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AAC★むしむしする星の熱い夜……



 熱帯雨林気候で高温多湿のウリン星は地軸が弱く、極地と赤道の気候地域差があまり無い。


 その為オゾン濃度は低いものの、恒星から離れた所に在るお陰で放射線の影響は少ない。また、ビッグバンから遠く離れたウリン星の周辺は宇宙の中でも古い星が多い。


 その為か隕石群もその殆どが動きは安定化しており、宇宙の広がりに同じて星と星は離れて行く。

 それは良くも悪くも恒星との離別をも意味する。


 恒星から離別すれば惑星に放射線は届かず、エネルギー帯域も可視光帯域も無くなる。


 それは……


 死の星へのカウントダウン。





 ウリン星の生体調査をしていた中年層の男ルナ(ジィ)は、もしもの為に紫外線対策はしていたが熱帯雨林気候もあって恒星の光線が雲とジャングルに遮られ感覚的には必要性を感じなかったが、計測器が危険を知らせる。


――PIPIPIPIIPIPI――


「お、ヤバいな……」


 危険帯域の紫外線に一時避難にと探査船へ走り出した。

 キャンピングカー的な役割程度の広さと内装に生命体調査機能を無理矢理に詰め込んだ船は、宇宙船から出る惑星での船外活動に必要な移動手段である。


 探査船に入るとエアシューターで必要外の種子や生命体の侵入を防ぐ。


「無事で良かった、ルナG大変な事が解ったの」

「ふぅぅ、紫外線の次は何だ?」


 船内で待っていた胸の大きなムチムチ金髪女Gジェーが集約したデータを、除菌シャワーで裸になったルナGに急ぎ見せると、持って来た植物の欠片の入った瓶を置き、データに食い付き見ていた。


「この移動物体は、何かしらの生命体反応を示してるな……」

「ええ、しかも昨日からは私達のスグ下です」


「……大きさは?」

「データを見る限りは、艦船並の大きさだけど……」


「なるほど、外はこれ程の紫外線だ。地下での活動に活路を見出していても可怪しくは無いか」

「移動しとく?」


「そうだな、これだけの植物の根がはってれば早々は落ちないとは思うが、身あっての研究だ。支度出来次第、次の調査ポイントに行くぞ」

「はい、なら片付けお願いします」

「え、あ、クソっ!」


 散らばる調査対象物や作成中資料の山に、宇宙船なら自動化されているが、洗っていない昼飯の調理器具や皿やに、ここ数夜の洗濯物にと……

 調査機能を優先したが為にケチった部分が二人を露骨に後悔させていた。




――BABOBABOBABO――


 洗濯は除菌とコーティングがセットになるのは同じだがコーティングには多種多様な宇宙ならではの放射線コーティングという矛盾作業が含まれる。

 紫外線で除菌して紫外線を含めた放射線から守る為のコーティングをするのだ。


 ちなみに食洗機は汚れ落としに油を落とす必要は無い。油も脂もバクテリアに分解させて水に変換されるので、水を掛け続けるだけだ。

 油脂以外は食さない為、油脂が無くなると自ら水から出て行き固めた油脂タンクへと戻り待機する。



 このバクテリアもルナGが発見し、宇宙中に轟いて今や宇宙船になくてはならない商品になり正に星の数程にバカ売れした。


 しかし、このバクテリアをダイエットに使えると唱い、民衆に勝手に飲用させた或る星の女が訴えられると突然ルナGに責任転嫁して口封じにスナイパーを向けて来た。スペースポリシーの実働隊の中でも精鋭の暗殺部隊だった。


 狙撃されるも運良く逃れ自身の危険を知り、古い知り合いの居るヴェスPA星に助けを求めたが、通信機はスペースポリシーに監視されている可能性が高くアルカボンで覆い手紙を出したが、物理的運搬船に届くまでに時間がかかる。



 そうして逃げるしか無くなったルナGとGジェーは逃避行に探査の旅をしていた。






 それでも尚、宇宙船用のバクテリアは売れている。

 今その売り上げが何処に流れているのかは不明だが、貯めた資金は宇宙船にたんまりあるもののUC・Cでは無い為ほぼ物々交換だった。



「ルナG、そろそろ食料品を補給しないと」

「それなんだが、この星に生命体が居るなら……」


「無理でしょ? こんな紫外線まみれの星で」

「いや、食料品を作り出す新しいバクテリアが居るんじゃないかと思うんだ」


 ルナGを睨むGジェーが記憶に辿り思考を巡らす。


「紫外線を受けてる放射性植物を食べても大丈夫なように? って……」


 ルナGがニンマリと笑いかける。と、Gジェーがハッとする。


「そんな? それって放射線除去装置に転用する気?」


 親指を立てて片眼を瞑るルナGに、呆れた素振りで笑うGジェーが思考に追い付き問題点が浮かぶ。


「それ、この星に生命体が相当居ないとサンプルが採れないのでは?」

「ああ、だから少し此処で待ってみないか?」


 不安そうに下を見るGジェーに、上げてた親指を回して下に向けて見せるルナG。


「まぁ、何処へ行くにも地獄は一緒でしょうけど、わざわざ地獄の穴から出て来るのを待つなんて……」

「へへ、趣味みたいなもんだ」


「流石は変態エロ爺」

「へん、なら変態らしくギコギコ音立てて待つとするか!」

「ふむ、まあ良いか、女将衆が知ったら大変な事になりそうだけど。ってソレ片付けてからね!」

「ち、クソっ!」


 調査資料の山を見られて諦め片付けるルナGに手伝うGジェー。

 熱帯雨林気候のジャングルは夜に向かって川面に霧を立てて、暗闇を呼び込んでいた。



――GIKOGIKOGIKOGIKO――











――GIRIRI――


「ルナG!」

「ああ、来たな」


 あれから一眠りしていたベッドの上の二人に、探査船が揺れる程の振動波が音を立てて訪れていた。

 静かに急ぎ服を取りモニターへと向かう二人。


「え、これ……」

「ん、おお、これは……」


 波形から下で蠢いているのは一匹のデカイ何かでは無く複数の何かの集合体だった。

 それはサンプル採取には好都合。そう思った二人が顔を合わせて頷いた。


 が、外部監視モニターを見たルナGが驚愕する。


「待てっ! 何だコレは!」

「え? 何なのアレ!」


 波形には映らないが既に地表に出ている虫の大きさと数に戦慄が走る。




――GIRIGIRIRIRIRI――


「拙い、船体が……」


 モニターを埋め尽くす勢いで巨大な虫達が船体の上に上にと虫が虫を登って来ている。相当な量に船体が悲鳴をあげていた。


「熱源反応は集合体の中心部だけで、虫そのものに熱源反応は出なかったのよ」

「そのようだな、この数……」


 迂闊に動けない状況に、何が此処に虫を呼び寄せたのかに思考を巡らせるルナG。




「反重力装置起動する?」


 探査船を守ろうとするGジェーの提案に掌を向け待たせるルナGが、もう一歩の所にある答えに頭を悩ませていた。


「早くぅう! こんな紫外線の星で宇宙船まで徒歩移動なんて、ルナGには絶対無理だからね」


「それだ!」


 思い付いたルナGが光振動波通信を誰に宛てるでも無く起動する。Gジェーが慌てて止める。


「それ使ったら追跡サービスから奴等に見つかっちゃう!」

「大丈夫だ! 惑星内だから漏れても微量だ……と思う」


「んもうっ! 勝手にやって!」


 覚悟を決めてルナGに託すGジェーがタイミングを確認する。


「今だ!」


――BUBUBUBUBU――

「何この音?」

「後でな…、今だ!」


――BUBUBUBUBU――

「もういっちょ、今!」

――BUBUBUBUBU――

――GIKOGIKO――

――BABABABABABABA――


「あ、虫が離れてる」

「よし、反重力装置起動!」


――FUWAAAAAAAHH――


「予想通りなら、追っかけて来るぞ」

「え、何が……」

――BABABABABABABA――


 モニターに映る飛び始めた虫の羽音が増幅されていく。


「何処でもいい! 最高速で星の側面へ向かえ!」



――PAPOPOPOPOFOOOOOO――




「な! まだついて来てる。これ最高速ギリギリですよ」

――GIKOGIKO――

「ああ、それよりも上にまだ居るみてぇだぞ」

「コッチは逃げるので手いっぱいよ」


 モニターで確認するルナGが巨大な六本脚の牙付き虫の行動を観察していたが、何かを確信するように歓喜の声をあげた。


「やっぱりだ! 紫外線対策だったか……」

「はあ? 何か知らないけど急いで!」

「おぉ、そうだったな……」


 ルナGが洗濯に使うコーティング液を、採取後にリリース予定だった石に散布すると手前にあった下着を巻いて廃棄ポットに投入した。


「Gジェー、一気に上昇して奴等の集団中心部の真上に行けるか?」

「速度は落ちるけど、でもその後は?」

「大丈夫だ、多分……」


「はぁ、またそれ?」




「あ、その前に……大気が邪魔だなぁ。ち、これでどうだ!」



 何かを操作し始めたルナG、探査船のサイドから採取スポイトのアームを延ばして、上に居た虫の腹下に忍ばせる。



「ちょっと痛いけど我慢してな」

「いや、それ岩石採掘用でしょ? 痛い処じゃないでしょ」


「虫の痛覚、ましてこのサイズの虫にはチクッと……だと思うけどな!」

――BASYU!――

――GIGIGIGIGIGI――

――PUSHUNN!――

――BABABABABABABA――


 明らかに痛がり暴れてスポイトを抜かれたと同時に飛び立って行った。ひきつる笑顔をみせてルナGは開き直る。



「良し、やってくれ!」

「んもぉ、じゃ、行くよ!」


――FOOOWAAAAAAAHH――


「……ち、ちょっ・と、ついて・来て・るん・です・けど……」

「……大・丈夫、後・少し……」

――WAAAAAAAHH――

「あ、」


 虫が飛翔を止める。


「良し、高度を保って中心部へ向かえ!」

「オーケー」


――FOOOOOOOOOHH――

「此処で良い、射出する」

――POKO・HYUUUUUUHH――


「え、穴?」


 下部モニターに映る虫の集団が、穴に落ちるように射出した何かを追って、落下した中心部へ吸い込まれていく。


「何をしたの?」

「ん? ああ、紫外線だよ……」


 ルナGは下部モニターの観察も飽きたのか、既にアームで採取した虫の抽出物を解析しているモニターに目を移しながら、そぞろに説明をはじめた。




 紫外線を嫌って地下に居る虫が夜の帳に這い出て来て食べていたのは、最初に採取した植物だと話し、それを解析したデータをGジェーに手渡す。



「え、これコーティング液?」

「そお、放射線対策のコーティング材と同じ成分が植物の葉に在ったんだわ」




 つまり、あの巨大な虫達が普段から食べていた植物と同じ成分が撒かれていた船や服やに、より匂いの強い植物と勘違いして寄って来たのだと。

 恐らくは紫外線対策が必要不可欠になるこの星の生命体はより紫外線対策に、この成分を旨味として認識していた為に、成分そのものを散布してある船や服に興奮して来たと分析していた。




「なるほどね、あ、ならアレは?」

「ああ、光振動波通信で離れた理由か?」


 頷くGジェーを視認するルナGが思い出したように慌てて通信機のバックデータを確認してハックされていないかを見ながら説明する。


「あの虫共はこれだけ強い紫外線を視認しているんだから可視光帯域は放射線よりの筈、だから赤外線帯域の電磁波も使う光振動波通信なら、見えない光の振動波も強い電磁波と感じる筈と考えたんだ」


「……あ! それで虫の羽が振動波に反応してアノ音だ。そうですよね?」


 通信ハックの確認しながら人差し指を立てるルナG。思い出したかGジェーが付け加える。


「そっか、だから反重力装置で同じ虫だと思って付いて来たんだ」


 親指を立てたルナGに、よしっ! とガッツポーズを決めるGジェーがモニターのランプにルナGに伝える。


「虫の解析終わったみたいです」

「ん、おお!」


「ところで今、例のポイントに向かってますけど良いんですよね?」


 解析データに目を移すルナGが残念そうに項垂れる。次の瞬間通信ハックの確認モニターに不審点が弾き出される。


――PIPO――


「ち、クソっ! 変更だ、急いで宇宙船に戻るぞ!」

「え、放射線除去バクテリアは?」


「ソッチも期待外れだったわ、例の紫外線対策成分で補ってただけだ。だから虫が放射線で巨大化してたんだ……」


「ソッチも……って、やっぱりアノ通信が?」


 頷くルナGを横目に、諦めムードも意に介さずオートドライブ・システムに新たな目的地を入力するGジェーが、認証コードを打つ。



【G―HQ13】


――OOTO――


――FOOOOOOOOOHH――





「じゃ、宇宙船までギコギコ慰めてあげる」


「……この高度でギコギコかぁ、浮遊感ありそうだな!」

「変態エロ爺……」


 

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