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47/53

AAK★★★★★★★★★線上にかける端


 閃光が空を覆う少し前……



――PARIPI――

【ホクダンSA(ステーションエリア)から先のハチク星方面を封鎖指示。今スグそこから緊急退避】


「はあ? どうやって?」

「こういう所が機械よね! マニュアルばっか……」




 ヤEがニコル(ソン)の所へ向かって行き、置いてけぼりを食っていたアーヤとポリンは森の中に隠れながら(やぐら)下の様子を注視し待っていた折の事。


 戦伝(センデン)の通信を傍受したのかBIKKEからバングルに退避しろとのメッセージが入ったものの、どうする事も出来ない状態にBIKKEを野次る二人……



――PARIPI――

【間に合わない可能性。潜伏しているMウル星人かハチク星人を頼り脱出せよ】


「はあ? それこそどうやって探せっての?」

「マニュアルって言われて怒ったんじゃないの?」


「そういう所は意外と繊細なのね……」



 対応のしようもなく暇な素振りにポリンは森の小さな羽虫を払いながらBIKKEの通信メッセージを再読していて、ふと思う。



「あれ? ひょっとして、ヴィッキーって……」



 何に気が付いたのか、女神像での件もあってポリンの一挙手一投足に注視するアーヤだが、口は挟みたいのか滑らしたのか予想を漏らす。



「オカルトマニアとか?」

「そお! だって、ジャポメカ星製だもん!」



 予想が当たり意気投合する二人。



「やっぱり! ジャポメカ星の辺りでMウル星人を神聖視してるって、私何かで読んだ!」

「それに、あのジャポメカ星のマニアっぽいサバイバル口調のメッセージとか! あれ、絶対ヴィッキー製作者の趣味でしょ」


「っぽい!」

「そもそも潜伏してるMウル星人かハチク星人って、何でヴィッキーが潜伏者情報を知ってんだっての!」



――GASAGASAGASA――


「!?」



 突如として蠢く草木の音に固まる二人。


 一応に隠れている事は忘れてはいなかった様で、今更ながらに口を押さえて身構えていた。


 鬼が出るか蛇が出るか……




「君達はいったい?」



 出て来たのは先程までニコル村と共に櫓の下に居た男Dr(ドクター)Kr(クリプトン)だった。



「ヤバっ」

「Mウル星人……」


「え、何で判った?」



 ポリンが無意味に発した言葉に反応し、思わず答えるDrKr。


 DrKrの台詞に自分達が身構えていた理由が重ならず、〈ん?〉と少し冷静に考えだすポリン。


 アーヤはDrKrの話など聞いてなかったのか、櫓の下に居た男のイメージそのままに捕えに来たと思って逃げ道を探すがそもそも森に道など無く、どっちに向かうか周りの木々を見るばかり。


 そんな中、答えに行き着いたポリンが恐る恐る口にする。




「……あなた、ここに潜伏してたんでしょ?」



 思わぬ台詞に何を言っているのかとポリンの後ろで、はあ? といったポリンを咎めるアーヤの顔も、応えを待つポリンの上に見えているDrKrが応えに詰まる。


 ここで弱気を見せれば何が起こるか分からない。そう考えたのか、ポリンが次なる攻めを見せる。




「ウチらの船長ヴィッキーからの指令よ! ウチらを今スグ、ホクダンSAに運んで!」




 ポカンとするDrKrを見て、外した感満載に目を逸らし鼻の下を延ばして口を閉じるポリンの前に、はあ? って顔のアーヤが近付いて来る。



 その時だった。



「ああもう、兎に角みんな早く逃げて! ストカーが今、女神像を爆破しようとしてるの! そうなったらこの森はペチャンコになっちゃうの! もういいから早く逃げて!」



 聞き覚えのある誰かが叫ぶ大声が、森中に響き渡った。



――DOTADOTADOTADOTADOTADOTA――


 それから暫くの静寂を突き破り一斉に何かが動き出し溢れる奇声。


 櫓の方を振り返ると、逃げ惑うPAソナ従事者達。


 そして櫓を見れば、いつの間にかシア()とジョイ()がバギーで到着し、ヤEとニコル村が堂々と話していた。


 その姿に安堵したアーヤとポリンが立ち上がり、手を振ろうとした所。




「オーケー! 行きましょう!」



「え?」

「なにゃっ」



 後ろからDrKrが腕を広げアーヤとポリンを脇に抱えると、森の外へと振り向き……




「じゅわっ!」



 ジャンプした。





 眼下に見えるは森の全容。



 森の脇に駐めたバギーが見え、思わずアーヤが口を滑らす。



「あ、レンタルバギー……」



 その声に反応して眼下を見回すDrKr。




「オーケー! 見付けた」


「ふにゅっ」

「にょぉぉおおお」



 急降下するDrKrに堪らず声が洩れるアーヤとポリン。


 洩れるのは声だけにしようと拳を握り踏ん張る二人。



 バギー脇に降りた所で、空に閃光が走る。


――PIKAAAAA――


「危ない!」



「ぬごっ」

「おっぷ」



 着いて一息バギーに積まれ、上を覆うようにDrKrが被さると直後。




――DOGGOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO――



 遅れて来た轟音が響き渡る。


 と、同時に衝撃が襲う。



――DOGOOONNGONNKARAKARAKARAKARADOSSUUNN――


 更には何かが降り落ちて来ているのか、(ヒョウ)(みぞれ)よりも大きく硬い落下物の音。



 まだバギーが浮いていないせいか、伝わる振動からもその大きさや重さが判る。


 とはいえ、DrKrの身一つではバギー全てを覆う事など出来はしない。


 にも関わらず一つとして降り注ぐ何かが当たる事無く居られるのは何故なのかと、衝撃に閉じていた目をチラリと開けるアーヤ。



 目の前には予想通りのDrKr。


 けれど、その後ろには神秘的な白いカーテンの様な物にドーム状に包まれていた。



「なにこれ、超素敵なんだけど」


「いや、まあ、任務とあらば……」



 照れるDrKrの台詞に勘違いさせたと気付いたアーヤがハッとする。


 勘違いを正そうとするアーヤを見越して敢えての意地悪なのか無関心か、いつから見ていたのかポリンが左でムクッと起き上がり白いカーテン状のそれを触り確認すると、アーヤに振り返り口にする。



「大丈夫。外はもう収まったみたい」



 違うそうじゃない! も言えずにポリンの様子に言葉を忘れ、照れるDrKrもポリンが起き上がった事で余所余所しく脇に座ると、照れ隠しにポリンと一緒に白いカーテン状のそれを触り確認していた。


 気まずく起き上がりアーヤは後ろのシートに行こうと手を置いたその時!



「何っ!?」



 手に何かが当たり、それが動いて消えて現れた。


 前の二人も振り返る。




「何っ!? と、ちゃうわ! そこはありがとう! 言うて貰わんと……」




 ……喋る蜘蛛。


 いや、蜘蛛型ハチク星人がそこに居た。


 トースター・サイズの黒を基調に青い炎の様な紋様が入ったボディに、タラバガニの様なゴツい脚が八本と、赤や青やの目も八つ。


 大抵、他惑星の人型星人は嫌がるか怖がるかに奇声を上げるがアーヤもポリンも何も言わない。


 いや、何も言えずに固まっていた。


 その反応にも慣れているのか蜘蛛も諦め顔に溜め息を吐く。勿論表情なんて判らない。




「……ハチク星人」



 ポリンが呟き、何かを頭の中で解決しようと、何も無い所を睨み出す。


 そんなポリンの表情が怖かったのか蜘蛛がシートの影に隠れると、今度はアーヤが一言漏らす。



「あ、雲隠れ……」


「それはちゃうけどね!」



 思わず突っ込む蜘蛛だったが、今までの人型星人と違う反応に何ともやり難いと感じていたが、ふとDrKrを見れば糸を掻き分け外の様子に警戒していた。



「おい、Mウル星人何しとん?」


「しっ! 何か感じないか?」



 琴線に触れる様にピンと張った自分の糸に神経を尖らせる蜘蛛。



――PITYANN――POTUPOTUPOTU――PITYANN――POTUPOTUPOTU――



「何や? 何やか滴り落ちて、泡立ってかき混ざっていきよる様な……」


「兎に角、この場所はヤバそうだ。蜘蛛、このドームでバギーごと囲めるか?」


「ああ、ちょい待っとき!」


――PASHU!――

――PASHU!――


 DrKrがバギーを浮遊させると、器用に糸を吐き出し縫うように巻いて行く蜘蛛。それに見惚れるアーヤとポリン。


――PASHU!――

――PASHU!――



 と、ポリンが頭の中で解決したのか口に出す。



「……ニコル村の知り合いでしょ?」


「ニコル村? オレはワナカに頼まれて森の祭壇建設を偵察してたんよ。それとMウル星人! 蜘蛛蜘蛛言うなや、オレはパークや! あ、そやワナカの奴ニコルだか何だかっての言うてたな……よう知らんけど」



 手が……糸が止まり作業が進まない事にDrKrが口を挟む。



「話は後だ! パーク急げ。もうヤバいぞ!」


「蜘蛛使い荒いのお!」


――PASHU!――

――PASHU!――



「ほい、おまっとさん!」

――PASHU!――



 最後に吐いた糸で手摺りを付けた。


 小さな窓まで配した蜘蛛の糸はボール状になっている。


 いつの間にか外に出ていたDrKrが声を上げる。




「オーケー! みんな掴まれ。何かヤバい!」


――PITYANN――POTUPOTUPOTU――PITYANN――POTUPOTUPOTU――


「確かに」


「どっちよ……」


――PITYANN――POTUPOTUPOTU――PITYANN――POTUPOTUPOTU――


 パークも感じるヤバい感覚。


 ポリンはDrKrの掛け声に対するツッコミだろう……




「じゅわっ!」


「ふにゅっ」

「またっ」



 蜘蛛の糸に包まれたバギーを持ち上げ、飛び立つというよりジャンプしたDrKr。





「……馬鹿げてる。信じられない」



 かかっていたG(重力加速度)が落ち少し安定飛行状態になったと同時に、飛び上がって何を見たのかDrKrの嘆く声が白いカーテンの向こうから漏れ聞こえてきた。


 更にはパークの糸のカーテンのお陰か、外の音が綺麗に入る。



――POTUPOTUPOTU――PITYANN――POTUPOTUPOTU――PITYANN――



 さっきDrKrやパークがその星人の特異体質を活かして聞いていたと思われる音がアーヤとポリンにも聞こえてきた。


 Gの圧力に耐え瞑っていた目を開ければ、パークの作った小窓から眼下の様子が目に入る。


 その光景にポリンが、思わず急激に息を吸い込む口を手で塞ぐ。



「ん、何か……」



 アーヤが見る右の方には変わった様子は特に何かも判らない。


 ポリンから見えているのは、まだ残る森の一部が泡となり弾け消えていく様……



「………………そんな、」



 ポリンの脳裏に浮かぶはヤEとニコル村、そしてバギーで到着していたシアZとジョイSの安否だが、目の前の光景から考えても助かる術があったとは到底思えない。


 鬼ON星の北限に在る森の辺りだけではなく、北の一片を残して泡と化し、泡が消えるとそこには何も残ってはいない。



 いや、残ってない処か何も無い!


 在るべき惑星形状の球体を成すことが出来ない、ハチク星の様な凹凸形状とも違う状態。




「みんな、消えちゃった……」



 そんなポリンの嘆きにパークが応える。



「いや、おんで!」


「何が?」



 何かが見えているパークと、そもそも状況が見えていないアーヤの応えに、嘆く気持ちも冷めるポリン。



「……はい?」


 

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