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AAK★★★★★線上にかける端


「意地を張るなニコル(ソン)、私だってドッグ(エイト)星に置いてきた妻の為に仕方がないのだ」


「サイト、君は奴隷と化した彼等にしているPAソナの洗脳を知っている筈だ。何も感じないのか?」



 代替本部の一室で、歳は六十程か祭壇の工事責任者であるサイトに対し、歳は少し上か元は戦火の長官たる毅然とした態度で祭壇工事の卑劣なやり口を諭すニコル村。


 

「だからだ! 私は彼等をこれ以上苦しめない為に仕事を与えている。倒れているのはPAソナがピンハネしてる給金のせいだろう」



 サイトの言葉に何か思う処があるのか、突如として部屋の隅で椅子にかけジェルドレンを飲んでいた白い宇宙服を着た男が立ち上がり声を上げる。



「サイトさん、それはそうだが私は医者だ。彼等の疲労は洗脳による精神疲労と同時に体力的疲労が合わさり起こっている。これ以上の労働は見過ごせないぞ!」


Dr(ドクター)Kr(クリプトン)、私は祭壇建設の責を担っているのだ。それには完成日時までを指示するPAソナの事細かな計画の渦中にある私の立場も理解してくれ」



 DrKrとの会話から別段悪い人間ではなくサイトもまたPAソナの奴隷であるとニコル村も理解した。

 ただ、立場の違いからそうせざるを得ないと気を揉むサイトの姿にも理解は出来るが、だからといってこのままでいい筈もない。



「どうだニコル村、聞けば元は長官だったそうじゃないか、今現場監督をやっているミウラは何処の星の生まれかも判らない経験も知識も怪しい男だ。祭壇の建設に君が長官だった頃の規律を彼等に与えてくれまいか?」


「……祭壇建設の指揮を執れと?」



 サイトにとっても苦渋の決断とも思える提案に、ニコル村も彼等を救える手立てになる可能性を考える。

 DrKrもその提案にニコル村が反旗のキッカケになる気がして期待の目を寄せていた。



「いいだろう。ただ私が指揮を執るからにはその工事の進め方の一切を私の指示に従ってもらうが、宜しいか?」



 ニコル村の言ってる事は指揮権全てを移譲しろと言ってるに等しく、サイトは面子を潰される事に腹の中は煮えくり返っている。



「……そうせえ!」


「おぉ、」



 思わず声を漏らしたのはDrKrで、ニコル村はサイトの決断に敬意を払い敬礼で返事とした。



「ミウラをここに呼べ」



 ドアの外に居る部下に対し、何かを押し殺す様にサイトが告げた。











 女神像のお膝元、もとより入口だった門と何かがあったのか今や解体工事の資材置き場と管理棟の隣にある(ベイ)コック・レストランで、アーヤとポリンは鬼ONスープを飲んでようやく酔いを醒ましていた。



「これ、甘くて美味しい」


「これのオートコックデータ売ってないの?」



 ポリンの口から出た言葉に顔を曇らせる三人。

 ふと、ヤEが言ってたビワ葉矢秀の土産物お菓子をPAソナが勝手に盗んでデータ化して売り捌いてる話を思い出してハッとするポリン。

 アーヤがフォローに口にする。



「ごめん、悪気は無いの! 私達初めての宇宙旅行で、色々あって……」


「解ってる」



 シアZが重い顔に笑みを見せ二人に理解を示すと、ヤEが調査報告の様に皆に向かって語りだした。



「私、調べてみて解った事があるの。PAソナに勝手に盗られたデータが彼方此方で売り捌かれてるのは確かだけど、他の所でも結構データとして盗られてる商品が出回ってるのよ。ウチだけじゃないんだ! って……」


「だからPAソナを倒さないと!」



 シアZが息巻くのを制する様にヤEが掌を向け話を続ける。



「それはそうなんだけど、それだけじゃ駄目なのよ! 今は家の食事もオートコックが主流になってる。シアZがモデラー星に居た時は何を食べてた?」


「……オートコック」


「でしょ。オートコックが主流の今、データこそが食料品そのものなのよ! それに気付かず私達みたいに地の物だからと、土産物は旅行者が買う物と思ってそこに胡座をかいている方が怠慢なんじゃないか! って」


「……なるほどな」


「何よ戦伝(センデン)、あなた悔しくないの?」



 ヤEの言い分に納得がいかないシアZが、納得を見せる戦伝に八つ当たる。

 しかし、元マネージャーの戦伝にはヤEの言う話に納得がいく過去の出来事があった。



「悔しいさ。けどな……お前もモデルやってたなら判る筈だ。そこに居るアーヤとポリンが出て来た時、俺もお前も自分達には関係ないとたかをくくって……」



 戦伝の始めた何とも気まずい話の流れに、アーヤとポリンは目をパチクリしながら互いの顔を見合わせ逃げたい気持ちを抑えている。


 戦伝が続ける話は詰る処、ここの土産もモデルのシアZも胡座をかいていたから足元をすくわれた。と、いう事だろう。

 そんな話の流れにトドメを刺すのか、締めの結論を出そうとヤEが……



「つまり、この鬼ONスープを私達の手でデータ化するのよ!」


「え?」



 流れは流れだが予想を超えて、いや話を超えた結論に、ある意味安堵するアーヤとポリンはそれに乗る。



「うん、これなら絶対売れる!」


「何なら私達がCM受けても良いよ!」


「何でポリンとアーヤなのよ! それこそは私の番でしょうが!」



 乗った勢いにシアZが身を乗り出して来た事に二人は、ヨシッ! と目を見合わせ頷くが、戦伝がまたも余計な一言を……



「そうですよ。アーヤとポリンにCM頼んだらコッチの儲けが無くなっちゃいますよ!」




「……それ、私が安いモデルって事?」



 当然シアZの怒りを買った戦伝。


 その飛び火を恐れて、ヤEに女神像の観光案内を頼んで逃げる二人はそそくさと店を出る。


 米コック・レストランの店主である若い男ジョイ()もシアZの怒った時の性格を知っているのか、今の内に早く行け行け! と、顎と手を払いウィンクをかまして二人に逃げるよう奨めていた。



 二人はレストランを出て振り向くと少し高台に在る女神像を見上げ、はい満足! 次の観光案内を! と、ばかりにバギーに乗り込もうとするが、ヤEはそれを留める。



「早く行かないとシアZの怒りの飛び火が来ちゃうって!」

「あの子の説教ネチネチで、業界でも有名だったんだから!」



 アーヤとポリンがシアZの飛び火を嫌がる理由は兎も角として、ヤEは観光案内に説明し忘れていた事を思い出す。



「あの、女神像は中に入れるの!」


「は?」

「女神なんでしょ? 中って……」



 ポリンの無意味な推理が始まる。



「星の守り神……つまり、シェルターって事じゃない?」


「ああ! まさか、入口は……」



 そう言ってアーヤが見上げる先の腰の辺りには一部外装が剥がれた箇所があり、それを見てから少し中央に向かったソコには当然何も無い。


 いや、あってはならない箇所への視線にポリンが、え? と引くのを見てヤEが焦る。




「……違う。それは無いから! 下! 足下を見て!」



 言われて視線を足下に落とすアーヤとポリン。

 見れば足の下には何かの台座か、建物数階分に解体工事の関係からか幕がかかっている。



「何あれ?」

「雲海をイメージしてんじゃないの?」



 アーヤの微妙な予想を無視して、ヤEがその答えでこれまでの話を繋げる。



「アソコが例のお土産屋だった所なの!」


「え? ああ、ビワ葉矢秀のお菓子?」

「女神関係なくない?」



 ポリンの指摘が耳に痛いのか、ヤEも気まずく顔を背け女神像に向かって歩みを進めていた。



「……ミュージアム、温泉?」



 仕方なくついて行った二人だが、台座の入口に着くと女神像にそぐわない観光文字が並ぶ看板にアーヤもポリンも訳が解らない。

 ポリンの推測はあらぬ方へと向かい出したのか……



「女神の、温泉……秘湯……女神イコール美。これ、美肌の湯って事じゃない?」


「違います!」



 そう言って扉を開け中へと向かうヤEの素早い回答に、ツマラナそうな顔を見せるポリンもトボトボとついて行く。


 中には嘗ての賑わいの残骸がそこかしこに捨て置かれ、既に解体工事が始まってる事を物語る様に殆どの物は運び出されたのかケースの中には何も無く、台の上には解体作業の工具類が置かれ……



「とりあえず上からアワGを見てみませんか?」



 ヤEがフロア脇のシューターを指して二人を誘う。



「上? 中じゃないの?」


「まぁ、中を通って上に……そこはもう、いいじゃない!」



 開き直るヤEに、少しさっきの不満が残るポリンだが一先ずシューターに乗ると、今度はアーヤが問う。



「上からも何も宇宙(そら)から来たんだけど……」


「もう! それ、耳にタコだからヤメて!」


――SHUFOOOOOOOOOO――


「ハチク星人が耳に?」




 ヤEが言いたい事は二人にいまいち伝わらないが、きっと他星からの旅行者からもこれを案内する度に同じ事を言われてきたのだろう。

 そうと知りつつも二人を上に誘う理由こそにヤEの想いがあったとは知らないからこそ。




――HYUUUUUuuu――


 上に着くと同時に強烈な風が吹き込んできた。


 ここは標高的には雲よりも上の辺り、酸素濃度の薄さからスキンケアが自動的に発動していた。



 アーヤもポリンも強風に危なく倒れそうになるが、ヤEは慣れているのか二人の背中を支えると、そのまま前の展望デッキへと連れ立った。



「ここ女神像の首の辺りなんだけど、見て! 空に見えるあの惑星」



 空には惑星間チューブの下部に在る重力装置と共に、凸凹な地形が判る大きな惑星が大気の青味にも負けず薄っすらと見えていた。



「あれ、ハチク星なの……」


 

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