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AAI★★★★鉄砲水のタマとり物語


「Eトカワ、私達、欲しい、帰る」


 捕えていた異星人が話し出した。

 Eトカワが何度も確認に訪ねていた相手だが、互いのコンタクトの必要に互いが互いの言語を摺り合わせていた。



(ティ)クラ、アトランデス、欲しい、それは、水?」



 飲むジェスチャーに肯く異星人に、互いにメモに記す。既に異星人を縛る物は無い。



「Eトカワ、私達、全て、自由、欲しい」


「私達、全て、自由、同じ、君達、自由」


「私、偉い、隊長、約束、守る」


「信じる、約束、欲しい」



 片言ながら既にある程度の会話が成立する程に言葉の壁は低く、言語形成も似て非なりの環境による無知なる事以外は単語のやり取りが出来る迄になっていた。


 それは、互いの知能の高さ故なのかも判断出来ない初めての事……



――PERAPERAPERA!――

――PERAPERAPERA!――


「Eトカワちゃん、コレ何よ?」



 Kヨシロウはアトランデス星人から聞いたジェルドレンという飲み物を何の躊躇いもなく飲みつつ、それまで何をしていたのかも解らないが、メインモニターの警報音と共に出る表示に弄りたい衝動を抑え苦慮し、パネルに向けた指を奮わせ……



 Eトカワに投げた。



 その警報音にTクラが反応し、パネル操作の許可を求めていた。



「それは、話、私、やる、欲しい」



 少し考えると、EトカワがKヨシロウに確認する。



「Kヨシロウ君、それこのTクラ隊長に任せても良いかな?」


「何だEトカワちゃんにも解んないのかい?」


「いや、仲間からの通信か何かじゃないかと思うが……」



 少し気難しい顔をして、気付いてはいる危険性と信頼との秤に、判断材料をどうKヨシロウに伝えようかと考えていた折に、呆気なく返答が来る。



「へええ、良いんじゃないの」


「ああ……」

「大丈夫、俺はEトカワちゃんを信じるぜ!」



 その言葉の意味を理解するとスグにTクラにOKとばかりに手をパネルに向けた。


 目を丸くするTクラが礼なのかキャップを脱ぎ頭を下げると急ぎパネルを操作する。

 直後、メインモニターに別の船の大将が映し出された。


 内容の解らない異星人同士の会話に、何となく危機感とも取れる不安を覚えるトモカZが、モニターを見れば目敏く見付けて異星人より先に叫びを上げる。



「う、ウカG?」


「は?」



 トモカZの叫びにEトカワとKヨシロウがモニターを良く見ると大将らしき男の脇に立つ、明ら様な族。



「あ、こんな顔なんだ」



 さした驚きも無く、まるでテレビに出て来た漫画家や作家や声優やのように名前は知っているが顔は知らない者を初めて見た位の反応に、共有出来ない感覚の二人にまごつくトモカZ。



「Eトカワ、アトランデス、偉い人、愛の人、盗られた、私達、追う、盗った、ハム人」



 Tクラがモニターの相手に敬礼なのか胸に手をあてポーズを取ると、トカトカ星人の三人に向け確認するように向き応答を待つ……



 すると、Kヨシロウがニコニコ笑い何を期待しているのかEトカワに尋ねた。



「これ、何かを追うのを手伝えって話だろ?」

「恐らくは」


「なら聞いてくれよ! 追った先に何があるのかを!」



 少し考えると意味を理解したのかTクラに尋ねるEトカワ。



「私達、追う、それは、起きる、何?」


「……沢山、星、沢山、星人、喜ぶ」


「それは、トカトカ星人、喜ぶ?」


「喜ぶ、トカトカ、争い、終わる」



 少し意味が理解出来ない点があり、その点についてが核心と気付き尋ねようとするEトカワを制止するように大声を出して来たKヨシロウ。




「ロックじゃねえか!」



「え?」



 突然の叫びに理解が遅れる船内と、モニターの向こうでもウカGが眉唾にモニターを睨み付けている。




「愛する人を助けて皆ハッピー! いいじゃねえか! ラブ&ピースの為にハムを……いや、豚野郎をとっ捕まえようぜ!」



「おい、Kヨシロウ君そんな勝手に」


「解りました。Tクラ、私達、追う、喜ぶ」



 言語理解のタイムラグから妙な間に顔が晴れるまでにかかった時を笑顔が埋める。



「……喜ぶ、私達、喜ぶ、トカトカ、アトランデス、喜ぶ」



「ちょ、え?」



 一人置き去りのトモカZは、抱きつき感謝を示すTクラに困惑の表情を増していた。



 その様子にモニターの向こうにも三人のトカトカ星人の協力を得られた事と知りUツイ王も安堵に緩む顔を見せる中、笑っても何処か怪しいウカGと不安感に辛辣な表情を変えないMモエ姫だったが……



「おい! G広場の魔物はお前等か?」



 ウカGの尋ねにEトカワが答える内容の精査に間が開くと、それを見ていたKヨシロウがニコニコ笑って応える。



「そうさ、魔物に何用だい?」


「お前等は何の為にソコに居る」

「さあね、行きずりの恋って処さ!」



 友として今スグ助言をしたい程の二人のやり取りを、諦め半分にトモカZも覚悟を決め静観していた。



「お前も俺をコケにした奴等と同じ類いか?」

「知らねえよ! 俺は二輪を壊された代わりにこの船を頂いただけだ!」


「そうか、ならその船で奴等を殺せ!」


「そいつはアンタがやんな! 俺はピースにラブをロックすんだよ!」

「ラブをロック? まあいい、ならココに連れて来い!」


「俺に指図すんじゃねえ! 俺は誰の指図も受けねえ!」



 案の定譲りの無いバカ正直なKヨシロウにため息を吐き、モニターを見ていたトモカZの目にMモエ姫の俯きが胸を締め付ける。




 同じようにMモエ姫の様子に気をもむTクラが、仲間を解放して戻って来た。



 Kヨシロウに何をされたか気を失い倒れて、気付けば縛られ捕われていたアトランデス星人には、今尚何が起きたか記憶が無い。


 Eトカワも気付いた時には倒れていたが、ソレとは違う何かだろう。

 


 解放されたアトランデス星人の若者が何が起きたか確認に彷徨く中、何を話しているのか争うモニターとのやり取りに興味をそそられ近付く。


 ふと視線の脇で彷徨くアトランデス星人に気付きロックしたKヨシロウの様子が変わる。




「お前! 俺の二輪壊した野郎じゃねえか!」 



 ウカGを放ったらかしてアトランデス星人の若者に詰め寄る。


 異星人の寄りに慌てる若者。

 TクラがEトカワに確認していた。


 若者はスギEという最年少の船員だという。



「スギE、破壊、Kヨシロウ、愛機」

「ああ、」


「愛機、破壊、Kヨシロウ、欲しい、宇宙船」

「ん?」



 首を傾げるTクラが、話の流れを思い出したか焦り目を見開いて首を振るが、諦めろとばかりにEトカワがお手上げポーズにKヨシロウを指す。


 振り返るTクラが暴力を使わず言い争うだけのKヨシロウに……


 放ったらかしのウカGを更に無視し、TクラがUツイ王に何かを確認していた。



 その後ろでMモエ姫に手を振るトモカZ。


 ウカGの苛つきが頂点に達する。



「おい! 何が魔物だ、ガキ共が!」



 手を振りMモエ姫の気を引こうとしていたトモカZだが、ウカGの声に固まる。



 TクラがUツイ王から許可を貰い、感謝と敬礼のポーズをとると笑顔でEトカワに肯いて見せると、EトカワがスギEと言い争うKヨシロウを呼ぶ。



「Kヨシロウ君」


「何だい? 俺は今、壊された二輪の嘆きを彼に聴かせているんだよ!」



「宇宙船の処遇をTクラ隊長がアトランデスの偉い人に取り合ってくれたんだ、聞かない手はないだろう?」



 ニコニコ顔は変わらないが珍しく考える顔を見せたKヨシロウ。


 その隙を見て逃げようとするスギEだが、しっかりとKヨシロウが腕を掴んでいた。

 それを見てかTクラが近付いて行く。



「スギE、私、注意、Kヨシロウ、宇宙船、欲しい、私達、手伝う、宇宙船、Kヨシロウ」



 少しの間を置くとニコニコの笑みがまた冴えると、突然語る。



「私、宇宙船、偉い、約束! 宇宙船、名前、オライエ号」



 吹き出すEトカワが笑うのを見てTクラが意味を気取ったのか、強情で真っ直ぐな青年に艦長の座を譲る意か、胸から何かのキーホルダーを渡された。



「それは、宇宙船、偉い、持つ」



 Eトカワはそれが宇宙船の起動キーだと推測し伝える。



「Kヨシロウ君、それがこの船の鍵だと思うが、どうする?」



 笑顔が広がる。


 と、キーを受け取りスギEをTクラに渡しモニターへと向かった。






 モニターの前ではトモカZがウカGの苛つきに付き合い淡々と話すが、それが更にウカGを苛つかせている。


 苛つきに大振りな態度がMモエ姫の肩に腕が当たるとトモカZが怒鳴る。



「おい! 乱暴はよせ!」



 珍しく本気で怒る姿にKヨシロウが何かを気取り、ニコニコの笑顔の裏に企みを垣間見せていた。


 ウカGの苛つきの原因が戻って来ると、とんでもない話を切り出した。



「ウカG君、その娘は今からコイツのフィアンセだ! 俺等が戻って来るまで丁重に扱い(タマ)え!」



「は?」



 トモカZだけでは無くトカトカ星人の全員が驚くと、Eトカワを見てTクラに伝えろと合図している。


 一瞬悩むが、何か薄っすらと浮かぶ考えに、分らないが何かあると思えて伝える事にしたEトカワ。



「トモカZ、愛、約束! それ、女」



 Eトカワが指す相手を見て、意味を理解したのか慌てて手を振る。



「約束、ダメ! 女、偉い、プリンセス」



 プリンセスの言葉の意味に偉いを考え、何となくを理解したEトカワが駄目な理由を理解してKヨシロウに慌てて伝える。



「Kヨシロウ君、駄目だ。その女の人はお姫様だ。」


「え?」



 Kヨシロウよりも先に反応したのはトモカZの方だった。




「そりゃあ良いじゃねえか! トモカZ、お前は今日から王子だぜ!」



 皆が何を言っているのか理解出来ずに居るのを見てニコニコ笑うKヨシロウがEトカワに伝えろと合図し話を始める。




「俺はこのオライエ号の船長だ! 俺に国境も星境も無え! だから俺は王様だぜ!」



 馬鹿な話にポカンとしている面々に、EトカワはようやくKヨシロウの意図を理解してヤラれたとばかりに舌を巻かれていたがTクラに伝える。



「Kヨシロウ、偉い、オライエ号、星、宇宙船人」



 とんだトンチにTクラも気付いて呆気に取られながらもUツイ王に伝えると、やはり呆気にとられ笑いが溢れる。

 その笑顔にMモエ姫がようやく不安感から解放されたか王を見ると目が合う。



 そして、Uツイ王から予想外の答えが返ってきた事をTクラの反応が告げている。



 KヨシロウもEトカワが伝えるまでもなくそれを理解していた。

 


「処でトモカZ君は……」



 恥ずかしいのか満更でもないのか、モニターのMモエ姫と互いに驚きと不安感と好奇心とでモニターを見合っている。




「おっほ! これぞラブ&ピースだぜ!」




 ウカGも呆気にとられたか、苛つきは消え面白がって話に乗って来た。



「おい魔物、俺の獲物を連れて戻るまでコイツ等を守ってやるからとっとと行けっ!」



「お、ロックがわかって来たんじゃねえか?」


 



(シィ)ミズ!」



 Eトカワと話を進めるとTクラが船員を呼び操舵席に着かせEトカワに説明する。



「Cミズ、操舵、凄い、任せる」


「信じる、Tクラ、自由、偉い、Kヨシロウ」



 配置に就いたアトランデス星人の船員が、誰が指示か待っている。






「さあ行こうぜ! オライエ号発進!」



 Tクラが伝令官となりKヨシロウの指示をアトランデス星人に伝える。ハム人の奪った船へと進路を向け走り出したオライエ号。



――PAPOPAPOPAPOPAPO――







 安定航行に入り、EトカワとTクラの擦り合わせは言語のみならず、今後の為に生活環境や歴史も探る。


 聞けばアトランデス星人は、ここトカトカ星に来る迄に様々な星に降り立ち交流を持ってみたが、タヌウキ星での出合いにUツイ王が結婚しMモエ姫を産んだと云う。


 そして、トカトカ星の民衆に紛れていた者達を、何故にハム人と言うのかを尋ねると、少し言い辛そうに構えたが、答えるTクラの説明にG広場の町にも居た自称良民の顔が浮かぶ。




 彼等は感謝ではなく馬鹿にする為に指の先だけを合わせ「ゴッツァン」と、非道に人の物をニタニタ嘲笑い奪い盗っていく様に、手と腕の形からハム人と名付けたと言う。



 何とも安易な命名にも思えるが、この船の名前を思い返して言葉が詰まる。


 ふと気になった元の船名は「PROJECT-M」というらしい。


 まだ何かあるように思えるが、宇宙船の追走劇は時の流れが妙に長くも感じて気持ちが早れば精神を病むと云う。


 追いつく迄に、オライエ号の中だけでもKヨシロウの言うような星境の壁を無くそうと思えば、時が足りないと感じて気持ちが早るが、それは良いと云う。



 判り辛い宇宙における精神の有り様に、そんなものかと感心するが、それまでの隠れ研究していた状況よりも楽に思えた。


 星人によっても精神性は違うのでは? と、考えた途端にトカトカ星人だけでも多様な人の精神性を垣間見たばかりなのを思い出し、病んで始めて知るだろうと考えた。


 

 Kヨシロウは船長として、何を考えているのか解らないが相変わらずニコニコと笑い適当な指示と適当な確認をしていた。


 トモカZのフワフワとした悩みに星々を眺める姿を肴に……




 トカトカ星人からオライエ号星人に成った三人は、アトランデス星人と共にラブ&ピースを掲げて追走劇にロックを始めた。


 

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