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AAE★アーヤとポリン初めての宇宙旅行。


 アーヤとポリンはモデラー星のお嬢様。


 長身スレンダーで足長なスタイル抜群の九頭身美女の二人は、モデルの仕事で忙しい日々の中に宇宙旅行を夢見て頑張っていた。


 アーヤの方が三歳年上だけど、初めて同じ現場に入った二人は宇宙旅行の話に盛り上がり、まだ見ぬ予定を起ててる内に仲良くなって、遂には二人で宇宙船を買う事に!


 オシャレにしようと外装内装小物にと拘り捲くって完成させたシンプルでいて落ち着いたレトロクラシックデザインの電波帆船風の高速電波発生コイル船に、モデルの二人が命名したのが。



 【ランウェイGO】


 高級感溢れるシックな装飾品に囲まれて、ダンディズムな雰囲気たっぷりに操縦舵も木目調のまさに帆船のアレ!

 けれど、立ちっぱなしは疲れるからと万力ハンドルみたいな小型の操縦舵が申し訳程度に付いている。





 花の都と云われたRスメル星へ向かう前に、旅の練習を兼ねて近くのテンボス星に向けて港を出てから八百TEA……

 音楽をかけ華やかな装具に囲まれて、出航に緊張感を持って走り出したが、ポリンは操舵に飽き始めていたのかアーヤに提案を投げかける。



「そろそろお茶にしない?」

「あ、良いの持ってきたんだった!」


「え、何々?」

「この前、老舗の味展やってて美味しかったデザートのデータ買ってきたの」


「うそ、それ私も行きたかったヤツ!」


「とりあえず良さ気なの八枚買ってきたから往復分のお茶受けあるからね」

「やった!」



 和気あいあいに船室でキャビネットの扉を開け買ったデータを探していたアーヤが、ある事に気付き不穏な顔に変わって行く。


 代わり映えの無い宇宙の景色にも操舵にも飽きたポリンが唯一見ていたのは航路モニターだけだったが、今や美容器具にミラーとにらめっこ。

 近付く怪しい物体も認識出来ず、探知機の反応もレトロクラシックの探知機モニターはシンプル過ぎて何を意味しているのかも理解しきれていない。


 ましてや好きな音楽をかけるのに素人同然のお洒落業者に任せたスピーカーシステムの取り付けは、ボリュームコントローラーをいい加減に弄られたらしく、探知機と混線配線されていた為に警告音が音楽に混ざって気付けない。



「大変!」



 アーヤの声に驚くポリンが自動運転も分からずスロットルを戻す。

 慣性の法則で進んでいる事も気付かず停止していると思い、操舵を離れてアーヤの元へ。



「どうしたの?」

「このオートコック古いからか、データ入力カードが入らないんだけど!」


「うそ、私も食事用データカードしか無いんだけど……」



 オートコックには標準装備の元々入っている数種類のメニューがある。

 しかし、味の好みに評判は低く今はデータカードや手動入力によって細かな調理配合が出来るように改良されている。


 当然お洒落装飾品として売られていたレトロクラシックのオートコックは改良前の物。

 それでもメニューの数は百種類ある高級品だっただけマシな方だった。

 が、二人はデータカードを使う最近の改良型しか知らない。

 使い勝手も多少違うようでポリンが戸惑いをみせる……



「あれ? ちょっと待って、何コレ?」

「調理材装入口だって……」



 顔を見合わせる二人の戸惑う理由は、オートコックの料理の素となる原料だ。

 今や真空パック包装された固形物を開けて入れるだけ。

 だが、これは明らかに違う相当量の何かを入れるようになっていた。



――PIIIWOOPIIIWOO――


 その不安の最中に音楽が鳴り止むと、微妙な音量の警告音が鳴り響いている事にようやく気付く。



「え、あ、ポリン? 舵は?」

「停まってるから大丈夫」



「停まる……宇宙で?」


「……え、宇宙って停まらないの?」



「拙くない?」

「ヤバいかも!」



 急ぎ操舵席に着く二人だが、何が鳴っているのかも判らないままに次の曲が流れ出す。



「え、ちょっと警告音てこんな小さいの? ヤバくない?」

「ヤバい、絶対ヤバい」



 アーヤの不安感に頷くポリンが音楽のボリュームを下げると警告音も下がる。


 音楽を停め鳴り響く警告音のボリュームを下げてみせるポリン。



 見つめる二人が固まった。

 ポリンが先に口にする。



「コレ絶対ヤバいヤツじゃん!」


「だね、どうしよ! あ、アレは?」



 アーヤのアレに思い当たったポリンと人差し指を立て合わせ声を合わせる。




「ジャポメカ星のメイドロイド!!」





 少し前に、宇宙船の掃除洗濯用に通販で買ったジャポメカ星製品のメイドロイドだが、あまりにもサイズが小さく怪しい何かと間違えたのではと開けてみると、中に入っていたのは炊飯器のような形の何か。

 当然通販サイトに確認の連絡を入れてみたが間違いは無く、間違っていたのはポリンの方だった。


 ジャボメカ星の文字を読むのが面倒と、メイドロイドの表記に値段もそれなり、当然これだとばかりに買っていた。

 しかし表示されていたのはこの炊飯器形の物。何がどうして間違ったのか……


 メカの苦手な二人だが、通販の得意なアーヤはポリンに任せてサイクリングで汗を流していた休日に、ポリンが見たのはメイドロイドの表記のみ。



 かくしてコチラは【名ドロイド五万八千UC・C】

 二人が欲した【メイドロイド五十万UC・C】

 格段の差がある事も知り得なかった二人だが、お手頃価格の便利なドロイドの中でも名機中の名機である。



【BIKKE】


 本来なら十五万UC・Cはする代物だが、人型の人気に圧されて価格帯が下がった頃合いでのナイスなポチッとなのだが二人に価値は判らない。


 炊飯器型という理由にも、ジャポメカ星の製品への信頼性にドロイドという事で何とかなると願って開けた希望の扉は、梱包を解かれて光を放……たない。



「え、コレ電源とかあるの?」

「ポリン、マニュアルは?」


「……捨てたかも」


「え?」

「え!」



「はい、終わったぁぁぁぁ!」



 と、諦めにアーヤがBIKKEをひと叩きしたのを、守るように奪い抱き抱えるポリンに奇跡が……



「ヴィッキーを叩かないで!」


――PARIPI――

「ヴィッキー?」



 突然の目覚めに驚く二人。

 赤子のように掲げるポリンが、神々しさにBIKKEの顔にも見えるカメラセンサー部分を自らに向けると反応を待つ……


 が、特に何も起きない。


 ポリンの少しマヌケな姿に、掲げているBIKKEの細部をアーヤが確認していく。


 BIKKEの下部の脚なのか裏側にはベアリングのような物が付いている。後ろを見ても開きそうな所だらけだが特にこれといったものは無い。

 が、よく見れば前方カメラセンサーに貼られた保護シール。



「あ、コレじゃない?」

「ん?」



 アーヤが剥がした途端だった。


 瞬間、ポリンの顔にライトが当たる。



――PARIPI――


「何なのこれ?」

「私もやろうか?」



 ポリンから渡されアーヤもBIKKEに顔を向けるが何も起きない。

 ポリンが思う所に問いかける。



「叩いた事、怒ってるんじゃない?」


「そんな、まさかあぁぁぁ……」







 ……無反応のBIKKEが、まるで意思を持っているかの如くに存在感を増して行く。






 圧迫感に耐え切れなくなって来たアーヤが、助けを求めポリンを見るも目を逸らされる……

 えぇぇ? と、ばかりにBIKKEを見れば無言の圧力。



 耐え切れない圧力に試しにと、自身への言い訳も済ませたアーヤがBIKKEの前に立った……



「ごめん、ヴィッキー」


――PARIPI――

 瞬間、アーヤの顔にもライトが当たった。




 固まるアーヤ、見ればポリンも鳩が豆鉄砲的な顔にBIKKEから静かに後ずさって行く。



「……で! このライトは何なの?」


「呪いとか?」


「なら、ポリンも呪われてんじゃん!」



 黙り向き合う二人を尻目にBIKKEは操舵室へ向かっていた。


――PARIPI――

 アクセスアームを延ばして操舵システムに侵入したBIKKEが、船のシステムからウィンドウモニターを表示させ理解り易くモデラー星語に変換させた。








「てぇ! ヴィッキーは?」

「噓! 消えた……」



 ようやく気付いたアーヤとポリン。



「やっぱ呪われてんじゃん!」



 ポリンの語りに周囲を見渡すアーヤが気付きに焦る。



「いやいやいやいや、操舵してんだけど」


「地獄への案内人……」


――PIIIWOO……――


「あ、警告音止まった」


「地獄の案内に警告音は要らないとか?」



 ……考えを改め考え直す二人が顔を見合わせ操舵室へと走り向かう。





 モデラー星語に変換され理解出来るようになったウィンドウモニターに、驚きと感動と進行方向も間違っていたのか八十八度回頭している航行図。


――PARIPI――

 モニターに自動航行の表示が出るとアクセスアームを外し、移動するBIKKEに付いて行く二人。


 所謂エンジンルームに入るとBIKKEがアクセスアームをポッドに挿し、確認しながら工具アームを出して配線し直していた。

――PARIPI――


 正直何をしているのか全く以て解っていない二人。

 ポリンは未だに少し地獄行きが頭に残っている。



「連絡手段を断つとか?」


「いや、そもそも連絡の仕方が解らなかったんだけど……」



――PARIPI――

 途端、爆音の警告音が船内に鳴り響く


――PIIIWOOPIIIWOO――


「地獄行きぃいいい!」



――PARIPI――

「止まった……」



 また移動するBIKKEに、不安感から付いて行く二人。

 ほぼ主導権を握っているドロイドが、モデラー星人のいい加減な船の整備を正して行く。


 しかし、名機と云われるこのドロイドの動きは他の同機種に比べて異常だった。




 ……自我を持ち過ぎている。



 ただ、BIKKEの仕事内容を理解していない二人にはペットのお散歩程度に見えているだけ。


 

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