AAB★★ナンパはレース前に……
UGロウの船の中……
「お、おいコレ、スターXスキンじゃねえか……」
既にAインコウとの熱い一回戦を終えたUGロウが、異星間性交スキンのマーク違いに気付き焦っていた。
★スターXスキン(異星間性交スキン)は、異星間交遊における性行補助具である。
★スターCスキン(異星間性交スキン)は、異星間交遊における避妊具である。
Aインコウに渡され使っていたのは★スターXスキン。つまり、異星人との子孫繁栄用途である性行補助具だった。
「私にはこれでいいのよ」
「いや何言ってんだ! ふざけんじゃねえ! お前、最初からそのつもりで近付いて来たのか」
「何よ、最初に誘って来たのはソッチでしょ!」
「誰が子作りに誘う馬鹿が居る! 出てけ!」
「え、私、子作り……」
――PUSHUUUUHH――
「ちょ、ちょっと、待って、間違いよ!」
女を押し出し抵抗される最中、船の下を歩いていたレーススーツの男にUGロウが目を付け呼びかける。
「うるせぇ! おい、ソコのお前!」
船を見上げた男の顔にUGロウの記憶に覚えがあった。新G老だ。
「おっとぉ、こいつは……」
面倒な男に声をかけたと黙り込むUGロウに新G老が何かを嗅ぎ付ける。流石は人気取りに何でも手を出すクソ野郎。
「君、女性に乱暴な扱いは見逃せないな」
新G老の紳士ぶった態度には、船上から見てても底が浅い下心が丸見えだった。
UGロウが浅知恵を計る。
「そうかぃ? ならアンタがこの女の扱い方を見せてくれよ!」
「ふん、君みたいな乱暴者と一緒にするな! 私は……」
「ほらよ!」
――HYUUUUUUHH――
「おぃ、バカ」
放り落とすUGロウのとんでもない行動に慌てて受け止めようとするが、その高さと女の重量をレーサー故に計算が付く。と、落ちてくる女から身を翻し避けた新G老。
――BOTAAANN!――
「流石は紳士さん、見殺しかい?」
顔を背けていた新G老が視線を向けると、落ちていたのは船外用の寝袋だった。
騙されたと知り恥を隠すに、怒りを顕にUGロウへ向けた。
「違う! 違うと判ったから避けただけだ!」
落ちて行く物を直視出来ない以前に、あの落下速度の物すら視えていない新G老のレーサー資質の低さを知り、UGロウは余裕を見せる。
「間違えちゃった」
嘲笑うUGロウの後ろからAインコウが顔を出している。
見殺しにした行動も見られていたと知り、新G老は気不味さに顔を下げた。
「この女を助ける気があんなら|UC・C《宇宙クレジット・カード》で五百NO(マネー単位)で譲ってやるが、どうする?」
このトンキン星団のUC・CによるNOの金銭価値基準は……
皆が手軽に飲むジェルドレン一杯は六十NOで買える。
進んだ文明は、生活に必要な物を得るのにわざわざ仕事を必要としない。
NOの価値はさして無く、仕事と云う概念もさして無い。
生を楽しむ事に目を向け、世迷言に勤しみ政治を行う者はギャングに過ぎない。
新しい発明や娯楽や知識を求め宙へと出て行く若者や旅の初心者を食い物にしようと、徒党を組む輩達が政治や賭場を利用しようとギャングが育って行く。
そこから更に抜け出そうと更なる外郭宇宙へと飛び出す者を逃さない為のシステムとして、ギャング政治組織からなるUC・C(宇宙クレジット・カード)を作り出した。
便利さを前面にし活用させ、エラーや情報流出にポイントを増やし負担金を増やす。
実質上は抜かれ捲っているのにポイントを貰って得した気になりどんどん使う。
しかし、ポイントの加算は特定の星人の専売特許となっている。
気付けば働けど働けど実質負担金が増えるばかりに……
そうして現代の地球と変わらない、仕事をしないと衣食住を失い兼ねない環境を創り出したギャング政治。
奴隷のように扱い易い若者に洗脳する為に、邪魔な実情を知る若者に近い中年層を潰して行く。
それら借金を払わせる為の追跡組織を起て【スペースポリシー】と云うギャング政治の手下が行う自警団が現れ、後進的に自治権を持ち、奴隷制度まで復権させ始めていた。
そのスペースポリシーの上部組織である一つがこのトンキン星団の賭場衛星である。
そして、何代か前の元トップの息子こそが新G老……
「馬鹿にするな!」
新G老がプライドを持って救う者の価値の低さに、プライドに見栄を張って見せる。
「高過ぎたか?」
ほくそ笑むUGロウが煽る。と、紳士とは思えない腐ったお坊ちゃまの素顔を知らしめる応えが帰って来た。
「私はその女の価値を知らない! 先ずは抱かせて貰おうか!」
「タダで寄こせってか? 流石は二世、心底腐ってやがんなぁ……」
嘲笑う新G老がUC・Cで入金してUGロウの船のタッチパネルに充てている。
パネルに表示された船籍から名前を知る。
「イエローサブマリナー・UGロウ、こいつがあの浮浪野郎か」
――NOIN――
入金を知らせる音にUGロウが腕の光振動波通信機を確認すると五十万NOが入っていた。
「は、結局買うのかよ!」
「世間知らずと思ったか? 口止め料位は理解しているさ! UGロウ、君とは今後も上手く付き合えると確信したよ!」
何を勘違いしているのか判らないが、入金を借金の返済にそのまま流したUGロウがAインコウに視線を向けると、尚も事の間違いを訴えようと縋る素振りに、UGロウは情けをかけないようにと顎で追い払う。
――POYUUUUUUHH――
ゲートに消えるUGロウを見つめ心残りにシューターで降りるAインコウに、思惑駄々漏れの視線を送る新G老が迎えに足を進め、紳士の務めと手を伸ばす。
「何でこうもあの馬鹿は」
キャットウォークで隠れて見ていたポテート山盛が顔を手で覆いしゃがみこむ。
「君、名前は?」
「Aイン」
「君は今日から私の付き人になって貰う」
聞いておいて聴く耳持たずの新G老の行動に、振り回される事を覚悟するAインコウの目が天を仰ぐが、キャットウォークのポテート山盛を視認して何かを勘ぐっていた。