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AAF★お遊戯会に御招待。


 平地の陸が多い事からコンテナが多く置ける為、水場に近い埠頭ですらもコンテナ街となっていて倉庫管理システムにより港湾局と密接に関わる星。


 その宇宙港の凡そ人が住む事を想定しない倉庫に、管理の事務所としか思えない埠頭脇の建物の二階で長身を揺らし独りストイックな汗を流して筋トレに勤しむ(ユー)サク。


――CHIRICHIRICHIRI――

 

 事務所の古臭い壊れかけの通信機が鳴った。

 しかし、筋トレを続けるUサクは気にも留めず壊れた天窓の樋を使い懸垂を始めていた。


――CHIRICHIRICHIRI――


 鳴りっぱなしでも誰も居ない倉庫の埠頭には文句も来ない。

 ようやく一段落つけたのか筋トレを終え通信機を開けた。



「おおおゔ、遅かったか……」



 何かの玉子か今や違法になった古い通信機の電磁波を調理機代わりに焼いていたが焼け焦げ状態。

 しかし、それもいつもの日課となっている。




 暫くしてやって来たゴツい顔と体の男ブンタが入り口から声を上げ入って来た。



「兄貴いっ! うぉ臭っ! また焦がしたんすか? もう電磁調理なんてヤメてオートコックにした方が……」



 ブンタの余計なお世話を無視して、焦げた玉子をパンのような物に挟みモシャモシャ食べるUサク。

 気不味さに用件を思い出したブンタが、渡そうと思っていた物を探し服のポケットをあちこち弄る。


 尻のポケットから出て来たのは古臭い手紙だった。



「こんなモンの為にわざわざアルカボンで包んで送って来たみたいですぜ! どんだけヤバい代物なんすかコレ?」



 玉子やらがべちゃくちゃに着いた指を舐めるとブンタを見つめ、その指を立てて無言に呼び寄せる。


――BAKKOHH――


「痛えっ! 何すんすか兄貴」



 頭を叩きブンタの手から手紙を奪い取ると、その手紙を顔の前に説教を始めるUサク。



「ヤバい代物ケツポケに入れる馬鹿が居ますか? 丁重に運びなさいよ!」

「あ、」



 気不味い顔を見せるブンタに食べカスを飛ばしながら説教を続ける。

 飛んで来るカスに身を屈めUサクよりも小さくなっていく。



「そもそも何で君が受け取っちゃってるのよ、ええ?」

「いや、それは兄貴が住所を登録してないから……」



 手紙に自身の舐めた指のシミがと気付き隠すように持ち替え、ブンタの言い分に考えを巡らし身を改める。

 住居としている此処の支払いもせずに済んでいるのはブンタのツテだからだ。



「すいません、お世話になってます」

「あ、いやいやいやいや、兄貴には色々助けてもらったんで……」

「なら家賃も良いね!」

「え、ん、あ、はい」



 そう言って威張りくさりデスクにかけると手紙を陽に、火に、照明に当てるが何も変わらない。


 そぉっと静かに慎重に慎重に開封し始めるとブンタも一緒に息を潜める……




「ばぁああんっ!」



 突然の大声に腰を抜かし驚くブンタをからかいに笑いフザケてみせるUサクに、文句の一つも言ってやろうと立ち上がるブンタを掌を出し制止すると……



――BIRIBIRIBIRI――


「え? 兄貴!」



 中身を取り出し破った封筒をブンタの方へ放り捨てると、ブンタは貴重な何かではと大事に拾う。

 中の手紙を読むUサクの眉間にシワが寄る。



「ブンタ君、俺の荷物と船は?」



 その言葉に目を輝かせるブンタが何かを察して期待を持って前のめりに立ち上がる。



「キッチリカッチリ例のコンテナにありますぜ! 出番ですかい?」


「ああ、でも君はお留守番」


「そんなぁ、兄貴殺生な」


「君は俺の留守の番が殺生だって言うのかい? 酷いねえ」

「いや、しっかりきっかり番を任されるからさ!」

「よし、家賃もきっかり払っときなさいよ!」

「任せて下さい」



 何となく当ってるような間違ってるような、固まる頭と体に首が傾げるのを許さない! とばかりに慌てて声を張るUサク。



「おお、じゃ、頼みますよ!」


「あいっ!」





 いい加減に身なりを整え帽子にサングラスをかけ出て行くUサクを、見送るブンタが窓からデカイ体を出して大きく手を振っている。


――BABABABABABABA――


 長い足に似合わぬ小さなスクーターで宇宙港へ向かった。


 長い事放置、いやブンタに任せていたがサビだらけの【NARUMI】と記載されたコンテナは、今正に廃棄処理されようとクレーンに掴まれ宇宙港廃棄ダクトへと旋回している。


 ジェルドレンを飲みスクーターを蛇行させながらやって来たUサクの目に【NARUMI】の文字が飛び込むと飲んでいたジェルドレンを吹き出し、顔やスクーターやに飛び散った。

 ジェルドレンの水滴で良く見えないが【NARUMI】のコンテナが廃棄ダクトに向かっている。


 慌てるUサクが手を前に……



――BABABABABABABA――

「ちょちょちょ、ちょっと、おい待て、待って! 待ちなさいよそこのコンテナさん」



 サングラスを外して見直し気付き、よろけるUサクがスクーターを倒しつつ捨て降り慌ててコンテナに呼びかけるが、時既に遅し。


 宇宙港ならではの気圧を利用したプレス機で潰されて行く【NARUMI】のコンテナ。




――PYUUUHHGGOGOOBAKI――




「おいおいおいおい、何、何なの、どうすんのよコレ」



 帽子を脱ぎ捨て踏みつけ悔しがるUサクに、後ろから声がかかる。




「アレ? ひょっとして、アレあんたのコンテナか? やっちまったかぁ……」



 港湾局員の制服を着た割腹の良い男。

 振り返ると瞬間、悔しさをブツけにかかるが……


 思い留まり踏みつけた帽子を払い被り直すUサクが、何か閃いたのか紳士を気取り金持ちを装う。



「んん、ああ、君かね、私の大切な超高級宇宙船を廃棄したのは?」


「え、あのサビだらけのコンテナに?」



 当然の疑いに、慌てて誤魔化すネタを絞り出すUサク。



「ん、サビ? ああ、あれはサビに見せる超高級な画家に書かせたデザインだったんですぞ!」


「はぁ、超高級な画家ですか……」



 言葉の端々に揚げ足を取られ、綻びにチクチクと刺さり、後ろめたさが勝る前に思い切って本題に入るUサク。



「弁償して貰いますよ」


「え? いや、それは……如何程な物で?」



 自身の借金と、新しい宇宙船を買う金額にオマケに遊ぶ金も含めてと意地汚さ全開に算出するUサク。



「七千万NOは下らない代物でしょうな!」


「あ、そんな物ですか……」



 貧乏生活の長さに金銭感覚を忘れたか、金持ちを知らなさ過ぎたのか、吹っ掛けた筈の金額に驚きもしない処か鼻であしらわれた事に、更に吹っ掛けるか落とし所と見るか……



「七千万NOでしたら、アチラの船とほぼ同額ですけど、アレで良ければスグにお渡し出来ますが如何なさいます?」



 港湾局員からの思ってもみない提案に心躍り動揺に、舐めた指を眉間に充ててのるかそるかに思考を巡らすUサク。


 迷う姿に手打ちにと港湾局員が押しに船の説明を始めて来る。

 困り物に、違法停泊していたこの船を法に則り預かるが、手狭な港に邪魔になり売り手市場にも出したものの金額に買い手が付かず今に至る船だと云う。


 見れば見る程に暴走族か改造し捲りの漆黒の闇に紛れる黒塗りの高速船。


 魅入られていく顔に答えは出ていた……




「手続きは?」


「即日。何ならスグに出航出来るように整備も済ませて置きましょうか?」



 悦びに眉を上げる。

 思わぬ収穫に得をした気持ちが顔に出るのを抑え切れずに、帽子で顔を隠して返事をするも声が上ずる。



「頼みますぞ!」



 当たり前に手続きを始める港湾局員が倉庫管理の職員に耳打ちで伝える。

 と、確認に尋ねて来る。



「船の登録名どうなさいます? 元々はブラッシュRって……」



 廃棄された【NARUMI】に寄せるか考えるが、未練を借金と共に涙の雨を拭い去るように心機一転この漆黒の闇に紛れて抜け出そうと新たな名前を付ける事にした。




「【Bレイニー】で!」


「はいはいビイレイニーと……」

「いやいやいやビーはBで! そこ、大事なんだから!」



 さして気にもせず登録画面に打ち直す港湾局員。

 簡単に登録を済ませ、証明にUサクがタッチパネルに手をかざす。



――PASU――


「はい、これでアレはあんたの船ね」

「おお、こんな簡単に……」



 感慨深く船を見つめ借金返済と欲しかった高速船に夢叶って浮かれるUサクに、港湾局員が提示して見せた証明画面に不備を見付けて目を細める。



「ん? ちょっと、これ何か可笑しくないかい?」

「いやあ助かりましたよ、ウチ(港湾局)としては船をタダにしてでも違法停泊期間分の支払いが急務だったんでね」


「八千万NOのお支払いお願いしますよ」


「はあ? あんたバカ言っちゃいけませんよ! これ、これ違法売買でしょ! 港湾局員が違法行為に手を染めるなんて世も末話じゃないのよ! ええ!」



「あんた埠頭の事務所で寝泊まりしてる浮浪人のQサクとか云う奴だろ?」

「いや私はUサク……」


「ここの倉庫管理の人間が追い出しをスペースポリシーに頼んだらしくてさ、ウチ(港湾局)は違法停泊期間分の支払いをして貰えるってんで協力させて貰いましたわ」



「はあ? は、はあ?」


「あ、大丈夫、整備はオマケしときますから、アッチでスペースポリシーが仕事持って待ってるから早くお行きなさいな!」



「はあ? はあ? ちょ、はあ?」



 帽子を脱ぎいい加減に整えた髪を掻き毟り出だしから狂った予定に、もはや他人事となった港湾局員を追いかけ頭を叩き、長い足のリーチに追い駆け小突き続ける。



「この、バカタレが、バカタレが……」


「ヤメ、やめ、痛い、痛、痛い、ヤメて……」



 追いかけ回している内に黒服集団ならぬ制服集団に周囲を囲まれていた。


 足を停め見回すUサクが冷静に最後のひと蹴りで港湾局員を輪の外に追い払うと、囲む制服集団に手を挙げ連行される。



「ちょちょちょ、ちょっとトイレ!」

「うるせぇ洩らしちまえよ、このクソ野郎」


「ぃゃぁ、大の大人が洩らして歩くって、ねえ? 垂れたら後ろにいるお兄さんにもついちゃうでしょうに」


「ち、うるせぇなぁとつととソコでやれよ!」



 倉庫脇に入ろうとするUサクの、目と鼻の先にある扉の中には非常時の為の拳銃が入っている。


「俺のは大きいって言われるんだけど見てみなよ! ほら! ね? これ! どう?」


 制服集団の中で仕切る男が逃げないようにと囲む中、Uサクはわざと小便をしながら右に左にと体ごと振り向き話しかけると制服集団が遠ざかる。


 一瞬の隙に扉を開けたが拳銃が無い!


――GONN!――









 焦るUサクの後ろから、制服の誰かに叩かれ気を失い、気付いた先で待っていたのは元スナイパーのPAソナだった。

 PAソナは今や、スペースポリシーが捕えた借金背負いの囚人を不当労働に安値で使い捨て、ピンハネに儲けた金で名をあげていた。



「これはこれは悪名高きPAソナさんでしたか」


――BAKO――


「やめなさい、Uサクさんは私の知る限り一番だった元スナイパーですよ」

「へい!」



 嫌味にだったと過去形に語るPAソナの語りに空気が変わる。

 が、争うよりも借金の返済を優先に考え下手に出るUサク。



「そんな男に借金背負わせるなんて酷い話でしょうに! ねえ? 同業のよしみで借金もチャラって事で! ね! それじゃ!」



 銃口を向けられるUサクがお惚けに手を挙げるフリをして、相手の手を叩き上げ手下から拳銃を奪い取るとPAソナの胸ぐらを掴み銃口を向ける。

 が、周りを囲む他の手下が一斉に銃口をUサクに向けられる。

 と、スグにPAソナと拳銃を手放し手を挙げ直す。



「ほら、もう俺に仕事は無理でしょ?」


「いえ、やって貰いますよ」



 無条件にPAソナが手配書を提示する。


 提示された知った顔に動揺が走る。



「この仕事で他の借金も無くなってあの船も正式に君の物になるんだ。良い取引だとは思わないかね?」



 眉を寄せ顔を近づけるUサクの顔は怒りに満ちているが暴れはしない。

 冷静にスナイパー時代の凄みを見せPAソナに顔を寄せ静かに語る。



「あんたあぁ、碌な死に方しないよ。」




 PAソナと睨み合い顔が付くか付かないか、の所で周りの手下がUサクをPAソナから乱暴に引っ剥がす。



「さ、契約成立。お帰りですよ!」




 連行されるUサクが思い出したように手や服の匂いを嗅ぎ顔を(しか)めて振り返る。



「小便してる処を襲ったんだから、俺の手位洗っときなさいよ! 全く、お宅のお子さん達は躾がなってませんな!」


「うるせえんだこの野郎とっとと歩け!」



 睨みをきかすPAソナだが、Uサクが見えなくなると掴まれた胸元の服の匂いを嗅ぎ、顔を顰めて慌てて服を脱ぎだしていた。









――BOKO――


 手下に蹴られ元の倉庫街へと放り出されるUサク。



 立ち上がり手をポケットに入れ渋々と歩き元の港の倉庫に戻り手を洗っていると、ブンタが慌てて寄ってきた。



「兄貴ぃ、コンテナも船もアイツ等廃棄しやがって! 俺じゃねえんだよ! アイツ等がよお!」


――BAKO――


「痛、いや、兄貴俺じゃ」


――BAKO――



 有無をも言わさずブンタを殴り付けるUサク。


――BAKO――


 夕闇に容赦ない殴り付けで、血塗れの姿に倒れ横たわるブンタ。



「酷ぇょ兄貴ぃ……」



「もう留守番しなくていいから、それで好きに生きなさいよ!」



 あまり使われる事も無くなった現金を横たわるブンタに放り捨てて去って行くUサクを、泣きながら見送るブンタが金を見るが……



「これじゃぁ家賃にもならねえょぉ、兄貴ぃいい……」









 倉庫の奥に消え港で整備されたBレイニーに一人静かに乗り込むUサク。



「彼は良いの?」



 船室のソファで待ち構えていた見知らぬ女へ怪訝に目で舐め回すUサク。

 特に筋肉も無く肉付き良くマトモに働いているようにも見えない、少し色気が多目のムッチリボディのロングヘアの女が新しいグラスを手にジェルドレンの瓶を開ける。



「あんた誰?」


「私、この船が好きなのよ」

「あん?」


「急に移動するし整備してるし、きっと誰かが買ったんだ! って思って、私も一緒に買って貰えないかな? と待ってたの!」



「ああそお、悪いけどこの船の権利は俺には無いんだよ。だから出てってくれるかな!」

「嫌よ!」


「聞き分けの無い女は要らないんだよ!」

「何よ不躾ね! あなたモテないでしょ!」


「はいはい、そういうのも要らないから、とつとと出て行きなさいよっ!」



 大声に渋々出て行く女を手で払い一息吐くと、ジェルドレンを注いだグラスを片手に操舵室に向かって一つ一つの機器を指で撫でて確認していく。


 操舵席に座ると鼻歌交じりにジェルドレンを飲んだグラスを指揮棒に両の手を大きく振っていた。

 まるでクラシックコンサートでも指揮するように。


 Uサクの酔いどれに浮かぶ目の前のオーディエンスは何に魅せられているのかは解らないが、Uサクの頭の中の音楽が物事を整え夜の帳を下ろしていった。


 

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