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AAI★鉄砲水のタマとり物語


 昔々、三十の国が在ったトカトカ星を治めたテンペイは、星の鎮護に七百四十一の聖域を示し、近くに武道場を設け、優秀な武人を聖域の守護職とした。



 その武道場の功名を【AU光明】と云い、守護職に就いた四者を四天王と呼ぶ。


 更に守護職のパートナーの為に【保家EN】と云う施設を置いた。



 聖域と成りて町を形成した民達は四天王から告げられるテンペイの話を信じて町を発展させる為、水を引き穀物を栽培しと築き上げた繁栄に安定した生活を手に入れて行く事に歓びと満足感を得る。




 それから数千の時が流れ……


 

 富を成した世に四天王と成った武人達は、持ち過ぎた権限に有り余る力を鎮護では無く己の為に使い出す。



 聖域とされた地は地に墜ち血が散り地図は書き換えられた。


 【AU光明】と【保母家EN】は、城となり守護職は族と成る。



 そして……



 分断した一つの族の中から、闇より出でし漆黒の皇帝が支配する族の国が立ち上がる。


 それを倒そうと、スタンドリバーヘルズ族や八王亡霊族、少し離れた地にもルナライトチームなる族の数々が離合集散を繰り返しトカトカ星で抗争をしていた。


 元は優秀な武人。

 器用に二輪動機を乗りこなし、降りれば素手の戦に死者は少なかったが怪我人の数は尋常ではなかった。





 その抗争の渦中に(イー)トカワ博士はトカトカ星から見える星に希望と思惑を乗せ、元のテンペイ一族の支援を受けて宇宙船の開発を始めていた。


 それはまだトンキン星団も無い時代の宇宙に出る術を模索していた頃の話。











 (イー)トカワは破壊か焼失か【AU光明】と【保母家EN】の跡地近くにあるGというスポっとくり抜いた壕のある広場を使い簡素な研究施設とし、近くに住居を構えた。



 推進方向維持を目的に飛翔の測定にと何度も射出機を飛ばす。


 その轟音にいつしかG広場に魔物が棲み着いた等と云う噂が出回っていた。


 それは、抗争に明け暮れる族に目を付けられるのを避ける為にEトカワ本人が流した話。



 しかし、Eトカワの予想とは裏腹に、魔物を一目見ようと子供達がG広場へ根性試しにやって来るようになっていた。


 ある日、子供達が噴射実験の反射板の脇に隠れているのを発見した実験関係者からの悪魔の生贄のような提案に、Eトカワは悩み唾を飲み込んだ。




 その後、G広場の外側の森に捨て置かれた子供の亡骸は、誰の子なのかも判らない程に焼け爛れていた。





 魔物の噂を事実として捉える他に無くなった民衆は族に頼むか悩むが、頼めば族に尊厳を与える事になり圧政を恐れる……


 ましてや他の族よりも力無く、抗争に関わらない姿勢をとっている中でワザワザ抗争の具を与えるような事をすれば、G広場の捜索を理由に抗争に駆り出され兼ねない。


 噂が族に広がれば抗争の火種にもなり兼ねず、他族を呼び込む事になる。

 何も出来ず鬱憤が貯まる民衆……




 カオス理論・バタフライエフェクトと……


 何が何を引き起こすかも解らぬ混乱の世。




 目の前の非道に動くに動けぬ自称良民、それを都合良く動くは非道に溺れる者だった。


 それまでも非道に良民を殺し噓を塗り重ね逃げて来た輩達はこの機を逃さんとして、コソコソと素性を隠し仲間を増やし町の実権を握る為に、町のそこかしこに争い事を創り出していた。



 無実の民を犯人とし、自称良民と共に殺す事で憂さ晴らしさせ共闘関係を結ぶ。


 何処が良民なのか、人殺しを復習と唱い正義とする詭弁に乗る自称良民の数々……



 そんな最中に起きた噂の真実味に、焼かれた亡骸を焼き捨てた非道に朽ちた良民達の慣れ果ては、詭弁ばかりが席巻していた……









 子供も非道も良民も来なくなったG広場では飛翔実験が進む。


 亡骸が誰の子か判らないのは当然の話、Eトカワ達が作った人造肉と塩カルの混合体は、作り物とはいえキチンと人の体を模していた。


 黙り込む町を背にEトカワの実験は進み、既に大気圏外への射出装置は完成の運びへと向かっていた。




 しかし……




 トカトカ星の空に白昼堂々と宇宙船団が飛来する。


 その文明の技術の高さに為す術なく空を見上げるEトカワ達とは違い、民衆は族同士の抗争に何処かの族の新兵器だと考えていた。



 その宇宙船団に降りて戦えとばかりに火炎砲撃を向けたスタンドリバーヘルズ族。


 それまで秘密裏に開発されてはいたものの使う事は無かったが、族の武器の使用に死の匂いを感じ取る民衆。


 いつしか離合集散も尽き果てたのか、族の解散の数が上回って行く。



 その中にあって、漆黒の皇帝は七代目としてウカ(ジー)が跡目を継ぎ、その勢力を拡大しG広場の隣町に拠点を移していた。


 それは、宇宙船団がG広場に停泊していたからだった。




 トカトカ星で唯一砲撃もされずに誰も近付かない安全地帯と思えた森の中の広場に降りた宇宙船から乗組員が降り立つのを、Eトカワが迎え入れる為に待ち構えていた。


 当然Eトカワの話は相手には通じない。

 宇宙船団の一隻から降りて来た異星人はそう多くはない。

 それが偵察隊か偉いのかも、一部なのか全てなのかも判らない。


 対応するにも宇宙船の中に入る必要があった。


 しかし、迂闊に出れば相手がどんな武器を持っているのかも何者なのかも何処から来たのかも解らない中で、


 Eトカワが欲しているのは会話では無く宇宙船の技術のみ。

 奪って解体したい気持ちを抑えて中への招待を待っていた。


 族の火炎砲撃に対して反撃も無くトカトカ星を制圧に来た訳では無いとも思えるが、そもそも火炎砲撃の影響がまるで無い宇宙船の外装に、反撃するまでもない程の圧倒的な力の差が覗える。


 その圧倒的な戦力差を持って高みの見物をしていた者達がワザワザ地表に降り立つ意味とは……



 統治の拠点以外に考えられるとすれば、何かしらの補給か略奪か……





 そんな交渉の余地を考えていた中、宇宙船から降り立った者達はトカトカ星人と大差の無い人の姿をしていた。


 が、Eトカワの存在をも無視して通り過ぎて行く。


 トカトカ星の文明文化歴史からなる知識技術にまるで興味は無いと知ったEトカワの苦悩も、トカトカ星人ですら気に留める者も居ない。


 族同士の抗争に新たな抗争の火種処か、抗争の渦中に栗を拾いに飛び入りして来ただけのクズにしか思えなかった。



 独り宇宙船を前に立ち尽くすEトカワ。










 突然の事だった。



「居たぞ! 船を潰せ! タマを取れぇええ!」


――WOOOO!WOOOO!WOOOO!――




 突然森の中から現れたウカGを先頭に二輪動機の大軍が押し寄せる。漆黒の皇帝の襲来に、振り返るEトカワと、慌てて退散しようと駆け戻る異星人。


――NUWAAAAA――

――DOHHNN!――


 逃げ惑う異星人に当たり倒されたEトカワ。


 地べたを這いつくばり考えるに、相手が異星人だろうが圧倒的な戦力差をも凌駕し自身の野望に突き進む無節操な輩の勢いに、自身の希望と思惑が小さく思え情けなく感じた。


 知性も無いと馬鹿にしていた族の生魂の強さに圧倒されていると知り……




「クソっ!」



 走り出したEトカワは異星人に紛れて宇宙船の中へと入り込む。


 宇宙船の近くに居たからこその侵入に安堵もつかの間、駆け戻った異星人の目が向けられる。

 が、その途端。


――PIKONNPIKONNPIKONN――



 船内に響く警告音にEトカワは自身の侵入警報かと焦るが、船内の異星人は慌てて何処かへ移動し始める。


 チャンスと考えたEトカワだが、スグに体格の良い異星人が来た。

 彼等との違いは青々とした髪や目の色と服だ。

 彼等は皆が同じ服を着ていた。


 宇宙船が何処から来たのかは解らないが、幾程の時をこの船内で過ごしたのか……



 船内を走り逃げ出したEトカワが目指したのは洗濯室だ。追われながらも開け方も解らなかったが一つ開ければ彼方此方の扉を無作為に開けて行く……


 しかし、開いた扉の中は簡素なベッドが並ぶばかりで寮のような趣きに、自身の予想とは裏腹にさした技術は見受けられない。



 迷路のように入り組んだ船内を、慌ただしく駆けずり回る異星人を掻き退け……


 まるで自分が忌み嫌われる虫けらの如きにも思える程に、Eトカワに気付いた異星人が慌て慄き汚い物を見るように避けて行く。


 逃げ回りながらも怒りが込上げる。



「畜生! 生ゴミ喰らいの虫みたいに見やがって、私は飛翔動機の専門家だぞ!」



――MUWAAAA!MUWAAAA!――


「何だ?」



 またも異なる警告音に焦るEトカワ。先程が準備と捉える警報で……



「……何かする気か?」



 追っ掛けていた体格の良い異星人が通路の手すりに掴まっていた。



「衝撃波か!?」



 そお思い、Eトカワも掴める場所を探すが離れている。


 慌てて走るが間に合わず、何かを撃った反動のような衝撃波が襲う。




――PABOOONN!!――



 よろめく体を壁に打ち付けると扉が開き、Eトカワは部屋に放り込まれ気を失っていた。


 

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