AAB★ナンパはレース前に……
タイヨウ星人のUGロウはトンキン星団にある賭場衛星に居た。
所謂カジノ総合施設としてルーレットやスロットにバカラ等の賭場と共に、ホテル・公園・娯楽施設までを有する巨大衛星である。
その中でも電波を帆で受け走る宇宙帆船であるスペースボートのレースはこのトンキン星団界隈では人気のゲームで、賭け事としての惑星間競技は勿論、惑星間協議の可決権争いの政争の具にもなっている。
何故ならこのトンキン星団界隈では、ギャングが国ならぬ星の政権を担っていて、この賭場の上がりの分配金をも賭けた星の代表レースをスペースポリシーの監視の下で行っているからだ。
その中で群を抜く人気レーサー……
娘ユリコ刑
女はスペースボートの主催者権限を持つトンキン星団のトップに就いた東タヌウキ星人の改壊の娘で、デビュー以来未だトップの座を譲った事が無い。
その娘ユリコ刑の口癖は【天井は私の為にある】だ。
意味は解らないが、妙な輩が裏で人気者としてメディアに金を使って持ち上げているのは有名で、それに対し疑問を口にした著名なタレントや嫉妬されていると噂の有ったモデルや女優が突然死んだ話も数件。
それは、レーサーの中でも有名な話。
当然、そのレーサーの中にも娘ユリコ刑の取り巻き連中が居るらしく、迂闊に口にした者達はレース中に行方不明になったり不慮の死を遂げていた。
しかし、レース出場者の殆どは星の代表で政争の具になり星の為にと、正に星のスター。その手の不穏な話も政争の具として有耶無耶に闇に消えて行く……
そんな中でUGロウは全くもってトンキン星団に関係の無い別の星系にあるタイヨウ星から来た男。
脈略も目的も解らない旅の途中下車で迷い込んでレースに賭け狂い借金を作り、その形にレースの賞金で払うと約束して自前の船で出場する運びとなっていた。
その危機的な状況にあるUGロウだが、 スペースボート乗りの格好(ライダースーツの様な服)のままバー・ラウンジでグラマラスなレースクイーンの顎に手を充て口説いていた。
「良い唇だ、俺の船に抱かれに来いよ!」
「嫌だわ、私達は娘ユリコ刑の応援だもの」
「チッあんなオバンの何処が良いんだ?」
「オバンて何よ!あんたの四倍位なんだから若いでしょ! モデラー星の娘より全然キレイなんだから!」
文句に聞く耳を持たず次へと向かい、隣で静観している細身にアリパイの眼鏡ちゃんに目を向けたUGロウ。
「おたく、名前は?」
「Aインコウ」
「Aインコウ、眼鏡なんて外して俺の船で心も裸にならないか?」
「良いの? 娘ユリコ刑の右腕を口説いて、知らないからね」
「右腕ねえ、そりゃあ良い! 俺の船で舵を取ってみろよ」
UGロウが空かさずAインコウのビッグパイの脇に手を出して、摩りたわわに持ち上げるように……
――BORIN――
「え、あ!」
恥ずかし気にそっぽを向くAインコウ。
「おう?」
胸が割れ驚いていたUGロウが目を見開き己の掌をじっと見つめ、何が起きたかと考えていた……
――BASYAA――
眼鏡女は慌てて持っていたジェルドレン(ドリンク)を割れた胸にかけるとムニムニと揉み込み押し付ける。
UGロウが顔を上げると瞬間、ちらりと覗いた最初に声を掛けたグラマラス女が焦り引き攣った顔のせいで頬にヒビが入る。
化粧の厚さがどれ程か、慌てて長い舌を出し舐めずりヒビを修正するグラマラス女。
――DORUDORYUDORYU――
不意に何かを思い出したUGロウが女達を指し声を震わせた。
「粘土……四倍、あ! 嘘、あんた等タヌウキ星人か!」
「何よタヌウキ星人が長生きだからって娘ユリコ刑様の悪口は許さないんだから、ヘイ! グリーン隊! こいつが娘ユリコ刑様を……」
グラマラス女がグリーン隊を呼び付けた事に、慌てて展望デッキを指してUGロウが叫ぶ。
「あれ? あそこ、ハチク星人じゃねえのか!」
「え、噓でしょ? 何で、何処よ?」
――SUTATATATATATA――
走り危うく行方不明になる処を切りかわし、出場レーサーの待機デッキに逃げ戻ったUGロウ。
が、自身のスペースボートの脇から先程の眼鏡ちゃんが顔を出して来た。
どう追いかけて来たのか先周りされたUGロウが、お手上げのポーズに融和を求める。
「おいおい、勘弁してくれ。胸の事は謝るからよ」
困り顔をしているUGロウに、Aインコウは近付くと耳元で淫靡に囁いてみせる。
「それはもういいのよ、私もこの船に乗せてくれない?」
その淫靡な提案に鼻を伸ばすUGロウに、上目遣いで舌舐めずりして誘うAインコウが手を掴み下へと運ぶ……
「おん? でもお前は娘ユリコ刑の……」
「私の胸は偽物だけど……下の方は、ね。」
――CHUPU――
「あ、あぁ……わかった。乗りな」
Aインコウの肩を抱き、宇宙船の乗り込み口である上部ゲートと繋がるシューターに乗せる。
――PUSHUUUUHH――
キャビンに旗を立てるように猿型服の洗濯物が干してある黄色い小型潜水艦のような船の上部ゲートから二人が乗り込む。
――TUKATUKATUKA――
と、スグに捜索に追いかけ挟み撃ちに失敗したグリーン隊が、UGロウの宇宙船シューター近くで仲間と捜索対象を確認し合う。
その全てを真上のキャットウォークから見ていたのはポテート山盛、前主催者が新造したこのスペースボート賭場衛星の建物構造にケチを付け、惑星間交渉に主催者権限を改壊に移譲させた建造物の専門家。
「あの胸眼鏡、確か娘ユリコ刑の……」
思い付いた何かに光振動波通信機を手に取ると横タヌウキ星人の無渇田の顔が三次元に浮かびあがる。
「これはこれは暫くポテート先生、どうした?」
「改壊の足元に爆弾仕掛けて置かないかい?」
「それはそれは中々どうした?」
「今、娘ユリコ刑の右腕が例の借金浮浪と船でシケこみチュウ中」
「それが何なん?」
「グリーン隊、基よりハム星人の対象、つまり娘ユリコ刑の敵で改壊に借金してる奴が娘ユリコ刑の右腕とチュウ中」
「やれやれ我々にもツキが点き始めたか」
「右腕のせいに出来れば新G老を勝たせるのも脈ありありでは?」
「ナルナルヨシヨシ、音デッケーを向かわせよう」
ポテート山盛が光振動波通信機を切ると待機デッキのモニターに、レーサーの意気込みを語る新G老の映像が流れていた。
「我々トンキン星団は異星団に比べて遅れをとっている。この賭場衛星にも使われているアルカボンが在れば脱鉄鉱を目指せる筈だ! 皆が飲むジェルドレンの容器も有料化するべきだろう!」
――BAWOOOOUUH――
別のブースからブーイングが飛んでいる声がここ待機デッキにまで聞こえて来る。
馬鹿なのが星団全域に知られて来ている新G老を勝たせる勝機は今しか無い。
横タヌウキ星人の災妻が、手下の無渇田と音デッケーを使って、賭場の元の元締めだったトジミン星人のボスを幹部も乗せた船ごと罠にハメて座礁させ、行方不明にさせて奪った主催者権限。
東タヌウキ星人の権力者だった改壊に権限を渡したが、横タヌウキ星人が実質上仕切っている。
災妻はそろそろ表舞台にも横タヌウキ星人が出ていい筈だと考えていた。
理由は、アルカボンの販売利益。
アルカボンは電波を受けても跳ね返す軽くて湾曲性がある強度にスペースボートやこの新造した賭場衛星にも使われている。
そこで、横タヌウキ星人だがトジミン星代表になり少し前のレースから人気が出始めた新G老を、トンキン星団トップに据えて、横タヌウキが暗躍しているとする陰謀論を一掃しようと考える。
その為に無渇田と音デッケーと共に、建造物専門家として潜り込んだポテート山盛が改壊の弱みを探っていた。
しかし、モニターの新G老の馬鹿な発言は頭が痛い、面々にとっての面汚しに。
「あの馬鹿を黙らせろ! このこの!」
――KOPONN!PYUUUUUHH――
キャットウォークで手摺を叩くポテート山盛のポケットから何かが落ち、UGロウの船のキャビンに干されていた洗濯物のポケットに入った。