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AAI★★★鉄砲水のタマとり物語


「Eトカワさんよ、こいつは何処から来たんだい?」


「うぅぅむ、恐らくはコレ……」



 倒れていた異星人達を使われていないコードを使い椅子に縛り固定していた。

 その内の一人が目を覚ますとEトカワがマニュアルらしき物を指してはパネルを示し紳士的に確認する。


 頭を下げ礼をするEトカワを妙な顔で見る異星人に、下を指しては「トカトカ」と言い、そして異星人を指す。


 繰り返す事五度目にして仲間とのアイコンタクトの元に頷くとEトカワに言葉を向けた。



「……アトランデス」



 下を指し「トカトカ」と言い、そして異星人を指し



「アトランデス?」



 肯く異星人に理解したEトカワがKヨシロウに応える。



「この宇宙船はアトランデス星からだそうだ。あのパネルの中心星がアトランデス星で、何個か右に離れた所に在る点滅しているのが此処トカトカ星のようだ」



 Eトカワの説明を、理解出来たのかも解らぬ反応に、パネルの宇宙の星図に視線を留めるKヨシロウ。


 操舵室への扉をロックし他の異星人の侵入を防ぎ戻って来たトモカZが、会話は聞いていたのかパネルを確認して短時間にパネルの意味や異星人の言葉を理解するEトカワに感心していた。



 と、Kヨシロウが何かを決断して叫ぶ。



「アレだ! あの星に行こうぜ!」


「え、何? 何で?」



 不安に問うトモカZを他所に、Kヨシロウの指した星の名前を異星人に確認するEトカワ。



「モデラー星だそうだ」


「モデラーか、何か楽しそうな予感がするぜ!」


「何が?」


「行こうぜ! モデラー!」


「解った。先ずはアトランデス星人の言語を覚えないと、抗争に巻き込まれると厄介だ。宇宙に出るとしよう」


「任せたぜ、Eトカワちゃん!」


「は? ちょ、え?」



 既にその操舵の仕組みと操舵方法を理解したのかパネルを軽快に叩くEトカワに異星人も目を疑う。



「恐らくは、コレで……」



 舵を引き足元のレバーを踏み込むと船体が上向き上昇を始めた。


――PIKONNPIKONNPIKONN――


 警報音に必要な何かが抜けているのかと考え、パネルの中に答えを探す。


 と、点滅する表示にあるのと同じ文字らしき形のボタンを探す。



「これか?」


――MUWAAAA!MUWAAAA!――


 躊躇なく押すと警報音。

 いや、こちらは警告音なのだと理解し押したボタンを再度押し隣の同じ文字の形に何か付随するボタンを押すと警告音が止まり、点滅していた表示が消えた。


 パネルの表示が何を意味するのかを理解しているのか、淡々とこなすEトカワの操舵に、異星人は妙な落ち着きを持って見ていた。




――PAPOPAPOPAPOPAPO――









 宇宙へと飛び立った一隻の船に、その船が宇宙船だと気付いたウカGが笑みを浮かべる。



「あれは、G広場の魔物か……」



 見上げる空に消え去る宇宙船を目で追うのを止め、地上のモニターを見ると墜とした船の何隻かに乗り込む民衆の姿に眉を捻らせ確認していた。



「ふん、そうか……」








 ウカGの船強奪と襲撃に歓喜を上げる族集団。


 漆黒の皇帝の歓喜を尻目にコソコソと逆側の森から這い出て来た民衆はウカGが墜とした船に近付くと、怪我した異星人に対する看護の姿勢を持って入り込む。


 優しい民衆の皮を被り非道な噓を持って人を騙し続けてきた者達は、異星人相手にも非道の限りを尽していた。


 非道な輩が入り込んだ船内では異星人の血が飛び散り、操舵手と船長らしき者以外は全てのエリアに一人ずつを残し虐殺している。




 そして、Eトカワ等が宇宙へ飛び立ったのをモニターで見た女が叫ぶ。



「オイ! コレも飛バセヨ!」



「コイツ等の指、生意気に俺達と同ジ数ダゼ!」



 と、仲間達が嫌な笑みを浮かべ異星人の指を一本一本キレの悪い刃物で切り落とす。

 当然の叫び声にも非道な者達は罵声を浴びせる。



「ダァ、ウゥルセエ! 早ク飛バセヨ!」



 ウカGのような一人の漢の力では無い。

 非道な者達が弱者の皮を被り、弱者となった者を愚劣に集団で卑怯な手を使い無理矢理に利用する。


 そんな船が一隻また一隻と、ウカG達が墜とした数だけ何処から来たのか森から姿を現し数を増やす非道な輩達。



 ウカGがモニターで確認した時は既に十隻もの船を奪われていた。


 突然一隻の船から大きな音が!



「お前等! 我が族の功績を汚す者達が地上に墜ちた船を奪っているぞ!」



 ウカGの声に墜ちた船を確認する族の集団が、目の前の光景に目を疑う。



「何だアイツ等、何処から湧いて出て来た?」



 再び船からの声。



「この広場の情報を寄こしたのはそいつ等だ! 俺等をコケにして、最初から火中の栗を拾うつもりだったと知れ! 決して許すな!」



 沸き立つ士気に漆黒の皇帝の二輪動機が疾走していた。




「ヤベ、ヤベエ逃ゲロ! オイ! 早ク飛バセヨ!」


「マダ仲間居ル」

「知ルカヨ勝手に死ンデロ!」



 仲間の心配より自分の心配。

 しかし裏切りの代償を怖がり心配の振りだけはして行く。


 虐殺した異星人の遺体を放り捨てるように入口に置き捨て、仲間に入り切らないとサインを送る。


 それを見た他の船も真似をする。


 仲間思いの振りに乗り、仲間を見捨てる言い訳を咄嗟に共有していた。




 嘘に躊躇もなく、自身を美化する事にかけては(いとま)なく……








 慌てて森の中に消え戻る非道に裏切られた非道な輩の仲間達。


 二輪動機の先頭が宇宙船の入口まで迫る頃、ようやく囚えられた異星人が観念したか、モニターに映るウカGの様子に恐れを為したか、迫る二輪動機を交わすように浮上した。


 と、途端に強がりイキり出す輩達が、異星人の遺体を爆弾代わりか二輪動機へ放り捨てていく。


 まるでゴミを投げ捨てるかのように尊厳も無く……



 全ての遺体を投げ捨てると入口を封鎖。



「フウ、ゴミ捨テ完了。オレ主婦の鏡」

「ハハハ、違エネエ!」



 見れば族の仲間もいつの間にやらその船の中に居た。


 彼方此方から来た輩は何処に紛れて居たのか、族や民衆の中にも居た者達。



 決してその輩が輩と知れずに付き合っていた者達もまた輩と知れずに騙されていた。


 何が何になるかも解らない動乱の世に、影に潜んで動乱を創り出し、世の価値感を変え人をコントロール。


 浮上した船からトカトカ星人を蔑んだ目で見下し嘲笑っていた。


――PAPOPAPONNPAPAPO――



 一度は墜落した十三隻の中で再度浮上出来た九隻の宇宙船が、隊列に戻る素振りを見せたがウカGから逃げる為、異星人の船を盾に進路を取り不安定な飛行で宇宙へと消え去って行く。




「クソっ!」



 爆弾のように異星人の遺体を放り捨てる非道さに腹を立てていた族集団の一人が異様な穴を見付けていた。


 それは、Eトカワが乗り込んだ船の在った場所。



 一見何かの落とし穴のようにも見えるが、あまりにも深く井戸のような縦穴に何かを挿した跡だと思っていた。



――GOPOGOPOGOPO――


 その穴の底から何かがうごめき響く音に異様さを気取り、穴から離れる族。




 その様子を遠巻きに見ていた仲間が上を見るとウカGの船が着陸態勢を取り、その不穏な動きをする族の所に降りようとしていた。


 慌ててそこから離れるように腕を振る仲間に気付いたか、突如焦り二輪動機で疾走する男。


 その男がこちらに向けて叫んでいた。



「逃げろぉぉおおお!」



 ウカGの後方から追撃するような一隻の船。

 先程逃げて行った最後尾に居たケツ持ちの船だった。


 自分達の非道な噓がバレ、残った仲間の救援のようにも見える行動だが、実際の宇宙船内部の様子にそんな話はまるで無く


 宇宙を進む中で水が必要たろうと先頭の船から指示され、急遽水を吸い上げる為に戻って来た。


――PABOOONN!!――

――PABOOONN!!――



 何かを撃ちウカGの船を狙って追いたてる。


――BYUUUUMU――


――DOBAAAAADODODO――


 当たったらしくウカGの船が、力無く逃げる族の後方ギリギリに不時着する。



「逃げろ! 早く逃げろぉぉおおお!」



 尚も逃げろと騒ぐ男が仲間の顔を確認出来る程に近付くと、後方に墜ちた船からウカGが大将を掴んだまま降りて顔を見せると歓声が上がる。


 その歓声に男が振り返った直後……



 穴の辺りで着陸態勢を取る輩の船体下部に向け、轟音と共に何かが穴から吹き出した。



――DOPPAAAAAAAA――



「間欠泉!?」


――BAGOOOWAANN!!――


 横倒しに墜落し船体が捻じれ割れると内燃機関か何かの科学物質の反応か外郭から内部に向けて爆発する。


 恐らくは生存者は望めない爆発の程度に誰もが焦るが、その爆発の火をも消し去る強烈な間欠泉の勢いに ……



「五十人だ! 機械に強い奴来い!」



 ウカGが船内に仲間を呼び込むと、後方の墜落した船も吹き出す水の勢いをも気にも留めずに、我こそはと挑む者達が二輪動機でウカGの元へと走り出していた。



 逃げて来た男が匂いに気付いて顔をしかめる。



「あれ? コレ間欠泉じゃねえな……」

「ああ? じゃあ何なんだコレ!」



 温泉のような硫化水素臭も無く、ただの水が吹き出す状況と判り、ウカGの船を素通りして近付く族の集団。


 爆発で中から吹き飛ばされた見た事の無い服を着る女の、火傷した皮膚にその水がかかると肌が綺麗に……


 奇跡の水かと思われた瞬間、更に奥の方に居た隣町の流行り衣装を着た女に水がかかると、肌が(ただ)れてうめき声をあげていた。


 その顔を見れば、水に溶け流されるように女の顔が変わり果て老婆の姿になって行く。


 それが真の姿かどう偽っていたのか解らぬままに女が意味不明な叫びを上げた。



「創造主たるハムの御身に……」



 そのまま息絶えた老婆の体からもヘドロのような物が流れ出し、妙に大きな胸も溶け出した。




 その水を恐れる族の集団の一人に水滴がかかるが、何も起きず安堵する。



「これ、湧き水だろ!」

「ああ、でも、この水の量は……」



「アイツ等ひょっとして、水が目的か?」



 肌が綺麗になった女をうんこ座りで取り囲み回復を待つ族の集団。


 他に助かりそうな者は無く、倒れた者からはヘドロ状の何かが流れ出している。



「ハ、ハム、嗚呼アアアッ!」



 叫びと共に目覚めた女の視線に族の集団の面々が飛び込むと、目を見開き恐怖の顔を見せ、囲まれた輪の中を吹き出した水でグチョグチョの地を這いずり逃げ回る。



「何だ、この女、勝手に怖がって……」

「アッチの婆さんも叫んでたけど、ハムって何だ?」

「祟りか?」


「知らね! どうでも良いわっ! おい!」



 女を囲む輪を狭め追い込むと、族の一人が恐怖に怯える女に手を差し出した。



 差し伸べられた手に顔を見ようと見上げた女の目に、空の宇宙船の様子が飛び込む。




――PAPOPAPOPAPOPAPO――

――PAPOPAPOPAPOPAPO――

――PAPOPAPOPAPOPAPO――



 逃げて行く八隻の船を追い駆けるように宇宙へ向かっている。


 置いて行かれた。そう思い女の目に涙が溢れ零れる頬に布を充てがう族の男。



「ひゅぅぅう! なに色気付いてんだよ」

「違えっ! 別にそんな」

「あ、」



 ウカGの船に行った筈の一人が息を切らし慌てて走り寄って来た。



「ハァハァハァ、おい、その女」

「何だよお前も色気付いたか?」


「ハァハァ、はあ? 馬鹿野郎、それアイツ等のお姫様なんだと!」



 男を嘲笑っていた仲間が、言葉の意味を理解したのか顔が変わる。



「は?」



 お姫様と知って見直す野郎共に、更に伝える事実。



「アトランデス星って所の異星人なんだと!」


「……」



 頭の整理が付かずに固まる面々に、伝令に来た男がお姫様に呼び掛ける。



(ェム)モエ(プリンセス)さん、アソコ、王様。行く、よろし?」



 ジェスチャーを織り交ぜ、何故か片言のトカトカ語でウカGの居る船を指し来るように促す。



「……」



 Mモエは何を理解すれば良いのか判らず首を傾げると、男は考え思い出した名前を告げ船を指す。



「ええああ、アソコ、(ュウ)ツイ(キング)、私と(ェム)モエ(プリンセス)行く、よろし?」



 目を見開き船を見るMモエ姫が男を見直し、自身を連れてくよう求めているのか男の服を引っ張っていた。


 解らないながらに立ち上がる男の服を掴み続ける姿に、理解したと判断しても良いのか仲間の顔を見回すが……



 悪い事をした訳でも無いのに何か後ろめたさに後退り、布を頬にあてた男も姫と知り尻込み離れていた。


 お姫様を見直し、男が指を宇宙船に向けると肯く。



「じゃぁ、行きますか」



 歩きながら不意に思い出したかエスコートとは、こおか? と、肘を上げ向けて見せるが、首を振られて違うと知り、恥ずかしそうに下を向き船内へと入って行った。


 女が墜ちた船を見ようと振り返ると、吹き出した水の勢いは下がったものの池と川を形成し始めていた。

 その奥に横たわる割れた箇所に見える船内にも生存者は望めない程に捻り潰れていた。


 

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