちゃくに(怠けといて)こっすいうそんこで(ズルい嘘で)ちょうらかす気だら(騙す気じゃないのか)?』



 半分当たっているコニーの疑いに動揺しつつも、嘘は言っていない事に毅然として返すラムー。



「ごめん! ウールーに戻るの忘れて、今アンコ星に居るっちゃきに……」


『それ、もーはい(もう)のーなったもんだで(無いから)、アラフォド捕獲にちゃっと行こやりゃあ(早く行きなさい)!』




 何かが腑に落ちない話に返事に詰まるラムーと、言っておいて気まずさを覚えるコニーと、互いのだんまりに妙な間が流れていた。




『何をだましかるだら(黙ってるんですか)コニー様! (めぇ)CH(チャン)が変だがね!』



 そんな二人の妙な間を切り裂く副社長に救われた思いから、話に飛びつくコニー社長。



『名CHの何が変だがや!』


『メカメカ言って笑う娘っ子の声と、大人の悲鳴が漏れとるんだがね!』




 ピンとくるベイセンとラムーが目を合わせる。と、確信を持ったかベイセンが口を挟む。



「あの、コニー社長? わたくしベイセンですけど・・・」


『どした?』


「その娘っ子の声なんですけど、多分それ、わたしくしの作ったメカじゃないかと思いまして・・・」


『おみゃーの作ったメカがいごくんやっとカメ(動くの久々だな)!』


「はあ、まあ・・・」




 問題の本題からズレている応えのせいか返事に困るベイセンだが、副社長が何かに気付く。



『コニー様! それ、どえりゃあ問題だがね!』


『何が問題ね? 仕返しだら?』


『仕返しもなーも、名CHのロボは例のガチャンコが食っちまったんだがね!』


『・・・っ!!』



 コニーも気付いたが、名CHのロボは海CHに手を出す事なくガチャンコに食われて何もしていない。


 詰まる所、世間的には海CHが先に名CHに手を出した形になり体裁が悪い。




『ベイセン! おみゃーのメカはおおちゃきい(やんちゃ)か、おたからさん(お利口さん)か……』



 勿論、コニーは困りごとに言っている。



「いやあ、天才のわたくしが作るメカに間違いはございません!」



 当然のように褒められたと思って応えるベイセン。



えらまつな(偉そうにすんな)! たーけがっ!』


「へ?」






 ところ変わって名CH社長室前……



ーーDOKKOOOOOOONN!!ーー


「キャハハハハハハ! メカメカメカメカメカメカ!」



 ビルが扉から覗き見るも、壁を貫き通り社員やロボを吹っ飛ばしながら走り回るレアラの姿に、何が起きているのか全く理解出来ずに困惑気味の顔を見せていた。


 海CHへの侵攻失敗の知らせを聞き、自身の失態に辞する覚悟を決めていたビザは、ビルの覗く先にはビル派閥の救出隊が迫っているのだろうと自棄になったか介錯を求める。



「ビルよ、この老いぼれの体に監獄暮らしは耐えられん。最後はお前の手で送って来れぬか?」



 そう言って杖の柄をビルに向け渡そうとするビザ。

 けれど振り返ったビルの顔は、理解の及ばぬ何かを見たような、とても敵に手向けをするような状況ではない事を物語る。


 そんなビルがビザを見つめると、不安を口走る。



「ビザ、君は一体何をした?」



 問われた意味が解らないビザは、解らないなりに何の事を言われているのか下を向き、顎に手を当て考え出す 。


 考えるビザを見て、他の可能性も考え出すビルは、一つの不安を憶測に口に漏らす。



「まさか、(ちゅう)CH(チャン)か?」



 ビルは名CHが他メディアより遅れをとっている事に不安を感じ、賭場衛星(ギャンブル・コロニー)に近いトジミン星に拠点を置く巨大メディアの一つである(ニッ)CH(チャン)を介し、アラフォド争奪戦を優位的に中継していた。


 その際に中CHと争っていた経緯が重なり、この攻撃がその仕返しである事の可能性を考え始めていたのである。


 何故なら、ウールー星の海CHは若者から圧倒的支持を受けているが、ことアラフォド争奪戦に関しては互角もしくはそれ以下として見ていた中。


 ビザの奇襲作戦を聞き、海CHの度量の見方を違えていたのかと、ビルは自信が戦況を見誤っている気がしてならなかった。


 むしろアラフォド争奪戦よりも、日CHを介して自社ロボをアピールした方が様々な事に優位に働くのではないかとさえ思えて来る。


 それは、メディア対戦における自社ロボの実績なのか見た目なのか、子供から大人まで幅広い世代に人気があり玩具としての人気も近隣惑星では既に自社ロボのミニチュア大量生産工場が稼働している。


 おそらくはアラフォド争奪戦よりも儲けは大きい。



 自星愛からアラフォド争奪戦を大きく捉えて日CHに近付き楽をして優位性を誇示していたが、果たしてそれで海CHやCB(シービー)CH(チャン)と渡り合えていると言えるのか……


 今は中CHを山奥に追いやっているが、いずれはココなごやかキャストゥルムの在る首都を目指してまた攻めて来る筈、そう考えれば……



 悩むビルやビザに、近くでする外の会話が耳に入って来る。


 何処かの娘と自社の社員か、攻められているのに何を呑気に! と、思う程の雑談だ。




「んとね、私カメだよ!」


「いかんてー、カメのイメージだら“ドジでのろまなカメ”だに!」



 耳にしたビザがため息まじりに自身が今回の作戦を起てた本意を明かす。



「ビルよ、アレがCB(シービー)CH(チャン)のネタだという事すらも忘れて、再放送に連られる下の者の規範の薄さを知って尚、このままで良いと思うのか?」


「それは、分かってる」


「なら、最後に一つ! せめて一泡吹かせてやろうではないか!」



 そう言ってニヤけるビザはいつの間にか杖先をビルに向け、新たな策を発動したか、部屋の通信機が使われていた事を示すようにマイクモードに切り替えられていた。


 何かを悟るビル。



「な、何を? ダム・ガンは先の連絡で封鎖した筈・・・まさか、開発工場か!」


「ふん、今頃はウルバヌザが最新機で追撃に向かっとるわ!」


「しまった!」




「開いてるよ?」



 ビルが焦りを見せたその最中、廊下を走り回っていた娘っ子が後ろに居た。








 その頃、エースパイロットのウルバヌザは、緊急指令を受け最新機での追撃に機密開発工場へと向かったが、格納庫の最新機を前にしたウルバヌザはその目を疑っていた。



「な、何だコレは・・・」



 その見た目に最新型のロボだとは誰も思わないだろう、目の前に在ったのは無機質に青味がかったボール型の金属の塊。


 最新型と聞いてコレを見れば、皆が同じ反応になるのだろう、機体の傍で整備を進めていたのが開発者なのか、その反応を見てため息を漏らしていた。


 ため息に気付きその男の身なりから整備員ではなく開発関係者だと見たウルバヌザは確認に声をかける。




「君、コレが最新機だとでも言うのか?」


「はああぁ、偉い人には解らんのです。上も下もない宇宙に出て人型である必要が何処にあるのか、あんな物は……」



 見れば中に入り込む為の人道管部分の周囲を除き、球体の全てに射出口が配備されている。


 中の操縦席は向きたい方向に360度回転可能で、中は全面スクリーンとなっていて操縦桿もシンプルに手元は内部と機体を操作する2本の方向レバーと射撃スイッチ、足元には速度操作系ペダルが二つのみ。



「中は随分と・・・」


だだくさないだら(雑じゃないぞ)! 失礼。これは無駄を削ぎ落として限りなく直感での操作を可能にするロボなんです!」



 瞬間的に地元言葉が出る程の怒りを見せたが、誇りにかけて説明する開発者。


 ウルバヌザも理解を示すが、開発者ならではのアピールポイントばかりではと、実戦に適さない部分も確認する。



「これから初めて乗って実戦に向かおうとする者に、注意すべき点は何かあるか?」



 乗る者に対する至らぬ配慮に気付かされ、少し行き過ぎた自身の横暴さを反省したのか、開発者のみが気付いていた注意点を口にする。



「このボールは出入口付近の20度角位は死角になります。でも、エースパイロットのウルバヌザさんなら大丈夫ですよ」


「私もそう願うよ」



 そう言い残してボールの中へと乗り込むウルバヌザ。



「シートベルトの装着で起動しますから! 磁場浮遊するんで惑星内でも宇宙でも操作は同じです」


「ああ、馴れるまで離れていてくれ!」



 人道管の扉が閉まり開発者がその場から少し離れると、浮遊と同時にボールがその場で激しい回転を始める。


 一瞬焦る開発者を尻目に回転を止めたボールは次の瞬間、一気に機密工場の発着場でもある格納庫の開閉扉前に向かい、ピタッと止まる。



「よし、開けてくれ!」



 通信機からのウルバヌザの声に開発者も首を傾げては横に振り、エースパイロットの素養に脱帽といった風に肩を上げ、扉の開閉スイッチを押した。



「上は公園なもんだで、あんばよう、お気を付けて!」









――KIIIIIIIINN!!――



「ん? ベイセン、あれレアラじゃない?」



 アラフォド捕獲にレアラを追って来たラムーとベイセン。


 とんでもないスピードで土煙を立てて前から来る何かを細めに見ると、間違いなくレアラそのものだった。



「おーい、レアラ! ここだここ!」



 大きく手を振るベイセンに気付き、向きをコチラに変えるレアラ。


――KIIIIIIIINN!!――


「ん・・・ちょっと、」



 スピードはそのままに、向かって来るレアラに恐怖を感じ出すベイセン。


 ラムーは察したか、静かに横へ数歩離れる。



「レアラ、ゆっくり走りなさーい!」


「ほーい!」


――KIIIIIIIINN!!――


「違う違う、ゆっくりだゆっくり!」


ーーDOKKOOOOOOONN!!ーー


「ぎゃあああああああぁぁぁぁ……」



 今の今までベイセンが居た所に、止まったレアラが居るのを確認し、当のベイセンが叫び声と共に吹き飛んで行くのを目で追うラムー。


 話が進まなくなる可能性に気付き、何に配慮する気かレアラに声をかける。



「レアラちゃん、ベイセンをココに連れて来てくれない?」


「ほい!」


――KIIIIIIIINN!!――

      ?

――KIIIIIIIINN!!――


「持って来たよ!」


「・・・へ?」



 一瞬の事に何が何だか解らないのはベイセンだけにあらず、それをしろと言ったラムーも理解のギリギリの所で・・・考えるのを放棄した。



「ありがとね、レアラちゃん!」


「ほい!」




 そんな、ある意味平和な公園での一幕に、突如としてウルバヌザの乗ったボールが現れた!



 が、ラムーもベイセンもそれが名CHの新型ロボとは思っていない。


 いや、思えなかった。




「んん? あれは確か・・・」



 スクリーンに映るラムーの姿に見覚えがあったのか、ズームインして顔をアップに思い出そうと記憶を辿るウルバヌザ。




「レアラ、アッチで何してたんだ?」


「んとね、アッチにメカがいっぱいあったから遊んでたら、ジジイちゃんがココからボールが出るって言うから来たの!」



 訳の解らないレアラの話に、一つだけ分かりそうな物が頭の上に浮かんでいる。


 見上げるラムーとベイセンが目を合わせる。と、レアラが来た方向に煙が立っているのが目に入る。


 ふと、さっきのコニーとの通信内容が頭を過り、煙の位置から推測するにソコが名CHであれば、レアラが言うジジイとは名CH社長である可能性を考える・・・


 ベイセンがタブレットのような物を弄り何かを表示すると、ソレをレアラに見せて問いかける。



「おい、レアラ! ひょっとして、お前にボールが出るって言ったのは、この人か?」


「そおだよ! あと、もう一つジジイちゃんがあった!」



 目をパチクリしながら、可能性にビザ副社長の画像を出して見せる。



「この人か?」


「そお! んで、コッチのジジイちゃんがさっきのジジイちゃんに棒でドーンしたからコッチのジジイちゃんをポイってしたらさっきのジジイちゃんがここにボールが出るって教えてくれた!」



 理解するのに言葉を整理整頓し直す二人が、ボソボソと……



「ベイセン、先に出したのはビル社長?」


「はい、だから、さっきのジジイちゃんがビル社長で・・・」




 副社長が社長を棒でドーンで、レアラが副社長をポイって・・・

 で、社長がここからボールが出るってレアラに・・・



「・・・レアラ、ボールが出るって教えてくれたさっきのジジイちゃんは、他にも何か言ってなかったか?」


「んとね、ポイしてって!」



 三度(みたび)目を合わせるラムーとベイセンが上を向き、ボールを確認。


 よくよく見れば、ボールの球体全てに何かの射出口を備えているのが分かる。



「あぁ、あぁ、あぁ、コレ、メカじゃないか!」



「キャハハハハハハ! メカメカメカメカメカメカ!」


「メカじゃない! レアラ! アレがボールだ!」


「ボールって?」


「ボールは・・・みんなで投げたり蹴ったりして、遊ぶ為の、遊具? って、お前が最初にボールって言ったんじゃないか!」




ーーDOKKOOOOOOONN!!ーー





「蹴ったけど? コレが遊び?」



「・・・あ、遊びはおしまい! 帰りますよ!」




 何かの気まずさを隠そうと、その場から早く立ち去る事を選んだベイセン。


 ラムーもベイセンの案に乗り三人・・・二人と一台のメカはウールーに向け進路を変えた。








「は、速い、もう宇宙空間か、通常の二倍・・・どころじゃないぞコレは!」


 逆噴射をして機体を赤く染めても尚、一向に止まらず。


 吹っ飛んで行くボールを宇宙船から見た者達の噂は尾を引いて、いつしかこう呼ばれるようになっていた。


 赤い彗・・・

――KUPIPUUU!――




「え? ガチャンコがまた逃げ出した? レアラ! ガチャンコを連れ戻して来なさい!」


「ほい!」




 

■あとがき


 ええ、言いたい事は分かりますとも。

 けれどこの地域のメディアネタにコレを使わない方が逆に言われるでしょう?

 いえ、このメディア戦争の話を綴らないと次の物語が説明だらけになってしまいそうだったもので。

 それにしても、あのキャラは強過ぎて何をしても負けますね。(笑)


――NNCHAAAAAAA!!――


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