AAD★★★★★八本足の星のツボ。
ヤシが万棒に開けた穴から中に入ると、やはりワナカと同じ反応をするMJ。
糸をかけMACベイ戦艦の甲板に行くとインジン星人が墨を纏って倒れていたが、まるで宴会で呑み潰れたような惨状に困惑する。
――PITYA――
水滴にワナカの痕跡を辿り戦艦内部へと向かうMJだが、船の造りに違和感を覚える。
「これが宇宙戦艦か?」
甲板にある砲口は実弾用の物だ。出入口も重厚とはいえ開閉扉、管制操舵室は窓に覆われ……
寧ろ周りの船の方がコレに比べれば小さいながらも宇宙船らしく見える。
「まさか!」
中に入らずも気付くMJ。
――PASHU!――
糸を吐き管制操舵室に上がるとレーザー銃を使う事も無く難なく窓を割り侵入するMJが中のインジン星人を糸で張り付け制圧する。
――PASHU!――
――PASHU!――
――PASHU!――
管制のマイクに向かいワナカに語りかけるMJ。
「タコ野郎! 今すぐ出て来い! このスットコドッコイ!」
「ハチクのタコが侵入したぞ!」
「何で警報鳴らさねえんだよバカ司令」
艦内のインジン星人が捜索に動き出し、慌てて隠れるワナカ。
「何やってんだょあのアホんだら……いや、」
船内に響くMJの声に自分の存在をバラされ膨れるも、可笑しな言動に冷静に考え直すワナカ。
――BIBIII――
操舵室の割った窓からインジン星人の悲鳴が聞こえた気がして振り返り窓の下を覗くMJ。
見ると宇宙船を守備していたインジン星人を電波銃で奪ち奪おうとするストカー。
宇宙船のハッチを開け、確認に顔をこちらに向けるストカーが見えているのか想定通りだったのか嘲笑っていた。
狙いに気付いているMJが焦りにストカーの奪う宇宙船への最短ルートを探るが、ハッチの閉まった船にレーザーを使って入るよりも試すべき武器が眼に入る。
急ぎ戻り、戦艦の操舵を開始するMJ。
――PASHU!――
インジン星人を操り人形に、一人では出来ない操作を開始する。
――GAKKONNWEEEEEE――
一方インジン星人を倒し追い出し宇宙船を起動させたストカーが港を出ようと反重力装置を起動させた。
――DOGGAWAAAAAANN!!――
突然の砲撃に船体が潰れる。衝撃波にストカーも面食らい何が起きたか確認すると船外モニターに砲丸が食い込んでいた。
――DOGGAWAAAAAANN!!――
更に食い込む砲丸。
――DOGGAWAAAAAANN!!――
次から次へと食い込んでいく様に宇宙船からの脱出を試みるストカー。
反重力装置により宇宙船の中心に重力が出来る。よって近付く物は勢い良く吸い付く特性に、惑星大気内で撃ち込まれた砲丸は更に勢いを増して船体に食い込んでいた。
窓際で糸で操り、歓びに撃ち捲くるMJ。
「おっほ、こりゃ入れ喰いだぜ!」
「MJ!」
甲板に出て来たワナカが管制操舵室のMJに気付き声をかける。
下を向きワナカを確認したMJがワナカに糸を垂らす。
「掴まれ!」
「あ? 地獄釣りかよ!」
ワナカがオーケーの合図を出すと引っ張り上げ、更に糸を吐き一番高い上部監視棟に付けた。
――PASHU!――
「ワナカ、ワタリとクモエビに通信だ!」
「何を? まさか?」
「逃げろと!」
またかとばかりに悔しがりながらも通信を終えると、案の定のアトラクションが待っていた。
「噓だろ?」
「俺は正直者だぜ!」
糸を使いターザン・スタイルで監視棟へ跳び移る……事なく、そのまま万棒の外側へ!
「やっぱ、スパイだああああああぁぁぁ!」
ワナカの叫びに紛れて操舵室に掛けた操糸を引くと、砲口が真上を向いた物と他の宇宙船それぞれに向いた砲口が火を吹いた!
――DOGGAWAAAAAANN!!――
――DOGGAWAAAAAANN!!――
――DOGGAWAAAAAANN!!――
――HYUUUUUUUUUUUUU――
――DOGGAWAAAAAANN!!――
――ZABBAAAAAAAHH――
水面に落ちるMJとワナカが、万棒の爆発の激しい水飛沫に吸い込まれ一気に水中深くまで到達すると、倒れて来る杭が二人を襲う。
「MJ!」
泳ぎの遅いMJに迫る杭に叫ぶがワナカも間に合わない。
――PIIIIIII――
咄嗟にレーザーを放ったMJだが切れた破片はそのままMJに向かう。
「クソっ! 役立たずが!」
――DOGAAAHHNN――
突然の魚雷に助けられたMJが、射線元を辿り見るとガトー級潜水艦。アカシで開発していた宇宙船だった。
「アンタレスか?」
見ればクモエビとハナサキに付き添われてタラバも船体に掴まりコチラに手を振っていた。水中に振動波スピーカーが響く。
「よおMJ、スコーピオンの使いが荒くねえか?」
安堵するMJとワナカが肩の荷を下ろし見合い任務完了にハイタッチで締めくくり、潜水艦に拾って貰うのを浮遊して待った。
中に収容されると、女郎が乗っていた。
花魁館の話を聞くに、ハナがアンタレスに無理を言いアブラとイバラを拾わせ到着早々に女郎に伝え捕獲し隔離させた。
蠍型ハチク星人のオブトが、アカシの研究員の蠍型ハチク星人のミカワに連絡し、研究プラントに向かうとスグにピートの蜘蛛の子の捕獲作戦を展開した。
そして組織的安定を確認の後に、急ぎコチラへ向かったのだと……
女郎がこちらの確認を始め、説明するMJ。
「ツボは在ったの?」
「ツボはタコ型でハナの事、裏切り者を探れと」
「では作戦は?」
「完了です」
「良かったわ」
蜘蛛型二人の会話にようやく意図を理解したワナカ。
「ああ! 相変わらず分かり辛いな、スパイダー」
ワナカも追加報告に伝える。
「PAソナは鬼ON星に視察に行ったそうです」
「鬼ON星?」
「って、ノウミの森でハムの野郎が言ってたんですが……」
八つの目を寄せ悩む女郎が、密かに付けた糸の振動波通信でMJと二人だけの話をして来た。
「例の件は?」
「ハム星人の方がインジン星人より上の方で災妻と繋がっているかと」
「どういう事?」
「トジミン星にもハム星人が入り込む中、ストカーがインジン星人とここに居たのは、無渇田等の横タヌウキの連中はトジミン星に居る可能性が高い。そんな中でPAソナが鬼ON星を視察していたとなれば、つまり……」
「賭場衛星が狙いね……解ったわご苦労でした」
「女郎! タヌウキへの反旗を今上げるべきかと」
MJの質問を無視するように糸を切り落とすと、ワナカにも事を伝える。
「さっき、宇宙船が一艘飛び立ったわ」
意図を汲めとばかりに去る女郎。
飛び立ったのは恐らくは、危機を感じた逃げ足の早いストカーだろうと考えるに、勝手に災妻まで話が行くだろうと。
そして、それはタヌウキ星人にとってのトラウマとなる。
この作戦の成功はトンキン星団を仕切ろうとするギャング政治屋達に大きな脅威を植え付けた。




