AAH★オレハマッテイタ
「何だコレ?」
宇宙港に着き、UGロウが甲板でしまい忘れていた洗濯物を取り込んでいると、停泊申請が降りたのか港湾局員がやって来た。ポケットにしまい世間話に……
「アンタの船ならそのまま海ん中進んで行けんじゃないの?」
「海の塩とかフィッシャーがくっ付いたら洗うの面倒なんだぜ!」
「そういうもんかい? あれ、アンタの連れ、まさかエロイドじゃないだろうねぇ?」
手伝うAインコウを見付けた港湾局員の顔色が変わる。
突然の変貌に戸惑うUGロウ。
「あゝ、これは」
「娘ユリコ刑の右腕Aインコウですけど、私を馬鹿にする気?」
「いやいやいやいや、す、すいません。何だよアンタ、そうゆう事は早く言ってくれよ……」
Aインコウの機転で慌てる港湾局員に、何の話か分からず立ち尽くすUGロウが、謝り逃げ出した港湾局員に手を振り見送っていた。
ジャポメカ星の宇宙港に降り立ったUGロウとAインコウはイエローサブマリナーを停泊させ、惑星ステーションへのシャトルを乗り継ぎレンタルバギーを借りてアッキー場へ向かっていた。
――BABABABABABA――
「何でバギーにしたんです?」
「風を斬った方が気持ちいいだろ!」
「今、冬ですけど……」
「……お前がそれを先に言わねぇからだろがよ!」
――PYUUUUUUHH――
惑星によっては春夏秋冬も有ったり無かったりだが、ここジャポメカの都市アッキー場には有ったらしく正に冬本番の寒気を纏っていた。
角物肉のマークが見える橋に降りればスグと聞いていたが、港から続く道程に脇目を振ればスグ横には常に海や川やと水が流れている。
あの港湾局員がイエローサブマリナーで行けるんじゃないかと言っていた理由も肯けた。
その予想以上の水の多さにUGロウはこの星の生活に違和感を覚える。
豊富な水が流れる河川や海や湖や池やと水利で儲けられそうな海洋惑星なのに、ワザワザ狭い陸地に舗装道を敷き詰めた上を、浮遊を阻害してまで四輪を着けた車で移動している民衆と共に渋滞に巻き込まれていた。
マニアックな細部技術製品で有名なジャポメカ星人の行動に、吹き荒ぶビル風の寒さもあってか馬鹿らしさを感じ始める。
当然、寒空にオープンカー状態のホバーバギーで走って来たUGロウは、スキンケア(宇宙線防護服)を起動して簡易的な寒さ対策としていたものの、震えが止まらなくなっていた。
動かない渋滞の道の下の河川には何の船も無く、自然と言うには河岸をコンクリートで固めた人工物で環境負荷も大きくヘドロ溜まりが見えている。
夏に来ていたら臭いだろう状態だが、それも他の惑星なら既に解決済みだ。
水質汚染の浄化システムは確率され周知された技術で誰でも入手可能になっている。
しかし、このジャポメカ星の河川には浄化システムが見当たらない。
いや、途中に下水排水部らしき建造物があった。
あそこには何が在るのだろうか?
いよいよ何の為の河川か解らない。
ただの飾りにしては水は汚く人工河岸でヘドロまで溜まっている。
人工河岸が故に水害も発生し兼ねない。
これでは単に下水を薄める為の流水だ。
そんな景色らしき物も無く、渋滞の道を四輪を着けたまま進んでは止まりを続けて、ようやく角物肉のマークを見付け脇道に逸れた。
震えからか渋滞の鬱憤か、急ぎ屋内へと駐車場に向けフルスロットルで急ハンドルを切り乱暴に停める。
――BUWOOONN!KIKIIIHH――
焦り避ける歩行者だが、中々に慣れたもので何事も無かったように下を向き怒りを口にもせずに何処かへ向かって消えて行く。
いや、怒ってはいるようだが……
遠心力で隣のAインコウも両腕を上げ変な格好になるも、慌ててフードで顔を覆いサングラスをかけ直していた。
「で、お前のそれは防寒なのか?」
――BABABABABABA――
「あ、此処で私の話はしちゃ駄目ですよ」
「あ? 何で?」
「それは、その、娘ユリコ刑の……」
Aインコウがマスクを着けた所で、駐車場の3D切符窓が近付き開くと、カメラモニターから顔を背けるAインコウに何かを勘ぐるUGロウが3D切符窓に対応した。
――48BANNHE――
最新の技術を唱うジャポメカ星の都市アッキー場において、港からの移動も多少浮遊はするが固め舗装した道路を四輪で自重を支え補整する車ばかりで、駐車場は場所を案内するだけで自身で入庫するとは思っても見なかった。
震える身体を抑えながら四十八番車庫に停め街へと歩き出したが、駐車場内には暖房設備も無く何の消毒か紫外線を浴びせているだけだ。
気になっていた無駄が多過ぎるこの星のシステムには、レトロな雰囲気も無く味わいも無い。
途中に見たコロシアムも無機質なコンクリートと意味があるのかも解らない外壁に貼られた木材は何かを補おうとしているのか隠そうとしているのか……
建造物にも愛着は湧きそうに無い。
「本当にここでエロイドが生まれたのか?」
慌てるAインコウが振り返りUGロウの口を押さえて周囲を警戒し見回した後に小声で注意する。
「ここでその話は駄目だって言ったじゃない!」
突然口を塞がれ駄目と言われたが、言われたのはAインコウの話ではなかったのかと頭が混乱する。
しかし、これだけ警戒心を顕にするAインコウ……いや、エロイドが自身の存在意義である意義の事を隠そうとする理由は何なのか。
「どういう事か説明しろ!」
Aインコウも説明する機会をホバーバギーによって失われていただけで場所を探していたらしく、ちょっと待って! と、人差し指を立てて周りを見渡し何かを探していた。
駐車場内には無かったのか外へと親指で誘導するAインコウを追ってまた歩き出す。
アッキー場の街並みは予想とは違い、店先には錆びれたジャンク品が据え置かれ。
覇気も無く下を向き歩く若者と、ため息に物憂げな表情を浮かべる中年層。
店の入口には店員なのか、やたらと警戒心を持って通りを歩く者を、何の基準か見定めている。
道を一本変えると元は大きな商業施設だったのか、ポスターか何かを剥がしたような糊跡が大量に付いた多くの窓が汚く目立つ空きテナントの数々に、この地に何かが起きた事だけを物語っていた。
Oカチ町と云う辺りまで来るとアッキー場の様な昔の賑わいを打ち消すかのような廃墟感や監視の目は薄らぐが、古くからのテナントビル郡には何かから忍んでいるのか表向きには営業しているのかも何の店かも判らない。
「何があったんだ?」
「ソコ! イッたら話すから」
やはり古く廃墟ビルのような建物を指し、目立たず急ぎビルに入ると何のカードかロックを解除し入ったAインコウの後を追うUGロウが、扉の先で肥え太った眼鏡の男に見定めか舐めるように見回された挙げ句に問われる。
「あんた、それ何のコスプレ?」
「あ?」
意味不明な質問に答えを探して中を見回すと、変わった衣服を纏った老若男女の六十人程が狭いフロアで入り乱れていた。
振り返ったAインコウが慌ててUGロウの手を取り、誤魔化しに男に告げる。
「叫べタイヨウ族のボス!」
思い出そうとする男の一瞬の隙にAインコウが奥へと連れて行く。
男はUGロウの後ろ姿に何かを思い出したか納得を見せると同時に女の方にも興味を示して考えていた。
「え、あ……まさか本物の無πA―YS11? いやいやいやいや無い無い……」
奥に行くと中年女が馴れた感じでAインコウのカードを見て更に奥の扉を開け招き入れる。
そこは地下への階段で、二階分程降りるとまた扉。
有艷都と書かれたプレートを押すと生体スキャンが開始され、Aインコウを調べるとすんなりロックが解除された。
開いた扉の先にはAインコウ……いや、エロイドが山のように在った。
フードを外してUGロウに振り返るAインコウ。
数多のエロイドに混みれて唯一服を着て動いているのがAインコウという認識に、UGロウの目が泳ぐ。
いや、泳いでいるのは裸のエロイドにだ!
【有πC―YS11】
ジャポメカ星製のエロイドは精巧な製品だが外惑星向け商品だが、ここに在るのはYS11の改良品なのか、胸の大きさも形も肉付きも各種在り、髪型や手足の長さもまちまちだ。
興味は完全にソチラに向いたUGロウが、Aインコウを視線から外して並ぶエロイドに歩みを進めていた。
通り過ぎるUGロウの気持ちも解る。Aインコウが話の切り出しに説明を付ける。
「ここに居るのが現存する最後のエロイド達です! ちなみに、その子は声も選べるタイプ」




