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AAB★★★★ナンパはレース前に……


――レース開始五TE前――





――UGROUHHHHH!!――


「何だ?」



 UGロウがメンテナンスを終え、レースラインに向かって動力炉を回し航行システムを起動すると、外部センサーからの反応に音声変換された船外音が入って来て困惑していた。


 モニターを切り替えると壊れかけの船が近付いて来て、ラジオのように洩れ響いて来る多種多様な叫び声。


 ぶつかる可能性に急ぎ冷静適確に船を動かし避けるUGロウ。



――FUSHEGWAAAANN――


「何だあの船! うわっ!」


――DOGUOOOONN!!――



 待機デッキに突っ込みかけて反転する壊れかけのラジオ船だが、船尾をデッキにブツケてキャビン上のグリーン隊は放り出されデッキ上に落ちる。

 と、未配線がくっ付いた。

 それを視認したグリーン隊が指示を出す。



「任務完了だ! 逃げろ!」



 人目も顧みずに走り出すグリーン隊。


 ゲートから姿を出した新G老(シンジーロウ)が、胸が潰れ粘土が露出し崩れたAインコウを船首に連れ出し叫ぶ。



「UGロウ! 貴様、よくもこの私に東タヌウキ星人を売ってくれたな!」



 モニターと外部音声から新G老と知り、マイクから返すUGロウ。



「いや、お前もタヌウキ星人だろ、同族嫌悪か?」


「私は横タヌウキ星人だ! あんな下衆な東タヌウキ星人と一緒にするな!」



 どう見ても傍目に変わらないが、プライドの持ち処を間違っている横タヌウキ星人の底浅い程度に、阿呆らしさが勝る。



「へぇへぇ、んじゃ返品ですかい? セコいねアンタ。ヤリ逃げ野郎よりタチが悪いぜ! 童貞のお坊ちゃん」


「な! 誰が童貞だ! 私は……その、東タヌウキ星人アレルギーなんだ。だから……」



 阿呆らしさに加えて船首のAインコウの憐れな姿は見た目に痛い。

 少し考え、マイクで返す。



「なら、不用品処分に回収費用を払って貰えますかね?」



 底が浅いプライドに傷が付かないと判断したのか、ナイスアイデアとばかりに笑顔をみせてUC・Cをタッチパネルに付けAインコウを渡そうと船を船にリモコンで近付けた新G老。


――PIPEE――


――DOMMU――


 船首がUGロウの船体に当たる。



「おい馬鹿、何をやって!?」



 衝撃に落ちたAインコウが、こちらの船首に頭をぶつけ弾かれて、幸か不幸かデッキに落ちて行く。



「ぉぃ、テメェ何やってんだ! 人殺しが!」



 咄嗟に怒りを顕にしたUGロウがマイクで怒鳴り船外に飛び出しシューターでデッキに降りていた。


――POYUUUUUUHH――


「おい! おい! Aインコウ!」



 飛び散る粘土を脇目に、粘土がクッションになってないかと無事を祈る。


 倒れ粘土が剥がれて中身が露出していた背中部分から、本体を引っ張り出すと偉く痩せた細身の幼いボディが現れた。

 表に返すと、粘土が剥がれたその可愛らしい顔には見覚えが……



「ん、その顔……」

「あ、UGロウ、やっと私の話を聴いてくれるのね」


「いや、お前、粘土ロイド処かジャポメカ星のエロイドじゃねぇか!?」

「そう、私はジャポメカ星エロイドの無π(ナイパイ)A―YS11」


「やっぱりか、しかもそれ外惑星向けには需要が無いジャポメカ星限定の無いパイタイプかよ!」

「……う、まあね。だから言ったじゃない、私にはアレでいいのよって」



――NOIN――


 新G老からの入金の知らせに、目をやりながらもふと何かを思い出すUGロウ。



「スターCスキン要らずか、なるほど……でも、エロイドにご奉仕と卑猥言語以外の知能は無い筈だろ」


「私は、ジャポメカ星を乗っ取ろうとする東横タヌウキ星人の話を知ったトーヨス博士が裏の顔をスパイする為に作った改造品なの! って、詳しくはアレをどうにかしてから。あ、それと、貴男はスペースポリシーの要請で改壊(カイカイ)に嵌められてただけよ!」



 新G老の船尾に取り付けられた違法銅線コイルの隣に設置された爆弾が、船体アルカボンの未着部分から丸見えになっていた。

 Aインコウがアレと称した事態を理解するUGロウ。



「はあ? クソっ! とりあえず乗れ!」



――POYUUUUUUHH――


 シューターでUGロウの宇宙船イエローサブマリナーに昇ると、既に新G老が船内に戻ろうとゲートを開いていた。


 時間稼ぎにUGロウが慌てて声をかけた。



「おい! 俺のイエローサブマリナーにブツケた分も払え! 当て逃げかよ?」


「ん? おお、いくらだ?」

「五千……万NOだ!」



 言ってみるも怖気づくUGロウに、馬鹿は無駄に色気づくと気も大きくなり。



「ふん、半分に負けろ!」

「ん? お、おう……」



――PUSHUUUUHH――


 了解の合図に急ぎゲートに入り船を出すUGロウの隣で、待機ゲートをハッキングして脱出方法を模索するAインコウがK01ハッチを指示すると急速進行を始めた。



「貧乏急いで何処へ行く、か」



――NOIN――


「お、マジか、サンキューおバカちゃん。行くぞAインコウ!」


「イッて!」

「ん、おう!」



――BUUUUUUMM――









「おっとぉ、本日のロウ対決に、先ずはUGロウが姿を見せたぞお!」


――HYUUHH!――


――PATIPATIPATI――


 賭場衛星のラウンジで観戦する客のモニターからの歓声と共に待機デッキのハッチから飛び出したイエローサブマリナーの目の前には、()ユリコ(ケイ)のレースボートとは名ばかりの戦闘用宇宙船が待ち伏せていた。



「はあ? 戦闘船?」


「ケッケッケッ、馬鹿ねアンタ達」


――PABONN――

――PAPONN――

――PABONN――


 本性丸出しの顔で娘ユリコ刑が高笑いに違法電磁波砲を撃って来た。



――PIIIWUUUPIIIWUUU――


 攻撃に警告音が鳴り響くイエローサブマリナー船内でUGロウが急ぎバリア機能を起動すると鳴り止んだ。



「オイオイオイ、何なんだあの迷彩とは別の、唐草模様の風呂敷みたいなグリーンの船は?」


「あれは娘ユリコ刑の殺人用の特別船よ! 待ち伏せされてたんだわ、でも何で……あ、K01ハッチって(ケイ)の!?」



 互いの船で見合い固まるその時だった。






――PIIIGAAAABIBIII――PIIIGAAAABIBIII――PIIIGAAAABIBIII――






 モニター画面が電磁嵐に、船内にまたも警告音が鳴り響く。


――PIIIWUUUPIIIWUUU――


「うぉっ!何だこの強烈な違法電磁波は?」


「判らない、何処かの星からの攻撃? これじゃ船が飛ばされ……」




――BOGUWAAAAAAANN!!――


「何?」



 娘ユリコ刑は待機デッキの大爆発に驚きモニターを確認する。




 アルカボンで建造された新造賭場衛星が、正体不明の違法電磁波により回転しながらトンデモナイ速度で飛ばされて、宇宙の彼方へ消えて行く。


 その様に茫然とする。


 UGロウは消えた賭場に原因が電磁波と気付くが、爆発の大きさに困惑し推理する。



「新G老の船尾の爆弾がこの電磁波に反応して爆発したのは確かだろうが、デカ過ぎるな……」


「何で、この船何で飛ばされないの?」



 Aインコウからの自身への疑問に、惚け顔のUGロウがお惚けに応える。



「あぁぁ、これか、俺の星の旅用の船だからな……」



 意味に理解しきれないAインコウの顔に答えを話すUGロウ。



「俺の生まれのタイヨウ星じゃ磁波遠心力(スイングバイ)船が殆どで、電波帆船なんか趣味の域だ!」


「……つまり、あなた最初からズルする気満々にレースに出て逃げる気だったの?」



「まあ、な!」


「ふっ。それ良いわ、笑える」



「じゃ、とりあえずジャポメカ星にお前を送るか!」


「いえ、ジャポメカ星でトーヨス博士に報告したら貴男と一緒に旅を続けるつもりよ!」



 不本意な顔を顕にするUGロウの耳元に、囁くAインコウ。



「私を売って幾ら手に入れたの? そのお金は私のでしょ。」


「うっ、気付いてたのか……オーケー、旅のお供にエロイドたぁ俺も漢だねえ」



「馬鹿。」



 放心状態の娘ユリコ刑の戦闘船を残しジャポメカ星へと進み出すイエローサブマリナー。



――BUUUUUUMM――





「あれ? そういや、あのババアの泥棒船……」


「アレも違法銅線コイル搭載の電磁波放射船なのよ」


「なるほどねぇ……ん?」


「ああ、新G老の船は違法ガス発生装置搭載のブースター船。ドッチも狡賢い東横タヌウキ星製のズルだもの」

「く、アイツ環境家の顔して……あ! それでか! あの大爆発」


「屁ッポコ環境家らしい最後じゃない」

「さすが賭場衛星、欲深いのが渦巻いてたか……」



 その笑顔に音楽をかけボリュームを回し進み出す。



――YELLOWSUBMARINER――

――YELLOWSUBMARINER――

――YELLOWSUBMARINER――






 キャビンに干していた洗濯物を取り込み忘れたまま走り出したイエローサブマリナー、飛ばされた壺の絵柄パンツが娘ユリコ刑の戦闘船モニターに被さる。

 何も無くなった宙で茫然とする娘ユリコ刑が男の柄物パンツに反応する。



「壺?」



 柄物パンツが何を想起させたか、昔改壊(カイカイ)から聞いた、横タヌウキ星人が座礁させたトジミン星人の元主催者のボスが乗る船の話を思い出し、娘ユリコ刑が目をギラつかせていた。



「私の硝子の床を舐めさせてやる……」



 トンキン星団の外れに向かい走り出す戦闘船が、次なる悪行の準備へと進み出していた。



――BIBIBIBIBIBI――





 賭場衛星から放り出されたジェルドレンまみれの塵には、大小様々な微生物が住み着いていたが死滅している。

 しかし、あの電磁波に反応した別の微生物が変化して放射性物質が抜ける頃、小さな海洋惑星は新たな文明を始めようとしていた。


 ジェルドレン紀元年。


 

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